土地活用提案のひとつとしてホテルを建築。
コンテナの可能性を示す、ショールーム的な側面も

街のあちらこちらで目にとまるレンタル収納スペースのほか、お洒落なショップ、オフィス、住宅など、見かけることが増えたコンテナ。個性的でインパクトのあるデザイン、見るからに強そうな構造など、一度目にしたら強い印象が残るのではないだろうか。そんなコンテナの新たな可能性を模索する国内初のコンテナ型モジュール建築のホテル「Casual Resort COFF Ichinomiya(カジュアルリゾートコフイチノミヤ)」(以下:COFF)が2017年8月3日、千葉県長生郡一宮町にオープンしたというので取材に訪れた。

ホテルを建築し運営を行うのは、建築用コンテナモジュールの大手、株式会社デベロップ。「弊社はコンテナの建築やメンテナンスのほか、土地オーナー様への土地活用提案の一環としてトランクルームなど様々な建物をご提案し、受託運営を行っています。その土地が持つポテンシャルを最大限引き出せる用途をご提案しているのですが、今回土地活用事例のひとつとして一宮町でホテルを運営することになりました」と話すのは、COFFの支配人、宇野智博さん。COFFは受託運営ではなく、コンテナメーカーである同社自らがユーザーとなり、ホテル型投資事業モデルの1号店として開発を行ったものだ。

※モジュール建築/規格化した部材を工場生産し、現地にて組み立てる商品のこと

左上・左下/黒と赤の色使いがお洒落なCOFF外観。企業の保養所として利用されてきた母屋(写真右側)の横に40フィートタイプのコンテナモジュールを2段に積み重ねたメゾネットタイプのコテージを11棟用意。母屋の方が若干宿泊料金が安く設定されている </br>右上/エントランス外にあるバーベキューテラス 右下/COFFのすぐ横に設置されているコンテナはイベント出展のために</br>北海道・富良野で使われていた20フィートタイプのコンテナを移設したもの。「1万円で所有できる別荘」を提案左上・左下/黒と赤の色使いがお洒落なCOFF外観。企業の保養所として利用されてきた母屋(写真右側)の横に40フィートタイプのコンテナモジュールを2段に積み重ねたメゾネットタイプのコテージを11棟用意。母屋の方が若干宿泊料金が安く設定されている 
右上/エントランス外にあるバーベキューテラス 右下/COFFのすぐ横に設置されているコンテナはイベント出展のために
北海道・富良野で使われていた20フィートタイプのコンテナを移設したもの。「1万円で所有できる別荘」を提案

モビリティ、強度、サスティナビリティなどがコンテナの魅力

株式会社デベロップは、2007年2月、建築用コンテナメーカーとして創業。同社がつくるコンテナの魅力について尋ねた。

「まず、モビリティが挙げられます。コンテナは弊社の中国工場でつくられて日本各地の港に運ばれ、さらに港からトレーラーで運ぶのですが、決められた大きさでつくられているため運送がしやすいのが最大の特徴です。中国で内装までつくりこむことで日本での建築期間を短縮でき、早期の開業など様々な経済的メリットを生み出しています」

ほかに挙げた魅力が強度とサスティナビリティ。
「四隅に鉄骨を使ったラーメン構造にして強度を高めています。建築基準法に適合するJIS規格の鋼材を使うほか、(株)日本鉄骨評価センター(国土交通大臣指定性能評価機関)が評価するRグレードの工場で生産を行うことで日本の品質基準を満たしています。頑丈なコンテナは壁がなくても強度的に問題がないため、壁面をガラスにできるなど設計自由度の高さも特徴です」

つくって終わりではなく、移設しても使えるサスティナビリティもコンテナの大きな武器といえる。
「例えば飲食店をつくった場合に、売上が期待値に届かず場所を変えて勝負したいと考えた時に移設しやすいのもコンテナの魅力。初期費用は木造軸組工法に分があるかもしれませんが、移設時における材料を無駄にしない経済性や早急に移設できるスピード感はコンテナが圧倒的に有利だと思います」

コテージの内部。洋室タイプ9棟(4棟がペット可)、和室タイプ2棟の合計11棟。和室タイプならより多くの人数が宿泊できる。</br>1階はリビングやキッチン、バス、トイレがあり、2階にベッド、バルコニーにプライベートジャグジーを設置。</br>外観のインパクトと比較するとインテリアは「普通」な感じで誰でも違和感なく過ごせるだろう。</br>通り沿いだが車の音などは気にならなかったコテージの内部。洋室タイプ9棟(4棟がペット可)、和室タイプ2棟の合計11棟。和室タイプならより多くの人数が宿泊できる。
1階はリビングやキッチン、バス、トイレがあり、2階にベッド、バルコニーにプライベートジャグジーを設置。
外観のインパクトと比較するとインテリアは「普通」な感じで誰でも違和感なく過ごせるだろう。
通り沿いだが車の音などは気にならなかった

東京五輪のサーフィン会場でもある一宮町。玉前神社を中心にした歴史のある町で、別荘地としても人気があった

COFF 宿泊支配人の宇野智博さん。「COFFのようなホテルのほか、葛飾区に建てた1階を電動シャッター付きガレージ、2階をフリースペースのメゾネットタイプの賃貸ガレージにした『EERF』など、コンテナの様々な可能性を追求していきたいと思います。ぜひCOFFにもお越しください」COFF 宿泊支配人の宇野智博さん。「COFFのようなホテルのほか、葛飾区に建てた1階を電動シャッター付きガレージ、2階をフリースペースのメゾネットタイプの賃貸ガレージにした『EERF』など、コンテナの様々な可能性を追求していきたいと思います。ぜひCOFFにもお越しください」

COFFが建てられた千葉県長生郡一宮町。なぜこの地にCOFFを建てたのかをお聞きした。
「いくつかの場所を検討した中のひとつが一宮町。まず、上総一ノ宮駅から東京駅まで特急で約1時間というアクセスのよさが魅力でした。また『東の大磯』と呼ばれて別荘地として栄えたほか、今も多くの企業の保養所があるなど一年中過ごしやすい気候であることもこの地を選んだ理由です。玉前神社を中心とした歴史のある町ですし、土地の持つポテンシャルを感じて一宮町を選びました」
一宮町の釣ヶ崎海岸が2020年の東京五輪のサーフィン会場に決定した。それもこの場所に建築した理由かとお聞きしたら「その前に建設が決まっていた」そうだ。

もともと横浜育ちの宇野さん。ホテルの開業とともに一宮町で暮らしている。この町についてどう感じているのかをお聞きした。
「地元愛がとても強いですね。ホテルのスタッフも、お祭りなどへの熱の入れ方がすごいと感じます。もちろん地元(横浜)でもお祭りはありましたが、思い入れがもっと強い感じです。
また波質のよさでも有名ですから、サーファーにはとても魅力的な場所でしょう。別荘を持っている芸能人が遊びに来ているという話も耳にしますし、仕事ではなくサーフィンを楽しみたいと熱望してこの周辺で家を建てる人もいるようです。気候もよく、住むにはとてもよい場所だと思います」

宿泊客の評判もなかなかのようだ。
「宿泊されたお客様には『ワクワク感がある』『隠れ家のよう』などのお声をいただいています。住宅密集地やトレーラーが入れない場所には建設できないなどコンテナにはいくつかの制約はありますが、今後もその土地に適したホテルをはじめとした建築物をご提案していきたいと考えています」

次の段落では、実際にコンテナを移設してつくられた、近々開業予定のホテルを紹介しよう。

震災復興に使われていたコンテナモジュールホテルを移設してリニューアルした国内初のホテルが開業

上/栃木県佐野市に10月オープン予定のR9の外観。主にビジネスユースを想定しているそうだが、なかなかお洒落なデザイン。旅行客などにも喜ばれそう。全室シモンズ製のベッドを配するなど設備にもこだわっている。全40室 下/移設前のホテル「ホテルサンプラザアネックス」。主に震災復興に従事する方々のための仮設の宿泊施設として、宮城県石巻市に2012年1月20日に竣工した全41室のコンテナモジュールホテル上/栃木県佐野市に10月オープン予定のR9の外観。主にビジネスユースを想定しているそうだが、なかなかお洒落なデザイン。旅行客などにも喜ばれそう。全室シモンズ製のベッドを配するなど設備にもこだわっている。全40室 下/移設前のホテル「ホテルサンプラザアネックス」。主に震災復興に従事する方々のための仮設の宿泊施設として、宮城県石巻市に2012年1月20日に竣工した全41室のコンテナモジュールホテル

同社が10月28日に栃木県佐野市にオープン予定のホテルが「HOTEL R9 SANOFUJIOKA(ホテルアールナインサノフジオカ)」(以下:R9)。R9は宮城県石巻市で震災復興に従事する方々のための宿泊施設として利用されたコンテナモジュールを移設してリニューアルした、国内初の事例となるホテル。栃木県佐野市は東北自動車道や北関東自動車道、国道50号線など主要幹線道路が交わる便利な立地。大きな工業団地がある北関東の一大産業集積地だ。

「R9は約2週間という短い工期で建築し、その後5年にわたり利用され契約が満了した石巻のホテルで使っていたコンテナを移設してつくられたホテルです。COFFのようなカジュアルリゾート、リゾートで楽しむためのホテルではなく、R9は工業団地のすぐ近くに建てることで主にビジネスユースでの利用を想定しています。地域社会への貢献や土地とのマッチングを考慮して何を建築すればよいかを考えてつくったホテルです」

COFF、R9ともに現地での素早い組み上げによる大幅な短工期化、建築後の移設・再利用による環境負荷の軽減など、コンテナの長所を活かした将来への可能性を感じる事例。今後、地域の需要や社会状況の変化に応じて臨機応変な使い方がされるであろうコンテナを使った建物が、ますます増えていくことは間違いなさそうだ。

■Casual Resort COFF Ichinomiya/
http://coff-ichinomiya.jp/

2017年 10月20日 11時00分