23歳、起業。経験も無ければ、上司もいない。

最近「空き家再生」や「古民家再生」、それに付随して「DIY」や「リノベーション」といったワードが目立ってきている。北海道札幌市に、築60年のアパート物件を自らの手で大幅リノベーションを施し、オシャレなゲストハウスに再生させた3人組がいる。

1991〜92年生まれのその3人組は、ひょんなことから東京で出会い、手を組んだ。そして大学を卒業後、共同代表として合同会社Staylinkを立ち上げ、現在札幌で2つのゲストハウスを経営している。
札幌中心部で見てみると、ゲストハウスの数は20件弱ほど。そんな中、2014年10月に1号店となる「ゲストハウスwaya」をオープンし(以下waya)、続いて2016年8月には2号店「ゲストハウス雪結(yuyu)」が誕生させた(以下yuyu)。

この日は2号店のyuyuにお邪魔して話を聞いた。スタッフの1人が「ここyuyuは都会の喧噪を忘れさせてくれる、ほっとするような空間づくりを目指しています」と話してくれた通り、yuyuの場所は、札幌で「創成川イースト」という名を馳せている注目エリアに位置し、札幌都心すぐそばでありながら宿に一歩足を踏み入れると、初めて訪れた場所にも関わらず不思議と心が落ち着くような、そんな空気感が広がっている。

yuyuの共有スペースの壁には札幌軟石を使用。札幌の暖かみを演出している他、札幌在住ものづくりのアーティストさんたちが創り出した照明や、カーテンなど所々でその姿を見せてくれる。

「本当にここは色んな人たちと一緒につくった場所なんです」とyuyuの空間を見つめる共同代表の1人、木村高志さん。彼にこの場所が誕生するまでの軌跡を聞いてみた。

3人の代表が立ち上げた合同会社Staylinkは、少しずつ人数を増やし前進している。この場所はyuyu。全てみんなの手作りのリノベーションによるものだというから驚きだ3人の代表が立ち上げた合同会社Staylinkは、少しずつ人数を増やし前進している。この場所はyuyu。全てみんなの手作りのリノベーションによるものだというから驚きだ

運命の出会い、そして3人揃って東京から北海道への移住

1号店「waya」の室内1号店「waya」の室内

「今日を迎えるまでのきっかけとなった河嶋と出会ったのは、大学3年生の冬。僕たちは教職課程を選択していて、その課程の中で介護実習があり、たまたま実習先が彼と同じだったんです」。

それが木村さんの、Staylink2人目の共同代表河嶋峻さんとの出会い。この日が全ての始まりだったとは、誰も想像できない未来だった。ちょうどその頃、木村さんたちの世代は就職活動真っ最中の時期。木村さんもまわりと同じように就活に勤しむ中、やりたいことが特別決まっていない状態での就活に違和感をおぼえ始めていたそう。

そんな時に、河嶋さんから一緒に「起業しない?」と声がかかり、木村さんは承諾。続けて、「紹介したい人がいるんだ」と河嶋さんの紹介により出会ったのが、3人目の共同代表、柴田涼平さん。河嶋さんの高校の同級生だった。

こうして出会った3人。ゆっくりと、新たなレールが動き出していく。

3人はいざ集まったものの、具体的なことを決めて起業を決意したわけではなかったため、半年間ほどアイディアを出し合っては行き詰まり…この繰り返し。そんなある日、河嶋さんの地元、北海道の右側に位置する別海町に東京の学生を引き連れ、別海町の同世代と交流をもたせようという、その名も「Jimotrip(ジモトリップ)」を企画。盛り上がりを見せたその結果に行き着いた先が、「人と人とが交流できる場所をつくりたい」という「ゲストハウス」だった。

その頃東京ではすでに数多くのゲストハウスが存在していたが、河嶋さんと柴田さんの地元である北海道にはまだまだ少ない現状を察知。今がチャンスだと、3人は思い切って共に北海道への移住を決めた。
唯一北海道と縁のなかった木村さんは、「ずっと東京で過ごしてきたからこそ一度この地を離れてみたいという想いもあった」と話す。

ようやく出会った築60年のアパート。全て手作りのリノベーション。

自分たちの手で、最初から最後まで手がける。全くの初めての経験ばかり。しかし、仲間たちで行う作業はやっぱり楽しい自分たちの手で、最初から最後まで手がける。全くの初めての経験ばかり。しかし、仲間たちで行う作業はやっぱり楽しい

北海道に来てからは物件探しのため小樽や洞爺湖、旭川にも足を運び、苦労の末、と言っても奇跡的に探し始めて1ヶ月ほどで見つけたのだが、ついに札幌で築60年のアパートに出会った。これが今のwayaだ。

その後はすぐに行動。理想のゲストハウスをつくるべく、大掛かりなリノベーションを実施。まわりの友人たちを巻き込み、みんなで改装していくことに決めた。手伝ってくれた友人の数は約300人ほど。3人の人との繋がりの多さには驚きだ。また、大工の木沢幸彦さんという方の力も大きい。住宅、店舗リフォーム、木工家具等を取り扱う木沢さんは、ゲストハウスwayaとyuyuの設計・施工を担ってくれた。

そんな連日続く改装作業に、共同代表の3人の顔は次第にげっそり。wayaのアパートのオーナーであり、その建物の1階にスナックを構えるお母さんが見かねてごはんを食べさせてくれたという温かい思い出も。
wayaは決して3人だけで作り上げたわけではないのだ。多くの人の手によって、ついに誕生を迎える。

その後口コミがどんどん広がり、オープンからわずか2年で2号店であるyuyuをオープンさせるまでに至った。今では20代はもちろん、70代の方まで幅広い年齢の旅人がwayaとyuyuに訪れる。中にはリピーターもおり、たくさんのファンを生み出すまでとなった。

ゲストハウスの仕事は、朝ゲストさん(宿泊者)が旅立つ姿を見送ってから大体夕方くらいまで掃除業務を行う。その後16時から22時頃までゲスト対応が続く。基本はこれの繰り返し。「このルーティーンの中でいかに仕事が楽しめて、新しいことを生み出せるかというのも、ゲストハウスで働く大切なことの1つ」らしい。

様々な国籍、年齢、多くの人が集まるコミュニティの場づくり

毎日様々な国籍、年齢の方々が集まるこのゲストハウスは日々新鮮だ。「地球をキャンパスだと思って、絵を描くように旅をしているんだ」と話したハワイからの旅人もいた。

このように、宿泊のために訪れる人との出会いだけではない。wayaとyuyu自らが、コミュニティの場になろうと動き出している。その1つが英会話教室だ。毎週火曜日17時から1時間、年齢性別問わず参加でき、wayaの共有スペースにて開催。Staylinkの社員であり、ニューヨークからやってきたアニルという社員と、将来英語教師になりたいという夢を持つ北川さんという社員が中心となって運営している。(※2017年10月現在、定員に達している)

英会話教室の他にも、yuyuは市の学童保育所として登録されている。ゲストハウスという場で学童保育を実施することにより、「世界と触れ合える学童保育」「子どもが遊びに来れる宿をつくりたい」という目標を掲げ2017年夏に開始したのだ。

そういった地域の人との交流もあってか、wayaもyuyuも商店街との繋がりも濃く、地元のお祭りのサポートや餅つき大会などにも企画・参加。町内会のイベントの1つ、お祭りで山車を引く時にはタイミングが合えば、ゲストも参加。海外からのゲストは毎回大喜びだ。

木のぬくもり溢れるyuyuのベッドルーム。札幌のアーティストさんが手がけたカーテンが心地よく揺れる木のぬくもり溢れるyuyuのベッドルーム。札幌のアーティストさんが手がけたカーテンが心地よく揺れる

「友情で世界を変えたい」3人の今後の未来とは

このゲストハウス、実はテレビや新聞、ウェブ記事など様々なメディアに引っ張りだこ。23歳で起業しようとしたという経歴も理由の1つかもしれないが、きっとそれだけではないはず。彼らの魅力に、知らぬ間に引き込まれているのかも、と取材の終盤からそんなことを思うようになった。

「河嶋峻、木村高志、柴田涼平」
この共同代表について、Staylinkの社員はこう話す。
「あの3人は、ジェットコースターみたいな人たち。降りたと思ったらまたすぐ上りがやってくる。ずーっと、良い意味でハラハラドキドキするあの感じ」。そんな彼らに魅了されてしまったスタッフたちが、今日も元気に働いている。

気になっていたことの1つ、「3人の間でぶつかったことは?」の問いに対しては、「よく聞かれるんですけど…ないんですよね」と木村さんは笑った。

3人の中で役割分担がしっかり出来ていることはもちろん、3人の性格的なバランスが良かったというのも1つだと分析している。そして何より、それぞれの相手を思う気持ちが強いのだと、取材を通して感じていた。

そう思ったのは木村さんの一言。
「友情で世界を変えたいんです」という言葉にある。

友情で生まれたStaylinkは、これから働くことの価値観を変えていきたいと未来を見据えている。例えばその1つとして、今後は月6日休みか月8日休みかを社員本人が選べるような制度の導入も検討しているのだとか。また、現在も社員契約期間は2年間。その後の更新の可能性ももちろんあれば、2年後自分の夢へ向かって新たな道へ進むも良し。

生活と職場が一緒であり、仕事と遊びがくっついているからこそ、新しい働き方が今後Staylinkから発信されていきそうな予感だ。

なにせ、この3人の会社の名前は「合同会社Staylink」
Stay...滞在する
Link...繋がる
という2つの意味が込められている。ゲストハウスに宿泊し、そこで出会った人たちが繋がる、記憶に残る場所や人に出会える場だ。スタッフも、宿泊しに来るゲストも、キラキラした繋がりが札幌から世界へと広がっていくことだろう。

関連サイトと情報
※北海道で新たなコミュニティをつくり人々が集まれる場づくりをしている他の記事はこちら→田舎暮らしの新しいカタチを、スープカレーを通じてつくる。

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◎筆者:くらしごと編集部 津山理彩子

yuyuの外観。古いアパートが今風の見た目に生まれ変わったyuyuの外観。古いアパートが今風の見た目に生まれ変わった

2018年 02月18日 11時00分