20年の歳月を費やし、約2年前に建築許可を取得。コンテナハウスの可能性とは

木造軸組、2×4、2×6、軽量鉄骨、鉄筋コンクリート。それらを組み合わせたハイブリッド工法。日本の住宅では前記のような工法が主流だ。そこに新たにひとつ加わろうとしている。それがコンテナハウスである。

コンテナとは、ご存じのとおり輸送などに使われる四角い鉄の箱。最近ではレンタル倉庫などで多く利用されているので、見かけることも多いのではないだろうか。住宅への利用も検討されていたものの、立ちはだかったのが建築基準法のぶ厚い壁だった。
「『コンテナは物を運ぶための道具なので流動資産の扱い。それを住居にはできない』という理由から、長期間建築確認が取れませんでした」と話すのは、今回紹介するコンテナハウスの販売代理店、コンテナハウスUNITの安藤大輔さん。

アメリカなど海外では住居のほかアート空間やショップなど、様々なジャンルでコンテナが使われている。そのきっかけは、1992年に始まったビエンナーレアートフェスティバル。マイアミでコンテナフェスティバルが開催されたことがきっかけとなり、コンテナを使った商業施設などが一気に普及しだしたという。
「アメリカからスタートし、ヨーロッパにも広がっています。海外で住居事例が多いのがポーランドやオースタリアなどです」と話すのは、有限会社LIFIXの引地努さん。

引地さんは強靭かつエコなコンテナハウスが社会に安心と豊かさを生み出すと信じ、建築基準法をクリアできる鉄の箱をコンテナと同じサイズでつくり出し、建築に応用。約20年の歳月をかけ、2015年8月に建築確認を取得したのが同社オリジナルのコンテナハウス「IRON HOUSE TETSUYA」だ。
コンテナハウスが持つ強さや環境へのメリット、暮らしを豊かにする構造などを紹介していこう。

LFIXがつくった東京都八王子市に建つコンテナハウス「TETSUYA展示場」。</br>20フィートコンテナ2つと40フィートコンテナ1つでつくられた、無骨なデザインが注目を集める1棟だ。</br>コンテナハウスは住宅のほか、店舗やホテルなどの引き合いも多いというLFIXがつくった東京都八王子市に建つコンテナハウス「TETSUYA展示場」。
20フィートコンテナ2つと40フィートコンテナ1つでつくられた、無骨なデザインが注目を集める1棟だ。
コンテナハウスは住宅のほか、店舗やホテルなどの引き合いも多いという

地震など、災害への強さが際立つコンテナハウス。クラブハウスやガレージをシェルターとしても使える「命を守る箱」

複数のコンテナを重量鉄骨で結び付けて強度を確保。大きさの異なる2つのコンテナを使い、家をつくる。フレームに架からなければ、窓の位置も自由に決められる。外壁には錆びない鉄「コールテン鋼」を使用し、メンテナンス性を高めている複数のコンテナを重量鉄骨で結び付けて強度を確保。大きさの異なる2つのコンテナを使い、家をつくる。フレームに架からなければ、窓の位置も自由に決められる。外壁には錆びない鉄「コールテン鋼」を使用し、メンテナンス性を高めている

何段も重ねられ、船に揺られながら海を渡ってくる鉄の箱、コンテナ。コンテナひとつの重さが約1.6トン。それが何段にも重ねられていることから考えても、コンテナがいかに強い構造物かが容易に想像できる。
「建物をつくる場合、建築基準法で7段まで積むことができます。ということは10トンの重さにも耐えられるということです。世界で一番固い構造物がコンテナです。
コンテナで家をつくれば土砂崩れがあってもまずつぶれることはありません。大きな地震で倒壊することもないでしょう。コンテナを使えば、家族の命を守る家を実現できます」と引地さん。

さらに続ける。
「地震などの災害に強いということを、ビジネスモデルと片づける人もいます。私がこの事業を行うのはそんなことが理由ではなく、とにかく災害時に助かることが大事だと考えているから。自分が大切にしている人や物が一瞬でつぶされたり流されたりすることを想像してください。それはとても悲惨なことです。しかし、コンテナの中にいれば多くの場合助かるのです。日本人は平和ボケしています。例えば震度4の地震があった場合、昔はもっと恐怖を覚えませんでしたか? それが最近では地震の縦揺れか横揺れかがわかるほどに慣れてしまっている。慣れた時が一番怖いと思うのです」

引地さんは福島県出身。東日本大震災で住んでいた家が倒壊したという。
「ボランティアで現地に入り、人がたくさん亡くなっているのを見ました。流されているのも見ました。コンテナがあれば助かった命があったはずです。ほかの家が倒れてきても倒壊することはまずないのですから。とても悲しい気持ちになりました」

阪神・淡路大震災の時にも即座にバイクで駆け付け復興支援を、熊本地震の時にはコンテナを8個送り役立ててもらったという。
「悲惨な状況をたくさん見ましたが、自分にできる一番のことはコンテナを提供すること。そうすることで、何人かの命を救えるはずです。コンテナをつくり、それが人助けにつながれば嬉しく思います」

現在、フットサル場やサッカー場のクラブハウスの建築を依頼され、コンテナハウスでの建築を進めているという。
「何かあった時の避難所として使うことができます。運営するために避難物資の何か月分かを貯蔵しておけば国から補助金も出ます。そういうことをアドバイスしながら建築を進めているところです」

また、家など大掛かりなものでなくても、コンテナひとつでも災害対策に十分活用できるという。例えばガレージ。普段は車やバイクを保管するガレージとして使い、地震などがあればそこへ逃げ込む。家の被害が大きく長期間の避難が必要な場合は、車やバイクを外に出せば部屋としても使うことができる。
「コンテナ1つでもガレージとして使えますが、増築としての建築確認申請が必要です。固定資産税は高くなりますが、安心を買うことを考えれば安いのではないでしょうか」

コンテナハウスは移設可能。セカンドライフも快適に。ライフサイクルに合わせた増築・減築も容易

コンテナハウスは住宅のほか、店舗やホテル、ガレージハウス、別荘など様々な用途に使いやすい。ワイルドで目立つ外観、また移設のしやすさなどにより、今後急速に普及していくのではないだろうかコンテナハウスは住宅のほか、店舗やホテル、ガレージハウス、別荘など様々な用途に使いやすい。ワイルドで目立つ外観、また移設のしやすさなどにより、今後急速に普及していくのではないだろうか

「私自身、35年ローンなど長期間のローンを組んでずっと同じ場所に住むことに抵抗を感じていました。仮に家を建てて10年後に違う土地に引っ越したいと思っても、下取り価格はすごく安くなってしまい資産価値がほとんどありません。その点、フレキシブルに移設できるコンテナハウスに魅力を感じ、販売してみようと思ったのです」と安藤さん。

移設可能なコンテナハウスは、基礎さえつくればまったく同じものを建て直すことができる。
「家ごと引っ越すことができるので、住み慣れた家のまま環境が変わるだけ。住みにくいという問題がないので、セカンドライフが送りやすくなります。100万円出して家を壊して更地にするのではなく、100万円で引っ越した方が格段にエコだと思います」

暮らしに合わせた増築、減築も行いやすい。
「若い夫婦なら、お子さんができたらコンテナを追加して増築。逆にお子さんが成長して部屋が不要になったらコンテナを売却することもできます。コンテナを増減して暮らしをフレキシブルに楽しめるのもコンテナハウスの長所です」
この場合、あらかじめ増築や減築を想定して設計しておくとよりコストを抑え、工期も短縮できるという。

丸ごと移動・移設ができるコンテナは、不要になったら売却も可能。スクラップ&ビルドではない、環境にやさしい点もコンテナハウスの魅力だろう。

東京五輪を見据えたホテル建設も始動。土地オーナーには固定資産税減税の恩恵も

2020年に開催される東京五輪。ここでもコンテナが注目されている。その一例がホテルだ。
「2020年の開催に向けホテルの部屋数の確保が重要になり、多くの問い合わせをいただいています。しかし、コンテナが活きるのは五輪後です。そのままその場所でホテルとして運営もできますし、解体して地方など違う場所に移設することもできます。解体費もほとんどかからず、再利用できるエコな面もコンテナの大きな魅力です」(安藤さん)

「まちづくりにも貢献できます」と続ける安藤さん。
「コンテナのフレキシブル性を活かしたいと考えています。建物が解体されて何ができるのかと楽しみにしていると、コインパーキングになることが多いように感じます。更地をコインパーキングすると土地オーナー様は管理が楽なのかもしれませんが、コインパーキングではまちにワクワク感を生み出しません。その点コンテナハウスならおよそ車1台分のスペースがあれば店舗やポップアップショップなどをつくり、賑わいを生み出すことができます。土地オーナー様にも固定資産税を6分の1にできるというメリットがあります」

住宅はもちろん、ホテルや店舗での利用では、快適さが当然求められる。その点はどうなのだろうか。
「コンテナの中に木造軸組と同じ工法を用いることで、断熱性能を確保。外壁塗料にも断熱塗料を塗り、快適性を高めています。遮音性能も高く、静かに暮らせます。大音量で演奏などを行っても音が外に漏れることはほとんどありません。この展示場が完成して1年以上、週の半分ほどここで寝泊まりしていますが、自宅以上に快適です」(引地さん)

キッチンなどの住宅設備も各メーカーのものを普通に使用することができる。気になる価格は木造住宅と同じぐらいで工期は3か月ほど。保証期間は35年。適切なメンテナンスを行えば、コンテナの耐用年数は50年は間違いないと引地さんは話す。

TETSUYA展示場の快適な室内空間。取材時は寒い日だったが暖房を使用しなくても普通に快適に過ごせた。</br>強い構造のため、300kg以上あるようなバイクを室内に入れてメンテナンスをすることも可能な暮らしを楽しめる家。</br>もちろんピアノなどの重量物も補強なく設置することが可能。屋上にプールを設置することもできるTETSUYA展示場の快適な室内空間。取材時は寒い日だったが暖房を使用しなくても普通に快適に過ごせた。
強い構造のため、300kg以上あるようなバイクを室内に入れてメンテナンスをすることも可能な暮らしを楽しめる家。
もちろんピアノなどの重量物も補強なく設置することが可能。屋上にプールを設置することもできる

コンテナハウスを知ってもらうことと、普及させるためのコストダウンが今後の課題

お話をうかがった有限会社LIFIX代表取締役の引地努さん(左)と、コンテナハウスUNITの安藤大輔さん(右)。2017年のうちに、横浜、八戸、熊本、沖縄など全国各地にモデルハウスが完成予定という。コンテナハウスを近くで見かけることもそう遠くないだろうお話をうかがった有限会社LIFIX代表取締役の引地努さん(左)と、コンテナハウスUNITの安藤大輔さん(右)。2017年のうちに、横浜、八戸、熊本、沖縄など全国各地にモデルハウスが完成予定という。コンテナハウスを近くで見かけることもそう遠くないだろう

「ほとんどの人がコンテナハウスのことを知らないと思いますが、見た目だけではないコンテナハウスの魅力を広く正しく伝えていくことが当面の課題です。今後大量生産するためのラインを整えられればコストダウンができ、より普及しやすくなると考えています。コンテナハウス業界が競い合うことで地震大国日本に安全な家が増えていくことを願っています」(引地さん)

大手ハウスメーカーに長年勤務していた引地さん。建築関連の法律は厳しいようで抜け穴が多いと、業界への厳しい指摘も忘れない。
「例えば東日本大震災。たくさんの家が壊れたり流されたりしましたが、建築確認申請を取っていない家がたくさんあったんです。そうしたら国からの保証はゼロ。住民票はあっても建築物として登記しておらず、固定資産税を払っていないわけですから。また、地震保険に入る場合も建築確認申請が必要ですが、保険会社はそこまで確認しない。実際に地震が起きると満額支給されないなど、そのようなトラブルが多発しています。当社のコンテナハウスは建築確認申請の許可が下りるまでに20年近くかかりましたが、お客様の安全かつ快適な暮らしの実現と同時に業界を良くするためにも、正しいことを一生懸命やっていこうと思っています」

コンテナハウスについて紹介してきたが、どのように感じただろうか。災害に強く、リサイクルが可能なエコな建物。あと数年したらコンテナハウスが当たり前に建っている様子を目の当たりにするのではないか。私はそのように感じている。

■IRON HOUSE TETSUYA
https://www.ih-tetsuya.com/

■コンテナハウスUNIT
http://containerhouse.jp/

2017年 05月08日 11時00分