
マンションなどの不動産を売却し、利益が出た場合には譲渡所得税が課せられます。
この譲渡所得税は、譲渡代金から取得費と譲渡費用を除いた、課税譲渡所得金額に基づき計算します。その際、建物の取得費については、建物の購入・請負代金や仲介手数料などの建物の取得価額から所有期間中の減価償却費を除いて求める必要があります。
「減価償却費」と聞くと、難しいイメージを感じる方も多いのではないでしょうか。
- そもそもマンション売却時における減価償却費の概要が分からない
- マンション売却時における減価償却費の計算方法を知りたい
- マンション売却後の譲渡所得税に利用できる特例の内容が理解しにくい
上記のようなお悩みを抱えている方向けに、この記事ではマンション売却時に発生する減価償却について分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- マンション売却時の減価償却の概要
- マンション売却における減価償却の計算方法
- マンション売却における減価償却で必要な手続き
- マンション売却後の譲渡所得税に利用できる特例
- 減価償却に関するよくある質問
【あわせて読みたい】
▶︎マンション売却の注意点は?売却方法や流れ・費用についても解説
もくじ
そもそもマンション売却時の減価償却とは?

マンションなどの建物のように形のある資産は、年数を経るごとに価値が減っていきます。この減った分の価値を経費とみなして計上するのが減価償却です。
マンションを売却したときに課せられる譲渡所得税を算出する際に、減価償却費が関係してきます。
ここでは、マンションなどの不動産売却時における減価償却について、対象となるものや法定耐用年数などについて解説していきましょう。
減価償却の対象
事業などの業務のために使用される建物や建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産が減価償却の対象です。
土地や骨董品など、時間が経っても劣化しない資産は減価償却資産に該当しません。したがって、投資用マンションの場合は、建物本体は減価償却の対象となりますが、敷地である土地は対象外となります。
賃貸経営を行っている人が確定申告をする際に、原則として有形固定資産の取得価額を一度に費用として計上することはできません。耐用年数に応じて毎年少しずつ費用を計上していくように規定されています。
法定耐用年数
法定耐用年数は国が「資産価値はこれくらいの期間でなくなる」と定めた期間であり、減価償却資産の種類ごとに「法定耐用年数」が法律で定められています。
建物の法定耐用年数は以下の通りです。
| 構造(住宅) | 耐用年数 |
| 木造 | 22年 |
| 木骨モルタル造 | 20年 |
| 鉄骨鉄筋コンクリートまたは鉄筋コンクリート造 | 47年 |
| レンガ・石・ブロック造 | 38年 |
| 金属造(4ミリメートルを超えるもの) | 34年 |
鉄骨鉄筋コンクリートの投資用マンションを新築で購入すると、47年間にわたって減価償却を行うことができます。47年が過ぎても建物を使用できますが、資産としての価値はないということになります。
譲渡所得税額との関係性
マンションを売却して得た利益は譲渡所得となり、譲渡所得税を納めることになります。
譲渡所得の税率はマンションの所有期間により違いがあり、売却したマンションの所有期間が1月1日時点において5年を超えているかどうかで税率が変わります。売却したマンションの所有期間が1月1日時点において5年以内の場合は「短期譲渡所得」で税率は39.63%、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」で税率は20.315%です(復興特別所得税を含む)。
なお、2037年までは所得税に対して2.1%の復興特別所得税がプラスされます。
【あわせて読みたい】
▶︎マンション売却で税金がかからないケースとは?種類や節税ポイントを解説
マンション売却における減価償却の計算方法

譲渡所得税額を算出するには、減価償却を最初に計算することが必要です。
- 減価償却の計算方法
- 譲渡所得税額の計算方法
ここでは、上記2ステップの計算方法について解説をします。
減価償却の計算方法
不動産の減価償却費の主な計算方法は「定額法」と「定率法」の2種類です。 定額法のほうがシンプルに計算できます。
| 定額法 | 定率法 | |
| 特徴 | 償却費の額が原則として毎年同額となる。 | 償却費の額は初めの年ほど多く、年とともに減少する。 ただし、定率法の償却率により計算した償却額が「償却保証額」に満たなくなった年分以後は、毎年同額となる。 |
| 計算方法 | 取得価額×定額法の償却率 | 2未償却残高×定率法の償却率(以下「調整前償却額」という。) ただし、上記の金額が償却保証額に満たなくなった年分以後は次の算式による。 改定取得価額×改定償却率 |
※出典:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁
建物本体と建物設備の取得費用は、それぞれ別に計算して減価償却費を算出します。
減価償却費は、事業用か非事業用かで計算方法や償却率が変わるのがポイントです。平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は、旧定額法もしくは定額法のみが適用されます。
事業用建物と非事業用建物における、それぞれの減価償却費について見ていきましょう。
事業用建物の減価償却費
木造住宅を、事業用として使用していた場合を見ていきます。木造の事業用建物なので、国税庁が公表している減価償却資産の償却率等表では償却率は0.046、法定耐用年数は22年です。
事業用建物の減価償却費は、以下の計算式で算出されます。
減価償却費(事業用建物)=建物の取得価額×償却率×経過年数
例えば、建築購入代金 2,500万の新築木造住宅(事業用)を15年後に売却した場合の減価償却費は以下の計算式で算出されます。
減価償却費:購入代金2,500万×0.046×15年=1,725万円
上記のように、減価償却費は1,725万円と算出されました。
非事業用建物の減価償却費
次に、マイホームなどの減価償却費を算出しましょう。
非事業用の減価償却費は以下の計算式で算出します。
減価償却費(非事業用) = 取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
主な非業務用資産の償却率は下表の通りです。
| 建物の構造 | 耐用年数 | 償却率 | |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 | 70年 | 0.015 | |
| れんが造、石造又はブロック造 | 57年 | 0.018 | |
| 金属造 | 骨格材の肉厚4mm超 | 51年 | 0.020 |
| 骨格材の肉厚3mm超4mm以下 | 40年 | 0.025 | |
| 骨格材の肉厚3mm以下 | 28年 | 0.036 | |
| 木造又は合成樹脂造 | 33年 | 0.031 | |
| 木骨モルタル造 | 30年 | 0.034 | |
例えば、新築で購入した木造のマイホームを売却する場合の減価償却費の計算をしてみましょう。建築購入代金 2,500万の新築木造住宅を15年後に売却したとします。
減価償却費の計算式は以下の通りです。減価償却費は1,046万2,500円になりました。
減価償却費:購入代金2,500万×0.9×0.031×15年=1,046万2,500円
同じ建物でも非事業用建物の償却率のほうが事業用建物より低いので、減価償却費の金額も低くなります。
譲渡所得税額の計算方法
上述したようにマンションなどの不動産を売却して得た利益には、譲渡所得税という税金が課せられます。まず、譲渡所得の金額を算出し、以下のように計算します。
譲渡所得=マンションの売却価格 −(取得費+譲渡費用)
マンションを売却して得た価格から、購入時の価格やそのマンションを取得・譲渡するためにかかった費用を引いて算出します。
取得費と譲渡費用の主な内訳は以下の通りです。
| 取得費 | 譲渡費用 |
| ● 購入代金、建築費用
● 取得時の税金(印紙税、登録免許税、不動産取得税など) ● 仲介手数料、登記手数料 ● 設備費、改良費 ● 測量費、整地費、建物解体費 |
● 売却時の仲介手数料、登記手数料 ● 印紙税 ● 立退料 ● 建物解体費 ● 借地権の名義書換料 |
※出典:No.3252 取得費となるもの|国税庁
※出典2:No.3255 譲渡費用となるもの|国税庁
次に、課税される譲渡所得の金額を算出します。計算式は以下の通りです。
課税譲渡所得金額 = 譲渡所得 −(特別控除)
特別控除とは、「居住用財産の3,000万円特別控除の特例」などで、特に控除する金額がない場合はそのまま譲渡所得に課税されます。
譲渡所得税額の計算式は以下の通りです。
税額 = 課税譲渡所得金額 × 税率(所得税・住民税)
ここでポイントとなるのが所有期間の長さです。譲渡した年の1月1日現在において、5年を過ぎているかによって課税方法が変わります。
5年以下の土地・建物などは「短期譲渡所得」、5年を超える土地・建物などは「長期譲渡所得」に該当し、税率は以下の通りです。平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1パーセントをプラスして納付します。
| 短期譲渡所得(5年以下) | 長期譲渡所得(5年超) | |
| 税率 | 39.63%(所得税30.63% 住民税 9%) | 20.315%(所得税15.315% 住民税 5%) |
※出典:土地・建物等の譲渡に係る所得税(国税)・住民税(地方税)
【あわせて読みたい】
▶︎ 不動産における譲渡税(譲渡所得税)とは? 税金の計算方法や意識すべきポイント
▶︎ マンションを相続して売却する際の流れは?税金や特例、確定申告について解説
マンション売却における減価償却で必要な手続き

これまで説明してきたようにマンションの売却益には所得税がかかるため、確定申告をすることになります。
譲渡所得がゼロ、あるいはマイナスの場合は所得税がかからないので、原則確定申告の義務は発生しません。ただし、売却してマイナス金額が出た時に確定申告をすれば、一定の居住用財産(所有期間が譲渡した年の1月1日において5年超など)に限り、給与所得などと損益通算することにより、所得税及び住民税の還付が受けられる場合があります。
確定申告をする際の流れは以下の通りです。
必要な書類を集める(確定申告書・本人確認書類・銀行口座が分かるもの・所得を明らかにできるもの・控除証明書)
確定申告書類を作成
確定申告書を提出(税務署の窓口に持参、郵送、「e-Tax(電子申告)」を用いて、オンライン上で提出
納税する又は還付を受ける
一般的に住民票の住所がある管轄の税務署に確定申告書を提出します。
確定申告書は「信書」に該当するため、宅配便などでは送ることはできません。税務署に郵送する場合には、「郵便物」(第一種郵便物)あるいは「信書便物」として送付するようにしてください。
【あわせて読みたい】
▶︎マンション売却後に確定申告は必要?流れや必要書類も徹底解説
マンション売却後の譲渡所得税に利用できる特例

マンションを売却するときには、さまざまな特例を利用することができます。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 特定のマイホームを買い換えたときの特例
ここでは、マンション売却後の譲渡所得税を計算する際に活用できる上記の特例について解説をします。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
マイホーム(居住用財産)を売却したときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。これが「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」で所有期間の長さは関係なく利用することが可能です。
この特例を利用すれば、マンションを売却した際に得た課税対象となる利益から、3,000万円までは差し引くことができます。特例の適用を受けるための主な要件は以下の通りです。
- 自分が日常的に住んでいるマイホームを売る、あるいは建物とその敷地を売る
- 売主と買主が、親子や夫婦など特別な関係ではない
- 売却した年、その前年、前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていない
- 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却…など
なお、適用を受けることだけが目的で住んでいた建物や、新居を新築する期間だけ仮住まいとして使用していた建物、セカンドハウスなどレジャーや保養のために所有していた建物は適用されません。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
10年以上居住していた馴染みのあるマイホームを売却する場合に使える特例が、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」です。
要件に該当すれば、通常の長期譲渡所得の税額より低い税率が適用されます。税額が安くなるので、長年住んでいたマイホームを売る人には税金の負担が少なくなる嬉しい制度といえるでしょう。
要件は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と基本的に同じです。ただし、不動産の所有期間が売却した年の1月1日時点において10年を超えていなければ適用されません。
なお、マイホームを売ったときの軽減税率は、6,000万円を超えているかどうかがラインです。税率や計算式に違いがあります。
| 課税長期譲渡所得金額(=A) | 税額 |
| 6,000万円以下 | A×10% |
| 6,000万円超 | (A-6,000万円)×15%+600万円 |
※出典:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
※上記は復興特別所得税を除いた金額です。復興特別所得税を考慮に入れると、
課税長期譲渡所得金額(=A)が6000万円以下の場合、A×10.21%。
6000万円超の場合、(A-6000万円)×15.315%+600万円となります。
例えば、10年以上住んだマイホームを売却したときの課税長期譲渡所得金額が1,000万円の場合で計算してみましょう。計算式は以下の通りです。
税額=課税長期譲渡所得金額(1,000万円)×10%=100万円(復興特別所得税を除く)
6,000万円以下なので課税長期譲渡所得金額に0.1をかけると、税額は100万円(※復興特別所得税を考慮に入れると、1,021,000円)となります。
また、マイホームを売却した場合の3,000万円の特別控除の特例と、軽減税率の特例は一緒に受けられます。したがって、かなりの節税効果を得られるでしょう。
特定のマイホームを買い換えたときの特例
現在住んでいるマイホームを新しいマイホームに買い換えたとき、一定の要件に該当する場合は、売却益に対する課税を将来に先送りできます。
これが「特定の居住用財産の買換えの特例」で、令和5年12月31日までに売却した不動産が対象です。あくまでも先送りなので、売却益が非課税となるわけではありません。
特例の適用を受けるための主な要件には以下のものが挙げられます。
| 売却する住宅の主な要件 | 買い換えする住宅の主な要件 |
| ・国内にあるマイホームで譲渡年の1月1日において所有期間は10年超、かつ居住期間は10年以上。 ・直近2年間に他の特例を適用していない ・売却代金が1億円以下 ・配偶者・直系血族などの間での取引ではない 他 |
・国内にある住宅
・自宅を売却した年の前年から翌年の3年間での買い替え ・買い換えする住宅が、中古である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または一定の耐震基準を満たすものであること。 ・床面積は50㎡以上・土地の面積は500㎡以下 他 |
※参考:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
あくまでも譲渡所得税の納付を先送りする制度なので、再度買い替えをする際には前回の税金も併せて納めなければなリません。
しかし、譲渡所得税の納付を先延ばしにできるので、新居を買い換える際の資金計画にゆとりを持てるようになります。
買い替え先の新居を効率良く探したい方は、住まいインデックスをご活用ください。これから住みたいと思っている地域の年間の家計情報(収入・支出)や、市区町村の特徴を知ることができます。住んでから後悔しないためにも、事前に住みたいエリアの地域情報をリサーチしておきましょう。
【あわせて読みたい】
▶︎ マイホームの住み替えにかかる税金とは? 適用される特例と注意点
マンション売却の減価償却に関するよくある質問

ここでは、不動産売却の減価償却に関してよくある質問について回答します。
- 耐用年数超えの減価償却はどうなる?
- 土地の減価償却は必要?
- 事業用不動産と非事業用不動産の減価償却は何が違う?
順番に見ていきましょう。
耐用年数超えの減価償却はどうなる?
耐用年数を超えた不動産は、法定耐用年数の20%しか減価償却することはできません。 例えば、耐用年数が47年のマンションの場合は以下のように計算します。
47年×0.2=9.4年
耐用年数が47年の場合では、少数以下を切り捨て9年しか減価償却できません。
【あわせて読みたい】
▶︎ 築40~50年のマンションは売却できる? 押さえておくべき注意点と高く売るコツ
土地の減価償却は必要?
結論からいうと、土地は減価償却の対象となりません。
なぜなら、建物と異なり土地は劣化しないため、建物資産価値は時間の経過とともに下がっても土地の価値は下がらないからです。
減価償却の対象となる不動産は、「建物」や「建物に付属する設備」であることを覚えておきましょう。
事業用不動産と非事業用不動産の減価償却は何が違う?
事業用不動産とは、アパートやマンションのような賃貸物件、店舗、倉庫、事務所など、ビジネスとして使用する建物のことです。非事業用不動産とはマイホームやセカンドハウスなど、自分が住むための建物を指しています。
減価償却をする際に違う点は、事業用不動産と非事業用不動産では償却率が異なることです。同じ建物でも用途によって減価償却費が変わってきます。
マイホームなど非事業用不動産の減価償却を計算するときは、計算方法が1つだけなので簡単なのがメリットです。
【あわせて読みたい】
▶︎ マンション購入、投資用と居住用の違いって?
マンションを売却するときは、様々な特例を活用して上手に節税しよう

不動産を売却するときは、売却益が出た場合だけでなく、売却損が出た場合も様々な特例を活用して上手に節税すると良いでしょう。それぞれには適用要件があることから、売却時には税理士などに確認することが大切です。
マイホームの売却を検討する際には、LIFULL HOME'Sの不動産一括査定サービスの活用をお勧めします。査定を依頼する不動産会社についての情報が充実しているため、自分にあった不動産会社を探すことができるでしょう。
不動産会社を比較検討する際には、これまで解説してきたような譲渡所得税や減価償却に関わる知識についてサポートをしてもらえるかどうかも判断基準の一つになります。良い不動産会社と出会うことができれば、税金の確定申告について不安を感じることなく不動産を売却できるでしょう。
LIFULL HOME'Sの一括査定サービスを利用して、自身に合った不動産会社を探してみてください。
【あわせて読みたい】
▶︎ マンション売却はどこがいい?会社の口コミや選び方を解説