欧米先進国と比較しても高い日本の高齢化率

日本は世界に先駆けた超高齢社会である。65歳以上の高齢者人口は3,557万人で、全人口に占める割合である高齢化率は28.1%に達している(2018年9月現在。出典:「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」(国土交通省))。これはアメリカ(14.6%)、イギリス(18.1%)など欧米諸国の先進国と比べても特に高い割合だ(出典:「平成30年版高齢社会白書」(内閣府))。

そこで懸念されるのが、高齢者のみが住む世帯の増加だ。特に第三者の見守りが必要な高齢者単独世帯の増加は深刻で、2015年時点での65歳以上の高齢者がいる世帯の中での割合は32.6%だったが、2035年には39%に増加する見込みだ(出典:国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(2018推計))。

高齢者の増加は、医療・介護サービス費用と社会保障費の増大につながり、すでにここ30年間で社会保障費は3倍に膨れ上がっている。その対策の一つとして、高齢者が住み慣れた地域で、できる限り健康で自立した生活を送れるようにすることが挙げられる。

また、内閣府の「第8回高齢者の生活と意識に関する国際調査結果」によると、身体機能が低下した場合の住まいとして約65%の高齢者が自宅を希望している。ところが現在、高齢者の住む家の多くは、後述する理由などからそれらの人にとって快適とは言い難い。

このような背景から国土交通省は、「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」を策定した。

高齢者のみが住む世帯は年々増加している。特に第三者の見守りが必要な高齢者単独世帯の増加は深刻で、2015年時点での65歳以上の高齢者がいる世帯の中での割合は32.6%だったが、2035年には39%に増加する見込み(出典:「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドラインの概要」(国土交通省))高齢者のみが住む世帯は年々増加している。特に第三者の見守りが必要な高齢者単独世帯の増加は深刻で、2015年時点での65歳以上の高齢者がいる世帯の中での割合は32.6%だったが、2035年には39%に増加する見込み(出典:「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドラインの概要」(国土交通省))

気力や経済的に余裕のある段階で高齢期の住まいを整備

65歳以上の不慮の死亡事故としては、家庭内事故が交通事故より多い。内訳を見ると、ヒートショックが原因となっての溺死なども含まれている(出典:2017年人口動態調査)65歳以上の不慮の死亡事故としては、家庭内事故が交通事故より多い。内訳を見ると、ヒートショックが原因となっての溺死なども含まれている(出典:2017年人口動態調査)

同ガイドラインによると、2013年時点で高齢者のいる世帯の住まいの約73%が一戸建てだ。その一戸建ての約4割は無断熱状態。つまり夏は暑く、冬は寒い。このような家は、室内の急激な温度差により心筋梗塞などを引き起こすヒートショックの要因となり得る。実際に65歳以上の人が家庭内の事故で年間1万1,879人(出典:2017年人口動態調査)も亡くなっている。これは交通事故死(2,883人)を大きく上回る数字で、このうち溺死がもっとも多く(46.4%)、その要因には浴室でのヒートショックも含まれている。

また、一戸建ては単身や夫婦だけの高齢者にとって広すぎて、維持管理の負担も大きい。以上のようなことから、気力や経済的に余裕のある早い段階で高齢期の住まいを整備することが得策といえるだろう。

そこで「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」では、プレシニア(50~64歳)・アクティブシニア(65~74歳)をおもな対象として、住まいの改修を行う際に配慮すべきポイントを提示している。なお、建物の対象は一戸建てとしているが、マンションやアパートにも応用ができる内容だ。

ヒートショック対策には開口部の断熱化を

提示する改修ポイントは以下の8つだ。

①温熱環境
<おもな改修の効果>
・血圧低減効果やヒートショック・熱中症の防止
・運動機能の維持と健康で自立した期間の延伸

<改修方法の例>
・内窓や高断熱サッシなどの設置による居室開口部の断熱化
・居室への冷暖房設備の設置および冷暖房が脱衣室など非居室にも届く間取りの工夫

②外出のしやすさ
<おもな改修の効果>
・家族や地域との交流促進による生活の充実
・運動機能や意欲低下を予防し、健康で自立した期間の延伸

<改修方法の例>
・玄関から道路までの段差解消や手すり・照明の設置
・縁側や掃き出し窓にデッキ・スロープを設置

③トイレ・浴室の利用のしやすさ
<おもな改修の効果>
・トイレや浴室の安全・快適性の向上と日常生活のストレスや負担の軽減
・心身機能が衰えた場合でも自宅で生活できる期間の延伸

<改修方法の例>
・寝室(トイレに近い部屋を設定)からトイレまでの手すり設置、段差解消、照明増設など
・トイレ、浴室、洗面、脱衣室などの間仕切り壁撤去による一体化(隣接している場合)

④日常生活空間の合理化
<おもな改修の効果>
・子育て期に合わせた広い家でも快適な空間を実現
・運動機能低下の予防と健康で自立した期間の延伸

<改修方法の例>
・玄関、トイレ、浴室、リビング、キッチンと同じ階の部屋を寝室とする
・車イスでも利用しやすい引き戸へ変更、間仕切り壁を撤去、家具の配置換えなどで生活空間の一体化

配慮項目は大きく8つに分けられ、そのうち温熱環境、外出のしやすさ、トイレ・浴室の利用のしやすさ、日常生活空間の合理化は特に重要とされている(出典:「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドラインの概要」(国土交通省))配慮項目は大きく8つに分けられ、そのうち温熱環境、外出のしやすさ、トイレ・浴室の利用のしやすさ、日常生活空間の合理化は特に重要とされている(出典:「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドラインの概要」(国土交通省))

自立した生活ができる期間を延伸するための改修

⑤主要動線上のバリアフリー化
「おもな改修の効果」
・転倒防止と健康に自立した生活ができる期間の延伸
・歩行が不自由になった場合でも円滑な移動の実現

「改修方法の例」
・部屋の出入り口を引き戸に変更
・主要な動線の段差解消

⑥設備の導入、更新
「おもな改修の効果」
・日常的な家事などの負担軽減
・自宅で自立して生活できる期間の延伸

「改修方法の例」
・トイレ、浴室、キッチンなどを最新機器に更新
・電動シャッター、自動点灯照明、防犯カメラ、ドアホンなどの設置

⑦光・音・臭い・湿度等
「おもな改修の効果」
・視力や聴力などが低下しても快適な生活を実現

「改修方法の例」
・間仕切り壁の撤去などによる採光や通風の確保
・吸音、遮音、調湿、防臭などの機能のある内装材への変更

⑧余剰空間の活用
「おもな改修の効果」
・ライフスタイルの変化に応じた豊かな生活の実現
・孤立防止と自宅で生活できる期間の延伸

「改修方法の例」
・余っている部屋を趣味室や教室などの空間として利用
・縁側やテラスなどの半屋外空間の整備

空間別の改修方法の例(出典:「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドラインの概要」(国土交通省))空間別の改修方法の例(出典:「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドラインの概要」(国土交通省))

早めにガイドラインを確認し検討を

「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」は、プレシニア・アクティブシニアをメインの対象者としているが、以下のような人たちにも有用な資料となるはずだ。

●専門家・リフォーム会社
高齢期の住まいや暮らし方について相談を受ける専門家、リフォーム会社にとって同ガイドラインは、改修の選択肢やメリットなどを適切に説明するためなどの参考資料となることが期待される。

●地方公共団体
住宅部局や健康・福祉部局などが連携し、高齢期を迎える市民に対するセミナーや相談に同ガイドラインを活用することが期待される。

なお、このガイドラインを策定した国土交通省は、プレシニア・アクティブシニアに対して、自宅を改修する際は事前に最寄りのリフォーム会社など専門家に相談し、あわせてホームインスペクション(住宅診断)を行うことが望ましいとしている。

同ガイドラインが指摘するように、高齢によって日常生活に支障が出た時点では、すでに改修する気力や経済的余裕がなくなっているかもしれない。また、気力を低下させないために改修が必要な家も多いだろう。「自分はまだまだ先」とは思わず、50歳を超えた人は下記URLにあるこのガイドラインを確認してみてはいかがだろう。

「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」
http://www.mlit.go.jp/common/001282247.pdf

高齢によって日常生活に支障が出た時点では、すでに改修する気力や経済的余裕がなくなっているかもしれない。<br>50歳を超えた人はこのガイドラインを確認してみてはいかがだろう高齢によって日常生活に支障が出た時点では、すでに改修する気力や経済的余裕がなくなっているかもしれない。
50歳を超えた人はこのガイドラインを確認してみてはいかがだろう

2019年 06月06日 11時05分