移住者や地元住人との交流が楽しめる滋賀県のツアー

ツアーの拠点となる、築150年の古民家を移築して建てられた体験施設「山里暮らし交房 風結い」ツアーの拠点となる、築150年の古民家を移築して建てられた体験施設「山里暮らし交房 風結い」

「田舎暮らし」や「移住」といったワードをネットや書籍でよく目にするようになった。関西圏でも、移住者の受け入れに力を入れている市町村がある。そのうちのひとつが滋賀県だ。滋賀県では、県が主催し自治体やNPO法人が運営する「移住体験ツアー」を2014年から毎年、年度(4月〜翌3月)中に3回開催されており、毎回満席になるのだという。

県が主催し、NPO法人結びめが運営した2015年秋の「移住仲間とつながるツアー」では、琵琶湖の西側に位置する大津市と、その北隣にある高島市、のどかな田園風景が広がるこの2つの田舎町を巡った。すでに移住しているそれぞれの家族や、地元でずっと暮らしている住人の方々との交流をはじめ、農業体験などもできる。移住を検討する人の中には、農業や林業への就業を希望する方も少なくないのだ。移住検討者にとっては、どんな町で、どんな仕事をし、どのような暮らしをしているのかは、やはり気になるポイントだろう。今回のツアーでは、地元の滋賀県をはじめ大阪、神戸市、京都、名古屋などから、子どもや大学生を含む老若男女27名が参加しており、2つの町それぞれで移住者との交流を通じ、質問や相談などが意欲的に行われていた。

移住者や地元住人との交流で、暮らしやすさとその苦労を聞く

「移住仲間とつながるツアー」は、丸一日をかけて農業体験や町の見学会、交流会が実施される。築150年の古民家を移築して建てたという体験施設「山里暮らし交房 風結い」で挨拶がありその後、田んぼ(農地)へ移動。数年前に他県から移り住み、農業を営んでいる先輩達から、稲の刈り方やハザ掛けの仕方などの説明を受け、稲刈り体験が行われた。
長靴と軍手・帽子・稲を刈るカマを手に、見よう見まねで農作業をする参加者の中には、「子どもの頃、こんなことやってたな」という年配の方もいれば、「生まれて初めて農作業したけど、土や稲を刈るときの匂いって和むわ」という若い男性も。子どもと一緒に作業をする母子もいて、子どもが「なんで、ハザ掛けするの?」と聞いたり、真剣ながらもそれぞれ楽しんで作業をしていた。

農業体験のあとは、「山里暮らし交房 風結い」に戻り、地元の主婦の方々が作った定食でランチタイムとなる。食材は、無農薬米ミルキークイーンのご飯をはじめ里芋、人参、大根、わらび、ずいき、花豆といった地元で採れた野菜を使った豚汁、煮物、酢和え、素揚げ、漬け物など田舎料理がずらりと並んだ。このランチタイムは、参加者と移住者、地元の住人、主催者、運営者みんなが一緒に集い食事を楽しむ。それぞれに、「ここでの暮らしはどうですか?」「子どもの幼稚園や学校はどうですか?」、「移住して来て、仕事はありますか?」、「農業をしたいと思っているんですが、経験がなくて」、「移住してきて大変だったことは何ですか?」といった会話があちこちで聞かれ、盛り上がっていた。ここで出会った移住者の方は、農業・林業・アクセサリー作家、理学療法士などに従事していた。

上部2枚:稲刈りとハザ掛けの農業体験の様子。下部2枚:地域の住民、移住者、参加者の交流となるランチタイム上部2枚:稲刈りとハザ掛けの農業体験の様子。下部2枚:地域の住民、移住者、参加者の交流となるランチタイム

築100年、伝統的な古民家が残る山村、町居集落を見学

「山里暮らし交房 風結い」での交流のあとは、築100年超の古民家が建ち並ぶ町居集落へ場所を移動し、街並みと集落を取り囲む自然を眺めながら実際の暮らしぶりを見学する。この集落を案内してくれたのは、移住してきた方とずっと住んでいる方で、これが移住者、地元住人との2回目の交流となる。
町居集落には、古民家を改修した民宿「マチイハウス」や古民家ゲストハウス「里山舎 源六」があり、それぞれ1棟貸しをしている。もちろんツアーでは、この2棟ともに見学ができる。この2棟は別荘のように利用することもできれば、短期間借り住まいをすることも、古民家や山村との暮らしを含め住民とのコミュニケーションなどを、移住前に疑似体験することもできるというものだ。三重県から家族でこの町居に来て7年になる木村さんは、オープン前のマチイハウスの改修を手伝ったのが移住のキッカケだったという。

ツアー参加者は、集落内を一通り見学し終えたあと、このマチイハウスでティータイムを通じた交流会へと入って行く。ここでの質問もやはり、暮らしぶりや仕事のこと、子育てのこと、古民家での暮らしについてなどがメインだった。この集落の目の前には大きな川が流れており、子ども達は川岸に自生している樹木にヒモや板でブランコや足場などを作り、子ども基地局(別名:子どもマンション)と命名していた。仲間と一緒に木に登ったりブランコをしたり、のびのびと遊ぶ姿は見ていて実に気持ちが良かった。参加者の一人は、「私は、都心部で生まれ育ったので田舎と呼べる所がなく、友達が夏休みや冬休みに家族で田舎に帰省するのをみて、羨ましく思っていました。子育ての期間だけでも田舎暮らしをするのもいいかなと考えていて、ここに住むことで子どもの糧になるんじゃないかと思ったんです。心に田舎があるのとないのとでは違う。子ども達に、田舎を作ってあげられたらいいなと思って参加しました」と話していた。

上部2枚:町居集落内の町並み。左下:子ども達の手作り、木の上の「子ども基地局」。右下:町居集落に移住してきた小野さんと隣町に移住してきて30年のワンダさん上部2枚:町居集落内の町並み。左下:子ども達の手作り、木の上の「子ども基地局」。右下:町居集落に移住してきた小野さんと隣町に移住してきて30年のワンダさん

移住者が語る生の声

今回のツアーで、参加者と実際に交流された移住者の方々に、住み心地や暮らしぶりなどについて聞いてみた。

平井さん、ご主人様(7年前に大阪から移住、夫婦と子どもの3人家族)
移住のキッカケは、嫁が田舎でのんびり暮らしたいとずっと言っていて、丁度この高島市に友人がいて畑仕事を手伝いに、ちょくちょく通っていたんです。それで、その話しをしたら移住してきたら!と誘われてそのまま引越してきました。今は林業の仕事をしながら生活をしています。大阪での暮らしは、家賃や生活費を稼ぐために仕事をしている感覚が強くて、落ち着かないというか居場所がない感じでした。住宅の賃料も安くて広いし、ここでの暮らしは本当にのんびりしていて気持ちに余裕ができるというか、すごく過ごしやすいです。

嵯峨さんの奥様(3年前に栃木県から移住、夫婦と子ども3人の5人家族)
2011年に起きた東日本大震災がキッカケで、移住してきました。夫婦ともに関東出身だったんですが西日本の方が安全かなと思い、移住先を探していたんです。そしたら滋賀県が移住者の受け入れに力を入れているのを知って、東京のセミナーに参加しました。ここには、親戚や友人といった知り合いが誰もいなかったですし、子どもがまだ幼稚園に入る前で小さかったこともあって、当初はとても大変でした。でも、子どもが幼稚園に通うようになって、ママ友や知り合いが増えていって、お互いに色んなことを話すようになり、そこから凄く楽になりました。移住してきてから、子どもが2人増えて3人になったこともあって、少し前に戸建てを新築で購入しました。ときどき、近くの田んぼに手伝いに行ったりしています。

藤田さん夫婦(3年前に大阪から移住、夫婦と子ども2人の4人家族)
ご主人様:夫婦ともに自然のある所に住みたいと思っていました。金属工芸の仕事をしているんですが、大阪に住んでいるときから自宅と工房を一緒にしたいと思っていて、物件を探していたらこの場所に丁度いい物件があったので決めました。収入は大阪にいたときの方が上ですが、自宅と工房を一緒にするのは出来なかったと思います。
奥様:郊外の中途半端な新興住宅は嫌で、都会か田舎の2択で考えていてやはり田舎に住みたいと思いました。住んだときのギャップについても聞かれますが、都会だからとか、田舎だから、というよりどこに行っても場所が違うので、ギャップがあって当たり前だと思うんです。買い物施設が遠いとかコンビニがないとか、気にされる人もいますが今はネットでも購入できるので、わざわざ人の多いところに行って買うより楽だと思います。
近所に住む地域の方も、子どものいる若い世帯がやって来た!と喜んで受け入れてくれました。うちの子なんて、孫のように可愛がってもらってて、子どもも近所のお家を親戚の家みたいに思っているのか、勝手に上がって遊んでたりします。

良かったこと、苦労したことなど、移住に関するメリット・デメリットを実際に他府県から移住して来た方々から聞けるというのは、田舎暮らしを検討している人にとっては、またとない体験になったのではないだろうか。
このようなツアーを今後も開催する予定だという。田舎への移住を考えているなら、まずは参加して自分の目で見て、聞いて、体験しながら情報を集めてみてはどうだろうか。

<取材協力>
滋賀県
http://www.pref.shiga.lg.jp/b/shichoson/iju/top.html

NPO法人結びめ
http://www.musubime.tv/

マチイハウス
http://www.machii-house.com/

古民家ゲストハウス 里山舎 源六
http://machii-genroku.com/genroku/index.html

他府県から移住して来た複数のにこやかファミリー他府県から移住して来た複数のにこやかファミリー

2016年 02月27日 11時00分