十勝エリア19市町村の中で唯一人口が増加したまち

サテライトオフィス「かみしほろ情報館」サテライトオフィス「かみしほろ情報館」

北海道十勝エリアの北部に位置し、大雪山国立公園の東山麓に広がるまち、上士幌町(かみしほろちょう)。町内の約76%を森林が占め、その豊かな自然の恵みを生かした畑作や酪農、林業といった一次産業が盛んなまちだ。上士幌町といえば、熱気球が空高く舞い上がる「バルーンフェスティバル」が有名だが、ここ最近は移住を考えている人が熱い視線を注いでいるという。事実、2016年度に上士幌町は、十勝エリア19市町村の中で唯一人口が増加した。

この人口5,000人ほどの小さなまちに何が起きているのか?
まちの移住総合窓口を担う「NPO法人上士幌コンシェルジュ(以下コンシェルジュ)」のサテライトオフィス「かみしほろ情報館」の扉を開き、話を聞いてみた。

早いうちから移住者を呼び込む取り組みにチャレンジ

「どの地方も同じ課題を抱えていると思いますが、上士幌町にもやはり少子高齢化による人口減少の波が押し寄せてきました。ただ、このまちの場合は、早い段階から移住者を呼び込むための取り組みに頭を切り替えたんです」そう話をしてくれたのは、コンシェルジュで移住対応を任せられている川村昌代さんと山田晴夏さん。移住の相談からまちの案内、生活体験事業「ちょっと暮らし」のご紹介、物件探しに定住後のフォローまでさまざまなサポートをしている。

上士幌町は、2005年には役場にワンストップの窓口を設けたり、移住ホームページをオープンしたりと、移住者の受け入れ体制を整えていった。そして、コンシェルジュが設立されたのは2010年。それまでは町役場の企画課や商工会、観光協会の有志が移住のためのプロモーションや体験住宅の建設を進めていた。もちろん連携が取れていないわけではないのだが、行政と民間それぞれの活動をひとまとめにすることで、もっと効果が上がるのでは?と考えた。結果、町内企業の社長たちが一肌脱ぎ、移住を柱にまちを盛り上げるためのNPO法人を立ち上げることになった。

さらに、このサテライトオフィス「かみしほろ情報館」は、観光案内や特産品の展示販売など、上士幌町のさまざまな情報を発信する総合案内所として2016年にオープンした。移住に関する情報発信としての役割もあるが、地域のコミュニティスペースも兼ねており、町民が気軽に訪れることができる場でもある。喫茶スペースでは、コーヒーを飲みながら本を読んだり、仲間でおしゃべりを楽しんだり、思い思いの時間を過ごすことができる憩いの場所だ。

現在、7月〜10月の間は土日ともなれば移住を考える人が、ひっきりなしに訪れるのだとか。

写真左から川村昌代さん、山田晴夏さん写真左から川村昌代さん、山田晴夏さん

暮らし・仕事をコンシェルジュがしっかりとフォロー

何でも気軽に相談できるアットホームな環境だ何でも気軽に相談できるアットホームな環境だ

コンシェルジュの川村さんと山田さんは、移住を考えている方へ、町内の24時間対応のクリニックやスーパーなどを案内しながら、まちの魅力を伝えている。近隣の市町村から仕事を変えずに移住する家族も多いそうだが、首都圏をはじめとする本州からの移住者はそうもいかない。

2016年には「上士幌町無料職業紹介所」を開設し、「かみしほろ会社・仕事図鑑」というWebサイトもオープンした。仕事先まで見据えた「リアリティのある移住提案」ができるようになっているのも上士幌町の特徴の一つだ。「田舎には職がないから...」とはどのような地方都市でもいわれることだが、企業と行政が手を携え、そこから一歩先に進んだ取り組みは、地道だが効果の高いもの。ただ、「失敗しない移住」を提案し続けたい川村さんたちは、こうも説明する。

「移住フェアに参加すると田舎暮らしの『職』をラクだと思っている方とも出会います。上士幌には無料職業紹介所もありますが、正直なところ都会のように仕事が選べるほど多いわけではありません。農業や林業といった一次産業が圧倒的なので、『とりあえず田舎が良い』と考えているとミスマッチが起こり得ます。それを防ぐために、一次産業の厳しさを伝えるのも私たちの役割です。ちなみに、住む場所に関しては不動産屋がないので、コンシェルジュにて民間住宅の情報をわかる限りご紹介するようにしています」。

コンシェルジュは暮らす前だけでなく、定住後のフォローも欠かさないのがモットー。月に一度は移住者が夕食を持ち寄って交流する「誕生会」も開いている。交流といっても堅苦しいものではなく、サラダや煮物など持ち寄った料理をつまみながら、雑談を楽しむスタイル。この会には体験住宅の入居者も招き、地元情報や移住の先輩からのアドバイスを聞けるようにしている。

ふるさと納税の寄付金を活用し、子育て支援を手厚く

さらに、上士幌町がとりわけ重視しているのが子育て支援。とはいえ、当初は手探り状態からのスタートで大きなアイデアが飛び出すわけではなかった。しばらくは移住体験モニターの受け入れや生活体験住宅の整備、定住に向けた賃貸住宅の建設の促進など、地道な取り組みを進めてきた。

そこに追い風となったのが2011年に始めたふるさと納税だ。当初は1,000万円ほどの寄付額だったが、和牛肉を中心とした返礼品の充実した内容があれよあれよと広まり、2016年度には21億円までふくれあがった。これだけでは単なるふるさと納税のサクセスストーリーなのだが、上士幌町の場合は使い道の決まっていない寄付金を「子育て少子化対策夢基金」として積み立てることにした。そして、この予算を活用することで2015年には定員120名の認定こども園「ほろん」を開設、翌年には完全無料化まで持ち込んだ。高校生までの医療費を全額補助したり、住宅購入の助成としてお子さん一人につき100万円をサポートしたり、そんな手厚い子育て支援もできるようになった。

他にも、乳幼児だけでなく、子どもの学力向上のために無料の夏期講習や外国語活動といった教育への取り組みも充実している。今後は福祉の面にも力を入れて「生涯活躍のまち」を目指していく予定だ。

子育て環境を重視した移住を考えているなら、まずはコンシェルジュスタッフのいる「かみしほろ情報館」を訪ねてみてはどうだろう?

関連サイトと情報
※実際に上士幌町へ移住された方の記事はこちら↓
◆我が子の幸せを第一に考えるという選択。
◆求めていた暮らしを上士幌で実現した家族。

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◎筆者:くらしごと編集部 土谷涼平

認定こども園「ほろん」の一コマ。元気一杯の子どもたち。認定こども園「ほろん」の一コマ。元気一杯の子どもたち。

2018年 03月15日 11時06分