国が推進し、補助金も交付される

地球温暖化の防止や東日本大震災によるエネルギー不足などから、再生可能エネルギーの利用が推進されている。再生可能エネルギーとは、加工することなく、そのままの状態で利用可能な自然エネルギーのことだ。最近身近になってきている太陽光や太陽熱エネルギーもその中に入る。そのほかにも風力や水力などがある。

しかし、太陽光発電を住宅で利用するには屋根の方角に制約があるし、夜間や天候が悪いとエネルギーを取ることができない。また、風力発電は風まかせのため、不安定なエネルギーといえるだろう。再生可能エネルギーはいつでも、どこででも安定して利用することは困難なのだ。

そこで注目されはじめているのが地中熱利用だ。地中は、深さ2-3m程度から下は年間を通してほぼ均一な温度になっている。九州南部でおよそ20℃、関東では17℃、北海道で10℃前後だ。この均一さは時間帯や場所を問わない。つまり地中熱は安定していて、気温と比較すると、冬暖かく、夏は涼しいのだ。この温度差を冷暖房に利用すれば、大きな省エネになる。

政府が平成22年6月に発表した「新成長戦略」には、木質バイオマスや太陽熱などと並んで地中熱利用もあげられ、再生可能エネルギー関連市場10兆円を目指す、としている。最近では、地中熱利用システムを設置する住宅にも、補助金が交付されるようになった。

地中熱は他の多くのパッシブエネルギーに比べて効率がいい(画像提供:地中熱利用促進協会)地中熱は他の多くのパッシブエネルギーに比べて効率がいい(画像提供:地中熱利用促進協会)

スカイツリーでも採用されたヒートポンプ式地中熱利用

地中熱利用システムは、東京スカイツリーでも採用されている。
同施設では、建設時に地中へ水を循環させるチューブを建物の基礎杭などに埋め込んだ。そして、チューブの中に水を循環させ、ヒートポンプ方式を用いて地域冷暖房に利用している。

ヒートポンプとは熱源の水や空気と冷媒(ガスなど)が熱交換を行い、冷媒を圧縮することで熱を上昇させたり下げたりすることが可能となる方式だ。消費する電力の数倍のエネルギーをとることができるので、節電効果が大きい。また通常のエアコンと同様に十分な冷暖房効果がある。一般家庭で使用するエアコンや冷蔵庫もこのヒートポンプ方式だが、こちらは空気を熱源としているのに対し、地中熱利用では水を熱源としている。

特定非営利活動法人 地中熱利用促進協会の資料によると、温度が安定している地中熱を利用すると年間の空調電力消費量は、一般的なエアコンに比べ40から50%も削減できる。

ちなみに地中熱の利用方法には、このヒートポンプ方式以外にも空気や水・不凍液をヒートポンプを使わずに循環させる方式もある。しかし、これらの方式だと設備費用を低く抑えられるものの、単純に17℃前後(関東の場合)の空気や水が循環することになるので、あくまで今までの冷暖房機器の補助的な位置づけになる。

一般的な空気熱を利用するエアコンに比べ、地中熱利用のエアコンは約49%の電力を削減する(画像提供:地中熱利用促進協会)一般的な空気熱を利用するエアコンに比べ、地中熱利用のエアコンは約49%の電力を削減する(画像提供:地中熱利用促進協会)

課題は補助金を差し引いても多く残るイニシャルコスト

このような国の施策や東京スカイツリーでの採用などが後押しとなり、地中熱利用システム(ヒートポンプ方式)の設置件数は増加を続けている。「新成長戦略」が発表された2010年から翌年2011年の設置件数は30%以上の伸び率だ。

とはいえ、2011年現在の累計設置件数はまだ990件で、そのうち住宅が434件と、欧米に比べるとまだまだ少ない。
ちなみにもっとも普及が進んでいる米国ではすでに100万件以上で利用されている。
普及のネックとなっているのは、イニシャルコストだ。一般的な100~150m2の住宅の場合、地中熱ヒートポンプシステムの設置費用は300万円から500万円程度。これは空調設備のみで、さらに給湯設備も導入すると、さらに高額になる。

平成25年度から、1件300万円を上限とする環境庁の補助金があるが、これを利用するには、設置する地域の熱特性を調べる熱応答試験で約100万円、設置後の省エネ効果を確認するためのモニタリングシステムの設置で約100万円の出費が義務づけられている。つまり補助金があっても200万円以上の費用がかかるのだ。

この費用を冷暖房費の削減で回収するには、通常の暖房費がかさむ北海道でも、10年はかかるといわれている。
地中熱利用システムで地中に埋めるチューブなどの熱交換器の耐用年数は50年以上。しかもその間、メンテナンスフリー(ヒートポンプなどの機械類は除く)というすぐれものだ。あとはイニシャルコストだけがネック。近々の補助金の増額や掘削工事費、設備機器のコストダウンに期待したい。

急激に増加するヒートポンプ式の地熱利用システムの設置数。</br>しかし、まだまだ普及しているとはいえない(画像提供:地中熱利用促進協会)急激に増加するヒートポンプ式の地熱利用システムの設置数。
しかし、まだまだ普及しているとはいえない(画像提供:地中熱利用促進協会)

2014年 03月16日 11時28分