先進的なゼロ・エネルギー住宅を手掛ける名古屋市の工務店へ

阿部建設が手掛けた「大蔵町の家」阿部建設が手掛けた「大蔵町の家」

昨今の環境問題への関心の高まりや、東日本大震災に伴う福島第一原発事故などを契機に、エネルギー消費ゼロを実現する「ゼロ・エネルギー住宅」への注目度が高まっている。2012年からは、国も住宅のゼロ・エネルギー化推進事業に予算を投じ、条件を満たした住宅の建設に対する補助金の支給を開始した。

そんな中、自然素材にこだわり、OMソーラーによるゼロ・エネルギーの都市型住宅を手掛ける先進的な工務店があると聞き、名古屋市北区にある「阿部建設」を訪れてみた。

ちなみにOMソーラーとは、太陽の熱を屋根で集め、その熱を床下に送って室内を暖めたり、お湯を採ったりする空気集熱システムのことだ。自然エネルギーをそのまま利用する仕組みのため、環境への負荷が少ないのが特徴で、こだわりの住まいを求める人たちから根強い人気がある。

訪問した3月末には、ちょうど同社が建築したモデルハウス「大蔵町の家」のオープンハウスが行われていた。そこで、同社の広報担当を務める小崎綾さんにお願いし、建物内を見学させてもらった。

建築家・伊礼智氏が設計する、都市に溶け込むOMソーラーハウス

洗練された空間が広がる「大蔵町の家」のリビング洗練された空間が広がる「大蔵町の家」のリビング

モデルハウスは、名古屋市内の市街地の一角にあり、都市と溶け込むように佇んでいた。異彩を放ちながらも、周囲に調和するシックな外観。大きな引き戸を開けると、その右側には床を一段下げた図書室が現れる。リビングとキッチン&ダイニングは2階にあり、開放的なウッドデッキが設けられていた。

洗練されたこの空間を作り上げたのは、建築家の伊礼智氏だ。同氏は、実用的なデザイン、自然素材をふんだんに使った安心して暮らせる住まいづくりで注目を集める著名な建築家。2007年「東京町家・町角の家」で第6回エコビルド賞、2013年「i-works project」でグッドデザイン賞など、数多くの受賞歴を持つ。また、株式会社OMソーラー研究所(現・OMソーラー株式会社)のシンクタンク、OM研究所で事務所を間借りしていたこともあり、OMソーラーハウスへの造詣も深い。

阿部建設では従来、設計から施工まで一貫して自社で行っているが、町並みに配慮した設計思想やOMソーラーを活かした家づくりに共鳴し、伊礼氏へ設計を依頼。伊礼氏がこれを快諾し、今回のモデルハウスの建設が実現した。

モデルハウス「大蔵町の家」は、あらかじめ入居者が決定済み。ただ、施主の要望をくみ取りながら、伊礼氏の自由な発想をもとにプランニングが進められた。そのため、建物内は「小さな家で豊かに暮らす」という伊礼氏の設計思想の下、大人の心を魅了するモダンな空間に仕上がっている。

エネルギー消費量の年間収支ゼロを目指し、年間約22万円の黒字に

今回のモデルハウスは、伊礼氏の設計のみならず、構造材の紀州檜や杉、玄関前の恵那石など、こだわりの素材が随所に使われているのが特徴だ。そして、最大のポイントとなるのが、同社が提案する『暮らしのゼロ・エネルギー』に沿った家づくりが行われている点である。

同社では、OMソーラーと家づくりの工夫により、省エネを徹底的に追求した家づくりを続けているが、今回はこれをさらに発展させ、太陽光発電による創電を行うことで、「エネルギー消費量の年間収支ゼロ」の達成を目指した。

「大蔵町の家」では、OMソーラーに太陽光発電をプラスした「OMクワトロソーラー」を採用。さらに室内には、建築廃材や木工所のおがくずからできた固形燃料を使うペレットストーブを設置している。

「大蔵町の家」におけるシミュレーションでは、電気料金に換算して、年間約22万円の黒字になるという結果が出た。「この黒字分を住宅ローンに充てることで、より豊かな暮らしを実現してもらおうというのが『暮らしのゼロ・エネルギー』のコンセプトです」と小崎さんは説明する。「当社の試みをきっかけに、太陽光や自然の風を活かしたパッシブデザインの家に興味を持ち、実際に住む人が増えてくれればいいなと考えています」。

自然の力をうまく利用した家を、もっと手が届きやすいものに

ペレットストーブと、木くずを利用した固形燃料「なごやペレット」ペレットストーブと、木くずを利用した固形燃料「なごやペレット」

電気・ガス・灯油などで消費するエネルギー量が、発電によって創出されるエネルギー量を上回る。これがいわゆる「ゼロ・エネルギー住宅」の定義だ。阿部建設の取り組みが画期的なのは、「年間収支ゼロ」からさらに踏み込み、自然の光や風をうまく利用するパッシブデザインを取り入れることで、消費エネルギーを極限まで抑え、大幅な黒字を達成している点にある。

OMソーラーハウスは、一般的な住宅と比べて割高なため、その考え方やメリットは理解できても、現実的には “高嶺の花”で終わってしまう場合が少なくない。ただ、同社の『暮らしのゼロ・エネルギー』に基づいた家であれば、収入分を住宅ローンの支払いに充てられるうえ、ゼロ・エネルギー住宅を支援する各種補助金を活用すれば、施主の負担もぐっと軽減できる。人に優しい素材をふんだんに使い、自然エネルギーを最大限活用したOMソーラーハウスが、もっと手の届きやすい家になるのだ。

なお、今回見学した「大蔵町の家」にはペレットストーブが設置されているが、燃料となるペレットには木くずなどを圧縮・成型した固形燃料が使われている。これは、同社が名古屋市内の工務店と共同し、「名工家(めいこうや)」の名称で固形燃料「なごやペレット」として独自に製造したものだ。建築現場から出る廃材を活用し、環境に優しいエネルギーへと変える。同社ではそんな新たな仕組みづくりにも力を入れている。

東日本大震災以降、自然エネルギーの重要性が改めて見直されてきている。同社の取り組みは、日本の暮らしのあり方を見つめ直す意味で、今後も注目を集めていきそうだ。

2014年 07月03日 11時04分