シバンムシとは

家の中で、小さな甲虫を見かけたことはないだろうか。体長2~3ミリほどの茶色い虫なら、「シバンムシ」かもしれない。鞘翅目シバンムシ科の昆虫で、食材につくことが多いので、キッチンやパントリーなどで遭遇した人が多いのではないだろうか。
ひと言でシバンムシといっても多くの種類がおり、乾燥した木材などを食べる種や、キノコなどの菌類を食べる種もいる。家庭の害虫となるのは主に乾燥植物質(乾物と言われる食品群)を食害する種だ。

家の中に虫がいるとあまりいい気はしないが、具体的にはどのような害があるのだろうか。
家庭用殺虫剤などを製造・販売している大日本除虫菊株式会社で対策方法を聞いてきた。主に話を聞かせてくださったのは、中央研究所生物研究室の柳澤太洋さんだ。

シバンムシの侵入経路

シバンムシは成虫でも体長2~3ミリ程度と非常に小さい(上)。パスタなどの乾物や、畳などにわきやすいという(下)シバンムシは成虫でも体長2~3ミリ程度と非常に小さい(上)。パスタなどの乾物や、畳などにわきやすいという(下)

まず、シバンムシがどのようにして家の中に侵入するのか柳澤さんに尋ねてみた。
「シバンムシが繁殖するのは、畳や、パスタなどの乾燥食品です。雑食性の虫で、ビニールやプラスチックなどもかじるうえ、開けた穴は小さく、なかなか気づきません。食品自体は滅菌などの処理がされていますが、パッケージをかじって入り込み、繁殖することもあるため、処理済みの乾燥食品でも油断できないのです」

小さな虫なので、食品の中に入っていないか目視で確認するのは困難だとか。一度屋内に侵入すると、家の中で繁殖する。活動期は4月から10月で、年に2~3回発生する。近年は一年中暖かい家が多いので、室内では時季に関係なく年中繁殖しているという。
寿命は1~2ヶ月程度と言われるが、気温によって成長の速度が変わるため、幼虫のまま冬を越す個体は100日以上生きることも。幼虫は畳などで繁殖するので、人が目にすることは少ないという。幼虫のうちに駆除してしまうというのは難しそうだ。

シバンムシの害と予防方法

シバンムシは人の肌を刺したり噛んだりはしないし、病原体を媒介したという報告もないそうだ。誤って食べてしまったとしても食中毒などを起こす心配もない。ただ、食品がかじられたり、大発生したりすると不快だろう。そして、シバンムシ自体には大きな害がなくても、付帯的な害があると柳澤さんは言う。

「シバンムシに寄生するシバンムシアリガタバチが人を刺すのです。シバンムシアリガタバチは体長2ミリ程度の小さなハチで、刺されると痛みやかゆみがあり、腫れることもあります。シバンムシがいたら、シバンムシアリガタバチもいるかもしれないと考えたほうがいいでしょう」

では、どうすればシバンムシの侵入を防げるのだろうか。
「シバンムシに効く殺虫剤には、撒いておけば約1ヶ月ほどは予防できる製品もあります。乾燥にもある程度弱いので、部屋や食材置き場の通気性をよくするのも一つの方法。いずれにしても、まずは掃除をしっかりすることが大事でしょう。また、乾物食品を開封した後は、輪ゴムなどで簡易的に止めるのではなく、しっかり密閉できる保存容器に移し替えれば、食品の中で繁殖する可能性は低くなります。購入してすぐ、密閉容器に移すのがよいでしょう」と、柳澤さん。要は、こまめなケアが必要なのだ。

シバンムシによる食品への被害を防ぐには、きちんとした密閉容器に保存することが基本シバンムシによる食品への被害を防ぐには、きちんとした密閉容器に保存することが基本

シバンムシが発生してしまったら

畳に潜んでいる場合は中で繁殖するため、気づきづらい。天日干しが一番だが、難しい場合は殺虫剤を撒くなどの対策を畳に潜んでいる場合は中で繁殖するため、気づきづらい。天日干しが一番だが、難しい場合は殺虫剤を撒くなどの対策を

パスタや素麺、干ししいたけなどを家庭の貯蔵スペースに保存していたら、いつの間にかシバンムシが発生していることがある。その場合はまず、シバンムシの繁殖した食品ごとビニール袋などに入れ、口を固く縛って廃棄してしまうのがベター。虫を除去すれば食べることはできるが、まず間違いなく卵を産みつけられているので、一度に消費しないとまた発生する可能性が高い。

その後、貯蔵スペースの入り口に、シバンムシに有効な殺虫スプレーなどを撒いておけば、新たな侵入は防げるという。しかし、繁殖した虫がどこかに隠れている可能性は否定できない。その場合はどうすればよいのだろうか。

「殺虫剤は虫に直接かけたり、あらかじめ撒いておいた薬剤に接触しないと効力を発揮しないので、虫がどこにいるのかわからない状態で、やみくもに撒くのは現実的ではありません。発見した虫を駆除することを繰り返していくしかないでしょう」と、柳澤さん。現時点では、一網打尽にする方法はないようだ。

また、畳などで繁殖している可能性がある場合は天日干しが一番だが、家具をすべて移動して畳を外すのは大変だし、畳を干すスペースを確保するのが難しい家庭もあるだろう。この場合も、シバンムシに効く殺虫剤を撒くのが現実的だ。

殺虫剤の選び方

お話を伺った、大日本除虫菊株式会社中央研究所生物研究室の柳澤太洋さん(左)と、中央研究所第2化学研究室薬剤師の田丸友裕さん(右)お話を伺った、大日本除虫菊株式会社中央研究所生物研究室の柳澤太洋さん(左)と、中央研究所第2化学研究室薬剤師の田丸友裕さん(右)

「市販の殺虫剤を選ぶ際は、シバンムシにも有効なものを選んでください」と柳澤さん。
パッケージに対象の虫が書かれているので、確認して購入するといいだろう。スプレー(エアゾール)式や粉末状のものがあり、成分としてはピレスロイド系の薬剤がよく使われている。虫の神経に作用し、興奮状態にさせて殺す仕組みだという。一度撒いておくと約1ヶ月程度は予防効果を発揮する製品もあるそうだ。
ピレスロイド系の殺虫剤は、人間や哺乳類、鳥類には分解能力があり、速やかに代謝されるため、安全性が高い。爬虫類や魚類には毒性を示すこともあるため、ペットには注意が必要だ。

家屋の気密性が高まったことで、室内の温度が保たれ、人だけでなく虫にとっても快適な空間となっている。シバンムシを完全に駆除するのは難しそうだが、こまめな対策で数を減らすことはできそうだ。まずは乾燥食品や畳のチェックなど、できることから始めてみてはいかがだろうか。

2019年 11月03日 11時00分