川をマスターすると、水遊び全般のリスクを減らせる

子どもの水辺サポートセンターのウェブサイトでは「全国の水難事故マップ2003-2019」出典:(公財)河川財団 が公開され、事故の起きた場所と内容をチェックできる。事故数の1位は琵琶湖、2位は長良川、3位は多摩川。川幅が広いと流れが遅く見え、橋などの人工物の近くは流れが複雑で事故が多いそうだ子どもの水辺サポートセンターのウェブサイトでは「全国の水難事故マップ2003-2019」出典:(公財)河川財団 が公開され、事故の起きた場所と内容をチェックできる。事故数の1位は琵琶湖、2位は長良川、3位は多摩川。川幅が広いと流れが遅く見え、橋などの人工物の近くは流れが複雑で事故が多いそうだ

「川遊びは予算0円でクーラー不要、水や小石などの遊び道具が無限にあるので子どもがケンカしない、などメリットがいっぱいです。自分の身を守る一生ものの知恵も学べます」とは、アウトドア防災ガイドのあんどうりすさん。

最高の思い出になる川遊びだが、残念ながら水難事故のニュースは後を絶たない。そこで今回は、あんどうりすさんが講師を務めるセミナー「親子で学ぼう!水害・水辺あそびのリスク対策」に参加して、水害対策にも役立つノウハウを教えてもらった。

「川遊びをマスターすると、水遊び全般に応用が利きます。なぜなら川は水の比重が軽く、流れも複雑でカラダが沈みやすいから。流れの速さが3倍になると、カラダに受ける水圧は2乗の9倍になります。
ひざより上に水が来るとあっという間に流されることを、ライフジャケットを着用し安全を確保した上で経験すれば、水害時に早めに避難する、足首を超える水深を進むのは避ける、ということに役立ちます」(あんどうさん)

また自然相手の川遊びでは、天候によってリスクが大きく変わる。
「前日や上流の天候も調べて『自然現象だけを判断材料にすること』と伝えています。今晴れているから、休みは今日だけだから…といった感情を省くクセをつけると、災害時にも正しい判断ができると思います。
落雷情報も敏感にチェックを。光や音を感知した後、雷鳴まで3秒以上かかったとしても、 その瞬間そばに落ちる可能性があります。木の下など雨宿りしたくなる場所はほぼ危険と覚えて、クルマの中かコンクリートの建物に避難してください」

子どもも大人も、「ライフジャケット」が生死を分ける

「川遊びで100%必要な装備がライフジャケットです。しかも親子で身に着けることが大切です」とあんどうさん。海で着用するイメージが強いが、川にも絶対必要だとか。

「よく『浮いて待て』と聞きますが、それができるのは静水だけです。川の中で白い水しぶきが立っている部分は空気を含むので、より比重が軽く、ライフジャケットを着ていても沈むことがあるほど。護岸や岩場はとくに滑りやすいので、水際の3~5メートル手前から身に着けてください」

ライフジャケットはジャストサイズに調整できるもので、子ども用は股下ベルトがあるものを選ぶのがコツ。というのも、救助では肩ベルトを引っ張ることが多く、股下のベルトがないと頭からすっぽり抜けてしまう。ホイッスルが付いていないライフジャケットの場合は、中に球の入っていないホイッスルを買って取りつけるといい(球入りは、濡れると音が出ない)。

もうひとつ、川から上がるタイミングも子どもたちに覚えてほしいとか。
「川の水温は低いです。プールだと笛の合図がありますが、自然の中では自分で気づくことが大事です。『歯がガチガチしてきたら低体温症の始まりだから川から上がろう』と教えています。寒く感じたら、岩に抱きついてひなたぼっこするのがおすすめ。太陽熱を蓄えているので温かいですよ」

あんどうさんは、子どもたちを引率していてヒヤリとした経験も教えてくれた。
「岩から川へ飛び込む遊びをしていたとき、一人が真下に飛び降りようとしました。山型になっている岩の形から、真下に飛ぶと、岩にぶつかる可能性があるのですが、遊びに慣れていない子どもはたとえ見えていても水面下に岩があることを想像できません。『岩が水面下にあれば遠くへジャンプするだろう』という大人の常識は通用しません。安全を確保した上で幼い頃から自然を経験し、自分で判断できる子どもになってほしいと思っています」

上/ライフジャケットはホームセンターやネット通販で購入できる。子どもは体重15キロ未満で4キロ以上の浮力があるものを(画像は子どもの水辺サポートセンター、出典:(公財)河川財団)。 下/流されたときには「ホワイトウォーターフローティングポジション」を取る。仰向けで両手を広げ、顔は下流を見て、足先を上げること。岩があれば足で蹴って方向転換をする(あんどうりすさん提供)上/ライフジャケットはホームセンターやネット通販で購入できる。子どもは体重15キロ未満で4キロ以上の浮力があるものを(画像は子どもの水辺サポートセンター、出典:(公財)河川財団)。 下/流されたときには「ホワイトウォーターフローティングポジション」を取る。仰向けで両手を広げ、顔は下流を見て、足先を上げること。岩があれば足で蹴って方向転換をする(あんどうりすさん提供)

川遊び、水害時ともに役立つ「ネオプレン素材」のシューズ

市販のネオプレン素材のシューズの裏側に厚手のフエルトを張って、川遊びシューズの完成。適した接着剤や接着の仕方など工夫点も教えてくれた(あんどうりすさん提供)市販のネオプレン素材のシューズの裏側に厚手のフエルトを張って、川遊びシューズの完成。適した接着剤や接着の仕方など工夫点も教えてくれた(あんどうりすさん提供)

今回セミナー参加者から「なるほど、いいアイデア」という声が上がったのが、水遊びの靴の話。全国の川体験活動の指導者によると、水辺のヒヤリハット1位は「滑る」であり、川遊びの靴はリスク回避の重要アイテムだ。(※2007~2017年河川財団調べ)

「足指の出るビーチサンダルは岩で爪がはがれやすいのでNGです。丸い穴の開いた人気のプラスチックサンダルも砂や小石が入りやすく適していません。おすすめは、ウエットスーツに使われるネオプレン素材のシューズですね。脱げにくく、また断熱性が高いので冷たい川の中で遊んでも冷えにくいです」

あんどうさんはシューズの靴底に、冬用インソールとして販売されている厚手のフエルトを切って張り、滑り止めにしているそうだ。受講したママからは「川遊びでは自分が真っ先に寒くなります。長靴の方がましかと思っていたのですが、ネオプレン素材の靴を履いてみます」「ラッシュガード代わりにネオプレンの服を試してみたい」など、リアルな声が上がった。

また、水遊びと防災グッズを兼ねられるものして、箱メガネ(バケツ代わりにも)、防水バッグ(濡れた水着入れ・水遊び中の貴重品入れ・浮き袋・給水袋にも)、携帯トイレ、断熱マット(レジャーシートや車中泊のベッドに)など、便利なアウトドアグッズを教えてくれた。使い慣れた用品を防災グッズに転用できれば、いざというとき慌てずにすみそうだ。

災害時に役立つ「生きる力」。親子で身に付けてほしい

上/防災デイキャンプでは、バックパックに入れておくと便利なモノや少量の水でパスタをゆでるコツなど、乳幼児ファミリー目線の役立つアイデアを楽しく体験。 下/子どもが親と離れて避難することも想定し、パパ・ママにバイバイして子どもたちだけで過ごす時間も設けた上/防災デイキャンプでは、バックパックに入れておくと便利なモノや少量の水でパスタをゆでるコツなど、乳幼児ファミリー目線の役立つアイデアを楽しく体験。 下/子どもが親と離れて避難することも想定し、パパ・ママにバイバイして子どもたちだけで過ごす時間も設けた

今回のセミナーを主催したのは、親子の防災を考える伊勢市の団体「Live!Littles(リブリトルズ)」。主宰の山村水帆さんは、東京出身で全国を旅した後、縁あって伊勢市で結婚・子育てすることになったという経歴の持ち主。伊勢市の防災大学を受講したのをきっかけに、同団体を立ち上げた。

「行政主導の防災対策では乳幼児や妊産婦への配慮が圧倒的に少ないことを知り、『子どもと我が身は自分で守らねばならない』という現実を知りました。そこで南海トラフ地震は必ず来るという覚悟を持ち、小さな子どもを育てる家庭が防災について学べる機会をつくりたいと思ったんです。ママ友から『行政発行の冊子を読み込んだり、講座に参加する時間(余裕)がない』という声を聞いて、暮らしの延長線上で楽しめる防災イベントを企画することにしました」(山村さん)

2018年は伊勢市から助成を受け、アウトドアカフェのオーナーを講師に迎えた「乳幼児ファミリーのための防災デイキャンプ」を開催。2回とも50~60人が参加する盛況ぶりだった。第2子の出産を経て2020年、今回の「親子で学ぼう!水害・水辺あそびのリスク対策」セミナーを実施。続編として、「秋に親子参加型のLEDランタンづくりと避難生活を学ぶイベントを開催できたら」と考えているそうだ。

「今、子育て世代は大変なことがいっぱいです。仕事・家事・子育てにまつわる悩みは尽きないし、自然災害の増加や世界情勢も心配。さらにコロナ禍もあって…と、前例のない世の中で何が正解か分からず、どうしても不安なことから目を背けたくなるのこともあると思います。でも『起きるはずはない』というバイアスをかけると、いざという時に子どもを守れません。逆に防災や生きる上でのリスクにしっかり向き合うことで、不安が減り、支え合える新たな仲間ができますよ!」

小笠原諸島からも!「オンラインセミナー」に参加してみて

「親子で学ぼう!水害・水辺あそびのリスク対策」セミナーの参加者。顔出しOKの皆さんと記念撮影!「親子で学ぼう!水害・水辺あそびのリスク対策」セミナーの参加者。顔出しOKの皆さんと記念撮影!

コロナ禍の影響で、今回のセミナーはビデオ会議アプリZoomを使って開催された。伊勢市近郊だけでなく、四国地方や小笠原諸島からの参加者もいて、どこからでも参加できるオンラインセミナーの有効性を改めて感じた。

パワーポイントの資料が画面に映し出されるので、会場よりも細かい文字まで見やすく、2時間があっという間。途中、数人ずつに分かれてグループワークができるのも驚いた(主催者がグループを分け、一定時間そのグループだけで会話ができる)。

なかには「家のWi-Fi環境が不安定だった」「子どもの世話をしながらだったので聞き逃した部分もある」という声が聞かれたが、そのあたりをクリアできれば、オンラインセミナーはとても集中できる。全国のセミナーに参加できるのは、アフターコロナのメリットだと感じた。

取材協力/Live!Littles(リブリトルズ)、アウトドア防災ガイド・あんどうりすさん

2020年 07月30日 11時05分