千葉県千葉市花見川区では、千葉シーサイドバスの複数路線が運転手不足や道路事情などを背景に廃止・再編の局面を迎えている。特に花島公園・長作町線は多くの利用者を抱え、市や住民から運行継続を求める声が上がった結果、当初予定から状況が変化し、現在も協議が続いている。

代替交通の可能性はあるものの「代わりの交通手段がある」ことと、「これまでと同じ生活を続けられる」ことは同じなのだろうか。

本記事では、路線再編を単なる「バス会社の人手不足問題」としてではなく、団地、医療・介護施設、事業所などが点在する都市近郊住宅地において、公共交通の縮小が暮らしにどのような影響を与えるのか、という視点から取材する。併せて、限られた運転手で利用者の多い区間をどう維持するのかという、都市近郊住宅地の地域交通再編のケーススタディとして考える。

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10月から何が変わる? 花見川北部のバス路線再編

千葉市花見川区では、千葉シーサイドバスの「花島公園」「花見川団地」から幕張・検見川方面への直通便が廃止される予定だ。

出典:千葉市「千葉シーサイドバスの路線廃止に係る住民説明会の開催について 第3回説明会案内文」の画像を拡大加工出典:千葉市「千葉シーサイドバスの路線廃止に係る住民説明会の開催について 第3回説明会案内文」の画像を拡大加工
出典:千葉市「千葉シーサイドバスの路線廃止に係る住民説明会の開催について 第3回説明会案内文」の画像を拡大加工

当該バス会社では花島公園・花見川団地~幕張・検見川方面の直通便がなくなることになる。他のバス会社が近隣を運行しているとはいえ、便数は大幅に減少する。

8月7日の千葉県バス対策地域協議会千葉分科会で協議された内容は以下の通りだ。

●路線の廃止日を2026年10月1日から2027年4月1日に変更
●2026年10月1日から「長作町~花島公園」の区間を廃止
●「長作入口から長作小学校(旧公民館前、小谷津、小谷津坂上経由)」の間は経路を変更して運行
●必要な輸送力を確保の上、2026年10月1日からは平日及び土曜は減便、日曜、祝日及び年末年始は全便を運休

8月7日時点で、2027年4月以降の運行については、2026年10月以降の運行状況により判断するとされていた。その後、8月31日の協議では、事業者から4月以降も運行を継続するとの見解も示されている。また、3月の届出時点では幕張以北の路線がすべて廃止とされていたが、長作町~JR幕張駅方面については運行継続の方向となった。

ただし、約600人が利用する日曜・祝日については、2026年10月以降の代替交通がない状態になる。

今回の再編は、利用者が相対的に少ない花島公園~長作町間を廃止し、利用者が多いJR幕張駅~長作町間を維持する再編でもある。市の説明によれば、JR幕張駅~花島公園間の利用者約1,200人のうち、花島公園~長作町間は約200人、JR幕張~長作町間は約1,000人だった。

花島公園・天戸町周辺では京成バス千葉セントラルの路線も運行しているが、花見川エリアからJR幕張駅へ直接向かう路線はない。

出典:千葉県バス対策地域協議会千葉分科会「[PDF]生活交通の維持・確保に関する方策について」
出典:千葉市「千葉シーサイドバスに係る路線廃止について」
出典:千葉市地域公共交通活性化協議会「PDF]第16回地域公共交通部会 資料1」
出典:千葉市地域公共交通活性化協議会「PDF]第16回地域公共交通部会 10月からの花島公園・長作町線の運行について」

代替交通は「ある」だけで十分か——現地を歩いて見えた移動の負担(1)

花島公園側から長作町まで徒歩で移動するのは現実的か、実際に現地を歩くと、代替移動手段はどう映るのか。これらを検証すべく、実際に花島公園~長作町間を歩いてみた。

花島公園からは、海浜幕張行きの便が1時間2~3便運行されていた(2026年9月取材時点。団地9街区、1街区も同様)。一方、同バス停から発着する京成バス(千葉セントラル)については、「八千12系統いきいきプラザ行き」「八千代台駅行き」のみで、幕張・検見川方面への便はなかった。

花島公園付近には工場が点在し、裏通りには一戸建て住宅が立ち並ぶ。公園の奥にはマンションや特別養護老人ホームもある。

続いて、病院とスーパーが並ぶ花見川団地9街区・1街区へと進む。通勤時間帯の取材時には、それぞれ6~7人程度がバスを待っていた。

花見川団地9街区のバス時刻表。左:京成バス千葉セントラル、右:千葉シーサイドバス(筆者撮影)花見川団地9街区のバス時刻表。左:京成バス千葉セントラル、右:千葉シーサイドバス(筆者撮影)

花見川団地9街区・1街区からは、幕張方面へ1時間2~3便程度が存在していた一方、京成バスでは直接幕張方面へ出られない。京成バス路線で花見川団地から新検見川・海浜幕張方面へ行くには「花見川交番」「千葉幼稚園(後述)」等のバス停から、別系統のバスに乗車する必要がある。

「花見川団地」交差点を左折すると「千葉幼稚園」バス停がある。取材時点(2026年9月)では、ここから千葉シーサイドバス海浜幕張方面行きと、京成バス千葉セントラル・JR新検見川駅行きの両方に乗車が可能だ。

花見川団地9街区のバス時刻表。左:京成バス千葉セントラル、右:千葉シーサイドバス(筆者撮影)千葉シーサイドバスと京成バスが合流する「千葉幼稚園」(筆者撮影)

ここからバス路線に沿って進むと、マンション群と商店が立ち並ぶエリアに出る。団地側の背後には旧商店街と一戸建て住宅、長作町側には幼稚園や一戸建て住宅街がある。

「天戸台」交差点までは車道・路側帯が確保されているが、右折して御成街道へ合流すると車線、路肩共に狭くなり、大型車の通行も確認された。

現地を歩いて見えた移動の負担(2)

「天戸十字路」バス停は交差点から約70m先にある(筆者撮影)「天戸十字路」バス停は交差点から約70m先にある(筆者撮影)

「天戸十字路」バス停を過ぎると歩道幅が狭くなる。天戸十字路~長作町は日陰が少なく、取材当日は気温30℃前後だった。道路左側、東行き(幕張方面行)歩道は気になる段差等、路面の歩きにくさは感じなかった。

「長作町」には操車場があり、ここが今後幕張方面からの折り返し地点になる。

「長作町」バス停、待合所(筆者撮影)「長作町」バス停、待合所(筆者撮影)

千葉市の交通政策担当者によると、長作町や花島公園などの操車場を大型バスで転回しやすいよう、拡張する方向で調整を進めているとのこと。

今回、バス停の向かいにある公民館にシェアサイクルステーション(4台)が確認された。

また、今回の取材では千葉幼稚園から新検見川駅(北口)までバスで移動してみた。新検見川駅(北口)ターミナルは新検見川駅に隣接しておらず、駅まで200m※ほど歩く必要がある。

※距離・所要時間は現地での歩行とGoogleマップの経路検索を基にした目安

「長作町」バス停、待合所(筆者撮影)新検見川駅北口~南口をつなぐ陸橋(筆者撮影)

バスを乗り継いで海浜幕張方面に行く場合には、駅南口のバス停まで徒歩で移動しなければならない。JRを跨ぐ高架を渡る必要があり、取材時には3~4分程度を要した。

実際に歩いてみて、花島公園~長作町を徒歩で代替すること自体は可能だ。ただし、健常な取材者が実際に歩けたことと、地域交通として代替可能であることは同義ではないだろう。千葉市の交通政策担当者への取材でも、「障がい者・介護認定者以外で少し足が悪い高齢者の方々などには、不自由をかけるとの認識がある」とのコメントがあった。

2026(令和8)年8月31日に開催された第16回千葉市地域公共交通部会においても、委員からは、花島公園から既存路線の停留所まで距離があること、外周道路の停留所までの坂道や道路横断、待合環境に課題があることなどが指摘されている。

出典:千葉市地域公共交通活性化協議会「[PDF]第16回千葉市地域公共交通部会議事要旨」

通勤・通学はどう変わる? 利用者が語る10月以降の移動

花見川団地内にあるシェアサイクルポート(筆者撮影)花見川団地内にあるシェアサイクルポート(筆者撮影)

バス路線の縮小・廃止は誰に対する影響が大きいのか。実際に千葉シーサイドバスの廃止対象路線の利用者の声を取材してきた。

1.週1~2回、花島公園~海浜幕張間を通勤する70代男性

「今までバス1本で行けて楽だったのに、10月からは(バスで)八千代台駅に出て、電車を乗り換えて幕張本郷、そこからバスで職場まで。乗り換えが面倒だし電車賃も高くなる。バス1本なら370円で済むのに、今度はトータル500円以上になる。定期の人は会社の申請が大変」

2.海浜幕張まで毎日通勤する30代女性

「10月以降は朝1本・夕2本の京成バスで代替。所要時間は1.5倍になるし、バス1本逃すとどうにもならなくなる。最悪、車で出勤しコインパーキング利用になるが、これはやりたくない」

3.長作入口まで通勤する40代女性

「今のバスがなくなったら、新検見川駅に出るか、八千代台駅から実籾に出て、そこから職場まで歩くか。どちらも時間がかかるし、雨の日などには歩けるような道じゃない。早番や遅番、日曜出勤がある人はもっと大変。通勤がネックとなり、現在、転職先を探している」

4.スーパー開店待ちの高齢男性

「いつも車だから、便がなくなっても特に困らない。バスに乗ったことがない」

その他、幕張へ向かう学生は電車への切り替えを予定しており、70代女性は自身よりも海浜幕張へ通勤する家族への影響を心配していた。また「『バス便がある』という理由で、わざわざ花島公園(終点)の奥にあるマンションを買って移ってきた若い人もいる」と、近隣住人を心配する声もあった。

路線バス以外の移動手段はどこまで補えるか

今回話を聞いた利用者の間でも、バス路線廃止による影響の受け止め方は一様ではなかった。

事前に花見川団地自治会役員から聞いていた話によると、幕張方面への通勤・通学者については、「9街区、1街区(いずれも団地中心部のバス停)からそれぞれ10人前後」が利用しているという。京成バス路線と合流後、天戸十字路へ向かう各バス停でも8~10人ほど利用しているそうだ。

一方で、同役員によると「平山病院※などへの通院に限れば送迎バスがあるため、路線廃止の影響は比較的小さい」という。実際、今回の取材中だけで近隣の平山病院、最成病院の送迎バスに何度も遭遇している。

※平山病院無料送迎バスは透析患者以外は要予約

千葉市はシェアサイクルステーションの増設・拡充も検討している。今回の取材では、花見川団地内のシェアサイクルステーションについては、少なくとも2カ所あることが確認できた(「長作町」のステーションでは乗車可能な車両がなく、シェアサイクルを使った取材を断念)。また、花見川団地周辺では、自転車で移動する人も複数見られた。

実際、千葉市の交通政策担当者への取材でも「これまでの地域説明会では『自転車による移動を考えたい』との声が上がり、駐輪場の整備などの要望があった」とコメントしている。

約200人が利用する区間を縮小し、約1,000人が利用する区間を残す——再編の背景と行政の対応

そもそも、なぜ千葉シーサイドバスの花見川北部地域「花島公園・長作町線」は廃止対象となったのか。事業者は当初、3月31日に「花島公園~幕張駅間」の路線廃止を届け出ていた。その理由は以下のとおりである。

●運転手不足の深刻化
●運転手の高齢化
●道路走行環境の悪さ
●本社および車庫の移転先確保の課題

ただでさえ運転手不足が続く中、自動車運転業務にも時間外労働の上限規制が適用された、いわゆる“2024年問題”が追い打ちをかけた。花島公園まで運行する場合は、運転手の勤務時間の制約から終日運行のシフトを組みにくい。一方、長作町で折り返すことで、限られた運転手でも朝から夜までの運行を組みやすくなる。

4月以降、千葉市は廃止の影響を調査のうえ、運転手の雇用確保や用地確保等の支援を行うとし、バス事業者と路線維持、廃止延期(2027年3月末まで)の協議を重ねた。


千葉市が公表した「10月からの花島公園・長作町線の運行について」によると、花島公園~長作町~幕張駅間の利用者は1日約1,200人。このうち廃止となる花島公園~長作町間は約200人、10月以降も運行する長作町~幕張駅間は約1,000人とされている。市は、利用の少ない区間を見直す一方、利用の多い区間では朝晩便と輸送力を確保する方針を示している。

一般社団法人交通環境整備ネットワークの相談役でもある交通評論家の佐藤信之氏によると、「千葉県内には1日数千人が利用するバス路線もあり、200人という規模は主要路線と比べれば多いとはいえない」という。

一方で、千葉市はバスの大型化により、少ない便数で“積み残し”を防ぐとしている。

●10月以降の便数:長作町→幕張駅は53便から27便へ、幕張駅→長作町は52便から27便へ
●10月以降は大型車両で1台当たり40人から70人へ、現行の朝便の乗車可能人数約680人に対し、約700人分の輸送力を確保できる

併せて、花島公園や長作町などのバス操車場についても順次拡張していく方針だ。

出典:千葉市地域公共交通活性化協議会「[PDF]第16回地域公共交通部会 資料1 千葉シーサイドバスの路線バスの対応について」


千葉市の交通政策担当者は「(バス会社による)自治会説明・住民説明会は3回行われ、3回の住民説明会以外にも、住人がバス会社に直接意見を言う場も設定してきた」と話す。

現地取材では「説明会会場が遠すぎて歩いて行けない」との声もあったが、千葉市の交通政策担当者は、こうした住民・事業者・行政の協議が、運行継続につながったと受け止めている。

一方で、現地取材の際に、路線存続に向けた住民による請願・署名活動が続いていることもわかった。バスを待つ利用者に「バス運行の継続を求める会」というチラシを配布している女性がおり、「廃止が決まった現在でも署名も集め、市の担当者と協議、バス会社への継続要請、市議会議員への要請等も行っている」と話す。

バス路線再編から考える「住み続けられる街」の条件

千葉シーサイドバス「作新台8丁目」(筆者撮影)千葉シーサイドバス「作新台8丁目」(筆者撮影)

2026(令和8)年9月14日開催の第14回千葉市地域公共交通活性化協議会の資料「地域公共交通計画の改定に係る骨子案について」に、千葉市花見川区の人口減少予測、「人口密度が低下すると、路線バスの維持・確保が非常に困難となる」ことが示されている。

出典:千葉市地域公共交通活性化協議会「地域公共交通計画の改定に係る骨子案について」


先述の佐藤氏は、千葉市花見川区の交通問題について「千葉の交通政策の歴史を辿ると、道路など自動車環境の整備を優先してきた。しかし、自動車への依存が進んだ地域では、高齢化によって移動手段の確保が新たな課題になる」と指摘する。

千葉市花見川区の事例から、住む場所を選ぶうえで何を見るべきか。佐藤氏は「地域交通は住人にとって“最後の砦”。鉄道の駅前、駅の徒歩圏内が安心ではある。駅から離れるなら車が前提」と説明する。

ただし、今回の花見川の事例が示すように、現在バス路線が存在していても将来同じサービス水準が維持されるとは限らない。公共交通の持続可能性を見る必要があるといえそうだ。

続けて、佐藤氏は「年齢やライフスタイルに合わせて、若い頃は郊外に住み、歳を取ったら駅前に住み替えるのも1つの考え方」としたうえで、「歳を取っても同じコミュニティで生活し続けたい人、同じコミュニティに見守ってもらえるのが幸せという人も多い。その足については、公共でも面倒を見てほしい」とも話す。

交通手段の有無だけでなく、その人の年齢、勤務先、勤務時間、自動車保有、家族構成などによって、“住み続けやすさ”は変わる。公共交通の有無だけでは評価できず、「駅徒歩〇分」だけで決まるわけでもない。

同じ地域でも、バス再編の影響は一様ではない。車が使える人、電車に切り替えられる人、自転車を使える若年層、病院送迎バスを利用できる人もいる。一方で、乗り換えや交通費増を受け入れざるを得ない人、勤務時間や職場立地によって代替が難しい人が混在しているのが、千葉市花見川区北部の特徴といえる。

これから住む場所を選ぶ際には、バス路線の本数や行先、乗り換え、道路条件などを総合的に見て、代替交通があるか、生活動線を代替できるか、慎重に見ていく必要があるだろう。