大工の腕の見せどころ「手刻み」という技術

伝統を継承する大工職人の手刻みの技術伝統を継承する大工職人の手刻みの技術

家は大工が造ると思われがちだが、なかには工場で機械加工された木材・プレカットを現場で組み立てているだけで、大工が手を加えていることは、ほとんどないというケースも多く見受けられる。大量生産と効率化、コストダウンを目的としたシステマチックな住宅建築が増えている。

プレカットされた木材の精度は高く、木と木の接合部がくるいなくピッタリはまるといわれるが、機械で加工できる継手や仕口の種類は限られる。また、接合部が固くなり過ぎてしまい、加工した部分(仕口)に地震の力が集中し傷めやすかったり、反対に後から木が痩せてきたとき仕口に不具合が生じるというデメリットもある。大工の手仕事のように伝統技術を使った繊細な細工ができないため、金物によって強度を補う必要があり、木造軸組とはいうものの実は金物頼みの構造になっている。

機械のそれとは逆に、大工職人が手作業で行う「手刻み」という技がある。手刻みとは、大工職人の伝統技術のひとつで、柱や天井に使う木を1本ずつ選び、その木を手で刻んでいくという家づくりのベースとなる作業。山から切り出した丸太は、柱や梁、間柱などに製材され、その製材された木材は、大工の手によって住宅の構造材として生まれ変わる。プレカットの使用が主流になった今、その技術があっても腕を振るう機会が少ないことや、大工の減少により手刻み・木組みでつくられる家は少なくなっているという。

震災で見直された大工職人の技術

伝統技術の「手刻み」と「木組み」でつくる大工職人伝統技術の「手刻み」と「木組み」でつくる大工職人

大工職人の“手刻み”や“木組み”といった技術の実力が証明されたのは阪神淡路大震災のこと。見直されはじめたこの技術は、住宅の被害は最小限にとどめられた岩手宮城内陸地震でも、地震後調査に入った建築士会が、伝統的な家のつくりが地震の被害を最小限にとどめたとの結論をだし新聞などでも発表している。

人間も同じ人がいないように、木の1本1本に曲がりや反りといった特長がある。大工職人は、どの柱にどの木が合うかなどを見極め、微調整しながら手道具で刻んで仕上げていく。木の魅力を最大限に引き出すこういった一連の作業は、機械にはできない仕事といえる。

また、木材の適材適所や木の性質を熟知しているからできる大工の仕事がある。例えば、吉野杉を梁に使う場合、木の表と裏を判断し組み立てる向きを決める。その表裏を間違うと耐震力を狂わせかねない。また土台には、強度と防腐・防虫効果のある檜の中心部分の赤味を使う。こうすることで、白蟻対策になり防虫のための薬剤散布や防虫シートといったことをする必要がなくなるという。これは、将来に渡ってコストが押さえられるという施工主にとってうれしい効果のひとつでもある。

1本1本刻んで、家をつくっていく分、大工をはじめ建てる側の意気込みや想い入れも変わる。時間も技術も必要になるが、手刻みでしかつくれない家があると羽根建築工房の羽根さんはいう。

大工の腕の差は、骨組みに現れる

骨組みを意匠として表現した国産杉の家(写真:及川雅文)骨組みを意匠として表現した国産杉の家(写真:及川雅文)

フランク・ロイド・ライトのもとで建築を学び、帝国ホテル建設の際に来日した建築家アントニン・レーモンドは、「構造即意匠」という日本の木造住宅の美しさと合理性に強い興味を抱いたという。

木の骨組みを意匠にするという日本人の美意識が生み出したデザイン性のある住宅。これは、腕の良い大工にしかできない仕事だと容易に推測できる。

住宅建築で、大工の腕の差が一番出やすい所、それは「骨組み」だ。建物が完成してしまうと見えなくなってしまう場合があり、ともすると雑になってしまいがちになる。しかしこの仕事は、建物の強度を左右する肝心要の作業であり、しっかり作業しないと後で仕上げをする外壁やクロス、屋根などの出来映えにも影響を及ぼすことになる。木の性質を知る大工が柱・梁・床材といったそれぞれの適材適所を見極め、建物構造となる骨組みをしっかりつくることで、耐震性・耐久性に優れ、かつ外壁や住戸内の壁も凹凸なくキレイに仕上げることができる。

ここまでくると、気になるのが一戸建ての建築にかかる費用だ。
間取りや仕様、使用する材木の種類など住まい手の要望に応じて設計プランを決めていく羽根建築工房では、坪単価65万円〜120万円程(設備費用込み・外構費別)が目安だという。

取材協力:有限会社羽根建築工房
http://hanebou.com/

2013年 10月04日 10時38分