住まいで見落としがちな「窓」の重要性
結露などの問題に直結するのが、住まいの断熱性能。
正直今までは「窓」についてはデザイン性以外で意識をしてこなかった。しかし、「窓」は住まいの中で住環境を左右する重要な要素。外見はもちろんのこと、窓一つで住み心地も大きく変わってくるという。そこで、普段あまり意識していない窓の性能について今回は調べてみよう。一から窓について学ぼうと、窓をとりあつかうメーカーに「結露対策を窓から考える」をテーマに取材。今回、西新宿にショールームがあるLIXILに取材に行ってきた。
見えにくい“窓の性能”をショールームで体感
窓の性能といっても、なかなか見た目で分かるものではない。そこで、窓性能の違いを体感させてもらうことにした。
LIXILのショールームでは、窓の断熱性能を比較できる体験ルームがある。そこには非断熱の窓と断熱性能の高い窓が並び、住環境に与える影響を体感することができる。サーモグラフィで窓の温度を可視化できるのと、さらに窓の各部分の温度がディスプレイに表示される。
体感実験では、外気温度が東京の冬を想定した6.5℃、室内温度が22.7℃程度に設定されている。サーモグラフィでは非断熱の窓が青くなっているのに対し、断熱性能を高めた窓は暖かそうなオレンジ色を保っている。各部分の温度ディスプレイを確認すると、以下の数値となった。
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●非断熱の窓
壁の温度:19.1℃ ガラスの温度:12.2℃ サッシの温度:11.6℃
●断熱性能の高い窓
壁の温度:22.2℃ ガラスの温度18.5℃ サッシの温度:16.6℃
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実際に各部分を触ってみる。壁の温度は体感では驚くほどの違いは感じられなかったが、ガラスに触れるとその違いは明らかだ。非断熱の窓は古い木造住宅の冬の窓そのままで、触りたくないなと思うような冷たさだ。一方断熱性能の高い窓ガラスは冷たいという感触がない。サッシ部分は、ガラス部分よりも温度差は開いていないものの、実質温度以上に寒暖の差をはっきりと感じた。
窓一つでこれだけ住まいの暖かさが変わってくるとは正直驚いた。ということは、当然暖房費の節約になる。窓は省エネを考える上で大きなウエイトを占めるということだろう。
同社のシミュレーションでは、2階建ての住宅に複層ガラスタイプの内窓を追加した場合、一層ガラスのアルミフレーム窓と比較し、年間の冷暖房費が10,000円以上節約できるという試算もあるという。
住まいで見落としがちな「窓」の重要性
今回アテンド頂いたのが、LIXIL リフォーム推進統括部 リフォーム企画部の松永 光嗣氏。
窓と結露についてお話しいただいた。
「リフォーム時にキッチンやバスルームなど機能を改善するポイントには、みなさん意識を向けています。しかし、暑い、寒い、結露の発生といったような住環境の性能改善を促すポイントの“窓”にはなかなか意識が向かないのが実情です。例えば、冬の場合、住宅全体の熱の約58%が玄関や窓といった開口部から流出していきます。窓によって断熱性能をあげれば結露の発生も抑えられますし、何より暖かな居住空間を実現できます。窓をきちんと断熱化することは省エネ効果が格段に変わります。断熱というと冬だけのイメージですが、もちろん夏場のエアコンの効きにも影響します。冷やした空気を外に逃げにくくするため冷房費もダウンします」
なるほど断熱性というのは、冬場を快適にするだけでなく夏の住空間にも大きく影響するものなのだ。「結露」を押さえることはもちろん、省エネに効果があるのは魅力がある。しかも最近では政府による補助金もあるという。
「政府もCO2の排出削減のために、省エネを実現する高性能建材を用いたリフォームに対して補助金を交付しています。もちろん“窓”はこうした補助金制度の対象になるので、高性能な窓を選ぶことは多くのメリットをもたらすはずです」
LIXILの提案する「窓」とは?
同社では、高断熱を誇る複層ガラスのシリーズとして「SAMOS II」を提供している。
「通常アルミは熱伝導率が高く断熱性能に弱点がありますが、『SAMOS II』ではアルミフレームを極限にまで縮小、高性能なガラスの面積を最大限に拡大し断熱性能を高めています」
しかもアルミフレームを縮小したことで、優れたデザイン性も実現しているという。ショールームで実際に見ると、窓の解放感を実感できる。窓枠がほとんど見えないため、室内から外部の景観がダイレクトに届く印象だ。
ただし、これをリフォームで実現しようとすると大がかりな工事が必要になってくる。ではリフォームで手軽に窓性能を高めるにはどうしたらいいのか? 最近よく用いられるのが既存の窓はそのままに、室内側にもう一つ「内窓」をつける手法だという。断熱効果の体験ルームにあったのが、樹脂フレームの内窓『インプラス』だ。工事も簡単で、1つの窓であれば約1時間で取り付けられるため、顧客からのニーズも増えているという。
また、同社では製品以外にも面白いサービスを展開している。それが「窓マイスター」による窓診断サービスである。「窓マイスター」とは、LIXILリフォームネットに登録するリフォーム施工会社の社員を対象にした認定制度。窓を起因とする住まいの問題の改善提案をするスペシャリストのことだ。
窓マイスターはサーモカメラや温度計・湿度計の機器を駆使しながら窓の診断を行い、最適な提案を行ってくれるという。なかなか目に見えない問題だけに、視覚化やデータに基づく改善提案をしてもらえることは、リフォーム後の生活をしっかりとイメージすることに役立つだろう。
窓についてさらに考えてみる
今回、「結露」をきっかけに「窓」の性能に着目したが、快適な住まいを作るには「窓」が非常に重要なポイントになることが分かってきた。暑さ、寒さの課題解消に役立ち、省エネを推進する。さらに防犯や音の問題なども窓によって解決できることは多いという。
LIXILでは性能の高い窓製品を追求しているのはもちろんのこと、なかなか私たちが気が付きにくい住環境の改善ポイントを窓診断という形でサービス化していたことが興味深かった。「窓」を単なる住まいの設備として見るのではなく、住環境を大きく左右する重要なファクターとして考えなければならないということだろう。
窓の性能について理解できた今回の取材。他にも「窓」についてどのような取り組みがなされているのか? 次回はまた別の窓メーカーへ取材に行ってみる。
2013年 12月18日 10時22分