日本を好きになったきっかけは、日本人の友人だった

2009年に始まった「地域おこし協力隊」制度も、今や隊員数は全国で4,000人以上。実は日本人だけでなく、最近は外国人の協力隊も増えているのだ。
今回取材した、オーストラリア出身のJonathan Jenkins(ジョナサン ジェンキンス)さんもその1人。
「特に『田舎』に住みたい!」という並々ならぬ情熱を持って日本にやってきた彼は、希望通りに人口約2,000人のいわゆる田舎である北海道浦臼町で、地域おこし協力隊として勤務している。
どうして浦臼町なのか、そして北海道の田舎で暮らす魅力は一体何なのか...詳しく聞いてみた。

ジョナサン(以下敬称略)は38年前、オーストラリアの大都市、住みやすいまちとしても有名なメルボルンに生まれた。生粋のオーストラリア人のジョナサンが日本に触れたきっかけは小学校の頃の同級生だったと言う。
「80年代のオーストラリアでは『日本ブーム』がありました。その時僕は小学校1年生だったんですが、親の仕事でオーストラリアに住んでいる日本人の同級生がいたんです。その男の子の家に遊びに行った時に日本のアニメやオモチャに触れたことが日本と出会ったきっかけ。その時マンガやアニメ、『アトム』とか『マクロス』とか...合体するロボットのオモチャを見て『日本すごい!』って」

こうして日本に興味を持ったジョナサンは中学校からの選択教科で日本語を選び、高校卒業までの6年間日本語を勉強した。その後大学を卒業し「海外で生活したい!」とインターネットで就職を探し、日本にたどり着く。

目を輝かせて日本の文化の魅力について話すジョナサン目を輝かせて日本の文化の魅力について話すジョナサン

とにかく「田舎」に行きたかった

最初にジョナサンが住んだ場所は茨城県のつくば市。インターネットを駆使して見つけた仕事は英会話教室の先生だった。
つくば市の次にはさらなる田舎を求めて北海道の釧路市にも住んでみたが、そこも思っていた程の田舎では無かった。

「でも日本人の友達もすぐできて、すごく良いまちだったんです。この2年間で北海道が大好きになりました」

北海道での暮らしを満喫する一方、英語を教えることが好きだと改めて気づいたジョナサン。
ここで一度、語学を学び直すためにオーストラリアに戻り大学院で言語学を勉強する。
そうして、1年半後の2007年に再び北海道に戻ったジョナサンが、選んだのはいよいよ浦臼町.......では無く、道北に位置する幌加内町だった。

とにかく「田舎」に行きたかった

やっと出逢った「何もないまち」

つくばよりも、釧路よりももっと田舎に住みたいとまちを探していたジョナサン。
再びインターネットで仕事を探して、『ここは田舎なんじゃないかな?』と思ったところを見つける。
「コンビニもない、何にもない、レストランは名物のお蕎麦屋さんだけ...!」

そして幌加内町ではALT(※)の仕事に就いたジョナサンさんは学校で多くの生徒さんに英語を教える。(※...日本人教師を補佐し、生きた英語を子どもたちに伝える英語を母語とする外国人の意味)

幌加内町の人達のあたたかさに触れ、気付けば10年半という年月を幌加内町で過ごした。

「ALTという仕事は本当に楽しかったです。それに幌加内町では本当にすぐまちに馴染むことができました。まちの人達が『ジョナサン、バーベキューしよう!』とか『バレーボールできる?』とか色んなことに誘ってくれて。幌加内町では『仕事に行きたくないな~』って思うことが本当にありませんでした。やっぱり改めて、自分は田舎のまちが好きだと思いましたね。自分のライフスタイルに合っていると思います」

10年半という長い間幌加内町に住んでいたジョナサンだったが「長く仕事を続けてきたので、ちょっと休憩したい」と一度幌加内町を離れることにした。

そうしていよいよ出会ったのが浦臼町だったのである。

ジョナサンは再び動き始め、2017年から浦臼町の中学校と小学校で先生を始める。そんな時、教育委員会から地域おこし協力隊の制度を使って浦臼町に住み、仕事をしてほしいというオファーが来た。

「僕はやっぱりこういうまちが好きなんです。幌加内町と一緒で、浦臼町もコンビニもないし、名物はお蕎麦っていう共通点もある。それに、協力隊としてまちに入ればもっとまちの人と交流できるようになる良いチャンスだと思いました」

こうして2018年4月、近郊では珍しい外国出身の地域おこし協力隊員が浦臼町に誕生する。

中学校での授業風景中学校での授業風景

浦臼町での仕事と暮らし

浦臼町は小学校が1校、中学校が1校で各学年にクラスは1クラスずつ。ジョナサンはその小中学校の英語の先生が主な業務だ。
「人数が少ない方が教えやすいですよね。人数が多い授業だと、英語の授業なのにどうしても1度も喋らず、分からなくても質問もできずに授業が終わってしまう子もいます。でも浦臼町は人数が少ないからこそ必ず全員が発言できる機会があるんです」

その効果は確かに出ているようで...
「浦臼町の生徒の子たちとは、放課後に会っても英語で会話するんですよ」
都会ではなかなか難しい少人数での授業で、英語力だけではなく英語の楽しさも伝えられると言う。

さらにジョナサンの目標はそれだけに留まらない。
「それにもう一つ、まちの良さを色んな人に知ってもらいたいという気持ちもあります」
バイクが趣味のジョナサンは、ツーリングで日本一周もしたことがあるほどの旅好き。
そんな日本のいろんな場所に行ったことがあるジョナサンさんから見ての浦臼町の魅力を聞くと
「浦臼町はまず住んでいる人たちが親切であたたかいです。何かトラブルがあっても近所の人がすぐ助けてくれます。あとは家を出てすぐ、きれいな景色を見て美味しい空気を吸えること。キツネやリスといった野生の動物が近所にいるっていう経験は都会では絶対にできない経験です」と教えてくれた。

逆に不便なことも聞いて見ると
「買い物も、町内には小さいスーパーがありますし、滝川や札幌に行けば冷蔵庫が満杯になるくらいの買い物もできます。隣町のコンビニも車で10分かからないですし、生活をするのにも、趣味をするにも困ったことってほとんどありませんでしたね」とにっこり。

浦臼町民もみんなジョナサンを慕っている様子浦臼町民もみんなジョナサンを慕っている様子

これからの地域おこし協力隊

外国人が地域おこし協力隊となるケースも増えてきている今、先駆けとなるジョナサンも、その良さを感じているとのこと。

「海外の人で、日本に住みたいっていう憧れを持って日本に来ても、職業の選択肢として英語の先生以外にあまりないという状況はちょっと残念だと思っていて…」
地域おこし協力隊という選択肢があることによって、そのまちに実際に住んで本当の良さを発信することができる。

今は英語の授業がメインの仕事で、イベントの際にお手伝いに行ったり参加したりしているジョナサン。来年の4月からは活動も2年目となるが、今後についてこんな話をしてくれた。

「これから時間ができたら町の色んなパンフレットとかを英訳するような仕事もしたいですね。あとは今、中学校の総合学習の授業で浦臼町のPRを作っているのですが、僕の担当しているグループは日本語バージョンと英語バージョンを作る予定なんですよ」

やっぱり人に何かを教えるのが好きな様子のジョナサン。まさに今の仕事が天職のようだ。

「協力隊の先については、実はまだ分かりません。両親も僕がいないのは寂しいみたいだけど応援してくれています。まだまだやりたいことがたくさんあるので、任期の間は浦臼町での暮らしを満喫したいですね」

来年にはオリンピックを控え、ますます日本を訪れる外国人も増えるだろう。
そんな今こそ、東京や大阪などの都会だけでは無く、地方の魅力溢れる地域を愛して、その情報を発信してくれる彼のような存在がますます求められるのではないだろうか。
ここ浦臼が、これからどんな素敵な田舎になっていくのか楽しみだ。

北海道の人、暮らし、仕事 くらしごと
くらしごと公式Facebook
◎筆者:くらしごと編集部 佐々木都

「浦臼町の子どもたちは『浦臼町は何もない、つまらない』って言う子が多いんです。だから、そんな子たちにも、こんなにいいまちなんだよ!って教えてあげたい」と言うジョナサン「浦臼町の子どもたちは『浦臼町は何もない、つまらない』って言う子が多いんです。だから、そんな子たちにも、こんなにいいまちなんだよ!って教えてあげたい」と言うジョナサン

2019年 03月09日 11時00分