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マンションの大規模修繕とは?工事の種類や費用相場について解説

マンションの居住環境や資産価値を長期的に維持し、高めていくには適切な時期にマンションの大規模修繕工事を実施する必要があります。

大規模修繕工事は、マンションの管理組合が主体となって行います。

この記事では、マンションの大規模修繕について、工事内容や費用相場などを解説します。

大規模修繕工事による生活への影響についても紹介するので、これからマンションを購入する人や、大規模修繕工事を控えている人は、ぜひ参考にしてください。

この記事で分かること

  • マンションの大規模修繕工事の主な種類
  • マンションの大規模修繕工事にかかる費用相場
  • マンションの大規模修繕工事の一般的な流れ
  • マンションの大規模修繕工事による生活への影響
  • マンションの大規模修繕工事でよくあるトラブル事例
  • マンションの大規模修繕工事を進める際の注意点

【あわせて読みたい】
▶︎マンション売却の注意点は?売却方法や流れ・費用についても解説

マンションの大規模修繕工事とは?

マンションの大規模修繕工事とは、建物や設備などの経年劣化にあわせて計画的、かつまとめて実施する大規模な工事のことを指します。

大規模修繕工事は基本的に、管理組合が主体となって実施するのが特徴です。

ここでは、マンションの大規模修繕工事の概要について詳しく見ていきましょう。

  • 大規模修繕工事が必要な理由
  • 大規模修繕工事にかかる期間
  • 修繕と改修の違い

大規模修繕工事が必要な理由

マンションは年数の経過に伴い建物の内外が劣化するため、一定の周期を迎えると大規模修繕が必要となります。大規模修繕の平均周期は12〜15年が一般的です。

経年劣化により傷んだ箇所を修繕することで快適な居住性を取り戻すと同時に、外壁タイルの剥がれ落ちなどを防止することで居住者や近隣に住む人の安全を確保します。

建物や設備の劣化を修復することでマンションの資産価値を維持することも可能です。

築年数が経過しても大規模修繕が実施されたマンションは、外観の美しさや性能面が優れているため、実施前より資産価値が高まる可能性もあります。

なお、中古マンションの売買時には、大規模修繕の有無や内容などを重要事項説明で告知することが義務付けられています。

※参考:令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査|国土交通省 P10

大規模修繕工事にかかる期間

大規模修繕工事にかかる期間は、マンションの規模や形状により違いがあります。

50戸以下の小規模なマンションは3〜4ヶ月、50〜100戸以上の中規模なマンションは4〜6ヶ月、100戸以上の大規模なマンションは6ヶ月から1年以上が一般的です。

規模が大きくなるほど管理組合員の数が多くなるため、合意形成に時間がかかり、修繕箇所が多いため工事期間も長くなります。

修繕と改修の違い

大規模修繕では修繕と改修の工事を同時に行うことがありますが、修繕と改修では工事内容に以下のような違いがあります。

【修繕と改修の違い】

工事名 工事内容
修繕 ● 経年劣化などにより不具合が発生した箇所を修理する
● 建設当初の水準に戻す
改修 ● マンションの性能をグレードアップする
● 改修前より高い性能を実現させる

上記のように、修繕は建物を建設当初の水準に戻すことが目的ですが、改修は建設初期より高い性能を実現し、さらに快適な住環境に仕上げることを意味します。

マンションの大規模修繕工事の主な種類

マンションを大規模に修繕する際は、主に屋根や外壁、床などの構造部分を修繕します。 ここでは、マンションの大規模修繕工事の主な種類と修繕周期について解説します。

  • 外壁塗装工事
  • 屋根・屋上工事
  • 床防水工事
  • 給水設備工事
  • 板金工事
  • その他

外壁塗装工事

外壁塗装工事は一般的に、以下の周期で行います。

工事名 修繕周期
躯体コンクリート補修 補修:12〜15年
外壁塗装 塗替:12〜15年

※参考:大規模修繕の手引き(P32)|住宅金融支援機構

コンクリート躯体(くたい)にひび割れなどが発生すると、コンクリートが剥がれて落下したり、建物躯体の強度が低下したりするおそれがあります。ひび割れなどを発見したら、早期に修繕しなければなりません。

コンクリート躯体の修繕工事では、ひび割れた部分にエポキシ樹脂を注入する方法などがあります。

屋根・屋上工事

屋根・屋上工事にかかる修繕周期は、一般的に以下のとおりです。

工事名 修繕周期
屋上防水(保護・露出) 補修・修繕:12〜15年
撤去・新設:24〜30年
傾斜屋根 補修・修繕:12〜15年
撤去・新設:24〜30年
庇・笠木などの防水 修繕:12〜15年

※参考:大規模修繕の手引き(P28)|住宅金融支援機構

屋根や屋上は、直射日光や風などにより厳しい環境にさらされる部位です。そのため、雨漏りが発生していなくても、ひび割れなどがないか定期的に確認することが必要です。

修繕工事の種類には、アスファルトシートを熱で溶かしながら貼り重ねて防水層を作るアスファルト防水などがあります。

床防水工事

床防水工事にかかる修繕周期は、一般的に以下のとおりです。

工事名 修繕周期
バルコニー床防水 修繕:12〜15年
開放廊下・階段などの床防水 修繕:12〜15年

※参考:大規模修繕の手引き(P30)|住宅金融支援機構

バルコニーや廊下、階段などの日差しや風雨が直接当たる場所は、屋根と同じように劣化スピードが速い部位です。

床が滑りやすいと居住者がケガをするリスクがあるため、不具合が発生した際はその都度、補修などをする必要があります。

劣化した防水層を修繕する工事が基本であり、具体的には床面にウレタン塗膜防水材などを使用して施工します。

給水設備工事

給水設備の修繕工事は、一般的に以下の周期で行われます。

工事名 修繕周期
給水管 更生:19〜23年
取替:30〜40年
貯水槽 補修:12〜16年
取替:26〜30年
給水ポンプ 補修:5〜8年
取替:14〜18年

※参考:大規模修繕の手引き(P38)|住宅金融支援機構

給水管の劣化は、配管の種類などによって修繕周期に違いがあります。鋼製の給水管は腐食しやすく、赤い水が排出される場合は健康被害につながる可能性もあるため注意が必要です。

住戸内専用の給水管の取替え工事は、主に「隠蔽(いんぺい)工法」と「露出工法」の2種類です。隠蔽工法は配管が内部に隠されるため美観が良いですが、床や壁を解体した後の復旧作業を行うため工事費用が高くなります。

板金工事

建具・金物など板金工事の修繕周期は、一般的に以下のとおりです。

工事名 修繕周期
建具関係(玄関ドアなど) 点検・調整:12〜15年
取替:34〜38年
手すり 取替:34〜38年
屋外鉄骨階段 補修:12〜15年
取替:34〜38年
集合郵便受けなど 取替:24〜28年
メーターボックス扉など 取替:34〜38年

※参考:大規模修繕の手引き(P36)|住宅金融支援機構

玄関ドアやサッシは日常的に使用するため、振動や腐食などで隙間が生じたり開閉がしにくくなったりするケースがあります。

手すりがぐらつくと、転落事故につながるおそれがあるので注意が必要です。

玄関ドアやサッシの取替え工事を行う場合は、「カバー工法」や「持出し工法」などさまざまな工法があります。

それぞれ費用が異なるため、居住者の意見も聞きながら資金計画に合った方法を選ぶようにしましょう。

その他

その他の主な修繕工事と周期は、一般的に以下のとおりです。

工事名 修繕周期
ガス管 取替:28〜32年
空調・換気設備 取替:13〜17年
電灯設備 取替:18〜22年
インターホン設備 取替:15〜20年
屋内消火栓設備 取替:23〜27年
機械式駐車場 補修:5年
取替:18〜22年

※参考:大規模修繕の手引き(P42)|住宅金融支援機構

ガス管や空調・換気設備、電灯設備などは経年劣化により動作不良が発生します。故障した時点で修理しますが、各設備は耐用年数を迎えた時点で取り替えるのが一般的です。

状況に合わせて、防犯カメラやインターネット設備、宅配ボックスなどの設置も検討する必要があります。

マンションの大規模修繕工事にかかる費用相場

国土交通省のデータによれば、マンションの大規模修繕工事にかかる工事費用は、1戸あたり100〜125万円が最も多く、次に75〜100万円、125〜150万と続いています。

工事回数別では、1回目の大規模修繕では1戸あたり100〜125万円、2回目は75〜100万円、100〜125万円、 3回目以上は75〜100万円という結果でした。

したがって、1戸あたりの修繕費用が100万円かかるとし、マンションの規模別に分けると大規模修繕費用の目安は下表のようになります。

【マンションの規模別:大規模修繕費用の目安】

マンションの戸数(戸) 大規模修繕費用の目安
30 3,000万円
50 5,000万円
100 1億円
200 2億円

※参考:令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査(P14)|国土交通省

マンションの規模が大きいほど大規模修繕工事にかかる費用も高くなるため、日頃から修繕積立金を積み立てておくことが必要です。

大規模修繕工事にかかる費用の内訳

大規模修繕工事にかかる費用の内訳は、主に以下のとおりです。

【大規模修繕にかかる工事費用の内訳】

工事の種類 全体の費用に占める割合(%)
建築系工事 60.3
仮設工事 22.8
諸経費 10.3
設備系工事 1.6
外構・附属施設 1.3
その他 3.8

※参考:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査について(概要)|国土交通省

上記の表によると、大規模修繕にかかる工事費用の内訳で最も多いのは「建築系工事」で全体の6割を占めています。次に多いのは足場などの仮設工事で全体の2割程度です。

建築系工事の費用割合はこちらです。

【建築系工事の費用割合】

工事の種類 全体の費用に占める割合(%)
外壁塗装(外壁) 24.5
床防水(防水) 18.6
屋根防水(防水) 13.4
外壁タイル(外壁) 12.9
外構・附属施設 1.3
シーリング工事 12.0
鉄部等塗装 7.4
建具・金物 7.4
共用内部 3.7

※参考:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査について(概要)|国土交通省

建築系工事の費用割合で最も多いのは外壁塗装で24.5%です。次は、床防水(18.6%)、屋根防水の13.4%、外壁タイルの12.9%と続いています。

建築系工事は外壁工事と防水工事が主体であり、外壁工事は全体の37.4%、防水工事は32%で、外壁工事が全体の約4割近くを占めていることが分かりました。

マンションの大規模修繕工事の一般的な流れ

マンションの大規模修繕工事は、以下の流れで実施されるのが一般的です。

  • STEP1.仮設工事
  • STEP2.下地補修工事
  • STEP3.タイル補修工事
  • STEP4.シーリング工事
  • STEP5.塗装工事
  • STEP6.鉄部塗装工事
  • STEP7.クリーニング工事
  • STEP8.防水工事
  • STEP9.改修工事

STEP1.仮設工事

マンションの大規模修繕工事は、まず仮設工事を行います。足場の設置や仮設事務所、仮設トイレなどを設置する工事です。

マンションの外周に枠組み足場をかけることで高所での作業が可能になります。飛散防止ネットで建物を覆い、周辺に塗料などが飛散しないようにすることも必要です。

足場は修繕で欠かせない工事ですが、設置・解体時に出る騒音で近隣に迷惑をかける場合があるため対策が必要になります。

STEP2.下地補修工事

次に、外壁の下地補修工事を行います。下地補修工事とは、外壁の塗装前にコンクリートやモルタルのひび割れや傷などを補修する工事のことです。

外壁の塗装工事を行う際は、塗装前に下地補修工事を施工することになります。

下地補修工事をすることで塗装後のマンションの外観が良くなり、建物の強度を高められるため、外壁の修繕には欠かせない工事です。

STEP3.タイル補修工事

外壁がタイルの場合は、タイル補修工事が必要です。外壁タイルは直射日光や風雨などで劣化が進むため、大規模修繕では補修工事をすることになります。

補修しないで放置していると剥がれ落ちて通行人などがケガをするおそれがあるため、安全を保つために必要な工事です。

タイルに浮き・剥がれなどが見られる場合は大規模修繕の際に必ず補修工事をしましょう。

STEP4.シーリング工事

マンションの大規模修繕ではシーリング工事も行います。シーリング工事とは、外壁タイルの目地や外壁ボードのつなぎ目、窓サッシと外壁のすき間などをシーリング剤で埋める工事です。

別名、”コーキング工事”とも呼ばれ、外壁ボードや窓のサッシなどの取合い部分に行うことで雨水の侵入を防ぎ、地震による被害を軽減してくれる効果もあります。

シーリングの劣化が激しい場合はシーリングを一度全て剥がして、新しいシーリングを打ち込む打ち替え工事を行います。

STEP5.塗装工事

下地の補修工事などが完了したら、塗装工事に入ります。塗装は建物の美観の向上だけでなく、コンクリートの中性化防止により軀体を保護することが目的です。

代表的な塗装の種類や特徴、耐用年数の違いは以下のとおりです。

【代表的な塗装の種類・特徴・耐用年数】

塗装の種類 特徴 耐用年数
アクリル塗装 ● 安価で発色がよい
● 付着力が強く重ね塗りがしやすい
5年~7年
ウレタン塗装 ● アクリルの次に安価
● 光沢感があり、ヒビが発生しにくい
8年~10年
シリコン塗装 ● 現在、最も多く使われている
● 汚れをはじき紫外線に強い
10年~15年
フッ素塗装 ● 汚れや紫外線に強く、カビや藻が発生しにくい
● 価格は最も高い
15年~20年

大規模修繕の予算にあわせて、塗装の種類を選びましょう。

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▶︎マンションの耐用年数は何年?何年住めるのかや寿命に影響する要素も

STEP6.鉄部塗装工事

外壁など建物本体の塗装が終わった後は、鉄部塗装工事を実施します。

鉄部塗装を行う主な箇所は、鋼製のエレベーターや玄関のドア・枠、鉄製の手すり、メーターボックス、鉄製の非常階段などです。

塗装の剥がれを整え美観を良くするとともに、錆による劣化を防ぎます。 鉄部塗装工事は4工程で行われ、以下の順で行われます。

  1. ケレン(さび落とし)
  2. 下塗り(さび止め用の塗料を下塗り)
  3. 中塗り(下地を保護する塗料を塗る)
  4. 上塗り(さらに上から塗料を塗る)

塗料の耐久年数は、大規模修繕工事のサイクルに合わせます。

STEP7.クリーニング工事

修繕工事が一通り完了したら行うのがクリーニング工事です。外壁洗浄工事を行う際は、高圧洗浄機や薬剤を使用して汚れた部分を洗い落とします。

高圧水洗浄をするときは高圧洗浄車という専用の車からホースを伸ばし、強い水圧で一気に洗浄します。タイル貼りの場合はさらに薬剤による洗浄も行うのが一般的です。

高圧水洗浄によって、汚れが落ち切れていない場所をきれいにします。

外壁のクリーニング工事では外壁を機械で洗浄するため、通行人に汚れが飛散しないように通行制限を設ける場合があります。

STEP8.防水工事

マンションの大規模修繕工事では、屋根や屋上、バルコニーなどの防水工事を行います。 屋根や屋上は日光や風雨などにさらされるため、劣化が進みやすい場所です。

屋上防水には、主に以下の4種類があります。

防水の種類 特徴 耐用年数
ウレタン防水 ● ウレタン樹脂を活用して防水層を形成
● 価格が安い
約10年〜12年
シート防水 ● ゴムや塩化ビニール製の防水シートを下地に敷いて防水層を作成
● 費用が安い
約10年〜15年
アスファルト防水 ● 液状の溶解アスファルトとアスファルトシートを組み合わせて防水層を作る
● 費用が高い
約15年〜20年
FRP防水 ● ガラス繊維でできたマット上からポリエステル樹脂を塗装する
● 費用が高い
約10年〜15年程度

防水の種類によって価格や耐用年数などが異なるので、予算に合った施工方法を選ぶことが重要です。

STEP9.改修工事

さらに快適な居住性を実現するためには、修繕工事だけでなく改修工事も行う場合があります。マンションの性能をグレードアップすることで資産価値を高めることが可能です。

例えば、共用部分をバリアフリーにしたり、セキュリティ性を高めたりする工事が挙げられます。状況に応じて、耐震性を高めるケースもあります。

また、宅配ボックスや共用倉庫、ラウンジなどを新設するといった選択肢もあります。

マンションの大規模修繕工事による生活への影響

マンションの大規模修繕は大掛かりな工事であるため、実施中は居住者の生活にも以下のような影響を与える場合があります。

  • ベランダ・バルコニーの使用制限
  • エントランス・共用部分の通行制限
  • 騒音・振動の問題
  • プライバシーの問題
  • 塗料や工事による悪臭・粉塵

ベランダ・バルコニーの使用制限

マンションの大規模修繕工事では、ベランダやバルコニーの使用が制限される場合があります。ベランダに置いてあるものを片付ける必要があり、洗濯物を干すこともできません。

こうした制限は、足場の設置や塗装・防水工事の影響があるためです。高所への作業のためベランダに足場をかけることに伴って、使用不可となります。

塗装工事や防水工事を行った後は、施工箇所を乾かすために立ち入りが制限される点に注意しましょう。

エントランス・共用部分の通行制限

大規模修繕工事中は、エントランスや共用部分も通行制限されるケースがあります。

例えば、エレベーターが一定期間使用できなかったり、共用の外廊下の一部が通れなかったりする可能性が考えられます。

上層階に住む人は階段の上り下りで、心身に負担がかかるでしょう。駐車場が利用制限される場合もあり、何かと日常生活に支障をきたしやすいといえます。

騒音・振動の問題

工事期間中は騒音・振動に悩まされることも少なくありません。例えば、足場を設置・解体する際には大きな金属音や振動が発生します。

外壁補修工事では電動工具を使って施工するためコンクリートを削る音が響き渡り、イライラすることもあるでしょう。

少しでもストレスを減らすためには、居住者から許可を得た時間帯に工事を行うことが必要です。

プライバシーの問題

大規模修繕時には多くの作業員がマンション内を出入りするため、プライバシーが侵害されているように感じやすい点もデメリットです。

例えば、足場はベランダにかけられるため、外から室内が見えることも考えられます。家族間で話す声が聞こえてしまうこともあります。

作業員が窓の外にいるときは、カーテンを閉めたままになる場合も多く、気分的に落ち着かない可能性があります。

塗料や工事による悪臭・粉塵

マンションの大規模修繕工事で悩ましいのが、塗料や工事による悪臭・粉塵などです。

工事では外壁や玄関ドアなどの塗装が行われるため、臭いに敏感な人は塗料の臭気で体調不良を引き起こすケースもあります。

また、粉塵を吸うと健康被害を起こしやすいので、拡散しないよう作業環境に注意することが必要です。

マンションの大規模修繕工事でよくあるトラブル事例

マンションの大規模修繕工事は工事規模が大きいため、以下のようなトラブルが発生するケースがあります。

  • 管理組合で大規模修繕の知識がない人が多かった
  • 管理組合で意見がまとまらなかった
  • 修繕後の仕上がりがイメージと異なっていた
  • 施工箇所が増えて追加費用がかかってしまった

管理組合で大規模修繕の知識がない人が多かった

マンションの大規模修繕工事は管理組合での話し合いをもとに進めていきますが、大規模修繕の知識がない人が多いと予期せぬトラブルが発生することがあります。

管理組合の組合員はマンションの区分所有者であるため、専門的な知識を持つ人は少ないのが一般的です。

大規模修繕工事を実施する周期や回数は明確なルールがないため、管理組合員同士での話し合いで決めることになります。大規模修繕の知識がない人が多いと修繕周期や工事内容が分からないため、適切な大規模修繕を実施できない可能性があります。

専門的な知識を得たい場合は、大規模修繕工事のコンサルタントなどにアドバイスを受けるのも一つの方法です。

管理組合で意見がまとまらなかった

大規模修繕の内容について、管理組合で意見がまとまらないケースも少なくありません。

理由として、全員で集まる時間がなかなか取れない、あるいは大規模修繕工事に関する専門知識を持つ人が少ないことなどが挙げられます。

協議しても話が進まない場合は、専門知識のある第三者の介入も視野に入れましょう。

修繕後の仕上がりがイメージと異なっていた

マンション修繕後の仕上がりがイメージと異なる場合もあります。例えば、外壁の色が見本で確認した色と異なっていたようなケースです。

修繕工事で塗料を塗った時とサンプル見本では発色が異なる場合もあるため、日光の当たる場所で実際に施工する場所で確認すると良いでしょう。

施工箇所が増えて追加費用がかかってしまった

当初の計画より施工箇所が増え、追加費用がかかってしまうトラブルもあります。修繕していくうちに新たな不具合が発見されて、追加工事が必要になったケースなどです。

追加費用を請求されたときのために、あらかじめ見積額の5〜10%を予備費用として用意しておくと安心です。

マンションの大規模修繕工事を進める際の注意点

マンションの大規模修繕工事を実施する際には、トラブルを避けるためにも以下の注意点を押さえておきましょう。

  • 施工時の不具合を見落とさない
  • 修繕積立金=大規模修繕にかかる費用ではない
  • 住民の合意形成をしっかり行う

施工時の不具合を見落とさない

最初に挙げられるのは、施工時の不具合を見落とさないことです。 大規模修繕工事で、施工時の不具合が見つかるケースも少なくありません。

施工後に問題が発生しないためにも、計画通りに施工が正しく行われているかを確認するようにしましょう。

工事を依頼する際には、信頼できる建築会社を選ぶ必要があります。瑕疵保険に加入済みの会社ならば安心して任せられます。

修繕積立金=大規模修繕にかかる費用ではない

修繕積立金=大規模修繕にかかる費用ではないことも注意したいポイントです。修繕積立金があるからといって、1回の修繕で全て使い切らないようにすることが大切です。

1回目の修繕時には、今まで貯めておいた積立金が多くありますが、2回目以降の修繕では残高が少なくなってしまうことも考えられます。

2回目以降の修繕も問題なく行えるように、1回目の修繕費用を正しく積算することが重要です。

住民の合意形成をしっかり行う

マンションの大規模修繕工事では、住民の合意形成をしっかり行うことが重要です。

大規模修繕は組合員が費用を分担するものであり、日常生活にも大きな影響を及ぼすため、住民全体が納得する内容で合意することが必要となります。

情報は必ず全員が把握し、時間がかかったとしても円滑に合意形成を行うことが重要です。

マンションの大規模修繕工事に関するよくある質問

ここでは、マンションの大規模修繕工事に関するよくある質問を紹介します。

  • マンションの大規模修繕工事は何年ごとに実施される?
  • マンションが大規模修繕工事中の過ごし方は?
  • マンションの大規模修繕工事費用が払えないとどうなる?

マンションの大規模修繕工事は何年ごとに実施される?

国土交通省がまとめた「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、修繕期間で最も多いのは13年で、12年〜15年周期で実施するマンションが全体の約7割です。

したがって、12年〜15年に一度の割合で実施されるケースが多いといえます。

※参考:令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査(P10)|国土交通省

マンションが大規模修繕工事中の過ごし方は?

マンションの大規模修繕工事中は騒音や臭気、作業員の移動などで通常の日常生活が送れない可能性があります。

少しでもストレスを緩和するためには、以下のような過ごし方を意識してみましょう。

  • 防音対策として耳栓や防音カーテンを使用する
  • 気分転換にカフェや公園など静かな場所へ避難する
  • 空気質の改善として空気清浄機を活用する
  • 目隠しフィルムでプライバシーを確保する

生活の質を保ちながら、心身ともに健やかに過ごすことができるように工夫すると良いでしょう。

マンションの大規模修繕工事費用が払えないとどうなる?

マンションの大規模修繕工事費用(修繕積立金)が払えないと、管理組合から督促を受けます。

放置すると差し押さえや競売にかけられ、強制的にマンションを失う可能性もあるため注意が必要です。修繕積立金の支払いが困難な場合は、管理組合に相談して対策を講じましょう。

マンションの大規模修繕工事は費用相場と管理規約の確認が重要

マンションの大規模修繕は管理組合が主体で進め、12〜15年に一度の割合で実施されるのが一般的です。修繕工事中は日常生活に支障をきたす可能性があるため、ストレスを軽減するための工夫も必要になります。

マンションの大規模修繕工事を実施する際は、費用相場だけでなく管理規約などを確認してから行うようにしましょう。管理組合に許可を得てから工事を実施することになります。

記事執筆・監修

矢口 美加子(やぐち みかこ)

宅地建物取引士整理収納アドバイザー1級福祉住環境コーディネーター2級の資格を保有。建築・不動産会社で事務をしながら、家族が所有する賃貸物件の契約や更新業務を担当。不動産ライターとしてハウスメーカー、不動産会社など一部上場企業の案件を中心に活動中。