マンション「管理」の重要性が高まっている

中古マンション選びでは、立地や築年数、広さや間取りばかりが重視され「管理状態」は見落とされがちだ。しかし、マンションは「管理を買え」という格言があるほど、管理の良し悪しは居住快適性や資産価値を大きく左右する。

また、管理状態は管理費や修繕積立金の将来的な値上げに大きく影響する点にも留意しておきたい。とくに近年は人件費や建材費の高騰により、適正水準に設定していたマンションでさえ値上げを迫られるケースも増えている。想定外の費用負担を避けるためにも、購入前に管理状態をしっかり確認しておくことが重要だ。

株式会社さくら事務所のマンション管理コンサルタント土屋輝之さんに、購入前に確認しておきたい書類とそのチェックポイントを聞いた。

さくら事務所マンション管理コンサルタント 土屋輝之さんさくら事務所マンション管理コンサルタント 土屋輝之さん

中古マンション購入前に確認したい「書類」チェックリスト

✓ 書類 確認ポイントの要点
□ 重要事項調査報告書 管理費・修繕積立金の滞納状況、大規模修繕の履歴・予定 など
□ 管理規約・使用細則・リフォーム細則 ペットの飼育、民泊・事務所利用、喫煙などの可否、リフォームの制限 など
□ 長期修繕計画書 今後の修繕内容と費用の見通し など
□ 修繕履歴一覧 過去の大規模修繕の実施状況 など
□ 管理組合総会議案書・議事録(直近3年分) 建物・設備トラブル、住民間クレーム、訴訟、滞納者の有無 など
□ 管理会社との委託契約内容(管理仕様) 全部委託・一部委託・自主管理の別、管理員の勤務形態 など

まず「重要事項調査報告書」は、マンションの管理状態を説明する代表的な書類である。売買契約や物件に関する重要な事項をまとめた「重要事項説明書」と異なり、仲介会社が作成するのではなく、仲介会社がマンション管理会社に依頼して発行してもらう書類だ。一般的に、管理費・修繕積立金の月額や修繕積立金の総額、借入金の有無、管理規約の概要などが記載されている。

重要事項調査報告書は、マンションの管理状態を網羅的に確認するうえで役立つ書類といえるが、土屋さんによれば、管理費・修繕積立金の適正性や今後の修繕計画、管理規約の詳細などを知るうえでは不十分だという。加えて、以下も優先的に確認しておきたい書類等だという。

● 管理規約・使用細則・リフォーム細則
● 長期修繕計画書
● 修繕履歴一覧
● 管理組合総会議案書・議事録
● 管理会社との委託契約内容

管理規約・使用細則・リフォーム細則

建物・専有部分の利用に関するルール
□ リフォーム可能範囲(専有部分の定義、床材制限、申請書届け出期限)
□ ペット飼育の可否(種類・頭数・サイズ制限)
□ 楽器演奏の可否・時間制限
□ 事務所利用・民泊利用の可否
専有部分と共用部分の境界
□ サッシ・玄関ドア・窓枠の扱い
□ バルコニーの使用権(専用使用権だが共用部分)
□ ルーフバルコニー・専用庭の使用料や制限
管理費・修繕積立金の算出方法
□ 金額は専有面積に応じるのか
□ 平米単価
□ 過去の増額履歴と今後の増額予定
駐車場・駐輪場・バイク置き場
□ 空き状況(稼働状況)
□ 機械式の場合、利用可能な車両の条件(長さ・幅・高さ・重さ)
□ 申し込みは抽選方式か先着順か
□ 利用料の改定履歴

管理規約は、そのマンションの「ルール」を示した書類だ。専有部分(自分の部屋)と共用部分(廊下・エントランス・バルコニーなど)の定義、ペット飼育や民泊利用の可否、管理費・修繕積立金の算出方法、駐車場・駐輪場の運用ルールなどが定められている。使用細則は管理規約を補完する細かいルール集で、リフォームに関するルールは別途リフォーム細則にまとめられていることもある。

「リフォームを検討している方は、とくにリフォームの規定をよく確認されることをおすすめします。購入時にリフォームをしないとしても、リフォームの制限はこれからの生活に深く関わってきます。たとえば、遮音・防音を重視し、フローリングが禁止になっているケースも少なくありません。

また、民泊や事務所利用の可否、ペットの制限、駐車できる車両の制限などもとくに管理規約で確認しておきたいポイントです。数は少ないですが、専有部含め、敷地内が全面禁煙というマンションもあります。

注意が必要なのは、管理規約の改定が予定されているケースです。たとえば今は民泊利用が許可されていても、来期から禁止になる予定となっていることもあります。こうしたことは管理組合総会議案書で確認できます」

長期修繕計画書・修繕履歴一覧

長期修繕計画書・修繕履歴一覧
□ 長期修繕計画の有無と内容、見直された時期
□ 直近の大規模修繕の実施状況(修繕履歴)
□ 今後予定されている修繕と費用見込み

「実は、長期修繕計画が策定されていないマンションもあります。この場合、修繕積立金の金額に妥当性はなく『壊れたら直す』という場当たり的な修繕になってしまうおそれがあります。大規模修繕工事のため一時金が徴収される可能性もあるでしょう。長期修繕計画があったとしても、新築時から見直されていない場合は注意が必要です。計画は5年に一度の見直しが推奨されており、近年はとくに建築費や人件費が顕著に高騰しているため、定期的な見直しが不可欠です」

管理組合総会議案書・議事録

管理組合の財務・保険加入状況
□ 修繕積立金の残高
□ 直近の大規模修繕の実施状況(修繕履歴)
□ 損害保険の加入状況
管理費・修繕積立金の滞納状況
□ 滞納率
□ 長期滞納者の有無
□ 滞納者への対応方針
総会・理事会の運営状況
□ 年1回以上の総会開催の有無
□ 理事会の活動状況(理事会の開催状況)
□ 議事録の内容(建物・設備トラブル・騒音などクレームの有無)

管理組合総会議案書とは、総会で報告・決議される議案の詳細や審議経緯、理事会での検討内容などがまとめられた書類だ。管理費・修繕積立金の予算と決算、大規模修繕の計画、役員の選任といった内容が記載されており、重要事項調査報告書では確認できない事業内容や収支の詳細まで確認できる。議事録は、総会での審議内容と決議結果を記録したものであり、住民からの質問や意見、建物・設備に関するトラブルなども残されている。

「議案書を見れば財務状況の詳細に加え、管理費・修繕積立金の値上げ予定や直近の工事予定なども分かります。できれば3期分ほど見ておくと安心でしょう。次のような事象が見られる場合は、管理費・修繕積立金の値上げの予定はなくても値上げせざるを得ない状況になったり、マンションの持続可能性が低い可能性があります」

● 収支報告書に修繕費用などの借入金がある
● 修繕積立金が極端に低い(ガイドラインや他のマンションと比較)
● 長期修繕計画が10年以上見直されていない
● 「建物・設備の瑕疵」「住民間のトラブル」「訴訟」「滞納者多数」などの記載がある
● 大規模修繕工事が実施(計画)されていない
● 損害保険に加入していない

管理委託契約書(管理仕様書)

管理委託契約書(管理仕様書)
□ 全部委託管理・一部委託管理・自主管理
□ 管理会社の変更履歴
□ 管理員の勤務形態(常駐・日勤・巡回)

管理委託契約書は、マンションの管理組合が管理会社に建物の維持・管理などを委託するための契約書だ。

「管理委託契約書で確認したいのは、主に上記の3つ。自主管理で運営が不透明な場合は、運営実態を確認しておく必要があるでしょう。また、管理会社を頻繁に変更している場合も注意が必要です。度々、管理会社を変更されている管理組合は運営状況に何らか看過できない支障があり、管理会社から管理委託契約を解除されている可能性があります」

各書類はいつ・どうやって確認すればいいのか

土屋さんに挙げていただいた書類等は、中古マンションを検討する際に当然に確認できるわけではない。重要事項調査報告書については、仲介会社に義務づけられている重要事項説明を補完するものであり、契約までに内容を確認できる。しかし、確認できるタイミングが「契約直前」であるとすれば、購入の可否を判断するうえでは遅すぎる。

「重要事項調査報告書の取得には一定の費用がかかるため、売買が決まるまで仲介会社が取得しないケースもあり、検討段階で確認できない場合があります。総会議案書や議事録にいたっては、黙っていると契約の場でさえ見られないこともあります。検討段階でこうした書類を見せてほしいと言うことはできますが、書類を確認せずともすぐに購入を決めてくれる買主がいれば、仲介会社はそちらを優先するでしょう」

中古マンション市場が活況な現在、人気物件はとくに内見から申し込みまでのスピードが購入の可否を左右する場面もある。判断を後回しにしていると、買い逃してしまうリスクがあるのも事実だ。では、管理状態はマンションを購入した後に確認するしかないのだろうか?

「指名買い」であれば即決できる事前準備を

「特定のマンションを狙っているのであれば、販売される前から管理状態を確認できる書類を見ておくといいと思います。あらかじめ管理状態を把握しておけば、条件に合う部屋が売りに出たタイミングで即決できますからね」

2022年にスタートした国の「マンション管理計画認定制度」やマンション管理業協会の「マンション管理適性評価制度」を活用するのも一案だろう。いずれもマンションの管理状態や管理組合運営の状態を客観的に評価する制度で、認定・評価されたマンションが公開されている。

「エージェント選び」が分岐点に

土屋さんが強調するのが、仲介エージェント選びの重要性だ。重要事項調査報告書をはじめ、各書類を収集・分析してくれるのはエージェントであり、エージェントの知識やスタンスによって購入前に得られる情報の質と量は変わってくる。「仲介会社」ではなく「エージェント(担当者)」で選ぶことが重要で、同じ仲介会社でも担当者によって対応はまったく異なるという。

「買主が管理状態をしっかり把握したいと思っていても、対応するための知識や姿勢が十分なエージェントばかりではありません。昨今はマンション管理の重要性が認知され始めてきているものの、まだまだ『重要事項説明の場で規約をさらっと見せて終わり』『議案書も直近1年分だけ』といったケースも少なくないのが実情です。物件のニーズの強さによっては、書類を全部確認してから契約というのが叶わないこともあります。それは現実として受け入れたうえで、少なくとも確認できる書類は事前にできるだけ揃えておくことが大切です」