学生会館をリノベーションしたゲストハウス

平成5年築。元々は近隣の予備校に通う予備校生用の学生会館だった平成5年築。元々は近隣の予備校に通う予備校生用の学生会館だった

訪日外国人が増え続ける中、札幌や北海道各地でも観光客で賑わう様子が見られる。それに伴い、札幌では宿泊施設が不足。若者が起業し、20名ほどが宿泊できるアットホームで個性豊かな宿がいくつか登場している。

そんな中、2017年の7月にオープンしたTen to Ten Sapporo Station(テントテンサッポロステーション)は、札幌駅近くの学生会館をリノベーションした、96床を有す大規模なゲストハウスである。

コンセプトは、ホテルのような快適さに、ゲストハウスの居心地の良さを掛け合わせた新しい価値観のゲストハウス。幅広い層の宿泊客を受け入れるとともに、旅人と地域をつなぐアクティビティや、マルシェなどを企画している。ここを拠点に、旅人だけでなく、ゲストハウス周辺に暮らす地元のひとや道内の生産者との交流が生まれているという。

どのような取り組みをしているのか、Ten to Tenを運営をしている株式会社Fullcommision(フルコミッション。以下、Fullcommision)の統括マネージャーである平岡さんに伺った。

旅人もサラリーマンも幅広い層が快適に利用できるゲストハウスづくり

ゲストハウスというと、古民家など築古の物件をリノベーションしたものも多いが、Ten to Ten Sapporo Stationは、平成5年築とそう古くはない。もともとは、予備校生用の学生会館として利用されていた。予備校が学生向けに宿舎を所有しはじめ、稼働率が下がっていたことから、閉館が検討されていた。新たな事業を検討していたところ、向かいでゲストハウス「Wagayado 晴 -HaLe(ワガヤドハレ)」(現在は当時のマネージャーが独立して運営)を運営していたFullcommisionに相談。そこからゲストハウス構想へと広がった。

基本的には学生会館時代の部屋割りが使われているが、一部は間仕切りを取り除いて部屋をつなげるなど、もともと40室あった部屋がリノベーションで26部屋となった。ドミトリーの他、ダブルルームやファミリールームに和室など、6種類の部屋タイプがある。さらに、ほとんどの客室内にトイレやシャワールームを設置。ホテルとそう変わらないようにも感じるが、24時間利用できる共用スペースやキッチンもあるなど、宿泊者同士で交流できる場が用意されている。適度にプライバシーを保つことができ、初めてのゲストハウス利用の人も抵抗なく泊まることができそうだ。

「宿泊客もゲストハウスユーザーに多い『旅人』みたいな人ばかりではないですね。アジア圏からの団体旅行客や就活生、サラリーマンの方もいます。部屋内で飲食ができなかったり、ホテルユーザーの方からすると少し不便なところがありますが、そういう方たちにもゲストハウスって悪くないなって思ってもらえるようなサービスをしようと心掛けています。」(平岡さん)

平岡さんは、ゲストハウスの持つコミュニティの強さやコミュニケーションの豊富さは徹底するように心掛けているという。
「スタッフには、コミュニケーションが大切だよ、といつも伝えています。明日の旅が豊かになるような、もう一度来たいと思ってもらえるようなゲストハウスを目指しています。」(平岡さん)

画像上:客室(ファミリールームと和室)和室は、外国人や小さいお子さんのいる家族に人気がある。
左下:ライブラリー(共有スペース)右下:レーザーカッターでつくったサイン。細かいところにもこだわりを感じる画像上:客室(ファミリールームと和室)和室は、外国人や小さいお子さんのいる家族に人気がある。 左下:ライブラリー(共有スペース)右下:レーザーカッターでつくったサイン。細かいところにもこだわりを感じる

旅のむこう側をつくる、旅人と地域の人とをつなぐ取り組み

Ten to Ten Sapporo Stationでは、宿泊する人だけの場に留まらず、旅人と地域の人とをつなぐためのさまざまなアクティビティを用意している。

地下にあるカフェバーは、宿泊客以外も利用でき、北海道の食材を使った料理を楽しむことができる。平日はコワーキングスペースとして開放し、平日夜や土日は、ライブや道内の地方都市とをつなぐイベントの会場に使われるなど、何かやってみたい人のためのレンタルスペースとしても使われている。

さらに、旅人と地域をつなぐためのアクティビティとして「Sunday market」と「Hello local」がある。
「Sunday market」は近隣の生産者さんが農産物を販売したり、作家さんのアクセサリー雑貨などが集まるマルシェだ。(冬期休業)
「次第に、周りの住民のかたが毎週末通ってきてくれるようになって、生産者さんとのつながりも生まれています。大きな売り上げに繋がらないこともあるのですが、『楽しいからまた来たい』と言ってくれる出店者さんもいて、とてもありがたいです。」(平岡さん)

「Hello Local」では、旅人が北海道や札幌で暮らすひとの日常を体感できるようなアクティビティを行っているという。「浴衣を着てビアガーデンに行ったり、お弁当を作ってピクニックへ行ったり。知り合いの農家さんを訪ねて、農作業を手伝ったりもしましたね。」(平岡さん)

左上:カフェバースペース 左下:Hello Localのアクティビティで、お弁当をつくってピクニックへでかけた 右上:中庭で毎週日曜日に行われるSunday Marketの様子 右下:ナイトヨガ教室は、近隣に住むOLも参加してくれるそう左上:カフェバースペース 左下:Hello Localのアクティビティで、お弁当をつくってピクニックへでかけた 右上:中庭で毎週日曜日に行われるSunday Marketの様子 右下:ナイトヨガ教室は、近隣に住むOLも参加してくれるそう

北海道に若い世代の起業文化を創る

Ten to Ten Sapporo Stationのスタッフたち。訪れた際には若手のスタッフが迎えてくれるだろうTen to Ten Sapporo Stationのスタッフたち。訪れた際には若手のスタッフが迎えてくれるだろう

Fullcommisionは、自社の宿泊施設の運営のほか、シェアハウスの運営や道内の宿泊施設へのコンサルティングなど、様々な事業を展開している。さらに、昨年アフリカのタンザニアにゲストハウスをオープンさせ、現在はベトナムのゲストハウスの開業準備を進めているという。

Fullcommisionは、「北海道に若い世代の起業文化を創る」をミッションに掲げているが、場所を北海道にこだわっているわけではないという。
「タンザニアは、代表の山崎の知人がゲストハウスをやりたいということで、共同出資してオープンしました。札幌の会社がアフリカでビジネスをやっているってそれだけで面白いですよね。」(平岡さん)

社員は20代の若手が大半で、ベトナムでの立ち上げに関しては、大学生インターンが物件探しを担当し、早くから挑戦できる環境がここにはある。

「大企業に入らなくても、海外で働けるフィールドをつくる。そういった若い世代のために新しい道をつくるのも起業文化の一端ではないかと思っています。」(平岡さん)
現に、海外で仕事をしてみたいと思っている若者は多く、海外事業を打ち出してからは求人に対しての応募が道外からも増えたそう。全国からFullcommisionに若者が集まりはじめているようだ。さらに、若者の起業支援もしており、現在2組が独立し札幌でゲストハウスを運営しているそうだ。

「『旅』というテーマからは外れずにやりたいと思っています。」と平岡さんはいう。

Fullcommisionは、幅広く事業を展開しているが、全ては「ヒト」で始まっているように感じる。意思のある人がいるところでビジネスを起こしていった結果、意思のある人たちが集まり、さまざまな事業へと展開していっているのだろう。
これからどんな若者があつまり、どういった旅にまつわる事業が生まれていくのか、期待したい。

取材協力:
株式会社Fullcommision http://f-commission.com/
Ten to Ten Sapporo Station http://tentotentoten.com/hostel/sapporostation/

2018年 04月29日 11時00分