東京五輪を見据えた新たな防災プラン「セーフ シティ東京防災プラン」

日本のメダルラッシュに沸いた平昌冬季五輪が終了し、2年後の東京五輪がより待ち遠しくなった人も多いのではないだろうか。平昌冬季五輪の大会組織委員会によると、同大会の来場者数は約100万人を超えたそうだ。一方で東京五輪の来場者数は約1000万人という予測もある。おそらく想像を絶する盛り上がりを見せるだろう。

ただし、様々な方面からいくつか懸念点も指摘されている。その一つが災害対策だ。例えば、政府の地震調査研究推進本部は、今後30年の間に南関東でマグニチュード7程度の地震が発生する確率が70%程度あると公表している(2014年4月)。東京五輪の開催時は、地震への対応に不慣れな外国人も多く訪れるため、その対策は急務といえるだろう。

このような背景から東京都は2018年1月31日、「セーフ シティ東京防災プラン(骨子)」を公表した。都はこの骨子を基に都民から意見を募り(2018年2月14日締切済)、3月末日までに同プランを策定する予定だ。

4つの災害シナリオで自助・共助・公助の取組みを紹介

まず、東京都が目指す都市像には、
1)都民一人ひとりが相互に助け合い、適切な行動をとることができる
2)迅速な人命救助や避難所等の円滑な運営など、命を守る災害対応体制が構築されている
3)木造住宅密集地域の改善や建築物等の耐震化など、防災都市づくり等が着実に進展している
という3点が掲げられている。
「セーフ シティ東京防災プラン」は、2020年の東京五輪開催を見据えたスピード感ある防災対策の取組みを推進し、都民の理解と共感に基づく自助、共助の更なる進展を目的としている。そこで、地震や風水害など4つの災害シナリオを設定し、発災から時間が経過した場合に想定しうる事象、それらに対して行うべき取組みが紹介されている。

■想定しうる4つの災害シナリオ
1)区部・多摩地区における地震
想定条件:マグニチュード7.3、冬、18時、風速8m/s
懸念される事態:(「建物等の倒壊」「家具類の転倒・落下・移動」「住民による救出活動の困難」「火災の発生・延焼」「避難行動等の混乱」)を示し、それぞれに対して行うべき取組みを紹介。

2)島しょ(大小様々な島)地域における地震
想定条件:マグニチュード9、冬、明け方
懸念される事態:(「津波による被害」「避難開始の遅れ」「避難行動の混乱」「孤立の長期化・生活物資の不足」)を示し、それぞれに対して行うべき取組みを紹介。

3)島しょ(大小様々な島)における火山噴火
想定条件:冬
懸念される事態:(「火山情報等の把握不足」「避難行動時の混乱」)を示し、それぞれに対して行うべき取組みを紹介。

4)都内各地における風水害
想定条件:集中豪雨
懸念される事態:(「気象情報等の把握不足」「避難行動時の混乱」「浸水被害や土砂災害等の発生)を示し、それぞれに対して行うべき取組みを紹介。

「セーフ シティ東京防災プラン」では4つの災害シナリオを設定し、それぞれの懸念される事態や行うべき取組を示している「セーフ シティ東京防災プラン」では4つの災害シナリオを設定し、それぞれの懸念される事態や行うべき取組を示している

防災に対する理解を深める工夫も

「セーフ シティ東京防災プラン」は、災害が発生した際に考えられる状況や懸念される事項、起こすべき行動について細かに記載されている。また、同プランでは、都民の防災に対する理解をさらに深めるために、次のような4つの工夫がされているのも特徴だ。

1)防災対策の「見える化」等による「分かりやすさ」の推進
各メディアなどから「災害はいつ起きてもおかしくない」といわれても、「自分は大丈夫」となんとなく思ってしまう人も少なくないはずだ。しかし、その考え方は禁物。そこで同プランでは、各防災対策の効果や自治体間の比較などを図表やグラフを活用した「見える化」によって「分かりやすさ」を推進。つまり、「なるほど、これは気をつけないと」と思えるデータによって理解と共感を引き出す構成となっている。

2)女性視点の防災対策の推進
女性防災人材の育成や女性消防団員向けの研修制度など様々な女性視点の対策を推進。また同プランは、避難所における授乳や防犯対策などをまとめた女性視点の防災ブック「東京くらし防災」(2018年3月公表)や東京仕様の防災ブック「東京防災」(2015年7月公表)などと連携した内容とすることで、理解と共感を相乗効果的に高めていくとしている。

3)火山対策や熊本地震の教訓の具体化など新たな施策を適切に反映
公助としての防災対策を進展させるため、島しょ(大小様々な島)における火山防災対策の推進や熊本地震の教訓の具体化など、新たな施策を適切に反映し、取組みの推進につなげる。

【主な反映内容】
・火山対策の推進
伊豆諸島の6火山(伊豆大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、青ヶ島)の特性に合わせた火山ハザードマップや、避難計画の策定。東京都地域防災計画(火山編)の修正など。
・熊本地震の支援の教訓
全庁の総力を結集した災害対策本部体制の強化や、全国からの応援の受入れ体制の整備、運用に向けた取組みなど。

4)計画的なプランの進捗管理の実施
同プランの進捗状況や都民、地域、企業の防災意識の変化やその取組を「進捗レポート(仮称)」で公表し、自助・共助・公助を促進する。

熊本地震県民アンケートを掲載するなどで、同地震からの教訓も得られる構成熊本地震県民アンケートを掲載するなどで、同地震からの教訓も得られる構成

まずは自分がするべき防災対策の整理から

防災は行政に頼ってばかり(公助)では成り立たない。同骨子にもあるように「自助(自分で自分を助ける)」「共助(周りの人たちと共に助けあう)」が重要だ。「セーフ シティ東京防災プラン」を一読すれば、まずは防災に対して自分がするべきことを整理できるはずだ。
災害発生時に想定される状況と起こすべき行動の両方を予め理解すると共に、家族や財産を守るための日頃からの備え、自助・共助の重要さを改めて考えてたい。

■参考資料
セーフ シティ東京防災プラン(骨子)
東京くらし防災
東京防災

都民アンケートの結果などから災害に対する備えが不十分であることが理解できる都民アンケートの結果などから災害に対する備えが不十分であることが理解できる

2018年 03月20日 11時06分