東京23区で戸建て住宅の購入が今後難しくなる?

住まいを考える時に、「戸建て」あるいは「マンション」どちらで住もうかという悩みは尽きないが、東京23区のそれぞれの区で密かに「戸建て」に関する重要な制度が徐々に制定されているのはご存じだろうか?

家を建てる際、法律上「建ぺい率」「容積率」「用途地域」は規定があり特に重要なチェック項目なのは今さら言うまでもない。しかし、今後はそれ以外にも、「最高限度高度地区(絶対高さ)」および「敷地面積の最低限度」の2つの都市計画制度について導入が検討されている。

「敷地面積の最低限度」「最高限度高度地区(絶対高さ)」の2つは、東京都の都市景観をよくしたりミニ開発などを防ぐための制度だ。既に東京23区では、練馬区、中野区、杉並区、目黒区、世田谷区、江戸川区の6区で工業地域や商業地域など一部特別区域をのぞき区内全域に規定されている。例えば中野区の場合、建ぺい率60%で第一種低層住居専用地域の場合は敷地面積が60m2以上が必要という規定がある。建ぺい率の数値や用途地域によって、この限度はそれぞれ違う。

つまり端的に言えばどういうことか?
上記制度が制定されるとその区では極端な話、敷地面積60m2以下の新築分譲住宅の販売はできないことになり、狭小住宅購入が難しくなる。既に敷地面積60m2以下の土地付きの家や土地のみを所有している場合には、建築基準法54条の2で「敷地面積の制限」を適用しないという救済措置が設けられており、今回のケースにおいては違法ではなく建替えや新規建築できるのでご安心を。大きな土地があった場合、細かく刻んだ土地販売がなくなるということだ。

今度、ここに板橋区も加わり、一部地域をのぞいた区内全域の敷地面積の最低限度と最高限度高度地区について規定される。実際の導入は、都市計画手続きを平成26年度中を目標に進めていくとのことだ。

こうした規定が進む中、東京23区の住まいはどう変わるのか?現状の住まいがこの規定によって実際のところどうなのか?東京都の人口予測や物件数などをもとに考察してみる。

出典:杉並区の「敷地面積の最低限度規制」の概要から出典:杉並区の「敷地面積の最低限度規制」の概要から

東京23区の住まい状況

現在の東京の住まい状況を改めて振り返ってみよう。

総務省統計局が発表している「社会生活統計指標 -都道府県の指標- 2014」「社会生活統計指標 -都道府県の指標- 2013」のデータをもとに東京のデータを見てみる。ただし、23区と都下が一緒のデータのため、23区内はその基準より厳しい住まい状況だと思ってみてほしい。

まずマンション・戸建て含め、東京の総住宅数は2008年時点で6,780,500戸。その内、戸建てが1,686,500戸。戸建ては28.4%という比率だ。全国平均が66.2%ということから、実際東京では集合住宅が多く、一方で戸建てがかなり少ないことが分かる。マンション、戸建て含めて持ち家住宅の延べ面積は92.4m2という結果。ちなみに借家だと単身世帯が多いのもあり38.0m2だった。都下も含んだ数字のため、23区内になれば持ち家といっても90m2を下回る広さの住宅が多いのが現状だ。90m2の住宅の場合、敷地面積が60m2以下のものも多い。

HOME'Sで東京23区内における戸建て住宅(中古・新築戸建て)の検索を行うと、2014年7月16日時点で全7,304件。その内、土地面積(敷地面積)が60m2以下のものが1,556件。現在、HOME'Sの東京23区で売買されている戸建て物件の約20%にあたることが分かる。

敷地面積の最低限度で・・・

狭小住宅が少なくなる?狭小住宅が少なくなる?

そんな中、「敷地面積の最低限度」が制定されると具体的にどうなるのか?中古ならばともかく、新築分譲住宅で敷地面積が60m2以下の住まいはなくなるということだ。現在、HOME'Sの住宅検索で東京23区で敷地面積60m2以下の売買されている戸建ては1,556件。その内、新築は986件。数字だけで一概に言えないが、つまりこうした狭小の新築分譲住宅の物件が今後少なくなる可能性もあるということだ。

確かに敷地面積60m2以下の物件は、20坪未満の狭小住宅だ。しかし、立地にこだわりたい人は多少住まいの広さを犠牲にしても、その場所に住みたい人はいるだろう。街づくりにおいて景観や火事や地震などの防災を考慮してこのような制定が設けられたが、安心安全の街になる一方、住まい選びの選択肢が狭くなるのではと予測できる。

現在、23区の内、実施しているのが6区。そこに板橋区が参加して、7区。他の16区のHPを見ると、策定中のところもあれば、港区のようにはっきりと「敷地面積の最低限度は定めておりません」と書いてある区もある。しかし、東京都が都市計画として掲げている以上、最終的な決断はそれぞれの区にゆだねられるが、徐々に「敷地面積の最低限度」が定められていく可能性がある。

板橋区のパブリックコメントを見ると…

今回の制定に関して板橋区が発表しているパブリックコメントの資料を見てみると、街並みの秩序という点では評価が高いが、一方で新築住宅の高騰により住民離れが起きるのではという危惧のコメントを見ることもできる。

一部抜粋すると、板橋区のとある不動産会社から「板橋区高島平8丁目に高島平駅まで徒歩6分、価格3,780万円・土地面積55.37m2・建物面積77.34m2という物件があります。この物件を購入するには年齢40歳未満、年収503万円以上の方であれば都市銀行で住宅ローンを組み購入することが可能です。しかし、現在の(案)のままで進むと建物坪単価50万円で計算すると建物価格が約1,170万円となります。建物は変わりませんから土地面積が増えた分価格が上がります。土地のm2単価は47.13万円となり土地価格が70m2制限で約3,300万円。合計すると4,470万円となり約690万円高くなります。この物件を購入するには年齢40歳未満、年収595万円以上の方であれば都市銀行で住宅ローンを組み購入することが可能です。購入できる方は当然激減します。板橋区の新築戸建価格は一部を除いて4,000万円を超えてきます。今後の板橋区を考えることで良いことは15~24歳の若者の構成比は、練馬区に次いで23区中ナンバー2.板橋区には意外に若者が多い点です。しかし、この方々も平均年収は低くなる可能性が高いことから現在の(案)のまま進むと板橋区に家を購入し居住する人が少なくなり、板橋区から離れていきます。そうすると将来的には税収が下がることも想定しなくてはなりません」というコメントがあった。

それに対して、板橋区からは「ご意見のとおり、敷地面積の最低限度の制度を導入いたしますと敷地分割に規制がかかり、敷地分割をして建売住宅を販売する場合などには、一定規模以上の敷地面積となるため販売価格が高くなることも予想されます。しかしながら、区としましては、工場跡地等が隣棟間隔の狭い小規模な宅地に切り売りされている場所もあり、防災性を配慮し今後の密集地域の拡大の防止や通風等の住環境を保全するため、一定の広さの敷地面積が必要と考え本制度の導入を進めています。敷地面積の最低限度の制限値は、今回都市計画で定める基準としてバランスのとれた数値として考えています。本制度は、一定の規模を下回るさらなる敷地の細分化を抑制する目的で導入するものであり、その趣旨をご理解下さい。」ということだ。

制定により東京の住まいはどう変わるのか

詳しくは記事下のリンクからパブリックコメントを見て頂きたいが、区としては敷地面積の最低限度で住宅価格が高くなることは予想済みということのようだ。ちなみにこうした影響かどうかは分からないが、現在板橋区では新築分譲住宅が至るところで建てられている。

東京の人口の推移をみると、東京全体では人口は減っていく推移だが、23区で見ると2020年までは右肩あがりで、その後もやや減少するもののほぼ横ばい状態だ。今後も住まいの需要はある東京だが、こうした敷地制度によって、重要となってくるのが「空き家」だ。行政主導のもと空き家がなくなり新規にゆとりのある住宅が生まれれば、需要と供給のバランスはつりあうと思うが、今のままだと狭小地がなくなりその分だけ供給が減る可能性がある。
また、上記パブリックコメントにあったが新築住宅の選択肢が狭まるのであれば、中古住宅+リフォーム、リノベーションの存在が重要になってくる。しかし、築年数20年以上の建物は価値的にほぼ0のため住宅ローンが出にくいなど今度は違う箇所でネックが出てくる。

今後、東京23区の住まいはどう変わっていくのだろうか?他の区の状況とあわせてみていきたい。


参考:板橋区「制限値2次案に関するパブリックコメントと区の考えについて」
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/046/attached/attach_46283_6.pdf

2014年 08月02日 14時59分