東日本大震災で大きな評価を得た「コンテナ」の仮設住宅

輸送用以外に、使用用途が広がっている「コンテナ」輸送用以外に、使用用途が広がっている「コンテナ」

2011年11月、宮城県女川町にコンテナを利用した仮設住宅の入居が開始された。東日本大震災の被災者向けで、日本の仮設住宅としては初めてのコンテナ3階建て構造だ。

東日本大震災で女川町は町民の6割近くが避難生活を強いられた。早急な仮設住宅の建設が求められていたが、リアス式海岸沿いの町には平地が少なく、土地が足りない。そこで考えられたのが、コンテナをひとつおきに積んで2~3階に多層化(市松模様のイメージ)した仮設住宅。この仮設住宅、コンテナ自体が丈夫なため耐久性が高いこと、仮設住宅は平屋が一般的なのに対して多層化したことで、住戸数の確保ができたこと等が評価された。さらに、窓やドアなどの開口部はあらかじめ工場で加工して、現地ではコンテナを積み上げて職人不足の問題を解決し、短期間の工事を実現した。

そもそもコンテナとは、鋼鉄やアルミニウムでつくられた貨物輸送用の箱のこと。世界で最も一般的なコンテナは「国際海上貨物用コンテナ(以下、海上用コンテナ)」で、ISOによって規格が統一されており、主に長さ20フィート(6m5.8cm)と40フィート(12m1.92cm)の2タイプがある。国際的に規格化されているため、トレーラー・船舶・鉄道等の異なった輸送手段でも貨物の積み替えが可能で、コンテナ開発により世界の輸送技術は大きく前進した。

ところで、海上用コンテナをそのまま休憩所や住居にできるかというと、そうではない。実は休憩所や住居など人がすごす空間には、建築用コンテナという建築確認申請ができるコンテナを使用する必要があり、20フィート・40フィートという規格はほぼそのままに、柱と梁で強度計算されたコンテナが建築用としてつくられている(※一部の場所・建築手法では、海上用コンテナでも建築確認のとれる場合がある)。また、建築用コンテナで居住用のコンテナを建てる場合は市街化調整区域以外は建築可能だが、倉庫として利用する場合には、「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「第一種中高層住居専用地域」と市街化調整区域には建てられない。

館山カントリークラブが選択した「コンテナ休憩所」

千葉県、館山カントリークラブの東5番ホールに、コンテナでつくられたひときわ目立つ休憩所がある。コンテナを採用した理由を館山カントリークラブ広報の青木さん・志村さんに聞いた。

「まずは工期が短かったことです。ここはトイレを兼ねた休憩所なので、長期間クローズができません。また、工事の音がゴルファーの集中力を妨げることも懸念点でした。コンテナは、基礎をつくっておけばクレーンで吊って設置するだけで工期が短いと知って採用しました」
東コースは工事に備えクローズしたが、実際の工期は半日。あらかじめ工場でつくっておいたコンテナをトラックで運んで、クレーンで吊って設置した。

「コストが安かったのも理由のひとつです。コンテナに入口と腰窓、トイレの開口部をつくって、内装・外装をしただけで安くすみました。あとは、見た目がおしゃれなことですね。外観の色はこちらで指定できるので、芝生のグリーンに合う寒色系にしました」
たしかに、輸送効率優先でつくられたコンテナは、無駄を省いた究極にシンプルなかたちだ。アイディア次第で、センスある空間に変わる可能性は充分にある。

館山カントリークラブのコンテナを利用した休憩所館山カントリークラブのコンテナを利用した休憩所

自然災害後に広がる、コンテナの可能性

ニュージーランドのクライストチャーチに「リ・スタート」というショッピングモールがある。これは、2011年2月に発生したニュージーランドの地震で大きな被害を受けた商業施設を、海上用コンテナを店舗にして再スタートしたもの。外壁をカラフルに塗ったコンテナの店舗群は、おしゃれな観光スポットとして人気を集めている。もともと人気のショッピングスポットだったクライストチャーチを、コンテナを使って素早く復興させた好例だ。

では今後、コンテナは普及していくのか――。今回は「コンテナハウス2040JP」を立ち上げ、シェルターを兼ねたコンテナハウスを提案している株式会社ラウンド・リサイクルの菅原修一さんに聞いた。

「現在のコンテナの需要は、海の家や倉庫など一時的なものが多いのですが、住居として使えるかという問い合わせも増えています。これは、近年、地震やゲリラ豪雨・突風等の自然災害を経験し、頑丈さや設営のしやすさからコンテナハウスに注目している方が増えたのだと思います。また、設計の自由度の高さもポイントです。建築用コンテナは柱と梁で強度計算をしているので、壁を取りはらうことができます。コンテナを2つ横並びにして壁を取りはらえば、広い空間がつくれますし、床が木材のコンテナは、すべての壁を取ってウッドデッキとして使うことも可能です。コンテナハウスは、いわばオーダメイドの空間なんです」

「週末別荘をコンテナで」。おしゃれなキャンプスタイルで差別化に挑戦

「ケープタウンリゾート」を運営する堀江さん。1軒目の貸別荘は薪ストーブがある「ケープタウンリゾート」を運営する堀江さん。1軒目の貸別荘は薪ストーブがある

菅原さんに、千葉県いすみ市で貸別荘「ケープタウンリゾート」を運営する株式会社ケープタウンの堀江けい子さんから相談が舞い込んだのは2014年夏のこと。
いすみ市は九十九里浜の最南端、太東海水浴場を擁するサーファーに人気の場所。ここで一軒家借り切りタイプの貸別荘を営む堀江さんは、2軒目としてコンテナハウスの貸別荘を検討している。

「コンテナハウスに注目したきっかけは、海外の住宅でコンテナをつかってセンスよく暮らしている人の記事を見たことです。ずいぶん空間を広く使えるんだなという印象を持ちました。また、価格が安いことと、コンテナの持っている無骨さが住居にいかせたらかっこいいなと思って具体的に考えはじめました。現在、二拠点居住が注目を集めていますが、地方に住まいを購入するまでもないと考えている方は多いと思います。都心で働いて、週末をいすみ市の貸別荘ですごすというスタイルには需要があると考えました」

売り出し中の中古別荘も多いいすみ市、それらとの差別化にもコンテナハウスは最適だという。
「いすみ市は豊かな自然が残っています。2軒目の貸別荘はこの環境をいかして、コンテナをテント代わりにする、おしゃれなキャンプスタイルを提案する予定です」
ケープタウンリゾート2軒目のコンテナハウス貸別荘は、2015年春にオープン予定だ。

災害に強い特長をいかした今後の取組みを

右:コンテナハウス2040JPの菅原修一さん、中央:館山カントリークラブ青木さん、左:志村さん右:コンテナハウス2040JPの菅原修一さん、中央:館山カントリークラブ青木さん、左:志村さん

コンテナを住空間にする時に気になるのが、音・断熱・結露等の住まいとしての性能。どのような対策法があるのか――。

「コンテナハウス2040JPのコンテナハウスは、ガイナ塗装を推奨しています。これで断熱・遮音・結露とカビ防止の効果を得ることができます。また、ガイナ塗装は塩害に強く不燃なので、どんな場所にも適応できると考えています」と菅原さん。
ガイナとは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のロケット開発で培われた断熱技術によって開発された塗料のこと。断熱性の高い特殊セラミックスを混合したもので、通常は分厚い断熱材が必要な部分が、1~2ミリ程度の厚さで断熱性が得られると注目されている塗装材。

「コンテナハウスをシェルターを兼ねた住居として普及させたいと思っています。例えば、子どもが生まれたらコンテナを追加して独立したらそれを外すなど、家族のライフステージに合わせて住まいそのものを変化させていくことが可能です。使わない部屋は住まいの熱効率を下げるし、維持も大変ですから。また、持家はハードルが高いという人に、借地権付き土地にコンテナハウスを建てるというアイディアもあります。引越しではなく“住まいを移動する・変化させられる”という発想が根付くと良いなと思います」

中古のコンテナは比較的簡単に入手できることから、建築確認をとらず違反建築物として取り締まりの対象になる例も多い。また、建築用コンテナの歴史はまだ浅く、明確な寿命の研究も知見も無いのが現状だ。(※海上用コンテナの寿命は10年と言われている)
課題はあるが、そのポテンシャルは証明されつつある。災害に耐えられる頑丈さは、これからの住まいに求められる最低条件だ。今後の創意工夫が進めば、コンテナハウスが住まいとして選ばれる日が来るかもしれない。


【取材協力】
コンテナハウス2040JP http://2040.jp/
ケープタウンリゾート http://www.i-capetown.com/
※現在、株式会社ケープタウンはコンテナハウス2040JPの代理店になっている。

2014年 12月05日 11時33分