
不動産売却は人生で何度も経験することではありません。また、高額な取引となるため、値段交渉も数十万円〜数百万と大きな金額幅をめぐって話し合われることになります。
不動産を売却する場合、ほとんどの人が「少しでも高く売却したい」と考えるでしょう。しかし、場合によっては購入検討者から値下げを要求されることもあります。
この記事では、不動産売却における値下げ交渉について事例なども交えて解説します。
この記事で分かること
- 不動産売却では値下げ交渉が前提
- 不動産売却時に値下げ交渉の連絡が来たらどうする?
- 不動産を希望通りの価格で売却するテクニック
- 不動産売却時に値下げ交渉される事例
- 不動産売却ならホームズの一括査定がおすすめ
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もくじ
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不動産売却では値下げ交渉が前提

不動産の売買は基本的に売主と買主の交渉によって進められるため、買主から値下げ交渉されることも想定しておいたほう良いでしょう。
しかも、その交渉幅は数十万〜数百万円と大きな額になる場合もあるため、応じるべきか悩んでしまう人も多いと考えられます。
- 値下げ交渉は必ず応じなければならない?
- 値下げ交渉のタイミング
- 値下げ交渉における相場
ここでは、上記3点について解説します。
値下げ交渉は必ず応じなければならない?
購入検討者からの値引き要求については、必ずしも応じる必要はありません。
不動産の売買に限らず、売買取引において買主は「1円でも安く購入したい」、売主は「1円でも高く売りたい」と考えるのが普通です。
そのため、購入検討者に購入の意思がある以上は必ずしも売主が下手に出る必要はなく、最終的な売却価格を決めるのは売主となります。値下げ交渉に応じないことも可能であり、一部だけ応じるということもできます。
例えば、100万円の値下げ交渉に対して、50万円の値下げで応じるといった対応も可能です。
値下げ交渉を受けるタイミング
不動産売却における、値下げ交渉のタイミングは主に2つあると考えられます。
1つ目は「物件の内見時」です。
物件を内見する過程で、購入検討者が「もう少し値段が安ければ、すぐ決めるんだけどなぁ」といった要望を伝えてくるケースがあります。こうした値下げの要望を購入検討者から直接伝えられることがないように、事前に不動産会社の担当者に相談しておきましょう。
相談していたにも関わらず、内見者から値下げ要望を伝えられた場合は、直接回答せずに「担当営業マンと相談してご検討ください」と返しておくと良いでしょう。
こうした点においても、不動産会社・担当者選びは非常に重要と言えます。
もう一つは、「購入を決断する直前」です。
仲介業者を通じて実際に物件を内見した後、「この条件なら購入したい」という意思が固まったら購入検討者は「買付証明書」を売主に提出します。この場合は、一定程度購入の意思が固まっていると考えて良いでしょう。
この買付証明書に購入検討者が希望する価格(値下げされた価格)を記載した上で提出してくるケースがあるのです。
ちなみに、物件を売出してから6ヶ月以上経過するなど売却活動が長期化した場合、不動産会社からそもそもの価格の値下げを提案されるということもあります。
値下げ交渉における相場
基本的には、近隣の類似物件よりも著しく高い場合でなければ、最大でも物件価格の10%以内の値引き幅が相場です。
例えば、5000万円の物件に対して1500万円など、大幅な値下げ交渉には応じる必要はありません。通常は、内見に至る時点である程度価格には納得していると見なすのが一般的です。
そのため、物件価格の20〜30%といった交渉はマナー違反といえます。または、50〜100万円の範囲で端数をカットする程度の交渉が相場と考えておいて良いでしょう。
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不動産売却時に値下げ交渉の連絡が来たらどうする?

不動産の売却期間中に、仲介業者から値下げ交渉の連絡がきた場合の対応方法を3つ解説します。
- 自身の妥協ラインを決めておく
- 買主が出せる限界の価格を丁寧に聞き出す
- 不動産会社(仲介会社)のアドバイスを受ける
実際、値下げ交渉に応じなかったものの、後から「あの時応じておけばよかった」と後悔するパターンもあるので、事前にしっかりと押さえておきましょう。
自身の妥協ラインを決めておく
売却価格を最終的に決定するのは売主となるので、売主自身が「この価格までなら値引きしても良い」と思える妥協ラインを決めておくことが大切です。
どのようにラインを決めるかについては、3つの基準があります。
売主の経済事情
1つ目の基準は、売主の経済事情です。
不動産を売却した時には、売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。売却価格の中から住宅ローンの返済に充てたり、仲介業者に支払う仲介手数料、登記費用、譲渡所得税などの諸費用を用意する必要があります。
売却価格でそれらの金額を賄えない場合、手持ち資金で充当しなければそもそも所有権が譲渡できず、売買が成立しません。つまり、住宅ローンの残債と諸費用、手持ち資金で自ずと売却価格の最低基準が決まります。
この売却価格の最低基準が値引き交渉に応じられるギリギリのラインになるでしょう。 以下で、実際に金額を設定して売却価格の最低基準を算出していきます。
住宅ローン残債+諸費用−手持ち資金=売却価格の最低基準
【例】
* 住宅ローン残高:4,000万円
* 諸費用:200万円
* 手持ち資金:500万円
上記の場合、売却価格の最低基準は「4,000万円+200万円−500万円=3,700万円」となります。
売出し価格の妥当性と近隣相場
2つ目の基準は、売出し価格の妥当性と近隣相場です。
近隣で類似物件の売出しが多い場合、その中での価格競争力を考慮して値引き交渉に応じるかどうかを検討すると良いでしょう。売出し価格と市場と間にミスマッチがある場合は、値引き交渉の幅も大きくなる可能性があり、近隣物件と比較しても価格の妥当性が高い場合は値引き交渉に応じる必要性は低いといえるでしょう。
近隣物件と比較して価格の妥当性を検討する場合、単純に価格で比較することもできますが、㎡あたり(または坪あたり)の単価に直して比較すると妥当性が分かりやすくなります。
例えば、同じエリア・築年数のマンションが複数売出されていると想定し、価格の妥当性を比較してみましょう。
| 比較物件 | 売出し価格 | 広さ | ㎡あたりの単価 | 価格の妥当性 |
| Aマンション | 3780万円 | 80㎡ | 47.25万円/㎡ | ◯ |
| Bマンション | 3200万円 | 70㎡ | 45.71万円/㎡ | ◯ |
| Cマンション | 3900万円 | 90㎡ | 43.33万円/㎡ | ◎ |
| Dマンション | 3900万円 | 66㎡ | 59.09万円/㎡ | △ |
この場合、Dマンションであれば大幅な値引き交渉を受ける可能性がありますが、Cマンションに対して大幅な交渉をされた場合は断るということも考えられます。
Aマンションに関しては100万円以下の端数を切り捨てる程度(80万円)、Bマンションについては50万円〜程度が妥当なラインといえるでしょう。
実際の価格の妥当性を比較する場合は築年数や立地条件が異なるため、売出し価格を決める段階で細かな条件を設定して比較しながら調査する必要があります。
売出し期間と内見の件数
3つ目の基準は、売出し期間と内見の件数です。
売出しを始めてから間もないタイミングであれば、今後値引きせずに購入してくれる買主が現れる可能性もあります。一方で、売出しを始めてから長期間購入希望者が現れなかったタイミングでの値下げ交渉であれば、そのチャンスを逃すべきではないといえるでしょう。
このように、売出し期間によって値引き交渉に応じるかどうかを検討することもよくあります。
また、一定期間売出している場合であっても、頻繁に内見が入っている状態であればたまたまその見学者とご縁がなかったと考えることもできます。他の内見予約が入っている状態で買付証明書が入った場合は、次の内見者が満額で申込みしてくれる可能性を考慮して、回答を保留するというのも1つの手段です。
いずれの場合も、1つ目の基準である「住宅ローン残債が完済できるギリギリのライン」を下回っている場合はそもそも売買が成立しないという点を押さえておきましょう。
買主が出せる限界の価格を丁寧に聞き出す
不動産の値引き交渉の成立・不成立を左右するのは、現実問題として売主と買主の懐事情によるところが大きいといえます。
売主の懐事情は住宅ローンの残高で決まりますが、買主の懐事情とは「自己資金+住宅ローン合計」となります。
値段交渉をするということは、数千万円の物件に対して買付証明書を提出しているということ。つまり、見方を変えれば「購入してくれる可能性の高い人」ともいえます。
「交渉が成立すれば購入する意思がある人が、50万円の差で断念するかどうか?」という点は冷静に考える必要があります。その上で、100万円の値引き交渉に対して「満額回答はできないが、いくらまでなら出せそうか」と丁寧にヒアリングすることも1つの作戦といえるでしょう。
不動産会社(仲介会社)のアドバイスを受ける
値下げ交渉に応じるかどうか迷った時は、その妥当性について不動産会社の担当者にアドバイスを求めてみるのも良いでしょう。
誠実な担当者であれば、値下げ交渉に妥当性があるかどうかについて近隣の成約事例などの資料を基に分かりやすく説明してもらえます。
取引数が少ないエリアや、そもそも流通数が少ない高額物件の場合、多少値引き額が大きくても交渉に応じたほう良いと判断するケースもありますし、交渉額に対して「◯%」で回答しましょうといった具体的なアドバイスがもらえることもあります。
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不動産を希望通りの価格で売却するテクニック

不動産売買の価格交渉では売主と買主の利益が衝突するため、丁寧な交渉が必要です。
どちらも一歩も譲らず交渉が決裂した場合、買主は次の物件を探すことができますが、売主は新たな購入希望者を待つ必要があるため、具体的な販売戦略を練っておく必要があります。希望通りの価格で売却するためのテクニックとしては以下の3つが挙げられます。
- 値引き交渉を前提として売出し価格を設定する
- 相場を把握しておく
- 余裕を持った売却スケジュールを立てる
値引き交渉を前提とした売出し価格を設定する
不動産売買の世界では値引き交渉は一般的であり、どの購入希望者も一旦は交渉してくると考えておいて間違い無いでしょう。
そのため、値引き交渉を前提として「希望価格+5〜10%」程度の売出し価格にしておくことで、最終的に希望価格で成約しやすくなります。
相場を把握しておく
売主が不動産を少しでも高く売りたいと考えるのは当然のことです。しかし、売出し価格と市場にミスマッチがあれば長期間売れ残ってしまい、結果として大幅な値引き交渉に繋がりかねません。
不動産を売却する時は、事前に複数の不動産会社に査定を依頼し、しっかりと相場を調査した上で妥当な価格設定をすることが大切です。周辺物件と比較して価格の妥当性が高ければ、購入希望者に「相場通りの物件だし、他の人に先を越されたくない」という心理が生まれやすく、結果として希望価格に近い価格で合意しやすくなります。
LIFULL HOME'Sでは、全国にある3,500社以上の不動産会社から査定を依頼する会社を選ぶことができます。こうしたサービスを活用することで市場とのミスマッチを防ぐことができるでしょう。
余裕を持った売却スケジュールを立てる
売却理由が住み替えである場合、まずは住み替え先を決める前に自宅の売れる価格を把握しておき、そこから具体的なスケジュールを立てましょう。
売却益を基に次の不動産を購入する買い替えの場合、住み替え先の代金を支払う日程などから逆算して「この時期までに引き渡さなければならない」という日が決まってしまいます。
不動産の売却には、売出しを開始してから引き渡しまでに少なくとも半年はかかるため、査定などで相場を把握する段階から考えると一年くらいの余裕を持って行動を開始したほう良いでしょう。
売主が売り急いでいる物件は値引き交渉されやすくなるため、時間的な余裕があることで無理な値引き交渉に応じなくて済みます。
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値引き以外の条件を掲示する
値引き交渉されたときに、値引きに応じる代わりに他の条件を掲示するというのも1つの手段です。例えば、引き渡し日や備え付けの備品を追加したり、買い替え特約など買主に有利な特約などを付帯したりなどの方法があります。
不動産売却時に値引き交渉されやすい事例

不動産を売却する時に、その売り方によっては値引き交渉されやすいケースがあります。
- ネックとなる問題を事前に説明していない
- 周辺相場よりも明らかに高い
- 長期間売出している
- 類似物件が多い
- 築年数が古い
ネックとなる問題を事前に説明していない
売却するにあたってネックとなるような問題がある場合、それが物件広告に記載されていなければ、内覧時など購入を検討し始めてから初めてそれに気づくことになります。
通常は購入希望者が見学に至る時点で、立地・広さ・築年数・価格などの条件をクリアしていることが多いものです。
しかし、見学して初めて気づくような問題があることによって購入希望者にとっての価格の妥当性が崩れてしまうこともあります。売買契約の前には買主に対して「重要事項説明」が行われるため、具体的に購入を検討する段階ではデメリットについてもしっかり説明しなければなりません。
心理的瑕疵や、建物の不具合についてなどは物件資料にも記載し、デメリットも理解した上で見学してもらうことで、大幅な値引き交渉を事前に避けられるでしょう。
周辺相場よりも明らかに高い
周辺相場より明らかに高い物件の場合、立地・広さ・築年数などの条件はクリアしているものの、価格だけがネックになるということはよくあります。
そのため、他の条件が気に入っている人がダメで元々という気持ちで値段交渉されやすくなりますが、周辺の他の物件と比べて特に大きなアピールポイントがない場合、交渉に応じなければ合意に至るのは難しいでしょう。
住宅ローンの残高などの事情で値下げが難しい場合もありますが、可能な場合は周辺相場に近い価格まで値下げに応じることは検討したほう良いかもしれません。
長期間売れ残っている
売出し始めてから半年以上売れ残っている場合、値引き交渉がされやすくなるでしょう。
売れ残っている理由によっては、売出し価格の妥当性が下がってしまうこともあります。
売出し価格と市場とのミスマッチがないかどうかを定期的に見直し、周辺の相場と比較して妥当性の高い価格まで価格が調整できれば、大幅な値引き交渉を避け安くなるでしょう。
類似物件が多い
同じマンション内で複数の物件が売出されているケースなど、周辺に類似物件が多い場合はライバルとなる物件が多くなるため、値引き交渉されやすくなります。
他の物件と比較して大きなアピールポイントがない場合は競争力が下がってしまうため、値引き交渉に応じたほう良い場合もあります。
築年数が古い
不動産の建物評価は、経年に比例して価値が下がっていきます。一般的な木造住宅の場合、法廷耐用年数が築22年になるため、築20年以上の物件の建物評価はかなり低くなります。
したがって、築年数に対して売出し価格が高いと値段交渉される可能性が高くなります。
値引き交渉を想定した販売戦略を

これまで解説してきたように、不動産を売却する場合、値引き交渉はあるものと考えておいたほうがよいでしょう。
その上で、売出し価格を決める時や、実際に値引き交渉をされた時に、自身の経済事情や周辺相場と比較した価格の妥当性などをベースに、交渉に応じるかどうかを決定します。
売出し始めてからも、定期的に近隣の売出し物件を基に適宜価格を見直すために相場を把握しておくことは大切です。
また、実際の交渉は不動産会社の担当者を通じて行うことになります。そのため、値引き交渉も想定した販売戦略を提案してくれる信頼できる不動産会社と出会うことが重要となります。
もちろん、値引きなしでの売却が理想であるため、不動産会社の「販売力」もチェックするべきでしょう。
LIFULL HOME'Sでは、全国にある3,500社以上の提携不動産会社から査定を依頼する会社を選ぶことができます。物件情報の入力後、不動産会社の社員画像や店舗画像、強みなど、お客様の物件の査定を依頼できる不動産会社の詳細情報を一覧で見て選べるのが特徴です。
自分に合った頼りになる不動産会社と出会うことで、値引き交渉を避けられる可能性が高まるでしょう。
記事監修
馬場 美里(ばば みさと)
在学中に宅地建物取引士(当時は宅地建物取引主任者)の資格を取得。大学卒業後、不動産仲介業務に従事し、マンション・一戸建て・土地などの売買を経験。実務経験をもとに不動産の売却査定に関する問題解決を得意とする。不動産会社からのオファーのほか、数々のポータルサイトでコラムの執筆経験もあり。