アルミの枠は熱が逃げやすい

前回の「暑さの7割寒さの6割は窓が原因なのに、日本の窓は中国の最低基準以下」では、日本の窓の性能について、世界基準からどのくらい遅れているのかを述べてきた。今回は、日本の窓事情についてもう少し考えてみたい。

窓は枠とガラスで構成されている。このうちガラスの方はそれほど諸外国に比べて劣っているわけではない。ペアガラス(複層=二重)やLow-Eペアガラス(低放射)といったガラスは、かなり一般化してきている。
が、問題は枠にある。断熱性能が低い窓枠は、あたかも隙間風が吹き込むかのようだ。日本のサッシの大半は、枠がアルミでできている。理由はアルミが加工しやすい、工場のラインがアルミ向けであるといったことにある。しかし物理的に考えれば、枠にアルミを使うことはあり得ない。断熱性能の目安となる熱伝導率で各材料を比較してみれば明らかである。
熱伝導率は、アルミかそうでないかで約1000倍も異なる。だから世界的にはサッシの樹脂化や木質化は当たり前になってきている。

材料の熱伝導率の比較。数値が大きいほど熱を通しやすい。</br>アルミは樹脂や木に比べて熱を通しやすく、</br>窓枠に利用するのが不利であることが分かる材料の熱伝導率の比較。数値が大きいほど熱を通しやすい。
アルミは樹脂や木に比べて熱を通しやすく、
窓枠に利用するのが不利であることが分かる

先進国の中で一番遅い樹脂サッシの普及状況

では、世界の国々の樹脂サッシの普及状況を見てみよう。

米国では全50州のうち24州でアルミサッシが禁止されている。日本で売られているU値(熱貫流率)4.65W/m2・Kレベルのサッシは大半がアルミでできていて、アングルと呼ばれる室内側の部位だけが樹脂でできている「樹脂アングルサッシ」と呼ばれるものである。これが売れ筋の7割を占めている。

大手住宅メーカーの大半が採用しているのはU値2.9W/m2・K(Low-Eペアガラス利用時)もしくは3.5W/m2・K(普通ペアガラス利用時)で内枠が樹脂、外枠がアルミでできた樹脂アルミサッシというものである。なかには、これを「樹脂サッシ」と呼ぶ人も存在する。

世界の樹脂サッシの普及状況。日本はまだ普及が進んでいない(資料:樹脂サッシ普及促進委員会)世界の樹脂サッシの普及状況。日本はまだ普及が進んでいない(資料:樹脂サッシ普及促進委員会)

ペアガラスでも結露の恐れ

サッシに比べるとガラスはマシと述べたが、2点ほど指摘しておく。
まずは複層ガラスを構成する部材「スペーサー」についてである。ガラスを2枚重ねる場合、間に空気層を設ける。空気はガラスよりも熱を伝えにくく、空気があることで窓全体の断熱性能が向上する。その空気層を設けるため、ガラスの周囲に挟み込む部材がスペーサーだ。
日本製の複層ガラスのスペーサーは、ほぼ100%がアルミでできている。これも物理的に考えるとあり得ない話だ。そもそも断熱性能を上げるためにスペーサーを使っているはずなのに、その部材が熱を通しやすい材料で作ってあるわけである。いま欧米では、樹脂とステンレスを複合して作っている樹脂スペーサー(ウォームエッジともいう)と呼ばれる部材が徐々に拡大している。
スペーサーの断熱性能を上げることは窓全体の性能向上につながるが、それ以上に結露を防ぐという面で大きな意味を持つ。
どんな窓でも最も結露する可能性が高いのは、下枠とガラスが接する近辺だ。人間の健康に理想的な冬の室内環境は、室温が20℃で相対湿度が50%程度とされており、この状況では外気温が低いと、すべての樹脂アルミサッシで結露が発生する。
結露が発生するか否かは、まず枠が樹脂か木なのか、それ以外なのかでほぼ決まる。枠とガラスの断熱性能を比較した場合、一般的には枠の方が低いので、 結露が生じるかどうかは枠の性能に引っ張られる。上記の室内環境で外気温が0℃であれば、結露が始まる温度(露点)は9.3℃である。アルミの枠では多くのケースで結露してしまうことになる。

樹脂スペーサーで表面温度は2℃上がる

では、樹脂の枠でありさえすれば絶対に結露しないのかといえば、そんなことはない。普及レベルで最高性能の樹脂枠、16mm(アルゴンガス注入)の空気層を持つLow-Eペアガラスというサッシについて、実際にほかの条件を変えて比較してみた。
アルゴンガスの有無と樹脂スペーサーの有無の計4パターンで下枠の温度を比較したグラフを下図に示した。アルゴンガスは窒素と酸素で構成する空気に比べて熱伝導率が低いため、断熱性能を高めた複層ガラスの空気層に使われることがある。

このグラフを見れば分かると思うが、アルゴンか否かによる下枠表面温度の差はせいぜい0.2~0.3℃程度しかない。しかし、スペーサーが樹脂なのかアルミなのかによって、2℃程度も違うのだ。しかもこの2℃の間には、結露が発生するかどうかの境目である9.3℃というラインが含まれている。樹脂スペーサーであれば、空気層がアルゴンでなくても結露しないことが分かる。

「たかが結露くらい」と言われる方がいるかもしれない。しかし、過去に住宅の不満について住まい手1万1,000人を対象に実施したアンケートでは、結露が不満ランキングの3位に堂々入っている。

外気温が0℃、室内が気温20℃相対湿度50%の場合、ペアガラスを使用したサッシの下枠が何度になるかを測定した結果。</br>2枚のガラスの間に挟まれているスペーサーと空気の違いによって、9.0~11.3℃となった。</br>9.3℃以下になると結露するので樹脂スペーサーは有利(資料:テクノフォルムバウテックジャパン)外気温が0℃、室内が気温20℃相対湿度50%の場合、ペアガラスを使用したサッシの下枠が何度になるかを測定した結果。
2枚のガラスの間に挟まれているスペーサーと空気の違いによって、9.0~11.3℃となった。
9.3℃以下になると結露するので樹脂スペーサーは有利(資料:テクノフォルムバウテックジャパン)

「結露は瑕疵」という考え方の欧米

先の日本建材・住宅設備産業協会の調べによれば、窓など開口部からの熱損失は、少ない方の冬でさえ58%であり、次点の外壁15%と換気15%と比較しても圧倒的に大きくなっている。窓の設計が最優先かつ最大の課題であるのは、このためだ。
窓の性能で最も重要なのはU値だが、日本ではこのU値の表示方法に課題がある。
諸外国では枠とガラスを別々に計算する。同じ製品でも開き方や面積が違うと1枚ごとにU値を別々に表示するのが一般的である。しかし、我が国ではそうなっていない。窓からの熱損失は最も大きな割合を占めるにも関わらず、その窓のU値がかなり概略の表示になっている。
例えば2.33W/m2・K以下という表示であっても、実際には1.7W/m2・Kのものがあったり、ひどい場合は2.33W/m2・Kを超えるものも存在するのが実態である。その結果、正確な情報が分かりにくくなっている。

ドイツやオーストリアでは窓の結露はもちろんのこと、壁体内の結露においても徹底的に抑制がはかられる。「建築物理上、結露を引き起こすのは誤った設計であり、人の健康を害するから瑕疵である」という考え方が根底にあるのだ。事の重さを痛感する。
オーストリアでは鉄筋コンクリート(RC)造マンションなどは、コンクリートの水分がほぼ抜けるまでの2~3年は家賃が低く貸し出されるということも聞いている。そもそも欧州のマンションは外断熱工法なので、結露は日本に比べてはるかに少ないのだが、そのうえでの話である。
一方、日本では、コンクリートの水分が抜けきらない築後2~3年が賃料が最も高く取れる時期とされている。それどころか日本ではほぼ全てのマンションで、北側の部屋が結露に悩まされている。マンション販売会社によっては、「加湿器を止めてください」にとどまらず、引き渡し時に除湿機をセットにして渡している会社さえある。

居住者の健康に対して国や建築関係者がどう考えるか、「健康で文化的な生活を送る」にあたって温度や湿度といった重要条件をどう考えているのかがよく分かる一例だ。少なくとも、欧米の大半の国ではこうしたことを「基本的人権」と捉えて重要視しているのである。欧州ではこれまで20年以上かけて、地道に、まずは断熱強化に取り組んで来た。一定の成果が見えてきたということで、ようやく一次エネルギー基準に取り組み出している。

一方、日本の政策は、断熱性能の低い状況を放置しながら設備機器によって一次エネルギーさえ減らせれば良いと考えている節がある。エネルギー輸入量、光熱費、CO2(二酸化炭素)排出量を減らすことが目的で、住む人の快適性や健康といったことは二の次になっている。家を建てるお金を払うのも、そこに数十年住み続けるのも住人であるのに、その住人のことが第一に考えられておらず、窓メーカーも法律や基準も現状に甘んじている。

とはいえ、2014年に入ってから日本の窓メーカーに、この状況を改善しようという気運が生じてきている。現在は各社がU値1W/m2・K前後と世界レベルのサッシを発表している。北海道や東北、日本海側の地域ではこのレベルが必須である。東京や大阪の近辺でも、U値1.5W/m2・K程度の窓が、健康で快適でありながらトータルコストを安く抑えるのに必須のアイテムだ。2014年は、こういった窓が普及し始める「窓改革元年」。メーカー側がこうした窓を発売したからには、次は設計者や工務店が使う番である。

窓を製造する側の事情に基づいて作られた基準をベースに設計を行うことは、全く意味がない。設計者、工務店は誰の家を作っているのかをきちんと考えれば、不十分な基準に基づいて自社仕様を決めることは絶対にあり得ないはずである。

[左]YKKAPが2014年4月から販売している樹脂窓「APW430」。熱貫流率は0.91W/m2・K。(資料:YKK AP)
[右]三協立山の三協アルミ社が2014年4月から販売している樹脂窓「トリプルスマージュ」。熱貫流率は0.86W/m2・K(資料:三協立山)[左]YKKAPが2014年4月から販売している樹脂窓「APW430」。熱貫流率は0.91W/m2・K。(資料:YKK AP) [右]三協立山の三協アルミ社が2014年4月から販売している樹脂窓「トリプルスマージュ」。熱貫流率は0.86W/m2・K(資料:三協立山)

2015年 01月07日 12時20分