10年間で1.6倍になった高齢者の単身世帯

少子高齢化にともない高齢者の単身世帯が増加している。内閣府の『平成30年版高齢社会白書』を見るとそれは一目瞭然で、2006年に410万2,000世帯だった65歳以上の単身世帯は、2016年には655万9,000世帯になっている。ここ10年間で1.6倍も増加しているのだ。

そこで課題となるのが高齢単身者の住居の確保だ。民間賃貸住宅のオーナーは、孤独死や家賃滞納の不安などの理由から高齢単身者の入居にあまり積極的でないことがある。特に孤独死に関してはオーナーにとって深刻で、部屋のクリーニングや原状回復に多額の費用がかかる可能性がある。また、告知義務が生じることで、次の入居者探しが困難となり、家賃を下げざるを得ないケースもある。

実際に単身高齢者の自宅での死亡者数は年々増加傾向だ。東京23区を例にすると2011年から2016年の5年間で約1.2倍になっている。

このような背景があり、住居の確保が難しくなっている単身高齢者に対し、東京都中野区は2019年1月に「中野区あんしんすまいパック」を導入した。同制度は自治体が「生前」と「死後」の両方をパッケージ化したサービスに対して補助を行うという全国初の試みだ。

東京23区内における65歳以上の単身者の自宅での死亡者数推移。年々右肩上がりに増加している(出典:中野区長記者会見資料)東京23区内における65歳以上の単身者の自宅での死亡者数推移。年々右肩上がりに増加している(出典:中野区長記者会見資料)

生前から死後まで3つのサービスをパッケージ化

中野区でも一人暮らしの高齢者は増加しており、2010年は1万8,163人だったが2015年には2万1,915人に増えている。そして2020年には3万人を超えると推計されている。そこで「中野区あんしんすまいパック」は、高齢者の住まいに関する3つのサービスをパッケージ化し、入居者の安心とともにオーナーや管理会社が単身高齢者に不安なく貸すことができる制度となっている。では、具体的な内容を紹介しよう。

「サービス内容」
①見守りサービス
利用者に対して安否確認の電話が週に2回かかってくる。これは音声ガイダンスでその日の体調をたずねるもので、利用者は「1、元気」「3、体調が悪い」といったようにプッシュボタンで回答する。その結果はメールで、利用者本人を含めて家族や管理会社など最大5名まで届く。

②利用者が亡くなった際の葬儀対応
葬儀を手配し、その実施に要する費用を補償する(上限50万円)。

③利用者が亡くなった際の残存家財の片づけ
残存家財の片づけと原状回復の手配を実施。その費用を補償(葬儀と合計で上限100万円)。

②③の補償は、自宅で亡くなった際は孤独死以外、つまり家族など誰かに看取られた場合は対象とならない。しかし、病院といった自宅以外の場所で誰かに看取られた場合は対象となる。また、これらのサービスは民間事業者が提供する。

サービス利用者に対して週2回音声ガイダンスの安否確認電話がかかってくる。固定電話のほか、携帯やスマートフォンにも対応。<br>安否確認の結果は、家族や管理会社など最大5名までメールで送信される(出典:中野区長記者会見資料)サービス利用者に対して週2回音声ガイダンスの安否確認電話がかかってくる。固定電話のほか、携帯やスマートフォンにも対応。
安否確認の結果は、家族や管理会社など最大5名までメールで送信される(出典:中野区長記者会見資料)

中野区が初回登録料を全額補助

「補助の対象者」
以下のすべてに該当する人が対象者となる。
・中野区内の民間賃貸住宅に居住している単身者か区内の民間賃貸住宅に居住しようとしている単身者
・2019年1月28日のサービス開始以降に「中野区あんしんすまいパック」の利用申し込みをした者
・前年の所得額が256万8,000円以下の者(助成手続きが1月~5月の場合は前々年の所得額)

「サービス利用料金(税込み)」
・初回登録料:1万6,200円(区が全額補助)
・月額利用料:1,944円(利用者本人が負担)

「申し込み窓口」
中野区住宅相談窓口または物件を紹介する協力不動産会社で直接申し込むことができる。さらにすでに民間賃貸住宅に住んでいる場合でも申し込み可能。詳細は下記サイトのパンフレットで確認できる。
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/505700/d026714_d/fil/ansinsumaipakkupanfu.pdf

なお、同制度の利用は、国が取り組む「住居確保要配慮者の入居を拒まない登録住宅」でなくても可能だ。登録住宅に関しては以前紹介しているので、くわしくはその記事を確認してほしい。
https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_00563/

同様のサービスが全国的に広がることを期待

中野区は、この制度の導入によって次のような効果を期待するとしている。
・単身高齢者や障がい者であることを理由とした入居拒否の解消
・比較的安価で利用しやすいサービスが付加された民間賃貸住宅の普及
・空き部屋となっている民間賃貸住宅の利用促進

確かに同制度によって賃貸住宅のオーナーは、孤独死を未然に防ぐことができ、万一防ぐことができなくても早期発見によって原状回復費の負担を抑えられるとなれば、入居を拒否することが少なくなるはずだ。また不動産会社としては、高齢者に紹介できる物件が増えることになるので、空き部屋が減ることにつながるだろう。

中野区には現在約800の不動産会社があり、そのうち「中野区あんしんすまいパック」を積極的に紹介する協力店は175店だそうだ(2019年1月現在)。同区はこの制度の普及のため、協力店の増加に注力するとしている。

前述したように自治体が高齢者の生前と死後の両方を合わせたサービスに対して補助を行うのは全国初の試みだ。しかし、超高齢化社会(65歳以上の人口の割合が21%を超える社会)に突入した日本にとって、なくてはならないサービスとなるのは間違いない。今後の全国的な広がりに期待したい。

超高齢社会(65歳以上の人口の割合が21%を超える社会)にとって、自治体による生前と死後のサービスは必要不可欠になるはず。全国的な広がりに期待したい超高齢社会(65歳以上の人口の割合が21%を超える社会)にとって、自治体による生前と死後のサービスは必要不可欠になるはず。全国的な広がりに期待したい

2019年 03月04日 11時00分