まちに関わる様々な課題に対するURの3つの取組み

東京、大阪の2会場で開催された「UR ひと・まち・くらしシンポジウム」。「人と地域をつなぐまちの再生」をテーマに、パネルディスカッション等が開催された東京、大阪の2会場で開催された「UR ひと・まち・くらしシンポジウム」。「人と地域をつなぐまちの再生」をテーマに、パネルディスカッション等が開催された

少子高齢化、人口・世帯減少社会を迎えた日本において、これまで住宅セーフティネットとしての役割の重点化を背景に、団地価値の向上に取り組んできたUR都市機構(以下、UR)。
約74万戸を超える賃貸住宅を持つ"日本最大の大家"であるURだが、団地の管理以外にも様々な役割を担っている。
2016年10月27日、大阪で開催された「URひと・まち・くらしシンポジウム」では、現在進められているURのプロジェクトや各研究結果などが報告された。なお、このシンポジウムは、国土交通省の住生活月間(10月)の取り組みの一環として開催されたものである。

今回はその中から、2016年3月に発行された新建築4月別冊にちなみ、「都市(まち)を再生させる 時代の要請に応えるUR都市機構の実行力」と題されたパネルディスカッションから、現在URが今まさに進めている「都市再生」、「団地再生」、「震災復興支援」の"3本の柱"を中心にお伝えする。

第1の柱「都市再生」:企業の業務活動を止めずに都市を再生~大手町連鎖型都市再生プロジェクト~

URが携わる都市再生のプロジェクトの一つが2003年から始まった「大手町連鎖型都市再生プロジェクト」である。
東日本都市再生本部 田嶋靖夫氏は、このプロジェクトの目的を、「一言で言い表すと、世界の都市総合ランキング第4位(2015年)の東京を、競争力のある都市として再構築すること」と語る。

もともと大手町は、江戸時代に大名屋敷としてその街並みが形成され、明治期には大蔵省をはじめとする官庁施設が立地するなど、古くから日本の行政、文化の中心として発展してきたエリアである。昭和に入ると報道機関、金融機関の本社が立地するようになり、現在のような、"本社機能"を集積する大手町エリアの基礎が築かれていった。その後、商社、情報通信、マスメディア産業といった"24時間稼働型の企業"が多く立地するようになったのだ。
平成に入るあたりから、多くが高度経済成長期に建築された築40年を超えるビルにも関わらず、土地に余裕がなく、単独の建て替えが難しいうえに、24時間稼働型の業種が多いことから仮移転を伴う建て替えは継続性が求められる業務に支障をきたしてしまう。こうした制約によって、大手町エリアの再開発が遅れているという課題を抱えていた。

そんな中、転機となったのが、大手町合同庁舎の移転である。移転によって空いた土地を活用し、順次ビルを建て替えたいという地元企業の意向を聞き、URが具体的な事業スキームを描き、プロジェクトが始動したのである。URは空閑地となった1.3haの土地を取得し、地価変動リスクを抱えながらプロジェクト完了までの期間土地を保有。建て替え意向のある権利者の土地を移転、集約し、道路等を整備する区画整理や集約された土地での市街地再開発など、それまでURが行っている複数のプロジェクトを組み合わせることで、複数の民間事業者との調整をはじめとする事業の円滑な推進を図る"コーディネート役"を担っている。
また、建物、区画を中心とするハード的な取組みだけでなく、大手町で過ごす人々が、いかに公共空間を自分のもののように考え、まちを好きになるかという社会実験を行うなど、ソフト的な取組みも行っている。2015年には都市環境デザインの世界的権威であるヤン・ゲール氏率いる"ゲール・アーキテクツ"との連携を開始し、大手町川端緑道で公共空間利活用についてのワークショップも開催されている。

建替えを希望する地権者の土地を合同庁舎跡地に集約換地し、段階的、連続的に建て替え事業を行う流れ。<BR />
「大手町連鎖型都市再生プロジェクト」の概要について発表する東日本都市再生本部 田嶋靖夫氏建替えを希望する地権者の土地を合同庁舎跡地に集約換地し、段階的、連続的に建て替え事業を行う流れ。
「大手町連鎖型都市再生プロジェクト」の概要について発表する東日本都市再生本部 田嶋靖夫氏

第2の柱「団地再生」:団地のコミュニティを引き継ぐ~赤羽台団地再生~

JR赤羽駅からほど近い、都心方面を臨む高台に位置する赤羽台団地は、旧日本住宅公団(現UR)により、昭和37年から昭和41年にかけて建設された総戸数3,373戸からなる大規模団地であった。住棟を平行に配置するのが主流だった当時、敷地に対して直交配置、囲み型配置の外、全ての住戸が居室の三方が外気に面したスターハウスによるポイント住宅ゾーンなど先進的な配置が行われた。
この赤羽台団地が、居住水準の向上と周辺との一体的なまちづくりを目指し、URにおける建替事業によって新しく生まれ変わらせようとするのが「ヌーヴェル赤羽台」である。
建物の老朽化や耐震上の課題や立地上の特性を踏まえて、多世代が交流できる都心近接住宅地の形成、地域に開かれた良好な環境のまちづくりをテーマとして2000年に建替え事業に着手された。
高齢者や子育て層などの多世代が交流できるまちづくり、東京の北の玄関口としてのシンボル性の向上、防災性の強化などを踏まえ、敷地内を小学校や幼稚園、医療施設がある「生活機能充実化ゾーン」、大学などの教育文化施設がある「文化・教育・居住等複合機能ゾーン」に分けている。
ヌーヴェル赤羽台の特徴について、東日本賃貸住宅本部 ストック事業推進部 小栁耶磨人氏は
「自治会を中心に集会所の利用や夏祭りといった住民活動が盛んだった赤羽台団地のコミュニティを継承していこうとしている点です。ヌーヴェル赤羽台における集会所や広場の設計にあたっては、居住者の方との意見交換を実施しており、外部空間においては、これまで植えられていた樹木の保存や元からある道路のパターンを継承をして"赤羽台団地の原風景"の継承を試みるなど、数世代にわたって受け継がれていく住宅ストックであり続けることを目指しています」と語る。

ヌーヴェル赤羽台への建替えに至るプロセスを発表する東日本賃貸住宅本部 ストック事業推進部 小栁耶磨人氏ヌーヴェル赤羽台への建替えに至るプロセスを発表する東日本賃貸住宅本部 ストック事業推進部 小栁耶磨人氏

第3の柱「震災復興支援」:宮城県女川町の震災復興支援事業

これまで紹介した都市再生や区画整理などのノウハウ・技術は、東日本大震災によって被災した地域の復興にも活かされている。平成28年8月時点で、22地区の市街地整備事業、計85地区での災害公営住宅建設をしており、宮城県石巻市では半島部46地区の工事発注支援、岩手県の野田村では土地区画整理事業のコーディネートなども行っている。

その中で、東日本大震災の津波による被害が大きかった地域の一つである宮城県女川(おながわ)町は発災から1年後の平成24年3月、URと「女川町復興まちづくり推進パートナーシップ協定」を締結し、現地に約40名体制で復興支援に取り組んでいる。この背景に、自身も女川復興支援事務所に勤める、宮城・福島震災復興支援本部の羽島愛奈氏は、以下の3点を挙げる。
①一刻も早い生活基盤の再建のため、スピーディーな事業進捗が必要だったこと
②約4,500戸ほどあった住宅のうち9割が全半壊してしまうなど、まちの規模に対して被災規模が甚大だったこと
③当時、女川町の建設職はたったの2人というマンパワーの圧倒的な不足
である。
高台の造成により、浸水しない安全な住宅地を整備すると共に、既存の住宅地のそばでも安全に居住できるエリアとして、盛土による住宅地の整備が行われている。つまり、まち全体を防潮堤にするという考えである。

この復興市街地整備事業は、中心市街地と離半島部のそれぞれでプロジェクトが推められている。中心市街地の区画整理は、施工面積221haという規制市街地で実施される区画整理としては前例のない大規模なものであったが、計画と設計が同時並行でおこない、通常約15年かかるといわれていた工期を、6年程度に短縮して実施予定である。
既存の陸上競技場を敷地として採用し、最初に完成した災害公営住宅である運動公園住宅の整備においては、躯体の主要な部分に建物の基本となる部材をあらかじめ工場で製造した後、現場に持ち込み組立てる「プレキャストコンクリート工法」が採用され、1日も早い入居の実現を図った。
高台の住宅地や災害公営住宅の設置、道路や鉄道用地といったインフラ整備など、まちの"骨格"ともいえる環境が整いつつある。

自身も宮城県女川町に配属されている女川復興支援事務所 羽島愛奈氏からの発表。<BR />中心部と離半島部分でそれぞれ異なるプロジェクトが進行している自身も宮城県女川町に配属されている女川復興支援事務所 羽島愛奈氏からの発表。
中心部と離半島部分でそれぞれ異なるプロジェクトが進行している

URがつなげる地域の資源、機能、そして人

西日本支社長である西村志郎氏からは、改めてURの取り組みの意義が発表された西日本支社長である西村志郎氏からは、改めてURの取り組みの意義が発表された

1955年(昭和30年)、1960年代の高度経済成長期、東京や大阪など都市部への人口流入が引き起こした住宅不足に対応するため多くの団地を建設した当時の日本住宅公団の発足からおよそ半世紀。URは、都市部への人口・産業の分散を背景にしたニュータウンの開発や昨今の超高齢化社会の到来など、社会問題や時代の変化とともに、いつの時代もまちづくりを支えてきた存在の一つである。
UR西日本支社長である西村志郎氏は、URの取組みの意義を次のように語った。
「我々UR賃貸住宅では、団地が地域全体の医療や福祉の拠点になるといった再生をおこなっています。これらは団地、地域にある資源や機能を「つなぐ」ことが仕事であると考えています。つまり、"人"と"人"をつなぐことが我々の仕事の本質になってきているのでは…と感じています」。
まちづくりや都市の再開発は、土地の評価の考え方の違いや土地所有者間の権利関係の整備、合意形成など、様々な要因が絡み合う複雑なものである。刻々と変化していく社会情勢、都市が抱える課題に対し、多くのまちづくりのノウハウや技術をもつURが、今後どのような取り組みを行っていくのか注目していきたい。

2017年 01月06日 11時05分