京町家での暮らしの継承と景観の修景を目指す!

明治から大正時代にかけ呉服商が営まれていた建物で、平成22年以降は空き家となっていた。大型町家が連なる家並みは本町通り沿いの優れた歴史的景観に大いに寄与していることから「景観重要建造物」の指定を受け、改修後は龍谷大学が借り受け「深草町家キャンパス」として学生の研究発表の場や地域住民との協働活動・交流拠点となっている明治から大正時代にかけ呉服商が営まれていた建物で、平成22年以降は空き家となっていた。大型町家が連なる家並みは本町通り沿いの優れた歴史的景観に大いに寄与していることから「景観重要建造物」の指定を受け、改修後は龍谷大学が借り受け「深草町家キャンパス」として学生の研究発表の場や地域住民との協働活動・交流拠点となっている

歴史的な文化財や寺社仏閣が多く残る古都・京都。毎年多くの観光客が訪れ、風情ある街並みを歩きながら、その情緒を楽しんでいる。その京都ならではの景観を形成している幾つかの要素のひとつが、京町家だ。

京都には、『京町家まちづくりファンド』という京町家の保全・再生を支援する基金がある。
『京町家まちづくりファンド』は、国・府・市の文化財や景観法に基づく「景観重要建造物」などの指定に向け、伝統的な外観意匠への復元をはじめ、京町家としての基本的な空間構造を保全または復元し、暮らしの文化の継承へとつなげることや、地域で取り組む歴史的まちなみ景観の修景の取り組みを支援している。

「平成20年、21年に、京都市と公益財団法人京都市景観・まちづくりセンター、そして立命館大学が合同で実施した調査では、48,000件の京町家が確認できました。ただ、1年間に1.5〜2%の京町家が減少していることもわかっており、マンションや駐車場などに姿を変え、街の景観も変貌しつつあります」そう話してくれたのは、『京町家まちづくりファンド』の運営・管理を行っている公益財団法人京都市景観・まちづくりセンター、事業第二課の担当者だ。『京町家まちづくりファンド』とは、どのような基金なのか、またその支援内容と京町家の現状について話しを伺った。

『京町家まちづくりファンド』設立のきっかけは、5,000万円の寄附金

通りに面する京町家の表に、コンクリート造にみえる増築を施した、看板建築(Before・画面左)を元の姿に、復元・改修した京町家(After・画面右)通りに面する京町家の表に、コンクリート造にみえる増築を施した、看板建築(Before・画面左)を元の姿に、復元・改修した京町家(After・画面右)

そもそも、『京町家まちづくりファンド』が設立された経緯は、どういったものだったのか。
まちづくりセンターの担当者は「平成17年に、関東の方から伝統文化の保存に役立てて欲しいと、京都市に5,000万円の寄附があったんです。そこで、その寄附金に加え、京都市と国からの出資金を併せて、1億5,000万円の資金をもとに『京町家まちづくりファンド』が設立されました。その資金と日々、皆様からいただく寄附金によって助成を行っています」と穏やかに話してくれた。2015年で設立10年を迎え、現在までに補修・改善した京町家は70件を超える。

「文化財クラスの京町家には、税金を投入し一定の維持支援ができるのですが、一般的に個人の住宅となる京町家の修繕に関する助成は、難しいのが実情です。そういった意味では、この『京町家まちづくりファンド』を通じて、個人所有の資産となる住宅(京町家)に対し、助成できる仕組みを導入したことは、画期的なことだと思います」と担当者は語る。そのため、同ファンドでは文化財クラスの京町家や、先の項で述べた暮らしの文化の継承を理由に、店舗・ギャラリーなどに使用されてはいるが、住居として活用していない物件は対象外となっている。助成の対象は、街並みに関与する外観の改修・復元などで、その費用の2分の1、かつ250万円までを負担するという。

毎年、助成する物件数が決められ、この制度を利用するには、まず適用条件を満たしているかどうかの審査が行われる。改修の設計図面とその見積書など、各種書類を提出し、学識者、経済界の方、建築家などから構成されるファンド委員会によって審査され、その中から物件が選出される。提出書類や適用条件などの詳細は、事前説明会で確認することができるという。

京町家を次世代に引き継ぐための取り組み

京町家まちづくりファンド』のロゴマーク(左下)のある「寄附金付商品」の購入で、京町家の保全に、気軽に貢献できる京町家まちづくりファンド』のロゴマーク(左下)のある「寄附金付商品」の購入で、京町家の保全に、気軽に貢献できる

『京町家まちづくりファンド』への寄附は、一口1,000円からできるという。窓口で直接、寄附される方もいれば、振込みの方もいるようだ。その他、井筒八ッ橋をはじめ京都青果合同や京都府下の平和堂などで販売されている株式会社ドールのバナナ、自動販売機など、『京町家まちづくりファンド』のロゴマークが付いた、寄附付き商品を購入することで、一般の方々をはじめ観光客も貢献することができるという。

『京町家まちづくりファンド』では、歴史的まちなみ景観の修景などがメインのため、外観の改修に対して助成される。では、内装についてはどうなのだろうか。京町家に住んでいると、外観はもちろん室内も、修繕したいと思うハズである。質問してみると「公益財団法人京都市景観・まちづくりセンターには、専門家の調査に基づき発行する『京町屋カルテ』というのがあります。基礎情報・文化情報・建物情報・間取り図で構成されたこのカルテは、京都信用金庫の『のこそう京町屋』という一般より低い金利で、ローンの借入が出来る要件のひとつになっているんです」というのだ。

先の項で触れた「平成20年、21年に実施した調査で分かったことですが、京町家を所有または居住されているにも関わらず、ご自身のお家を京町家だと認識されていない方も中には、いらっしゃったんです」と話しが続く。「そのため、単なる古い建物と認識されていたり、京町家だと知っていてもどうすればいいのか分からない方もいらっしゃるので、不動産のとしての価値も、他の中古住宅と同様にしか評価されていないのが現状です」と語る。京町家が継承されずに取り壊されていく原因のひとつに、自分が所有する建物が京町家であるという認識不足と、その価値を知らないということが言えそうだ。そこで、京町家の価値を理解し今後の維持、管理、次世代への継承に役立てられることを目的として『京町家カルテ』が誕生したという。

「今まで申請された方の中には、親御さんは京町家の良さを知っていて残したいと思っているが、子供達がその価値を理解していないというケースに役立っていたり、改修の際にカルテを参考にすることもあります。このカルテの交付をキッカケに京町家の継承に一役買っているのでは、と実感しています」と担当者は話す。カルテの発行には、総額35,000円が必要だが、昨年だけ50件を超える利用があったという。

その他、改修・活用・相続など、京町家を次世代に引き継ぐため、専門相談員による『京町家なんでも相談』を無料で受付している。

『伝統軸組構法』での京町家・新築は、ほぼ不可能

伝統軸組構法での新築が難しいとされる京町家(写真:井上成哉氏)伝統軸組構法での新築が難しいとされる京町家(写真:井上成哉氏)

京町家は、平入・切妻を基本とした大屋根で覆われ、坪庭を設け夏の暑さ対策を重視した、風通しの良い造りになっている。「京町家と呼ばれる建物は、江戸時代から昭和25年までに、『伝統軸組構法』という構法で建てられたものをいうんです」と担当者の方は、京町家と呼ばれる建物について話してくれた。続けて「昭和25年に施行された建築基準法では、木造住宅の構造は、現在一般的となっている在来構法で規定されたため、京都で培った『伝統軸組構法』での建築が難しくなりました」と残念そうに声のトーンが下がる。こういった理由で現在の木造建築は、在来構法で建てられることが多く、『伝統軸組構法』を設計・施工できる職人がほとんどいないという。そのため、京町家を新築できる可能性は限りなく低く、取り壊されると再現が難しいことから、減少の一途をたどるばかりなのだ。

京町家の空間構造を保全または復元し、暮らしの文化を継承するということは、京都市民はもちろん、その景観を楽しみたい私たちにも関係しているようだ。『京町家まちづくりファンド』の活動は、みなさんからいただく寄附金で運営されている。現在の資金が底をつくと、京町家の継承はどうなってしまうのかと、考えさせられる。これからの運営を見守りたい。


取材協力:公益財団法人京都市景観・まちづくりセンター
http://kyoto-machisen.jp/fund/index_fund.html

2015年 07月06日 11時07分