「旅人」から「移住者」へと

手つかずの自然が数多く残っている道北エリア手つかずの自然が数多く残っている道北エリア

美深町は北海道の北部に位置し、東西を山地に囲まれた自然豊かなまち。
実はキャンパーにとっては聖地ともいわれ、稚内や利尻島、オホーツクに旅するための拠点としても人気がある。「びふかアイランド」内のキャンプ場には、3〜4ヶ月もの間、まるで暮らすように滞在する旅人も少なくないそうだ。

このまちには移住体験住宅(最長90日)が3棟(内、1棟は2016年に新築)あり、ここ最近は旅人としてではなく移住を視野に訪れる方もじわりじわりと増えている。そのヒミツを探るため、美深町役場総務課企画グループ商工観光係の前田研吾さんにインタビューしてきた。

「長く住みたくなるまちづくり」とは?

「まず正直にお伝えすると、移住政策に関わる分野に行政予算を大きく割く方向ではなく、今、お住まいの町民本位で力を入れているのが現状です。捉えられ方の問題かもしれませんが、移住された方も町民になるわけでして、移住者助成などの入り口部分にコストをかけすぎず、長く住みたくなるまちを形づくることこそが、移住される方に対しても結果的にメリットになると考えています」。

移住アピールの華やかさや情報伝達の力はまだまだこれからの課題だというが、その分「長く住みたくなるまちづくり」へ限られた人員や予算を配分しているという。それは、住宅の新築やリフォームなどの費用の一部補助、中学生までの医療費無料制度、待機児童のゼロ化、人口に対する医療・福祉施設の充実、などの取り組みが挙げられる。
そんな中でも美深の目玉ともいえるのが商工業の施策や補助金。今、まちではすっかり寂しくなってしまった商店街を盛り返すためにも、事業継承者に補助金を出したり、中小企業の人材確保に向けて給与の1/2以内(限度額8万円)をサポートしたりと、経営安定化や人材定着のための取り組みに力を入れている。

「この商工業の施策は事業継承者に限らず新規開業する人も対象です。つまり移住する方が美深町で事業を起こすと、最大24カ月は月額10万円以内(単身者の場合)の援助や賃料・固定資産税などの1/2以内(限度額10万円)の補助金を受けられます。事実、このサポートを活用してチーズ工房や飲食店を開いた方もいるんですよ」。

なるほど、起業の初期費用や開業後しばらくのランニングコストが抑えられるという視点から、移住を考えることもできるということ。もちろん、ネット環境や社会インフラは整っているので、場所を選ばないシゴトで事業を起こす場合は、暮らしやすく落ち着いた雰囲気の美深町も十分な候補地になりそうだ。

「私たちの町でできることを私たちの考えるスピードで伝えていきたい」と前田さん「私たちの町でできることを私たちの考えるスピードで伝えていきたい」と前田さん

観光協会は移住者にとっての「最初の友だち」!?

美深町役場とは違ったアプローチから移住促進に力を入れているのが美深町観光協会。しかし、観光と移住とはまったくの別ジャンルに思えるが…?そんな疑問に答えてくれたのが事務局長の小栗卓さん。

「美深町には『チョウザメ館』や『トロッコ王国』、『函岳』などいくつか観光スポットはありますが、例えば富良野に比べると観光客の数は圧倒的に少ないのが現状です。なので、僕らの主な仕事である観光案内は、未来の移住者になるかもしれない人との貴重なファーストコンタクトだと考えるようになりました」。

観光協会が事務所を構える場所はJR美深駅内。旅行者も町民も集まりやすく、観光をきっかけに移住のことやまちの様子を伝えるには好都合。スタッフの皆さんは、一人あたりと接する時間を増やし、訪れた人と深い人間関係を築くように心がけているそうだ。

「僕らの本業は観光PRですが、移住の窓口としても責任を持ってお付き合いして、『まちの最初の友だち』になりたいんです。美深には不動産会社がないので、物件情報を耳にしたら住む場所をご紹介しますし、もし町内でお店を開きたいという方には契約書づくりもアドバイスします(笑)」。

ご自身も自然、そしてアウトドアが大好きだという小栗さんご自身も自然、そしてアウトドアが大好きだという小栗さん

「アウトドア」ファンが暮らすエリアへ

小栗さんは美深だけにとどまらず、道北エリアにスポットを当てる取り組みにも中心的に携わっている。その一つが「道北クラフト&プレイ」を合い言葉にアウトドア情報を発信する「BASIS(ベイシス)」。道北着地型観光プロモーション推進協議会が進めるプロジェクトだ。

「美深に限らず、道北は目立った観光地が少ないがゆえに手つかずの自然が残っています。はっきりいうとアクティビティを楽しむというよりも、険しささえ感じられる未開の地です。だからこそ、天塩川では人工の障がい物がなく約160kmをカヌーで川下りできたり、朱鞠内湖で釣り竿を片手に幻といわれるイトウと格闘したり、コアなアウトドアファンを魅了するポテンシャルにあふれています。これって、道内外だけでなく世界的にも自慢できるフィールドだと思うんです」。

最近では、シンプルな板でサーフィンのように雪の上を滑るアイテム「スノートイ(雪板)」の人気が高まり、アウトドアビギナーも集まるようになってきたのだとか。
今は「道北といえばアウトドア」を周知している段階だが、それが根づいていけばマニアックなアウトドアファンが暮らすエリアとしても期待が持てそうだ。

関連サイトと情報
美深町役場
美深町観光協会
◆美深町へ移住した方の記事はこちら→「くらしごと」へ

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◎筆者:くらしごと編集部 土谷涼平

美深町観光協会の仲良しスタッフのお二人美深町観光協会の仲良しスタッフのお二人

2018年 04月11日 11時05分