
不動産を売買するうえで理解しておきたいのが瑕疵(かし)です。
瑕疵は取引後に発覚することもあり、契約解除や損害賠償に発展するケースも少なくありません。2020年の民法改正により瑕疵担保責任は契約不適合責任に改められ、売主が負う責任はさらに広がりました。売却を検討している人にとっては、正確な知識と対策が不可欠です。
この記事では、不動産取引における瑕疵の種類や具体的なトラブル事例、契約不適合責任の効力、住宅瑕疵担保履行法、トラブルを少しでも避けるポイントについて解説します。
売主・買主双方が安心できる取引を実現するためにも、基礎知識を押さえておきましょう。
この記事で分かること
- 不動産の瑕疵とは?
- 不動産取引における瑕疵の種類
- 不動産の瑕疵に関するトラブル事例
- 不動産の瑕疵による契約不適合責任の効力
- 住宅瑕疵担保履行法の概要
- 不動産の瑕疵によるトラブルを少しでも避けるポイント
もくじ
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不動産の瑕疵とは?
不動産における瑕疵とは、土地や建物に不具合があり、本来の役割や性能を十分に果たしていない状態を指します。
法律上、明確な定義は設けられていませんが、民法や判例を通じて取引の前提とされる性質や品質を欠いている場合と理解されています。
瑕疵には、雨漏りやシロアリ被害などの物理的欠陥だけでなく、心理的・法律的・環境的要因も含まれます。
ここでは、以下の2つのポイントに分けて不動産の瑕疵について解説します。
- 瑕疵に関連する民法上の規定
- 瑕疵と契約不適合責任の関連性
瑕疵に関連する民法上の規定
民法の条文には、「瑕疵」という用語の明確な定義は存在しません。とはいえ、契約の有効性や取引の安全を守るため、複数の条文で欠陥に関連する規定が設けられています。
重要なのは、瑕疵がどこに生じるかによって当事者が負う責任や救済の手段が大きく異なる点です。
なかでも、不動産取引においては物件そのものに欠陥がある場合の契約不適合責任が中心的な論点となり、売主にとってリスク管理の要になります。
以下に、瑕疵に関連する代表的な規定を整理しました。
| 類型 | 該当条文 | 内容・説明 |
| 意思表示の瑕疵 | 民法95条・96条 | 錯誤・詐欺・強迫によって意思表示自体に欠陥がある場合、契約を取り消すことができる |
| 代理行為の瑕疵 | 民法101条 | 代理人の意思表示に瑕疵があると、本人もその効果を受ける |
| 占有の瑕疵 | 民法190条 | 暴力や隠匿など不正手段による占有は瑕疵ある占有とされ、時効取得などに制限がかかる |
| 目的物の瑕疵(契約不適合責任) | 民法562条〜564条 | 引渡された物件に欠陥がある場合、買主は修補・代替物請求・代金減額・損害賠償・契約解除を行える |
| 土地工作物の瑕疵 | 民法717条 | 建物や塀などに欠陥があり他人に損害を与えた場合、所有者が原則として賠償責任を負う |
特に不動産売買では、目的物に直接関わる契約不適合責任が最も実務に直結するため、売主にとっては事前の調査や、買主に対しての適切な告知が不可欠となります。
瑕疵と契約不適合責任の関連性
以下は、瑕疵と契約不適合についてまとめた表です。
| 項目 | 瑕疵担保責任(改正前) | 契約不適合責任(改正後) |
| 適用基準 | 隠れた瑕疵がある場合 | 契約書に記載されていない瑕疵すべて |
| 買主が請求できる権利 | 損害賠償請求、契約解除 | 損害賠償請求、契約解除、追完請求※(修理・代替)、代金減額請求 |
| 保証される利益 | 信頼利益(契約を信じて支出した費用:登記簿代、交通費など) | 履行利益(契約が履行されていれば得られた利益:転売益など) |
| 権利行使の期間 | 瑕疵を知ってから1年以内に行使 | 不適合を知ってから1年以内に通知 |
| 時効 | 引渡しから10年 | 引渡しから10年or知ってから5年 |
| 売主の責任の重さ | 限定的(隠れた瑕疵に限る) | 広範囲(契約内容と異なる場合すべて) |
※追完請求とは、修理や代替品の提供を求める権利、代金減額請求は修補が困難な場合に代金を減額してもらう権利のこと
不動産取引において、売主は引渡した物件に不具合があった場合、買主に対して一定の責任を負います。
2020年4月1日の民法改正前は瑕疵担保責任として規定され、隠れた瑕疵が発覚したときに限り、買主は発見から1年以内であれば損害賠償や契約解除を請求できました。
しかし、改正後は瑕疵という表現自体が廃止され、代わりに契約不適合責任という、より広い概念に置き換えられています。そのため、単に隠れた欠陥があるかどうかではなく、契約内容と引き渡された物件が一致しているかが判断基準となりました。
改正によって買主が行使できる権利は大きく拡大し、損害賠償や契約解除に加えて、追完請求(修理や代替品の提供)や代金減額請求まで可能となっています。
契約書の記載や説明義務を怠ると紛争に発展するリスクが高いため、売主はより慎重な対応が欠かせません。
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不動産で用いる瑕疵の種類

不動産における瑕疵は大きく分けて次の4種類があります。それぞれ性質が異なり、売主が負う責任やトラブルの内容も変わってきます。
- 物理的瑕疵
- 心理的瑕疵
- 法律的瑕疵
- 環境的瑕疵
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは土地や建物そのものに存在する物理的な欠陥を指し、不動産が本来果たすべき役割や性能を大きく損なう状態のことです。
物理的瑕疵には以下のように、建物と土地それぞれに典型的な例があります。
| 区分 | 具体例 |
| 建物の瑕疵 | ● 雨漏りや水漏れ ● 床の傾斜やゆがみ ● 壁のひび割れ ● 給排水管の詰まりや故障 ● シロアリによる被害 ● アスベストなど有害建材の使用 |
| 土地の瑕疵 | ● 地盤の歪みや沈下 ● 有害物質による土壌汚染 ● 地中の埋設物(ゴミ・廃材など) |
目に見える欠陥だけでなく、外見からは判別しづらい隠れた瑕疵も含まれます。配管の内部からの水漏れや基礎部分のシロアリ被害、屋根の一部損傷による雨漏りなども物理的瑕疵に該当します。
特に、隠れた瑕疵は取引後に発覚することが多く、売主が告知を怠れば契約不適合責任を問われるリスクが少なくありません。
心理的瑕疵
心理的瑕疵とは物件そのものに物理的な欠陥がなくても、買主や入居者が嫌悪感や抵抗を抱く事情がある状態を指します。
具体的な例は、主に以下のとおりです。
● 過去に自殺・事故死・殺人などの事件や事故があった物件(いわゆる事故物件)
● 近隣に反社会的勢力の事務所や、迷惑行為を繰り返す住民が存在する場合
● 小火(ぼや)や浸水など、現在は修復済みでも過去に損壊歴がある物件
心理的瑕疵は法律上の明確な基準があるわけではなく、捉え方は人それぞれ異なります。しかし、買主の購買意欲や売却価格に影響を及ぼすため、売主には一定の告知義務が課されています。
特に住宅内での「人の死」に関しては、国土交通省が2021年10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で取扱いが整理されており、売主・仲介業者双方にとって重要な参考指針となっています。
心理的瑕疵は目に見えない問題でありながら取引に影響を与えるため、トラブル防止と信頼性の確保のためにも、売主は隠さず適切に告知したほうが良いでしょう。
※参考:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました|国土交通省
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法律的瑕疵
法律的瑕疵とは、土地や建物の見た目や機能に問題がなくても、法令・条例の制限や権利関係の不備によって契約通りの利用ができない状態を指します。
代表的な法律と具体例は以下のとおりです。
| 区分 | 具体例 |
| 建築基準法 | ● 接道義務を満たさず再建築不可 ● 建ぺい率・容積率を超えた違法建築 ● 既存不適格(新築時は合法でも現行法では不適合) |
| 都市計画法 | ● 市街化調整区域に無許可で建築 ● 都市計画道路予定地に該当し将来収用の可能性がある |
| 消防法 | ● 火災報知器やスプリンクラー、防火扉などの設置義務を満たしていない |
| その他の法令 | ● 文化財保護法による建築制限 ● 農地法に違反した宅地化 ● 地役権や借地権が残り自由に処分できない |
たとえば、「二世帯住宅を建てられる」と説明して売却した土地が、実際には接道義務を欠いていて再建築できなかった場合、売主は買主から契約不適合責任を追及されるおそれがあります。
法律的瑕疵は契約書や外観からは判断しにくく、売却後に発覚すれば代金減額・契約解除・損害賠償といった重大なリスクにつながるため、売主は買主への正確な告知が必須です。
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは物件自体には欠陥がなくても、周辺環境の要因によって快適な生活が妨げられる状態を指します。
具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
● 近隣工場や高速道路、鉄道による騒音・振動
● ゴミ処理場・工場などからの異臭や排気
● 墓地や火葬場が近隣にある立地
● 近隣住民による迷惑行為や嫌がらせ
● 将来的に高層マンションが建設され、日照や風通しが悪化するケース
環境的瑕疵の難しい点は、人によって捉え方が異なることです。たとえば、踏切の音や飲食店からのにおいが気にならない人もいれば、ストレスと感じる人もいます。つまり、環境的瑕疵は心理的瑕疵と同様に主観的な要素が強く、判断基準が明確でないのが特徴です。
しかし、騒音や悪臭といった生活に直接的な支障を与えるものは、多くの人にとって不動産価値を下げる要因となることが少なくありません。
売主の立場からすれば周辺環境の事情は説明しなくてもよいと思われがちですが、告知を怠った結果、損害賠償請求や契約解除に発展するリスクがあります。
環境的瑕疵は目に見えないため軽視されやすいものの、売却後のトラブル回避のためには十分な事前調査と告知が必要といえるでしょう。
不動産の瑕疵に関するトラブル事例
不動産の瑕疵は、取引後に思わぬトラブルを招くことがあります。ここでは、実際に起こりやすい事例を瑕疵の種類ごとに紹介し、対策のポイントも整理します。
- 雨漏り・水漏れが見つかった
- シロアリ被害がひどかった
- 近隣住民から騒音や嫌がらせを受けた
- 周辺に高層マンションが建設されて生活に支障が出た
- 物件が建築基準法を満たしていなかった
雨漏り・水漏れが見つかった
不動産取引で最も多いトラブルの1つが、雨漏りや水漏れです。雨漏りや水漏れは建物の欠陥にあたるため、物理的瑕疵として扱われます。
屋根や外壁の施工不良、配管の劣化が原因となることが多く、引渡し直後に発覚すると補修費用をめぐって紛争になりやすいのが実情です。
たとえば、国民生活センターの「暮らしの判例」では、売主が過去の雨漏り修繕履歴を隠していたとして、不法行為に基づく慰謝料が買主に認められた事例があります。
また、RETIO判例検索にも築42年の一戸建て売買において、売主が雨漏りの事実を故意に告知しなかったため、契約前からその事実を知っていたと認定され、不法行為に基づく損害賠償請求が認められた判例もあります。
売主は過去の修繕履歴や水の侵入リスクがある部分を把握し、買主に正確に説明しておくことが後の紛争を防ぐポイントです。
※参考1:暮らしの判例|国民生活センター
※参考2:R4.2.17 東京地裁|RETIO判例検索
シロアリ被害がひどかった
床下・柱などの木部がシロアリに食われて強度が低下するケースも典型的な物理的瑕疵です。表面からは見えづらい隠れた瑕疵として問題となることが多く、売主が補修義務や損害賠償責任を負うことがあります。
実際に過去の判例では、築後12年の一戸建てで雨漏りによる腐食とシロアリ被害が生じたケースでは、シロアリの侵食が進んだ一部について隠れた瑕疵にあたると判断され、売主に建物の減価相当額の損害賠償が命じられました。
売主はインスペクション(既存住宅の点検・調査)を依頼し、物件の状況を明確にしておくことが重要です。
近隣住民から騒音や嫌がらせを受けた
物件自体には問題がなくても隣人からの騒音や嫌がらせ、不快な人間関係は心理的瑕疵や環境的瑕疵とみなされることがあります。事故物件や近隣トラブルは代表的な例であり、売主がこれを知りながら黙って取引を行うと紛争につながりかねません。
実際に不動産の売買契約に際し、買主から「事件や事故はなかったか」と問われたにもかかわらず、売主が約7年前に強盗殺人事件があった事実を告知しなかったことが不法行為にあたるとされ、買主の損害賠償請求の一部が認められた判例があります。
売主が把握している近隣事情は、取引前の説明資料に含めるなど誠実な対応が必要です。
周辺に高層マンションが建設されて生活に支障が出た
周辺環境の変化によって生活の質が下がる場合は、環境的瑕疵に該当することも少なくありません。
実際に、住宅が完成する前に締結されたマンションの売買契約において、完成前の説明と異なり居室からの眺望が損なわれたため争いとなった事案があります。買主は実物を確認できない状況にあったことから、売主には現物を確認できるのと同程度の説明義務があると判断され、手付金の返還と損害賠償が命じられた判例です。
売主が眺望や周辺環境に関する説明を怠った場合、契約解除や損害賠償に発展するリスクがあるため、未完成物件や開発計画のある土地を売却する際は将来の環境変化も含めた十分な告知が不可欠です。
物件が建築基準法を満たしていなかった
法律的瑕疵は、建築基準法や都市計画法といった法令に違反している、または適合していないために物件を自由に利用できないケースを指します。特に、建築基準法の接道義務を満たしていない物件は再建築不可となり、資産価値が大きく下がる典型例です。
実際に、間口に隣地が含まれていることを見過ごしたまま売主業者と仲介業者が間口幅を誤って買主に説明し、結果的に建築基準法上の接道義務を満たさない宅地の売買を行ったとして、両者に不法行為責任が認められた判例があります。
売主は土地の接道状況や建築基準法への適合性を事前に確認し、契約前に正確な説明を行うことが不可欠です。
不動産の瑕疵による契約不適合責任の効力
不動産に瑕疵があり契約内容に適合しない場合、買主は契約解除や損害賠償などの権利を行使できます。
売主にとっては契約後も重大な責任を負うため、正確な説明と告知が不可欠です。ここからは、契約不適合の効力として、以下を解説します。
- 契約解除
- 損害賠償の請求
- その他の効力
契約解除
不動産に重大な瑕疵があり契約内容を達成できない場合、買主は契約の解除が可能です。
改正民法第564条は、契約不適合責任の場合であっても民法第541条以下の解除規定の適用を妨げないと定めています。
第541条では当事者の一方が債務を履行しない場合、相手方は催告をしたうえで契約を解除できると規定され、第542条では履行不能、履行拒絶、履行期を過ぎても目的達成が不可能な場合などでは、催告なしに直ちに解除できるとしています。
つまり、不動産の売主が契約通りの物件を引渡さなかった場合は債務不履行にあたり、売主に過失がなかったとしても買主は解除の主張が可能です。
具体例として、建物の基礎部分に重大な欠陥があり安全に居住できないケース、接道義務を満たさず再建築できない土地を引渡したケースなどが該当します。
一方で民法第543条により、買主自身に責めに帰すべき事由がある場合には解除権の行使は認められません。
※参考:e-Gov 法令検索 民法
損害賠償の請求
契約不適合によって買主が損害を被った場合、売主は損害賠償責任を負います。
理由は改正民法第564条によって、契約不適合責任であっても民法第415条の規定による損害賠償請求が妨げられないと明示されているためです。
改正民法第415条第1項は、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき、または履行が不能であるときは債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求できると規定しています。
ただし、債務不履行が債務者の責めに帰することができない事由による場合は除外されます。
つまり、不動産売買契約においては売主に過失がなくても契約内容に適合しない物件を引渡せば原則として債務不履行となり、損害賠償請求の対象となります。売主が責任を免れるには、自ら責めに帰さない事由を立証することが不可欠です。
具体例として、雨漏りやシロアリ被害によって修繕費用が発生した場合、違法建築が発覚して使用制限を受けた場合などが挙げられます。
改正前は信頼利益(欠陥がないと信じたことによって失った利益)のみが賠償対象と考えられていましたが、改正後は履行利益(契約通り欠陥のない物件が引渡されていたら得られた利益)まで請求可能と解釈されつつあります。
とはいえ、請求可能な範囲についての法解釈は確立しておらず、今後の判例の積み重ねが注目されています。
結果として、改正民法により損害賠償の範囲は拡大する方向にあり、売主は従来以上に大きな金銭的責任を負う可能性もあるでしょう。
契約前に物件の状況を正確に把握し、適切に告知することがトラブル回避の鍵といえます。
※参考:e-Gov 法令検索 民法
その他の効力
契約不適合責任には契約解除や損害賠償だけでなく、追完請求権や代金減額請求権といった救済手段も認められています。
改正民法第562条では、取り引きしたものが契約内容に適合しない場合、買主は売主に対して修補(欠陥の修繕)や代替物の引渡しを請求できると規定しています。
ただし、修補が不可能な場合や、追完を命じることで売主に過大な負担を強いる場合には認められません。また、買主に過失がある場合も同様です。
さらに、改正民法第563条では取引したものが契約内容に適合しない場合、買主は代金の減額を請求できると定めています。軽度の欠陥で修補が困難な場合や、修補よりも金銭で調整したほうが合理的な場合に有効です。
売主は解除や損害賠償の他にも修補請求や代金減額請求というさまざまなリスクに備える必要があるため、売却前の事前調査やインスペクション、契約書での明確な取り決めが欠かせません。
※参考:e-Gov 法令検索 民法
不動産の瑕疵の対策となる住宅瑕疵担保履行法とは?
新築住宅の取引においては、買主を瑕疵から保護するために住宅瑕疵担保履行法という法律が定められています。
住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)は、新築住宅に欠陥が見つかった場合でも、買主が安心して修補を受けられるよう定められた法律です。
本来、住宅を供給する事業者は欠陥に対して責任を負いますが、万が一事業者が倒産してしまうと買主が高額な修繕費を自己負担せざるを得なくなる場合があります。こうした事態を防ぐために設けられたのが、住宅瑕疵担保履行法です。
住宅瑕疵担保履行法は、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)と連動し、事業者に10年間の瑕疵担保責任を課しています。責任を確実に果たせるように、事業者は保険加入または供託によって資金の確保が義務づけられています。
では、実際にどのように資力を確保しているのか、2つの方法について見ていきましょう。
- 保険制度
- 供託制度
参考:住宅瑕疵担保履行法について|国土交通省
参考:e-gov法令検索 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律
保険制度
保険制度は、事業者が国土交通大臣の指定を受けた住宅瑕疵担保責任保険法人と契約を結び、資力を確保する仕組みです。売主は事前に保険料を支払い、引渡した住宅に欠陥が見つかった場合には修補費用が保険金でまかなわれます。
通常は売主が修繕対応を行いますが、もし倒産などで補償が受けられない状況になっても、買主は直接保険法人に保険金の請求が可能です。
たとえば、新築後すぐに基礎部分の欠陥や雨漏りが発覚した場合でも買主は補償を受けられるため、安心して住み続けられます。
供託制度
供託制度とは、事業者があらかじめ法務局などに一定額の保証金を預けておく仕組みです。
万が一、事業者が倒産して補修対応ができなくなっても、買主は供託所に還付請求を行い、保証金から修繕費用を受け取れます。
通常はまず売主に対して補償を求めることになりますが、対応が不可能な場合に供託金が活用されるため、買主が多額の修繕費を自己負担するリスクを避けられる点がメリットです。
保険制度と並び、供託制度は買主を守る重要な資力確保の仕組みといえるでしょう。
不動産の瑕疵によるトラブルを少しでも避けるポイント
不動産の瑕疵は売主・買主双方にとってリスクとなるため、トラブルを防ぐには事前の備えと正確な情報共有が重要です。
ここでは、売主・買主が注意すべき実務的なポイントを整理します。
- 不動産会社が住宅瑕疵担保責任保険に加入しているか確認する
- 住宅診断(インスペクション)を検討する
- 売買契約書の確認を怠らない
不動産会社が住宅瑕疵担保責任保険に加入しているか確認する
中古住宅の取引における瑕疵保険は売主から依頼を受けた不動産会社が加入する仕組みで、不動産会社から依頼を受けた検査士などが物件を点検し、一定の基準を満たしていることを確認したうえで買主に品質を保証します。
取引後に雨漏りや構造上の不具合などの瑕疵が見つかった場合でも、買主は不動産会社を通じて保険金による補修を受けられるため、売主が直接責任を負うリスクを軽減できます。
ただし、加入には一定の条件や検査費用・保険料が発生する点には注意が必要です。とはいえ、売主・買主双方に安心をもたらす有効な制度といえるでしょう。
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住宅診断(インスペクション)を検討する
売主側がトラブルを未然に防ぐために有効なのが、契約前に実施する住宅診断(インスペクション)です。専門の住宅診断士が建物の劣化状況や欠陥の有無、補修が必要な箇所や費用を調査し、報告書として提示します。
売主にとっては劣化状況などを事前に把握し、必要に応じて修繕や説明を行うことで後のリスクを軽減することにつながるでしょう。買主にとっても、情報が明確になることで安心して取引に臨むことができます。
インスペクションの費用相場は6万〜12万円程度とされていますが、契約後に雨漏りや基礎不良が発覚し高額な補修費用を請求される可能性を考えれば、売主にとっても価値がある取り組みといえます。
売買契約書の確認を怠らない
買主側が瑕疵によるトラブルを防ぐには、売買契約書を細かく確認することが重要です。契約書には物件の状態や特約事項、売主が負う契約不適合責任の範囲と期間などが明記されており、見落としてしまうと大きなリスクにつながります。
特に、特約・容認事項に物件の状況が正しく記載されているか、責任期間に不自然な制限が設けられていないかを必ず確認すべきです。
署名・押印を形式的に済ませるのではなく、必要に応じて宅地建物取引士に相談するなどして内容を理解したうえで契約しましょう。
不動産の瑕疵に関するよくある質問
ここでは、不動産の瑕疵に関するよくある質問に回答します。
- 心理的瑕疵の告知義務はどこまで?
- 瑕疵物件の売却相場はいくらになる?
- 契約不適合責任の期間は短縮できる?
心理的瑕疵の告知義務はどこまで?
心理的瑕疵の告知義務は、売主にとって注意が必要なポイントです。2021年に国土交通省が公表したガイドラインでは、自然死や日常生活で避けられない不慮の事故を除き、自殺や殺人事件など社会的影響の大きい死亡事案は原則として告知が必要とされています。
賃貸の場合、発覚からおおむね3年が経過すれば告知義務はなくなるとされていますが、事件性が高い場合や社会的影響が大きい場合は3年を超えても告知を求められることがあります。
一方、売買では賃貸のような明確な期間の目安は示されていません。判例や取引慣行が十分に定まっていないため、売主は不動産会社や専門家と相談しながら、買主に対してどこまで説明すべきか慎重に判断することが大切です。
※参考:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました|国土交通省
瑕疵物件の売却相場はいくらになる?
瑕疵物件の売却相場は、その深刻度によって変わるもののおおよその目安は、以下のようになっています。
- 物理的瑕疵:市場価格の約70~80%
- 法的瑕疵:市場価格の約50%
- 心理的瑕疵:市場価格の約50~90%
- 環境的瑕疵:市場価格の約70~80%
瑕疵のある不動産は、一般的に市場価格より低く評価されます。たとえば、雨漏りやシロアリ被害などの物理的瑕疵は補修すれば価格回復が見込めますが、修繕費用がかかるため70〜80%程度に下がることが一般的です。
都市計画法や建築基準法に違反する法的瑕疵物件は再建築不可など制約が大きく、相場は約50%まで落ち込む場合があります。
心理的瑕疵は内容によって差が大きく、自殺や事件なら50%台に、孤独死の場合は90%近くで取引されるケースもあります。騒音や墓地の存在など環境的瑕疵は改善が難しく、70?80%が目安となります。
いずれにしても、物件や瑕疵の深刻度により変わるため売却を本格的に検討する場合は不動産会社に相談すると良いでしょう。
契約不適合責任の期間は短縮できる?
契約不適合責任の追及期間は、民法第566条により「買主が不適合を知った時から1年以内」に通知しなければならないと定められていますが、当事者の合意で短縮や延長が可能な場合もあります。
売主側としては、責任期間を限定することでリスクを抑える工夫ができますが、一方で短すぎる設定は買主の不信を招き、契約が成立しにくくなる恐れがあります。契約書に明記する際は宅建士に相談し、双方が納得できる条件に調整することが重要です。
不動産の瑕疵でトラブルを防ぐには仲介会社選びが重要
不動産売買における瑕疵は、発覚すると契約解除や損害賠償に発展するリスクとなります。 売主としては告知義務を果たし、保険やインスペクションを活用することが重要ですが、それだけでは十分といえません。
実務に精通した仲介会社を選ぶことで、契約内容の精査やリスク回避策を適切に講じることができ、トラブルの芽を事前に摘むことが可能になります。特に瑕疵物件の取扱いに経験豊富な会社であれば、安心して売却活動を進められるでしょう。
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初回公開日:2025年11月4日