窓の性能を決めるのは?

取材に行った品川のYKK AP ショールーム取材に行った品川のYKK AP ショールーム

「結露」対策などをはじめ、住まいの住み心地を大きく左右する「窓」。快適な住まいを実現するには「窓」の性能にも目を向けなければならない。

では、性能の高い「窓」を選ぶにはどういった点を意識すればいいのか?素人考えでは「窓の性能を決めるのはガラス部分」と思いがちだが、それだけではないようだ。そこで今回は、窓メーカーでもあるYKKAPのショールームへ取材に行ってきた。

素材の組み合わせが「窓」性能を左右する

セレクトコーナーには、窓ガラスはもちろん、素材の違いが分かる窓フレームが並ぶ。セレクトコーナーには、窓ガラスはもちろん、素材の違いが分かる窓フレームが並ぶ。

ショールームにズラリとならぶ、窓フレームと窓ガラス。ここはセレクトコーナーと呼ばれる一角で、窓ガラスばかりではなく、一般的にサッシと呼ばれるフレーム部分の素材の違いも目にすることができる。

アテンドいただいたYKKAP品川ショールーム館長の杉本敦氏によれば、「窓性能を上げるためにはガラスの性能だけでなく、フレームの素材もセットで考えなければならない」という。

セレクトコーナーに並ぶ窓フレームの素材には、大まかに分けて「アルミ」「アルミと樹脂の複合」「オール樹脂」の3種に分かれる。
アルミは軽くてさびにくく、リサイクル性に優れているという利点があるが、熱の伝わりが良いため、冬場だと冷気にさらされ結露が発生しやすい材質となる。
そこで、熱伝導率がアルミの1000分の1となる樹脂素材を室内側に使っているのが「アルミと樹脂の複合」フレームだ。アルミから伝わる冷たい熱を樹脂で押さえることができるため、冷たい熱が部屋まで伝わらず結露が発生しにくくなる。
もちろん、室外側・室内側ともに樹脂素材を用いた「オール樹脂」フレームになると、さらに室内の断熱性は高まるという。

一方、断熱性の高いガラスは大きく分けて2種類になる。ガラスを2枚重ねた「複層ガラス」と複層ガラスの空気層側に特殊な金属膜をコーティングした「Low-E複層ガラス」と呼ばれるもの。室内20℃、湿度60%の状態で結露が発生する外気温度が複層ガラスは-5℃なのに対し、Low-E複層ガラスになると-22℃にまでもちこたえることができるという。

断熱性の実験コーナーで見てみると素材が生み出す性能の違いは明らかだ。外気温度を変えられる装置でどこまで室内側のフレーム部分の温度が下がるかを実験すると以下のような数値※となった。
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●単板ガラス×アルミフレーム
外気温度:13.2℃  フレーム温度:14.3℃

●複層ガラス×アルミと樹脂の複合フレーム
外気温度:10℃   フレーム温度:19.3℃

●Low-E複層ガラス×樹脂フレーム
外気温度:9℃   フレーム温度:23℃
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若干外気温度に違いがあるものの、「単板ガラス×アルミフレーム」と比較して「Low-E複層ガラス×樹脂フレーム」で10℃近くフレームの温度に影響が出てくる。部屋の暖かさが大きく変わってくるだろう。

※数値は「YKK APショールーム品川 実験装置による参考データ」

日本では遅れる樹脂の普及!?

YKK AP 品川ショールーム 館長の杉本 敦氏YKK AP 品川ショールーム 館長の杉本 敦氏

樹脂フレームが断熱性能を高める上で1つのキーポイントになるようだが、「日本ではまだまだ樹脂フレームは普及していないのが現状」と杉本氏は言う。

「ドイツやアメリカの樹脂フレームの普及率が50%を超えるのに対し、日本ではまだ9%ほどです。日本では、もともと木製の窓枠が普及していたものを1960年代にアルミの加工のしやすさを考慮し、サッシメーカーがこぞってアルミ枠を普及させた歴史的な背景があります。そのため、現状では普及率としてアルミフレームが約6割、樹脂との複合フレームが約3割、オール樹脂のフレームが9%ほどとなっています。ただし、最近の省エネ志向とも相まって樹脂の断熱性の高さが注目されています」

確かに、樹脂が持つ断熱性の高さは理解することができた。しかし、強度や耐久性という面で不安はないのだろうか?

「確かにこのショールームにいらっしゃるお客様もその点を懸念されます。樹脂というのは塩化ビニールを素材にしていますが、その上にアクリル樹脂を使ってコーティングしているため耐久性に遜色はありません。実際に弊社では1980年代から樹脂フレームを提供していますが、30年経過しても問題なく使用していただいている実績がありますので、こうしたお話をしますとお客様も安心されて樹脂フレームを選ばれる方が増えています」

YKKAPが進める「樹脂フレーム窓」

オール樹脂のフレームながら強度と断熱性、さらにデザイン性を兼ね備えた「APW330」シリーズオール樹脂のフレームながら強度と断熱性、さらにデザイン性を兼ね備えた「APW330」シリーズ

こうしたオール樹脂フレームと複層ガラスを組み合わせた窓製品として同社が展開しているのが「APW330」シリーズだ。
「性能の高さはもちろん、デザイン性にもこだわった製品です。樹脂フレームとガラス面を接着技術を使って一体化させているため、強度を保ちながらフレームを細く美しいプロポーションに仕上げています。また防犯性にも考慮し、外からカギの位置が分からないようなデザインにしています」

樹脂のフレームというと強度をもたせるために厚みがあって、悪く言えば「やぼったい」イメージもあった。しかし実際にショールームで見た樹脂フレームは、かなりスッキリとした印象だ。さらに直線的なアルミフレームとは異なり、「接着技術」を使っているからだというがカーブがかった美しいフォルムが印象的だった。

APW330は主に新築用の製品になるが、同社ではリフォーム製品としても既存窓を残しつつ、もう1つ内窓を取り付ける「プラマードU」を準備している。そのほか壁を壊すことなく今ある窓枠の上から新しいガラスを取り付けジョイントさせる「スマートカバー工法」によるリフォームも提案しているという。

リフォームでも考えたい「窓」のスペック

窓の性能を上げるには? 今まで着目してこなかった窓素材の違いを今回は詳細に知ることができて面白い取材だった。

YKKAPでは、現在9%といわれるオール樹脂フレームの窓普及率を30%にまで上げていきたいとしている。確かにアルミと比較し割高になる樹脂素材だが、その断熱性の高さを考えた時に選択肢の一つとなるはずだ。

「結露対策」をきっかけに窓に注目したこの連載。窓に力を入れるメーカー2社を取材することで、窓が住環境に大きく影響することがよく分かった。また窓に対する各社の取り組みの違いを感じられたことも興味深かった。LIXILでは窓マイスターといったサービスにも目を向け、断熱性という面では課題のあるアルミ素材を用いながらも技術力で断熱性を高めコストパフォーマンスを追求。一方、YKKAPでは、断熱性に優れた樹脂素材をフル活用し、これまでの実績を強みに耐久性や強度といった樹脂の課題を解消していた。

メーカーも今や性能の高さ、デザイン性、防犯性、そしてコストパフォーマンスとさまざまな工夫を凝らしている。こうした背景を念頭に置いて適材適所の窓選びができれば、快適な住まいづくりに必ず役立つはずである。

2013年 12月20日 10時09分