
中古マンションを購入した際に、「今後いつまで住み続けることができるのか」と疑問を感じる人もいるでしょう。マンションの寿命は資産価値にも影響を与えるため、理解を深めておくことが重要です。
この記事では、マンションの耐用年数、築年数との関係など中古マンションの寿命について詳しく解説していきます。
この記事で分かること
- 中古マンションの寿命
- 中古マンションの建物寿命はどのように決まるのか
- 中古マンションの寿命に大きな影響を与える要因
- 築年数別に見た中古マンションの特徴
- 中古マンションの寿命が近づいたときの選択肢
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もくじ
中古マンションの寿命は?何年住めるのか

中古マンションの寿命を理解するためには、まず耐用年数(法定耐用年数)について理解しておく必要があります。
耐用年数とは、建物の性能や資産価値が保たれる期間のことです。建築物には、減価償却する際の指標となる「法定耐用年数」が定められていますが、法定耐用年数と実際の耐用年数(寿命)は異なります。
ここでは、耐用年数について以下の2項目に分けて詳しく解説します。
- 法定耐用年数
- 実際の耐用年数
法定耐用年数
法定耐用年数とは、資産を減価償却するために、法律で定められた期間のことです。法定耐用年数は、建物の構造や用途によって以下のように異なります。
| 構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
| 木造 合成樹脂造 |
住宅用のもの | 22年 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造 鉄筋コンクリート造 |
47年 | |
| れんが造 石造 ブロック造 |
38年 | |
| 金属造(骨格材の肉厚が4mm超) | 38年 | |
| 金属造(骨格材の肉厚が3mm超4mm以下) | 30年 | |
| 金属造(骨格材の肉厚が3mm以下) | 22年 |
たとえば、住宅用かつ鉄骨鉄筋コンクリート造の中古マンションの場合、法定耐用年数は47年です。なお、法定耐用年数は会計上の数字であるため、その年数を過ぎても住み続けることができます。
法定耐用年数は、建物の資産価値が減少する割合を計算するために使われる指標であり、建物の寿命ではないことを理解しておきましょう。
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実際の耐用年数
実際の中古マンションの耐用年数(寿命)は、法定耐用年数よりも長いことが一般的です。
国土交通省の資料(※1)によると、鉄筋コンクリート造の住宅の平均寿命は68年、適切に維持管理されている住宅は100年でも十分住めるとされています。
実際に、日本には築40年以上のマンションが数多く存在します。国土交通省の『築40年以上の分譲マンション数の推移(※2)』によると、築40年以上のマンションは136.9万戸(2023年末時点)で、10年後には約2倍、20年後には約3.4倍まで増加する見込みです。
中古マンションの寿命は、建物の物理的な耐久性だけでなく、さまざまな要因によって影響を受けます。次章では、中古マンションの寿命がどのように決まるのかを詳しく見ていきましょう。
※参考1:中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書取りまとめ後の取組紹介|国土交通省
※参考2:築40年以上の分譲マンション数の推移|国土交通省
中古マンションの建物寿命はどのように決まるのか

ここでは、中古マンションの建物寿命が決まる要因を3つ紹介します。
- 経年劣化による寿命
- 耐震性による寿命
- 経済的な要因による寿命
経年劣化による寿命
一般的に、マンションは時間の経過とともに徐々に劣化していきます。ただし、定期的にメンテナンスを行うことで、劣化を抑えることが可能です。
多くのマンションでは「長期修繕計画」が策定されており、定期的な大規模修繕工事を行うことで、建物の状態を維持しています。
しかし、経年劣化によって修繕箇所が増えてメンテナンス費用が高くなると、入居者の金銭的負担も大きくなります。そうなると、建物の解体や建て替えなどの対策を検討することになるでしょう。
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耐震性による寿命
マンションの寿命を考えるうえで非常に重要な要素の一つが耐震性です。日本は地震大国であり、建物の耐震基準は時代とともに厳しくなりつつあります。
1981年には、建築基準法が改正され新耐震基準が導入されました。導入以前と以後では、建物の耐震性能に以下のような大きな差があります。
| 基準 | 適用時期 | 詳細 |
| 旧耐震基準 | 1981年5月以前 | 震度5強程度の地震でも倒壊しない設計 |
| 新耐震基準 | 1981年6月以降 | 震度6強〜7の地震でも倒壊しない設計 |
旧耐震基準で建てられたマンションは、耐震診断や耐震補強工事を行わない限り、現代の安全基準を満たしていない可能性があります。
耐震性が低ければ、マンションの寿命を縮める要因の一つになり得るでしょう。
経済的な要因による寿命
マンションの寿命は、物理的な要因だけでなく、経済的な要因によっても決まります。
これは「経済的耐用年数」とも呼ばれ、物理的には使えるにもかかわらず、以下のような理由で建て替えや解体が選択されるケースがあります。
- 修繕費用の増加
- 周辺環境や社会情勢の変化
- マンションの市場価値の低減
つまり、マンションが物理的にはまだ住める状態であっても、経済的な理由から寿命が尽きたと判断されることがあります。
これらの要因から分かるように、中古マンションの寿命は一律に決まるものではなく、さまざまな要因が絡み合っています。
中古マンションの寿命に大きな影響を与える要因

ここでは、中古マンションの寿命に大きな影響を与える要因を4つ紹介します。
- 建物の構造・工法
- 管理・修繕状況
- 立地条件
- 居住者・管理組合の意識
建物の構造・工法
中古マンションの主な構造は以下の3種類です。
- 鉄骨造(S造)
- 鉄筋コンクリート造(RC造)
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
強度は鉄骨鉄筋コンクリート造が最も高く、次いで鉄筋コンクリート造、鉄骨造の順番となっています。
なお、同じ構造でも施工の品質によって耐久性は大きく異なります。コンクリートの質や施工精度に問題があると、寿命も短くなるでしょう。また、旧耐震基準で建てられた1981年以前のマンションは、耐震性が低い傾向にあります。
建物の構造や工法は建設時に決まり、後から改善することは難しいためマンションの寿命に大きな影響を与えるといえるでしょう。
管理・修繕状況
たとえ強固な構造や工法でマンションが建てられても、適切な管理や修繕が行われなければ、寿命は短くなります。
定期的に点検や修繕を行うことで、劣化の早期発見と対策につなげることができるため、マンションの寿命を延ばすことが可能です。
マンションの管理・修繕状況を把握するには、以下の点を確認しましょう。
- 大規模修繕工事が実施されているか
- 適切に長期修繕計画が策定されているか
- 修繕積立金が確保されているか
- 日常的に清掃されているか
- 定期的に設備が点検されているか
管理がしっかりしているマンションと放置されているマンションでは、同じ築年数でも建物の状態に大きな差が生じます。
良好な管理と修繕が維持されているマンションは、建物の寿命も長いといえるでしょう。
立地条件
マンションの立地条件も、寿命に影響を与える重要な要素です。
たとえば、軟弱地盤や埋立地に建てられたマンションは、地震の際の液状化リスクが高く、建物にダメージを与えやすいでしょう。海に近いマンションは、塩害の影響を受けやすく、鉄筋の腐食が進みやすい傾向にあります。
他にも、台風が多い地域のマンションは外壁が損傷しやすくなります。立地条件は後から変えられないため、中古マンション購入時に考慮しなければなりません。
立地条件が良いマンションは物理的な寿命だけでなく、資産価値の面でも優位に働くでしょう。
居住者・管理組合の意識
マンションは区分所有であるため、居住者や管理組合の意識もマンションの寿命に大きく影響します。
将来の大規模修繕に備えて十分な積立金を確保しているかや、管理組合が積極的に活動しているかなど、マンション維持に対する意識が寿命に影響します。
居住者の意識や管理組合の機能が低いと、必要な修繕が先送りされやすくなり、マンションの寿命を縮める可能性が高くなるでしょう。
築年数別に見た中古マンションの特徴

中古マンションは、築年数によって特徴が大きく異なります。ここでは、築年数別の特徴とどのような人に向いているかを以下の順に解説します。
- 築10年の中古マンション
- 築20年の中古マンション
- 築30年の中古マンション
- 築40年以上の中古マンション
築10年の中古マンション
築10年の中古マンションは比較的新しく、設備の劣化も少ないため、そのまま住めることが多いといえます。多くの場合、現在の耐震基準や省エネ基準を満たしており、性能面でも安心できるでしょう。
築10年のマンションは新築マンションよりも価格が安く、以下のような人に向いています。
- 新築並みの住宅性能を求めつつも価格を抑えたい人
- リフォームの手間をかけずにすぐに住みたい人
新築に近い住み心地を求めつつも、価格を少しでも抑えたいという人にはおすすめと言えるでしょう。
築20年の中古マンション
築20年の中古マンションは、コストパフォーマンスが優れている物件が多いのが特徴です。
キッチンやユニットバスなど、水まわり設備の耐用年数は20年前後が多く、リフォームが必要になったり、リフォーム済みで売り出されたりしているケースが多い傾向にあります。
築20年の中古マンションは、以下のような人に向いています。
- 価格と住宅性能のバランスを重視する人
- ある程度のリフォーム費用を想定できる人
- 自分好みにリフォームしたい人*
築20年のマンションは、価格が割安で大規模修繕も1回終えている可能性が高いため、比較的住み心地は良いでしょう。ただし、水まわり設備の交換時期にあたるため、キッチンやバスルームなどのリフォームを許容できる人にはおすすめです。
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築30年の中古マンション
築30年の中古マンションは、価格がほぼ底値になるため、予算を抑えて良い立地の物件を探している人には魅力的と言えます。築30年の中古マンションは、大規模修繕工事が2回完了しているケースが多く、外壁やエントランスがきれいなマンションもあります。
ただし、設備の老朽化が進んでいるため、リフォーム歴がなければフルリノベーションを前提に考えると良いでしょう。
なお、築年数が経過しているため、修繕積立金の積立状況も重要なチェックポイントになります。築30年の中古マンションは、以下のような人に向いています。
- 価格の安さを最優先する人
- フルリノベーションを前提に購入を考えている人
大規模修繕工事が適切に行われていないと、修繕箇所が増え、修繕積立金の値上げや一時金の徴収などが発生する可能性があります。管理組合に修繕計画や大規模修繕工事の履歴などを確認し、管理が適切に行われているかを確認しましょう。
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築40年以上の中古マンション
築40年以上の中古マンションは、立地や管理状態によっては価値を維持しているケースがあります。人気の高いエリアでも、低価格で購入できる可能性が高い点がメリットです。
1981年以前に建てられたマンションは旧耐震基準のため、耐震性が低い可能性があります。また、給排水管などの設備は、全面的に修繕する必要があるでしょう。
築40年以上の中古マンションは、以下のような人に向いています。
- 好立地の物件を最安で手に入れたい人
- 建て替えやリノベーションを前提に考えている人
- マンションの管理状態や修繕履歴などを詳しく調査できる人
建物の状態や管理組合の運営状況など、詳しく調査したうえで購入を判断しましょう。
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中古マンションの寿命が近づいたときの選択肢

中古マンションの寿命が近づいたときの選択肢は、主に以下の4つです。
- マンションを修繕して住み続ける
- マンションを建て替える
- マンションを解体・取り壊す
- マンションを売却する
マンションを修繕して住み続ける
マンションの寿命が近づいても、修繕を行うことで住み続けることができる場合があります。引越しの手間や費用がかからず、愛着のある住まいに住み続けられますが、根本的には解決しません。
マンションを修繕して住み続ける際は、長期修繕計画を見直し、今後必要となる修繕費用を計画的に積み立てておく必要があります。
マンションを建て替える
マンションの老朽化が著しかったり、耐震性に問題がある場合の選択肢の一つに建て替えがあります。
マンションを建て替えることで、最新の設備を導入でき、耐震基準を満たした快適な住まいが手に入るでしょう。ただし、建て替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が求められ、高額な建て替え費用が必要です。
国土交通省の『マンション建替え等の実施状況』によると、建て替え実績は累計297件(約2.4万戸)で、マンションストック数のわずか約0.3%程度です(2024年4月1日時点)。
建て替え中は仮住まいも必要になるため、ハードルが高いといえるでしょう。
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マンションを解体・取り壊す
マンションを建て替えるのではなく、単に解体して更地にする選択肢もあります。マンションを解体・取り壊すだけであれば、建て替えほど費用はかかりません。
マンションの解体は、建て替えと同様に区分所有者の5分の4以上の賛成が必要です。マンションの解体を選ぶ際は、解体後の土地活用についても検討しておきましょう。
マンションを売却する
寿命が近づいたマンションに住み続けることが不安な場合、売却する選択肢もあります。マンションを売却すれば、老朽化や修繕費用の問題から解放され、まとまった資金を得ることが可能です。
ただし、築年数が経過していると、売却価格が低くなりやすく、買主が見つかりにくい可能性があります。マンションを少しでも高く売却するには、複数の不動産会社に査定を依頼して、適正な価格を把握することが重要です。
複数の不動産会社に一括で査定を依頼したい人は、ホームズの一括査定がおすすめです。ホームズでは、各社の強みや特徴を細かくチェックでき、自分にあった最適な不動産会社を選びやすいため、後悔するリスクも減らせます。
中古マンションの寿命に関するよくある質問

ここでは、中古マンションの寿命に関するよくある質問を3つ紹介します。
- 築40年のマンションはあと何年住める?
- 中古マンションの耐用年数が過ぎたら資産価値はゼロになる?
- 中古マンションの築年数の狙い目は?
築40年のマンションはあと何年住める?
築40年のマンションにあと何年住めるかは、構造や管理状態によって大きく異なります。鉄筋コンクリート造のマンションは、適切に管理されていれば、あと30〜60年程度住める可能性があります。
ただし、1981年以前の旧耐震基準のマンションは耐震性が低いため、耐震診断などを行い、建物の状況を確認しておきましょう。
中古マンションの耐用年数が過ぎたら資産価値はゼロになる?
中古マンションの法定耐用年数を過ぎても、マンションの資産価値はゼロにはなりません。
なぜなら、法定耐用年数は税法上の減価償却期間であり、実際の寿命や資産価値とは直接関係がないからです。
マンションの資産価値は、立地条件や周辺環境などさまざまな要因で判断されるため、耐用年数ではなく売却相場などで算出しましょう。
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中古マンションの築年数の狙い目は?
中古マンションの築年数の狙い目は、購入目的や予算によって異なるものの、以下の理由で築20年頃が「狙い目」とされています。
- 価値の下落が安定するため
- 新耐震基準に適合しているため
- 立地の良い物件が多いため
価格と性能のバランスを重視する人にとっては、築20年の中古マンションが魅力的な選択肢となっています。
なお、最終的には築年数だけでなく、立地・管理状態・修繕積立金の積立状況など総合的に判断し、自分に最適なマンションを選ぶことが大切です。
中古マンションの寿命が決まるのは耐用年数だけではない
一般的に中古マンションの寿命は法定耐用年数よりも長く、適切に管理されていれば100年近く住める可能性があります。
マンションの寿命は、経年劣化や耐震性、経済的要因などさまざまな要素で決まります。寿命が近づいた場合は、売却して新しい住まいへの引越しも選択肢の1つです。複数の不動産会社に査定を依頼し、比較検討するようにしましょう。
ホームズの一括査定は、全国4,500社以上(2025年4月時点)の提携している不動産会社から、査定を依頼する会社を選べます。不動産会社の特徴や強みなども細かく確認でき、自分にあった不動産会社に売却を任せられます。
記事執筆・監修
矢野 秀一郎(やの しゅういちろう)
不動産会社で2社勤務。1社目では時間貸駐車場の開発営業を中心に携わり、2社目では不動産売買の仲介営業や、一戸建ての分譲工事のプロジェクト、および新築・リフォーム工事の現場監督など、幅広く業務を担当。現在はフリーのライターとして不動産や金融に関する内容を中心にライティング・記事監修を実施。