増え続ける日本の高齢者率

日本の高齢化が止まらない。総務省統計局のデータによると総人口は2011年以降、継続して減少している一方で、65歳以上の高齢者人口は、1950年以降、一貫して増加しており、2017年9月15日現在の推計では3,514万人となっている。同日の総人口に占める高齢者の割合は27.7%で前年より0.5ポイント増となっている。

このような状況にもかかわらず、高齢者の住宅環境は改善しているとは言い難い。たとえば賃貸住宅では、「家賃の滞納」「孤独死」「室内での事故」「遺留品の処理に困る」などの不安から、大家が高齢者の入居を拒否することが珍しくない。

そこで注目したいのが終身建物賃貸借事業だ。これは高齢の単身者または夫婦世帯等が、最期まで安心して賃貸住宅に住み続けられる制度である。同事業は2018年9月、より利用しやすくするために改正された。

日本の人口が減少している一方で65歳以上は増加し続けている。2017年9月15日現在の高齢者人口は3,514万人で前年比57万人増となっている(出典:『高齢者の人口』(総務省統計局))日本の人口が減少している一方で65歳以上は増加し続けている。2017年9月15日現在の高齢者人口は3,514万人で前年比57万人増となっている(出典:『高齢者の人口』(総務省統計局))

借家人が死亡したときに終了する借家契約

まずはこの制度の内容を簡単に説明しておこう。終身建物賃貸借事業は、大家などの事業者が知事の認可を受け、借家人が死亡したときに終了する借家契約によって高齢者に対して住宅を賃貸することができる制度だ。

おもな内容は以下のようになっている。

1.入居者
・60歳以上
・単身または同居者が高齢者親族であること(配偶者は60歳未満でも可)

2.住宅の基準
・段差のない床、浴室等の手すり、幅の広い廊下等を備えていること

3.高齢者が死亡した場合の同居者の継続居住
・同居者は、高齢者の死亡後1ヶ月以内の申出により継続して居住可能

4.解約事由
・家主からの解約申入れは、住宅の老朽等の場合に限定

5.その他の借家人に対する配慮
・借家人が希望すれば終身建物賃貸借契約の前に定期借家により1年以内の仮入居が可能

借家人と大家のメリット

この事業の利用により、借家人と大家にはそれぞれ以下のようなメリットがある。

●借家人のメリット
・高齢になっても入居を拒まない住宅を見つけることができ、最期まで住み続けることができる
高齢者の入居が前提の住宅なので申し込み時に入居を拒まれることはない。

・大家などからの解約の申入れ事由が限定されている
家主からの解約申入れは、住宅の老朽等の場合に限定される。

・死亡した賃借人と同居していた配偶者または60歳以上の親族は継続して住み続けることが可能
配偶者死亡後も同居者は住む場所に困ることがない。

・1年以内の定期建物賃貸借により仮入居が可能
終の棲家として入居したものの、近所づきあいなどの問題で住み続けられないこともあり得る。そのような事態への対策として事前に最長1年のお試し期間を設けることができる。

・前払い金の保全措置がとられている
同事業の認可物件に入居する場合、通常よりも長期間分の前家賃などを求められることもある。その家賃分住むことなく亡くなったとしても、残りの前払い金が配偶者や相続人などへ確実に戻せるように保全措置がとられている。

●大家のメリット
・借家人が死亡しても無用な借家契約の長期化を避けることができる
借家契約の長期化とは、通常だと賃借人の死亡後は契約が相続人に引き継がれてしまうため、相続人が見つからない場合などは契約を解約することができずに空室の状態が続いてしまう、といったことだ。同事業で認可を受けた物件ならば借家人が死亡したときに契約が終了するのでその心配はない。

・遺留品の処理等を円滑に行うことができる
通常の契約だと遺留品は、相続人の許可がないと処理をすることができない。

・相続人への明渡し請求に伴う立退料を請求されるおそれがない
契約が相続人へ引き継がれないので、立退料は発生しない。

煩雑な事務手続きを減らし、認可基準も緩和

以上のように終身建物賃貸借事業の利用は、高齢化社会に向け借家人にも大家にも有用である。しかし、2001年の創設以来、その認可実績はわずか9,733戸(2016年末時点、サービス付き高齢者向け住宅含む)だ。全国賃貸住宅経営者協会連合会の推計によると2013年時点での民間賃貸住宅は約1,586万戸。つまり認可された物件は約0.06%にすぎない。

このように認可実績が少ない理由には、以下のようなことが考えられる。

1.必要な申請書類が多く、手続きも煩雑であること
2.バリアフリー基準のハードルが高い
3.そもそも制度が知られていない

そこで2018年9月、終身建物賃貸借事業の活用を推進するために添付書類の削減、既存の建物を利用する場合のバリアフリー基準の緩和などが行われた。

おもな改正内容は以下のようになっている。

・付近見取図、配置図、建物の登記事項証明書、法人の登記事項証明書等の添付書類を不要とする。

・既存の建物の段差や階段の寸法に関するバリアフリー基準を削除する。

・セーフティネット住宅でも終身建物賃貸借事業の活用を促進するため、9m2以上のシェアハウス型住宅について、セーフティネット住宅と同様に終身建物賃貸借事業に活用できることとする。

・高齢者居住安定確保計画を定めている都道府県および市町村は、認可基準として設備基準、バリアフリー基準を強化または緩和できることとする(現行では床面積のみ可)。

※セーフティネット住宅とは、都道府県等に登録された、高齢者、低額所得者、子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅

※高齢者居住安定確保計画とは、各自治体が定める、高齢者が住まいを安心して確保できるようにするための計画

終身建物賃貸借事業の申請にかかわる添付書類の改正前後比較。改正によって大幅に少なくなっている(出典:『建物賃貸借事業の概要と実績』(国土交通省))終身建物賃貸借事業の申請にかかわる添付書類の改正前後比較。改正によって大幅に少なくなっている(出典:『建物賃貸借事業の概要と実績』(国土交通省))

少しでも早く認可物件の戸数が増えることを期待

終身建物賃貸借事業の改正によって高齢者は終の棲家の選択肢が広がり、安心して賃貸住宅に住み続けられるはずだ。少しでも早く認可物件の戸数が増えることを期待したい終身建物賃貸借事業の改正によって高齢者は終の棲家の選択肢が広がり、安心して賃貸住宅に住み続けられるはずだ。少しでも早く認可物件の戸数が増えることを期待したい

この改正によって高齢者は終の棲家の選択肢が広がり、安心して賃貸住宅に住み続けられるはずだ。少しでも早く認可物件の戸数が増えることを期待したい。

なお、終身建物賃貸借物件は各自治体で認可しており、それぞれの窓口やインターネットで探すことができる。たとえば東京都の場合は、以下のリンクから物件一覧を確認することが可能だ。

■東京都終身認可住宅一覧(平成30年6月8日現在)

2018年 11月11日 11時00分