ドイツ視察を終えて…焦りの日々

ヴォーバン住宅地にある1999年に建築された集合住宅ヴォーバン住宅地にある1999年に建築された集合住宅

ドイツに初訪問をし、フライブルク市・ヴォーバン住宅地などを視察した私は、大きな衝撃を受けた後、ワクワク感というより、一種の絶望感に浸っていた。

「これから、日本でどうやってあんな街を造る事ができるのか…」
ただ呆然と、ただ焦燥感だけが残るような気持ちでドイツから帰国したのであった。
確かにお客様からオーダーを受けて住宅建築に携わってきたのだが、あまりにも性能もコストも違いすぎて、どこから手を付けていいのかわからないのである。

わかりやすくいうとこんな感じである。
『日本の住宅は、性能がドイツの3分の1以下、建物寿命は3分の1…だが価格は高い!』
これが日本の一般的な建築である。僕らが当時建築していた住宅も、日本国内ではトップクラスと自負していたが、残念ながらドイツの基準と比較できるものではなかった。
燃費性能は恐らく2倍近く悪かった。メンテナンスコスト、耐震性は相当気にしていたのでまずまずではあった…そして価格は国内では競争力があると思っていたのに、ドイツの建物と比較したら、大きな負けを感じざるをえなかった。

当時僕が携わっていた建物は、東北の気候で年間12万円の電気料金がかかり(冷暖房・換気・給湯・照明家電込み)、年間に12,000kwh/年くらいの電気を使用していた。(それでも、深夜電力だから比較的安かった)

ヴォーバン住宅地では1999年建築の集合住宅が驚きの性能

ドイツに初訪問をし、フライブルク市・ヴォーバン住宅地などを視察した私は、大きな衝撃を受けた後、ワクワク感というより、一種の絶望感に浸ったドイツに初訪問をし、フライブルク市・ヴォーバン住宅地などを視察した私は、大きな衝撃を受けた後、ワクワク感というより、一種の絶望感に浸った

一番驚いたのは、ヴォーバン住宅地にある1999年に建築された集合住宅20戸である。
それらの住宅はパッシブハウス基準で建築されており、大型の熱交換器システムで20戸全体の空調をまかない、小型コージェネで熱ならびに電気を造っている。もちろん熱は太陽熱温水器をベースに、バッファタンクで不足した熱量だけコージェネに頼るのだ。

その時の私の知識では、まったく“おとぎ話の世界”のようであった。
「家族4人で、100㎡の木造集合住宅だけど、年間にエネルギー料金は25,000円くらいだよ!」ドイツの建築家で、エネルギー・設備設計のエンジニアのビゼリさんからの言葉である。これが1999年の建築物…日本だと次世代省エネ基準が義務化すらできずに、まだもたもたしているのに…。
この差に私は愕然としてしまったのである。

さらに、資産価値もあがっている事実

また、1999年当時のヴォーバン住宅分譲時に購入し住んでいた方が、4世帯ほど引っ越しをしたらしいのだが、「僕らの予想よりも遥かにエネルギー価格が上昇したのさ!だから僕らの住宅の価値は上がったんだ。みんな購入したときより高く販売して引っ越しているよ」であった。

そうはいっても、坪単価に直してみると日本の住宅と同じくらいかなと思っていたが、大きな計算違いが…「消費税19%込み」なのである!そう、ドイツは消費税を含めても、坪単価60万くらいで建築されている。当時の僕らの消費税率は「5%」、まだ10%以上ドイツが高いのだ。ということは、坪単価自体はドイツのほうがはるかに安いことに気がつく。

どうして、こうなっているのか…。ドイツも日本と同じ、エネルギー・資源が少ない国。だからどうしても、海外からの資源の輸入が必要である。北海油田という安定した供給先も、産出量が少なくなってきていて、大国ロシアに頼る部分が増えていく一方なのだ。安全保障という意味で、エネルギーというのは非常に重要、また同時に厄介なものが「エネルギー輸入」の問題であった。だから、ドイツはまずここにメスを入れたのである。

国内に帰り、勤めている会社の代表に相談するが、なかなかことを進めることが難しい。困ったことに私の中では、「やりたいこと」と「やらなければいけないこと」が交錯する毎日になっていく。日々、矛盾と葛藤をしていくのである。

そして次のステージへ…

「建物の省エネルギー化が何よりも優先する」
日本でもそうだが、エネルギーというと“発電”という電気をつくる事が重要と勘違いをされているが、これはまったくもって効率的ではない。住宅や、オフィスビルなどで使われているエネルギーは、確かに電気が重要になっている。しかし、その電気で私たちは何を利用しているのか?それは、照明などの家電 エアコン 給湯…お気づきだろうか?

我々は確かに家電など、どうしても電気が必要なものを多く活用しているが、それよりも圧倒的に多く電気を消費しているのが“熱”をつくることなのである。部屋を冷やす、暖める、またお湯を湧かす。実はここに膨大なエネルギーを使用している。とくに日本人はお風呂好きのためか、お湯を使うのが欧米人の2倍以上。これは、致し方ない部分もあるだろう。しかし、同時に建物の性能が悪いため、暖房してもすぐ寒くなる。お湯も沸かしたら、すぐ冷める。お風呂については、家族が何人も利用するとすると追い炊きが必要となる。僕もこれが普通だと思って生活をしていたし、何もおかしいと思わなかったのである。生まれてからずっとそうだったのだから…。だが、ドイツ視察が終わったときには、それが「大きな間違い」ということに気づくのである。

ここから私は、この“熱”というポイントを追求していくことになる。
まずはそもそも建物において“冷やす”“暖める”を少ないエネルギーで効率的に行う“断熱”を重点的に行う事に注力していくのである。さらに発電することも大事だが、その前に“熱を大事にする”ということがもっと大事だということに気づく。貴重な電気を利用するときには、高価なエネルギーだからこそ、熱を大事にすることが重要なのである。熱は再生可能なエネルギーでつくることができればなお良い。
「最後はヴォーバン住宅地のような、未来のこどもたちに胸を脹れる街造りがしたい」
そう思いながら、お世話になった会社を離れ、仲間を探す旅にでる。そしていくつかの会社、団体を設立しながら6年。ひとりの仲間を探しながら、今はだいぶ一緒に航海をしてくれる仲間も増えてきた。

まだまだ先は長いが、「持続可能な社会を構築するため」に一歩踏み出したことで、私は少し動きだした。

「最後はヴォーバン住宅地のような、未来のこどもたちに胸を脹れる街造りがしたい」と私は思っている「最後はヴォーバン住宅地のような、未来のこどもたちに胸を脹れる街造りがしたい」と私は思っている

2014年 07月30日 11時28分