107の“モデル商店街”を選定

住民の買い物の場というだけではなく、イベントなどの実施を通して地域コミュニティーの形成の場ともなる商店街。

その商店街が新型コロナウイルス感染拡大による休業要請、外出自粛、インバウンド消費の減少を受け、いまなお大きな打撃を受けている。この危機を乗り越えようと、大阪府は2020年5月、商店街の感染症対策と需要喚起に向けた取り組みをスタートさせた。スローガンは「みんなで守ろう。おおさか」。

「大阪府には2020年現在、約1,000の商店街があります。その中から6月に107の商店街を自薦・団体推薦で選定し、感染症対策と需要喚起に向けた取り組みをしていただくことにしました。事業の事務局を通して、大阪府がさまざまな形で支援します」。そう話すのは、大阪府商工労働部中小企業支援室商業・サービス産業課の担当者。

「107商店街は、“モデル商店街”としての位置づけ。ほかの商店街には『うちでもやってみたい』と思う取り組みがあればぜひ実施していただきたいですし、各市町村や商工会には大阪府の支援策を参考にそれぞれのやり方でサポートしていただきたいという思いもあります」

SNS、クラウドファンディングなど、テーマを選んで挑戦

では、具体的な取り組みを紹介していこう。まずは感染症対策について。各商店街では次の3点に取り組んでいる。
1.「新しい生活様式」の実践を促す啓発ポスターやサイン(消毒や換気など、感染防止対策の方針をイラスト化したもの)の掲示
2.「大阪コロナ追跡システム」の活用促進
3.テイクアウト・デリバリー、キャッシュレス決済の導入促進、クラウドファンディングの活用促進、SNSの導入など

「ポスターやサインを商店街や店舗に掲示していただくことで目指したのは、“啓発の見える化”です。ガイドラインを守っている店だと示すとともに、あちこちで目に入るようにして感染対策を意識づけすることも目的でした」
「大阪コロナ追跡システム」とは、二次元コードを使った注意喚起の通知システム。利用者が自身のメールアドレスを登録しておくと、例えば同じ店に足を運んだ人のなかで感染者が出た場合、メールで連絡がくる仕組みだ。

そして、3点目。これは「テイクアウト・デリバリー」「キャッシュレス決済の導入促進」「クラウドファンディングの活用促進」「SNSの導入」などの中から、107の商店街それぞれが挑戦するテーマを選んで取り組むというもの。
「 SNSの導入例を挙げますと、情報発信のツールにインスタグラムやLINEを使うなどです。アカウントを作る段階から事務局がお手伝いをしています。これまでにチラシでセールのお知らせなどをしていた商店街にとっては感染対策になりますし、効率的に多くの方の目にとまるようにもなると考えられます」

写真左上・右上/大阪市旭区「千林商店街」での啓発イベントの様子(2020年7月11日・12日)。フェイスシールド作りにも挑戦 写真左下/大阪市中央区「戎橋商店街」での啓発イベントの様子(2020年7月11日)。配布のうちわは、自分でかごから取ることで直接の接触を減らしている 写真右下/大阪市北区「天神橋筋四番街商店街」でのワゴン市の様子(2020年9月25日~27日)。間隔をあけ、ワゴンを設置 ※写真提供/大阪府商店街感染症対策等支援事業事務局
写真左上・右上/大阪市旭区「千林商店街」での啓発イベントの様子(2020年7月11日・12日)。フェイスシールド作りにも挑戦 写真左下/大阪市中央区「戎橋商店街」での啓発イベントの様子(2020年7月11日)。配布のうちわは、自分でかごから取ることで直接の接触を減らしている 写真右下/大阪市北区「天神橋筋四番街商店街」でのワゴン市の様子(2020年9月25日~27日)。間隔をあけ、ワゴンを設置 ※写真提供/大阪府商店街感染症対策等支援事業事務局

目標は、すべての選定商店街が「Go To 商店街」の採択を受けること

次は需要喚起にかかわる取り組みを説明しよう。
この取り組みのために活用しているのが、国の事業「Go To 商店街」である。活性化に結びつくイベントなどを実施する商店街として採択されれば、1商店街あたり最大300万円の支援金が支給されるキャンペーンだ。

「受付は段階的に行われますが、一次募集は10月。これに向けての準備は、5月からスタートしました。大阪府では、各商店街が採択を受けられるようイベントの事例紹介・感染症対策を盛り込んだマニュアルの配布と、事業へのエントリーのサポートをしています。エントリーサポートとは、イベント制作会社やコンサルタント、中小企業診断士といった専門家を各商店街に派遣すること。専門家は、活性化のためのアイデアを一緒に考えたり、ノウハウを提供する役割を担っています」

キャンペーンの最終募集は2021年2月14日。目標は107の商店街すべてが採択を受けることだ。
「採択を受けた商店街には、大阪府から最大50万円の経費を支援することも決まっています」。とはいえ、採択されることがゴールではない。

「ウィズコロナ、アフターコロナといわれる時代においても取り組みや支援は継続し、商店街は安心して買い物に行ける場所だと府民の皆さんに伝えていきたいと思っています。さらに、地域の皆さんには、積極的に商店街に行き、自分に合う、良いお店とも出あってほしい。そうした店を利用することで店と商店街が育ちます。それは地域の価値と生活の質を高めることにもつながっていくはずです」

天神橋筋商店街三丁目では、飲食店以外の店舗のサポートも模索中

107の商店街の一つが、大阪市中央区にある天神橋筋商店連合会。一丁目から七丁目まである約2.6kmにおよぶ日本一長い商店街「天神橋筋商店街」のうちの一~三丁目の総称だ。通称“天三”と呼ばれる三丁目ではどのような取り組みが行われているのか、訪ねてみた。

約450mの通りの両側に並ぶ167店舗。見上げるとアーケードには「みんなで守ろう。おおさか」のタペストリーが掲げられ、感染症対策に関する放送も流れている。

この商店街が感染症対策としてチャレンジしたのは「テイクアウト・デリバリー」である。
「お弁当の持ち帰りや配達に対応している店舗を一覧にして、専用ホームページで紹介しています。事務局の方に手伝っていただき、制作しました」とは、天神橋三丁目商店街振興組合の理事長・築部健二さん。築部さんは、さらに次のように続けた。

「三丁目は飲食店が多いのですが、ほかにも小売業やサービス業、卸業など多岐にわたる店舗があります。そうしたお店のサポートもしていく必要も感じています。何ができるか、何を求められているか。各店に意見を聞きながら模索中です」

写真左/天神橋三丁目商店街振興組合の理事長・築部健二さん 写真右上/「新しい生活様式」のチラシを店頭に貼っている店も 写真右下/こちらの店では、「大阪コロナ追跡システム」のチラシが店頭に

写真左/天神橋三丁目商店街振興組合の理事長・築部健二さん 写真右上/「新しい生活様式」のチラシを店頭に貼っている店も 写真右下/こちらの店では、「大阪コロナ追跡システム」のチラシが店頭に

「天神天満花娘」のパネルが消毒液を持ってお出迎え

三丁目独自の取り組みも行っている。
天神橋筋商店連合会のイベントなどで活躍するボランティア組織「天神天満花娘」をイメージしたイラストパネルを商店街に並べたことだ。1体ずつ、ほぼ等身大で作られたパネルの手のあたりを見ると……。消毒液が入ったケースがつけられている。

「消毒液を持っているパネルは5体。商店街に来てくださった方にお使いいただいています。『これはいいね』という声を聞くと、お客さまに貢献できているんだなとうれしくなりますね」これまで、さまざまなイベントを中止し、残念な思いをしてきたという築部さん。
「密になるのはもちろん避けなければなりません。ですが、商店街が暗く沈んでいたら、街全体に活気がなくなってしまいます。状況を見ながら、万全の対策を取ってイベントなどを再開していけるようにと考えています」

「みんなで守ろう。おおさか」。このスローガンには、商店街に来る客、商店街で働く人、そして大阪の経済を支える商店街を守ろうという思いが込められている。107の商店街から、大阪府すべての商店街へ。この思いがこれから広がっていくことだろう。

消毒液が設置された「天神天満花娘」のパネル消毒液が設置された「天神天満花娘」のパネル

2021年 01月07日 11時00分