国土交通省が公表した「2025(令和7)年度 住宅市場動向調査」の結果から、住宅リフォーム市場の歯がゆい実態が見えてきた。

今回の調査から新たに「リフォーム促進税制(所得税)」の適用実態を問う項目が加わったのだが、その結果は、国が用意した減税制度がユーザーにほとんど届いていない現状を示すものだった。今回はこの調査結果をもとに、制度の概要となぜ使われていないのかを掘り下げてみたい。

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【国土交通省】「リフォーム促進税制」などについて新たに調査しました!~2025(令和7)年度住宅市場動向調査の結果をとりまとめ~

「リフォーム促進税制」利用率はわずか4.3%

まず数字を確認してみる。2024(令和6)年度にリフォームを実施した世帯のうち、リフォーム促進税制の適用を「受けた」もしくは「受ける予定である」と回答したのは、わずか4.3%だった。

対象を絞り、中古住宅を取得したうえでリフォームを行った世帯に限ると、中古一戸建て住宅取得世帯で14.7%、中古集合住宅取得世帯で12.2%と数字はやや上がるものの、依然として少数派であることに変わりはない。

リフォーム促進税制を「受けていない」の回答率が高いことが分かる(出典:国土交通省 リフォーム促進税制(所得税)利用状況)リフォーム促進税制を「受けていない」の回答率が高いことが分かる(出典:国土交通省 リフォーム促進税制(所得税)利用状況)

裏を返せば、リフォームを実施した世帯の95.7%はこの制度を使わずに(あるいは使えずに)工事を終えている計算になる。制度が用意されていることと、実際にそれが使われることの間には、かなり大きな溝があると言っていい。

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「リフォーム促進税制」とは、どのような制度か

利用率の低さを論じる前に、制度の内容を国交省の資料から整理しておきたい。

リフォーム促進税制は、住宅に一定のリフォームを行った場合に、所得税の特例控除、または家屋にかかる固定資産税の減額措置を受けられるというものだ。工事内容によって適用される制度が異なっている。

所得税の減税対象となるのは「耐震リフォーム」「バリアフリーリフォーム」「省エネリフォーム(窓の断熱改修など)」「同居対応リフォーム」「長期優良住宅化リフォーム」「子育て対応リフォーム」の6種類。多くの区分で、家屋の床面積が登記簿表示で40m2以上であること、対象工事の「標準的な工事費用相当額」が50万円を超えていることなどが要件として定められている。

所得税減税と固定資産税減税は併用可能となっている(出典:国土交通省 リフォーム促進税制【所得税・固定資産税】について)所得税減税と固定資産税減税は併用可能となっている(出典:国土交通省 リフォーム促進税制【所得税・固定資産税】について)

要件を満たせば税金が戻る、あるいは軽くなるわけで、ユーザー側から見ればメリットは決して小さくない。それにもかかわらず利用率が4.3%にとどまっているのは、なぜなのか。

利用率4.3%の背景には、制度の認知不足と運用面のハードルの高さ

利用率がここまで低い要因は、大きく2つ考えられる。

1つは、単純な認知不足だ。リフォームを検討する段階で、ユーザーは補助金については熱心に調べる一方、後から税金が戻ってくる税制優遇にまで意識が向くケースは少ない。私がリフォーム会社に勤務していた頃の実務を振り返っても、そもそも制度を知らない施主が大半だった。

もう1つは、制度設計・運用面のハードルの高さである。国交省の案内資料には「減税を適用するには、消費者の方ご自身でお手続きが必要です」とはっきり書かれている。確定申告書に加え、国税庁指定の計算明細書、工事請負契約書の写し、そして建築士等に発行を依頼する「増改築等工事証明書」など、用意すべき書類は多岐にわたり、これらを全て消費者自身が集めて税務署に提出しなければならない。

この増改築等工事証明書の手配は、消費者だけでなくリフォーム事業者にとっても手間がかかる作業だ。加えて、要件となる工事費用が実際の支払額ではなく、告示で定められた単価に基づく「標準的な工事費用相当額」で判定されるという、一般のユーザーにはやや分かりにくいルールも存在する。

認知度が低いうえに、消費者側の手続きは煩雑で、事業者側も説明や書類対応の手間から積極的に案内しづらい傾向がある。この2つの背景が、利用率4.3%という結果につながっている大きな要因ではないかと考える。

「リフォーム促進税制」をもっと利用しやすい制度にするために

では、どうすればこの制度をもっとユーザーに届くものにできるだろうか。

まず、リフォーム=減税の機会という認識が広がるよう、国や業界を挙げた周知に力を入れる必要がある。事業者から施主への説明がしやすいよう、対象となる工事の内容や必要な書類を一覧にした簡単なチェックシートやテンプレートを国が用意すれば、より多くの現場で案内される流れにつながるだろう。また、バリアフリーリフォーム+省エネリフォームなど、複数のリフォームを組み合わせた場合に控除額を上乗せするといった施主のメリットが高まる設計も検討の余地がある。

加えて重要だと考えられるのは、書類や手続きの簡素化ならびにデジタル化だ。現状は、増改築等工事証明書をはじめとする書類のやりとりが紙中心だが、これを電子で発行・申請できるような仕組みが求められる。工事の要件確認や証明書の発行をオンラインで完結できれば、事業者にとっても消費者にとっても手間は大きく減るはずだ。

制度が使いやすくなれば、税負担が軽くなる分、ユーザーは断熱性や耐震性に優れた質の高いリフォームを選びやすくなる。長い目で見れば、中古住宅の性能底上げが進み、良質なストックが次世代へ引き継がれていく流れにもつながるはずだ。利用率4.3%という数字は、現行制度の課題を映し出すと同時に、運用を見直すことで市場を一段階押し上げられる伸びしろの大きさを示唆している。

【参照】
国土交通省:リフォーム促進税制【所得税・固定資産税】について(消費者のみなさまへ)
国土交通省:リフォーム支援制度まるわかりガイド

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LIFULL HOME'S総研 研究員の楢崎美香が、リフォーム業界での経験をもとに、リフォーム・リノベーション業界に関わる方なら知っておくべきという観点でニュースを厳選し、豊富な経験に基づくコメントとともに伝えるコーナー。業界関係者はもちろん、リフォーム・リノベーションを検討する人にとっても、重要な動きを理解できるほか、新たな視点を得ることができるはずだ。