まさかの、暮らしやすい都市で1位に

移住支援に力を入れている佐賀移住支援室のみなさん移住支援に力を入れている佐賀移住支援室のみなさん

2003年に佐賀県出身のお笑い芸人が、『佐賀県』をテーマにした歌を発表した。田舎、不便、何もない、といったネガティブ要素を自虐的に面白おかしく歌い上げたことで、CDは25万枚のヒット。これにより佐賀県の知名度は上がったが、負のイメージも定着してしまい、今もなお「都道府県の魅力度ランキング2017」で45位、「一生行くことはなさそうな都道府県2016」で1位と、残念な結果になっている。

そんな佐賀県に、新風が吹き始めている。2017年、野村総合研究所が発表した「成長可能性ランキング(都市圏の人口規模などで選定した国内100都市が対象)」で、佐賀市が「都市の暮らしやすさ」で1位に輝いたのだ。さらには「子育てしながら働ける環境がある」でも3位にランクイン。あれ、もしかして佐賀って生活する場所としてはいいのかもしれない。高評価によって気づかされ、佐賀県を見る目が徐々に変わりつつある。

3年で移住者が1.8倍。加速度的な移住者増の背景にあるものとは

佐賀県庁内にあるさが移住サポートデスク。移住相談の多い福岡、東京にも移住サポートデスクを設置している佐賀県庁内にあるさが移住サポートデスク。移住相談の多い福岡、東京にも移住サポートデスクを設置している

事実、ここ数年で佐賀は移住先として熱い注目を集めている。特にお隣の福岡県や大都市圏からの移住者、とりわけファミリー層が多く、大半が「子育てしやすく、心地よい暮らしができそう」「自然と利便性のバランスがいい」を理由に、移住を決めている。

データを見ても2015年度の移住者は253人だったが、翌年度には367人になり、2017年度には4~12月の9ヶ月間で450人と、3年間で1.8倍に膨らんだ。ちなみに、これは県のサポートや市町の移住制度を利用して移り住んだ人の数だけである。

この増加を促してきたのが、佐賀県が3年前から本腰を入れている移住支援の取り組みだ。2015年に移住支援の担当者を据え、半年後に移住支援室を設置すると、移住コーディネーターが常駐する「さが移住サポートデスク」を佐賀県庁と福岡市博多区の博多駅バスターミナル、そして東京・有楽町の東京交通会館に設けた。移住情報のポータルサイト「サガスマイル」や県外求職者向けの求人情報サイト「さがUターンナビ」の充実も相まって、問合せの電話やメールは、月に160件を超える。

人口減や少子高齢化に危機感を抱いて始まった取り組みとはいえ、支援窓口の開設時期としては後発組といえる佐賀県が、こんなにも早く効果を上げている背景にはなにがあるのか。佐賀県移住支援室の山内朋加さんが度々口にした「市町と連携して移住を支援しています」という言葉に、そのヒントは隠れていた。

県と市町の連携で移住が加速。地域共助の県民性が生きた連携力

定期的に行われている相談会。研修を受けた移住コーディネーターが親身になって支援している定期的に行われている相談会。研修を受けた移住コーディネーターが親身になって支援している

佐賀県が提唱する移住までの過程は、①どんな暮らしをしたいか、家族と相談する。②佐賀の情報を集める。③さが移住サポートデスクに相談する。④佐賀へ行ってみる。⑤仕事や住まいを見つける。この5ステップだ。そして、ステップ3から活躍するのが、移住希望者に寄り添いながら支援するコーディネーターである。子育て等の暮らしに関する担当者3人、仕事に関する担当者4人が相談を受け、一人ひとりのニーズに応じたアドバイスを送る。さらに具体的な話が進むと、各市町に引き継ぎ、より踏み込んだ相談に乗る。一部地域にはボランティアの移住サポーターもいて、移住後の不安や悩みの相談役としても欠かせない存在になっている。この連携こそが佐賀県の強みであり、移住者の希望を叶え、移住の実現を後押ししている。

もともと佐賀県内20の市町は、移住に対して好意的かつ積極的だった。県が移住支援室を設ける2015年以前から移住支援相談窓口を設けていた市町は11にものぼり、空き家バンクや住宅購入、住宅改修費の助成などの制度は、14市町が整備していた。つまり、県が本腰を入れるよりも先に、市町が独自で移住をサポートする環境を整えていたのだ。県が専門の部署を設けてからは、移住サポートサイト「サガスマイル」やWeb特設サイト「人生のS暮らすSAGA」が開設されたり、漫画などとコラボレーションしたPR動画が発信されたりと、メディアを活用して、より佐賀の魅力や住環境の良さが発信されるようになった。それによって移住希望者は増え、その受け皿となる市町の体制もより充実していった。まさに、地域共助の文化が根付く佐賀県らしい連携体制の妙が、移住者増加を加速させた。

県は、市町との情報共有を進めるため、年に2回は専門家による勉強会を開き、担当者が一堂に会する場を設けるようにしているという。山内さんは「今後、様々な課題がでてくると思うので、市町と連携することの重要性は一層感じています。オール佐賀で盛り上げていきたいという気持ちがあります」と話している。

移住希望者に優しい企画が満載。地域住民と触れて、佐賀の良さをさらに実感

全国で6番目に面積が小さい佐賀県だが、地域性が驚くほど豊かだということは、一度訪れてみれば身に染みて感じることができる。400年の歴史がある有田焼や伊万里焼などの伝統文化に、有明海や玄界灘の豊富な海の幸、国の特別史跡に指定されている吉野ヶ里遺跡、全国的な人気を誇る武雄温泉や嬉野温泉など、伝統、文化、食、歴史は四方八方に点在する。

その魅力を知ってもらうため、佐賀県では2017年から移住に向けたモニターツアーを実施。第一弾と第二弾は東京から募集し、同年9月に佐賀市を巡る1泊2日のツアー、11月に有田、武雄、鹿島、嬉野を巡る2泊3日のツアーを行った。暮らしぶりを体感してもらうことが目的のため、ツアーでは町巡りに加え、現地の方々との交流会・食事会が必ず用意されている。生活者しか知り得ない、佐賀のいいところも悪いところも、よくよく理解してもらいたいという願いがある。

1回目、2回目両方のツアーに参加した東京在住の40代男性は「佐賀の良さを改めて実感できた。地域の方々との交流は全てにおいて大満足だった」と、本格的に行動を起こし始めている。移住サポートの一環として、県外在住の移住希望者にレンタカーを1日1000円で貸し出すなど、実際に行動を起こしやすいような仕組みが整っていることも、移住希望者の本気を加速させている。

移住計画モニターツアーでは、必ず現地の住民と参加者の交流会を設けている移住計画モニターツアーでは、必ず現地の住民と参加者の交流会を設けている

2018年 04月01日 11時00分