敷地全体のトータルリノベーションで団地を再生

小田急線「座間駅」の目の前に誕生した「ホシノタニ団地」。既存の団地の概念を打ち破ったスタイリッシュな団地が誕生した小田急線「座間駅」の目の前に誕生した「ホシノタニ団地」。既存の団地の概念を打ち破ったスタイリッシュな団地が誕生した

近年の住宅事情では既存団地の老朽化が進み、こうした物件の行く末が問題視されているが、中には大幅リノベーションを加え順調に入居者を集めているものもある。座間市に登場した「ホシノタニ団地」もその1つだ。

この「ホシノタニ団地」では、室内が大幅改装されているのはもちろんのこと、サポート付きの貸し農園、ドッグラン、カフェまでを併設。現在のニーズに即した便利でスタイリッシュな住環境に生まれ変わっている。

ここには、“古くて住みにくい”団地のイメージはもはやない。むしろ、現在の新築住戸ではなかなか実現できないゆとりある敷地を上手に活かし、暮らしやすい空間が形成されている。

団地の概念を超えた新しいタイプの“団地”。今回はそんな「ホシノタニ団地」の魅力を探ってみよう。

恵まれた立地条件を活かしての大規模リノベーション

左から、小田急電鉄 坪田敦氏、 滝島敬史氏、向井隆昭氏左から、小田急電鉄 坪田敦氏、 滝島敬史氏、向井隆昭氏

そもそもホシノタニ団地は、小田急電鉄株式会社(以下、小田急電鉄)の社宅として利用されていたものだ。小田急電鉄 生活創造事業本部 開発推進部 課長 滝島敬史氏によれば、2013年まで社宅として利用されていたが、築50年を超え老朽化が進む中で新たな利用形態が検討されたという。

「社宅としてのニーズが薄れる中で、当初は新築住戸として一般に提供することも考えられました。しかし、ここは『座間駅』から徒歩1分、昔ながらのつくりでしたから、団地内の敷地にも余裕があり、4棟ある棟と棟の間もゆったりと贅沢なスペースが広がっていました。こうした立地条件を活かすべきという想いからリノベーションに踏み切ったのです」(滝島氏)

確かに、「ホシノタニ団地」の敷地全体を見ると、緑が多く、ゆとりがある。建物はすべて南向きで外光がふんだんに入るつくりだ。新たに新築となるとこうした立地条件はコストバランスの兼ね合いなどからも見直しが必要になってくるだろう。既存の建造物を残し、リノベーションという道を選んだことにも頷ける。

しかも、同社が目指したのは「エリアニーズからコンセプトニーズへの転換」だったと小田急電鉄 生活創造事業本部 開発推進部 課長代理 坪田 敦氏は説明する。

「『座間駅』というのは、小田急沿線の中でも急行の停車駅ではなく、めぼしい商業施設などもありません。単に団地の建物を綺麗に改装するだけではなく、コンセプトのあるランドマークとしての再生を目指しました」(坪田氏)

小田急電鉄ではこうした狙いから、魅力的なリノベーション案件を手がける一級建築士事務所「株式会社 ブルースタジオ」に企画提案を依頼し、団地の再生に踏み切ったのだ。

スタイリッシュな室内に広々とした専有庭住戸も用意

では、実際に「ホシノタニ団地」はどのような変貌を遂げたのか。まずは室内の様子から見ていこう。

この団地で行われたのは、全4棟のうち、3号棟と4号棟の2棟・計55部屋のリノベーションだ。もともとの2DKの間取りを大幅に変えワンルームに変更。ワンルームといっても専有面積は約37m2もあり、1LDKとも言える広々とした空間だ。

室内は真っ白な天井と壁に、オープンキッチンのレンジフードの配管などもそのまま見せるシンプルながら洒落たつくり。キッチンも必要最低限の機能ながらステンレスと木の組み合わせがカフェのような雰囲気を出す。フローリングには、色味の濃い木材が使われていて、団地のイメージは完全に払拭されている。

シンプルなつくりだけに、造作の収納が少ないようにも思えたが、キッチンの背面にはウォークインクローゼットとなるスペースが確保されている。実はここ、もともとはバスルームであったが、昔のつくりのお風呂場のため現在のシステムバスが入らず、発想をガラリと変えてクローゼットスペースにしたのだとか。縦長の空間ながら、なかなかの広さがあるので収納力は高そうだ。

また、1階の部屋には、約30m2~66m2の専有庭もついている。広々としたウッドデッキが備えられていてかなりの開放感がある。これだけ立派なウッドデッキがあれば、ちょっとしたガーデンパーティーも楽しめそうだ。大部分は芝生が植えられているが、花壇スペースもあるため、ハーブや植物を育てやすい。

賃料は、庭付きの1階が95,000円、2階以上は70,000円~72,000円(共益費が別途5,000円)という価格帯だ。小田急電鉄 生活創造事業本部 開発推進部 向井隆昭氏によれば、現在のところ反響は高く、入居希望がぞくぞくと寄せられているという。

「2015年3月にリノベーションを完成した4号棟はほぼ申し込みで埋まり、現在は6月に完成した3号棟への申し込みが進んでいます。見学にいらっしゃるみなさんの反応は良いですね。一人暮らし、もしくはお二人で住まわれる方が多く、男女問わず契約いただいています」(向井氏)

左上)キッチンもシンプルなおしゃれなつくり。コンロ前はタイル張りなど機能性も考えられている。右上)ワンルームながらカーテンなどで仕切ればベッドルームもできる。左下)クローゼットルームはかなり収納ができそうだ。右下)1階の庭付き住戸はウッドデッキが魅力(写真は30m2の専用庭)左上)キッチンもシンプルなおしゃれなつくり。コンロ前はタイル張りなど機能性も考えられている。右上)ワンルームながらカーテンなどで仕切ればベッドルームもできる。左下)クローゼットルームはかなり収納ができそうだ。右下)1階の庭付き住戸はウッドデッキが魅力(写真は30m2の専用庭)

アドバイザー付きシェア農園やカフェ、ドッグランも併設

また、「ホシノタニ団地」は室内のみならず、敷地内の様々な施設にも魅力がある。その1つが、サポート付きの貸し農園(シェア畑)だ。

農園は敷地内に2つのエリアに分かれ、6m2の専用区画が46用意されている。月々6,390円(税抜)の費用で専用区画での野菜づくりが楽しめるというものだ。費用の中には、種・苗、肥料、農具レンタル代が含まれるほか、専任の菜園アドバイザーの指導つきで初心者でも手軽に無農薬の野菜づくりが行える。

このシェア畑は入居者のみならず、近隣の住民も申し込める。あえて地域の住人に開放しているのは、ホシノタニ団地がコミュニティとして地域につながる場所を目指しているためだという。

このほか、3号棟の1階には「農家カフェ」も展開されていて、今後はシェア畑でつくられた野菜をつかったメニューなども提供される予定。4号棟の1階には子育て支援施設もあり、地域に開く「ホシノタニ団地」というのが名実ともに実現されている。

もう1つ入居者に嬉しいのは、ホシノタニ団地がペットとの入居が可能なこと。さらに敷地内には専用のドッグランが設けられている。広々としたスペースであるのはもちろんのこと、ドッグラン内には、ひのき、サワラなどのウッドチップが敷き詰められていて、ワンちゃん糞とおしっこの匂い消しにまで配慮されているのが嬉しい。

上部写真)シェア畑。日当たりのよい場所で専任のアドバイザーが野菜づくりを指導してくれる。この日はきゅうりやなすやトマトのほか、とうもろこしの大物も実っていた。左下)入居者専用のドッグラン。右下)3号棟1階には、地域住民も利用できる農家カフェがある上部写真)シェア畑。日当たりのよい場所で専任のアドバイザーが野菜づくりを指導してくれる。この日はきゅうりやなすやトマトのほか、とうもろこしの大物も実っていた。左下)入居者専用のドッグラン。右下)3号棟1階には、地域住民も利用できる農家カフェがある

地域に開かれた「ホシノタニ団地」を目指す

「座間駅」から団地を望む景色。壁面にかかれた星座のモチーフが印象的だ「座間駅」から団地を望む景色。壁面にかかれた星座のモチーフが印象的だ

小田急線の「座間駅」の構内から眺めると、綺麗に星座がペイントされた「ホシノタニ団地」の建物がオブジェのように佇んでいる。

なぜこの団地が「ホシノタニ」と命名されたのか? それは、人と人をつなぐ団地、人と街をつなぐ団地。星がつながり星座となるように、人とつながる空間になるようにとの想いが込められているそうだ。

スタイリッシュな室内に、街と入居者をつなぐ空間を盛り込んだ「ホシノタニ団地」は、まさに昔ながらの“団地”というコミュニティとしての良さを残しつつ、現代のニーズに即した物件ではないだろうか。

2015年 09月27日 11時00分