インターネットがもたらしたシェアリング・エコノミーの急拡大

インターネットを通じて個人間でモノや場所を貸し借りするサービスが増えており、国内だけでも様々なベンチャー企業が立ち上がっている。例えば「akippa(アキッパ)」(akippa株式会社)は、契約の埋まっていない月極駐車場や使っていない自宅の駐車スペースを貸したい人と、一時的に駐車場を利用したい人とをインターネット上でマッチングする仕組み。「軒先.com」(軒先株式会社)は、軒先や店舗内のちょっとした場所を貸し借りできる。狭い面積でも、お弁当の移動販売や企業の販促活動、手作り雑貨の販売など、ニーズは豊富にある。そのままではお金を産まない遊休資産を利用して収益をあげるのが、こういったサービスの特徴だ。

対象となるのは、モノや場所だけでなく、時間やスキルといった無形の資産にも及んでいる。「Any+Times(エニタイムズ)」(株式会社エニタイムズ)を使うと、部屋や水回りの掃除、家具の組立て、ペットの世話などを引き受けてくれる人を見つけることができる。引き受ける側からすると、空いた時間や得意なスキルをお金に換えることができる、新しい稼ぎ方だといえるだろう。

ここ数年で、個人が保有する遊休資産(スキルのような無形なものも含む)を対象としたマッチングサービスが色々と登場してきた。こうしたサービスは貸し手と借り手をマッチングする「オンライン・プラットフォーム」を介して実現。これによって成立する経済圏は「シェアリング・エコノミー」と呼ばれ、大きな成長が見込まれている。"所有せずに使う"ことで、いままでのライフスタイルを変化させる、大きな潮流になるともいわれている。また、世の中で使われずにいるモノや時間、スキルといったリソースの稼働率を上げることで、社会全体の生産力を高める効果も期待されている。(*)矢野経済研究所によると、国内のシェアリング・エコノミーの市場規模は、2014年度に233億円であったものが、年平均18.7%の成長を続け、2018年度には462億円にまで拡大すると予測されている。(*総務省・平成28年度 情報通信白書より)

日本でシェアリング・エコノミーが注目されるようになったのは、2014年頃から。海外で大成功を収めたアメリカ発のサービス、ライドシェア・プラットフォームの「Uber(ウーバー)」と、世界最大の民泊プラットフォーム「Airbnb(エアビーアンドビー)」が上陸したのがきっかけだ。UberもAirbnbも2000年代後半に創業された企業にも関わらず、驚くほどの急成長を遂げている。

空いている駐車場を貸したい人と、借りたい人を結ぶマッチングサービスも空いている駐車場を貸したい人と、借りたい人を結ぶマッチングサービスも

日本でも広がる民泊のサービス

シェアリング・エコノミーが成長する中、日本で特に注目されているのは民泊だ。代表的なプラットフォームであるAirbnbによると、2015年時点で190ヵ国以上34,000を超える都市で100万以上の宿が提供されている。欧米ではすでに個人旅行における選択肢のひとつになっており、日本でも、北海道から沖縄まで23,000件以上の部屋が登録されている。従来の宿泊予約サイトとの違いは、貸し手がホテルなどの法人ではなく、大部分が個人であること。自宅の空き部屋を貸す人もいれば、民泊用の物件を用意しているオーナーもいる。ネット上の手続きのみで開始できる手軽さも、貸したい人にとって魅力だろう。

掲載されている物件は個性豊かで、アパートの一室もあれば、純和風の一軒家や、温泉付きのバンガローなど様々。それだけニーズが多様化していると捉えることもできる。宿泊費には幅があり、中には周辺のホテルより安く設定している物件も存在する。

昨今、外国人旅行者の増加により宿泊施設の予約が取りにくいという。宿泊サイトなどでは以前に比べ料金が高騰しているという声もあり、旅行者にとっては悩ましい状況だ。既存のホテルや旅館だけでは足りていない部屋数を補うために、今後、民泊は社会インフラとして受け入れられていく可能性がある。宿泊場所の選択肢が増えれば、ホテルや旅館が少ないエリアでも宿が確保しやすくなる。空室が活用され、空き家増加という社会問題の解決につながることも期待されている。

このように様々なメリットがあり、今後の成長も期待されている民泊だが、現時点では法整備が間に合っておらず、"グレーゾーン"とも言われる。営業行為としてゲストを宿泊させることに関連する法律が、旅館業法における建築基準法や消防法など多岐にわたるということは、前回<民泊の壁は「旅館業法」だけなのか?増えるトラブルへの対応も課題に>で 述べた通りだ。現在はそれら既存の法制度の見直しに加え、新たな規制を設ける動きが出始めている。

解禁に向けた動きと外圧~規制はTPP違反との指摘も

政府のIT(情報通信技術)総合戦略室は、2015年12月10日に「情報通信技術(IT)の私利用に関する制度整備検討会 中間整理 ~制度整備の基本的な方向性~」を発表した。「シェアリング・エコノミーの適正な事業運営の確保」のため、プラットフォーム運営事業者に貸し手の営業許可の確認や、宿泊者の本人確認等を義務付けるといった内容だ。トラブル発生時を考慮し、プラットフォーム運営事業者が損害賠償に備える責務を負う検討もされている。海外の事業者も規制対象とし、国内事業所の設置を義務付けるとの方針だ。

規制強化とも映るこの案に反発したのがアメリカのインターネット業界だ。グーグル、フェイスブック、アマゾン等が加盟するアメリカ最大のインターネット業界団体「インターネット・アソシエーション」が、2016年1月11日に日本政府に是正を求める「意見書」を提出。この中で、国際的な視点が不可欠なインターネット関連法であるべきなのにもかかわらず、日本独自のルールを規定し、それを海外の事業者にも適用する「域外適用」であると述べている。
また、海外事業者への参入規制や国内事業所設置義務は、日本が批准を目指すTPP(環太平洋経済連携協定)における市場アクセス等に関する自由化への約束に反するという指摘もあがっている。

これに呼応するように、グーグル日本法人やアマゾンジャパン等が加盟する「アジアインターネット日本連盟(AICJ)」も、2016年1月12日に意見書を出した。「インターネット仲介機能の特性に伴う諸課題」として政府が挙げているものは、必ずしもインターネット特有の課題ではないと指摘。「特に、インターネット仲介機能において、『詐欺、無許可営業』や『テロ、感染症』などの課題がインターネット特有の危険であるという印象を与える記述」は、国民の不安を煽り、ITの利用を後退させるものだと、強い口調で反論している。義務を増やすだけでは各業法との関係で発展が阻害されているシェアリング・エコノミーの発展はないとの懸念も表明した。

民泊のようなシェアリング・エコノミーを実現するプラットフォームは、海外ではすでに広がりを見せており、日本国内でも成長が期待できる分野だ。規制緩和と制度整備がセットで実施され、誰もが安心して気軽に利用できる仕組みをつくり上げることが早急に求められている。

※この記事は「民泊JAPAN」クローズに伴って、同社にて運営するLIFULL HOME'S PRESSが著作権を引き継ぎ、使用許諾権に基づいて公開しています。情報は「民泊JAPAN」掲載当時(2016年3月25日)のものとなります。

シェアリング・エコノミーが日本で広がっていくには、規制緩和と制度整備がセットで実施される必要があるだろうシェアリング・エコノミーが日本で広がっていくには、規制緩和と制度整備がセットで実施される必要があるだろう

2016年 03月25日 11時10分