2025年には、京都市民の5人に1人が後期高齢者に

高齢者人口43万人、高齢化率は30%超。市民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)。これは、2025年の京都市の姿である(第7期京都市民長寿すこやかプランより)。

この超高齢社会で課題の一つとなるのが、住宅問題だろう。
京都市における高齢者向け住宅(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、高齢者向け優良賃貸住宅など)の供給状況をみてみると、2025年には1万7,275戸が必要という試算が出ている。ところが、2019年時点の住戸数は8213戸と、半分にも満たないのが現状だ。

これを踏まえて、いま京都市で急務となっているのが、まず高齢者が安全に安心して生涯を送るための住宅の改善・供給。次に、高齢者が望む地域で住宅を確保し、日常生活圏において介護・医療サービスや生活支援サービスが利用できる居住環境の実現である。

そこで注目されるのが、「京都市すこやか住宅ネット」の愛称を持つ「京都市居住支援協議会」。今回は、2012年に設立したこの団体とその取り組みについて、京都市都市計画局住宅室住宅政策課の関岡孝繕さん、橋本真さん、田村勇樹さんに話を伺った。

左から、京都市都市計画局住宅室住宅政策課の関岡孝繕さん、田村勇樹さん、橋本真さん左から、京都市都市計画局住宅室住宅政策課の関岡孝繕さん、田村勇樹さん、橋本真さん

宅建業者約3500社のうちの半数が「家主から高齢者の入居を拒むよう言われた」経験あり

「京都市すこやか住宅ネット」設立の背景を田村さんは次のように話す。
「2007年に、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律『住宅セーフティネット法』が制定され、京都市でも民間賃貸住宅等への入居の円滑化と居住支援を進めていくことを行政計画に位置付けました」

この流れの中で、設立を大きく後押ししたのが京都府下の宅建業者へのアンケート結果だった。
「約3500社を対象にしたものでしたが、その半数が家主から高齢者の入居を拒むよう言われたことがあると回答していたんです。病気や事故などに不安がある、火の始末や水濡れなどに不安があるといった理由からです」

高齢者を中心とする住宅確保要配慮者が民間賃貸住宅に円滑に入居でき、安心して住み続けられる住まいづくりを推進しなければならない。そうした思いで、京都市、不動産関係団体、福祉関係団体、京都市住宅供給公社が連携し、「京都市すこやか住宅ネット」は誕生した。

賃貸住宅は約5000戸、協力店は約140件が登録

「京都市すこやか住宅ネット」の取り組みは3点。
1点目は、「すこやか賃貸住宅登録制度」である。高齢であることを理由に入居を拒まない「すこやか賃貸住宅」と、高齢者の住まい探しをサポートする「すこやか賃貸住宅協力店」の登録を促進することで、住み替えしやすい環境をつくっている。

「現在、『すこやか賃貸住宅』は約5000戸、『すこやか賃貸住宅協力店』は約140件の登録があります。住み替えを考えている人には、物件や協力店を紹介しています」(田村さん)。「京都市すこやか住宅ネット」のホームページ(https://www.kyoto-sjn.jp/)から探すことも可能だ。

住み替えの主な理由は、「大家さんに立ち退きを迫られている」「収入にあった部屋を探したい」といったことだが、京都ならではの背景も考えられると橋本さんは言う。
「京都市は戦災を免れたので、木造の共同住宅がほかの市に比べると数多く残りました。時を経てその住宅が寿命を迎え、取り壊し・建て直しが必要になってきました。また市内でのマンションやホテルの建設で取り壊しになった例もあるでしょう。そこに住んでいた高齢者が住み替えの必要に迫られているというケースもあると思います」

すこやか賃貸住宅の登録物件例すこやか賃貸住宅の登録物件例

福祉のプロが見守りをすることで、家主の不安を軽減

2点目の取り組みは「高齢者すまい・生活支援事業」だ。
これは、前述した高齢者の入居を拒む家主が多いという点に配慮したもので、対象は、原則65歳以上の一人暮らし等で見守りの支援を必要とする、住み替えを希望している人。

橋本さんは「家主さんの懸念材料である高齢者の健康面のリスク軽減のため、社会福祉法人のスタッフが週に1回程度、高齢者の自宅を訪問したり、電話で安否確認をするなどの“見守り”を実施。保健福祉に関する相談にも応じます。これまでに100人ほどが利用され、家主さんからは『定期的な見守りがあるので、安心して部屋を貸すことができました』、入居者さんからは『毎週、社会福祉法人の方が来てくれるのが楽しみ』という声をいただいています」と話す。

離れて暮らす家族にとっても、福祉のプロが寄り添ってくれるのは大きな安心材料だ。
「ちょっとした変化にも気づきやすいですし、万が一、施設などを紹介した方がいいという判断になった場合も、迅速に対応できます」(田村さん)

最後は、年に4回行われる「高齢期の住まいの相談会」。不動産団体、福祉団体、市役所がチームを組んで、住まいに関する相談に応じてくれる。一度で住まいのことも福祉サービスのことも聞くことができるのがメリットだ。

すこやか賃貸住宅の登録数の増加、見守りサービス実施のエリア拡大を目指して

今後の課題についても聞いてみよう。
「『すこやか賃貸住宅登録制度』に関しては、登録数を増やすことです」と田村さん。そのために協力店にこまめに連絡を取り、情報発信をするなどして、引き続き協力をしてもらえるように取り組んでいるそうだ。

「高齢者すまい・生活支援事業」についても、田村さんに尋ねてみた。
「大きな課題は、見守りサービスを実施している行政区の少なさです」という。

京都市は中京区や下京区など11の行政区がある。だが、この見守りサービスは7行政区でしかできていない。展開している行政区でも区全域で行っているのは山科区だけである。
「ですので、住み替えを希望されている地域に必ずしも見守りサービスがあるわけではありません。対象エリアを拡大しようとしていますが、人員の問題などがあり、見守りを依頼できる社会福祉法人がなかなか見つからないのが現状です」

今後は、民間が設立する社団法人の協力を得ながら、見守りサービスの拡大を図っていく予定だという。関岡さんは、
「これからますます高齢化が進んでいきます。それに伴って、独居の方も増え、住み替えの需要も増えていくでしょう。理想をいえば、見守りサービスのあるなしにかかわらず、京都市内の賃貸住宅のすべての家主さんが高齢者を受け入れてくれるようになればという思いはあります」と話す。

地域で高齢者を見守れるような社会の実現のために、まずこの取り組みを続け、広げていかなければならない。そんな“使命感”が感じられた。

2020年 05月03日 11時00分