9月1日は「防災の日」だった

毎年9月は1923年(大正12年)に発生した「関東大震災」を教訓として住宅防火・防災キャンペーンが実施され、9月1日は「防災の日」、8月30日から9月5日は「防災週間」および「建築物防災週間」と、建物の安全性と防災について意識を高める時期でもある。

2011年3月11日の東日本大震災発生当日の状況は各人の記憶に生々しく残っているし、その後喧伝された首都圏湾岸エリアでの液状化現象に関する報道は、建物、特に戸建てやマンションなど住宅の安全性についての関心を飛躍的に高めることとなった。
東日本大震災以降は特に大規模・タワーマンションで免震装置・制震(制振)装置が設置されるケースが増えており、これはマンション購入者・購入検討者の「安心・安全」に対する関心の高さを反映する事象であるとも言える。

つまり東日本大震災以降、特に首都圏以北では、マンションや戸建住宅に求められるものはまず「安心・安全であること」だという意識が定着していることは疑いの余地がない。震災発生以前は、①都心などの事業集積地に近く通勤・通学に便利なこと、②周辺に生活利便施設が整っていて日常生活に不便がないこと、③将来売却や賃貸に出した際に優位性=資産価値が高いこと、を重視して居住用不動産を購入するケースが多数を占めていたのだが、現在ではこの要素に「何より安全であること」および「大きな災害が発生した後も生活を維持・継続できること(生活のBCP)」が加わって、安全性にリスクがあると考えられるエリアもしくは物件の市場価格が弱含む傾向が表れ始めている。

安全性に関して何らかのリスクがあると考えられる場合は、資産性にも大きな影響を与える可能性が出てきているということになる。

「防災マンション」だけでは地域防災は不完全

最近注目されている物件として「防災マンション」がある。この名称はまだ一般化しているとは言えないが、この「防災マンション」は免震、制震(制振)装置のいずれか(最近は両方採用する“ハイブリッドマンション”も登場している)を採用していて高い地震耐力を実現し、災害時に電力供給がストップしてもエレベーターの運行やエントランスの施錠・解錠、専有部分の電力確保も可能な非常用電源が設置されており、太陽光発電機や蓄電池、災害時に必要になる食糧品や医薬品などを備蓄しておく倉庫や、緊急時にかまどとして使用可能なベンチなどを備えるなど、防災性能の極めて高い分譲マンションの総称として使われ始めている。

確かに「防災マンション」には現在考えつく限りの災害対策が施されており、安心・安全を訴求し得るマンションとして売れ行きも好調だが、遠からず発生すると言われている“首都圏直下型地震”や“東海・東南海・南海三連動地震”が実際に発生すれば、その被害は広範な地域に及ぶため、地域防災という観点からはマンション1棟の防災性能が高いだけでは足りないのも事実である。
もちろんマンション1棟の防災性能が高いことは居住者の生命・身体を守る上で非常に大切だが、災害に対する備えは個々人もしくは世帯単位の対応だけでは足りず、地域全体で災害に強い街に作り変えていくことが求められている。

地震は防げなくても、被害を少なくすることはできる

どこに住居を構えるかは、常に真摯に考えるべきどこに住居を構えるかは、常に真摯に考えるべき

東京都が、緊急輸送道路に面した旧耐震建物の耐震診断を義務化したのも、木造住宅密集地域、いわゆるモクミツ地域の解消を目指して道路の拡幅や整備地域の指定、都市計画道路の特定整備路線(候補区間は23路線)を選出したりするのも、住宅=建築物が個人・法人の所有物でありながら、ひとたび災害によって毀損することがあれば、その影響は周辺全体に及ぶという社会財としての性格を認めればこそである。

我々は、本格的に地震とその後に発生するであろう火災などの災害に備えることを意識して、不動産と居住エリアを選択する必要がある。
例えば湾岸地域は埋立地が多く、地盤の弱さがリスクとして指摘される反面、街区および道路幅員が広く、木造住宅も極めて少ないので火災危険度は相対的に低いと言われている。また、地面が液状化することによって地震の振動を逃がすことができるため、建物に対する被害が軽微で済む可能性が高まることも構造や地震の専門家には広く知られている。“安全で便利で快適な住まい”を実現するためにも、どこに住居を構えるかは、常に真摯に考えるべき事柄である。

地震を防ぐことはできないが、火災や建物倒壊など“地震によって発生する二次災害”は人の力で防ぐことができる。
少なくとも被害を軽微に留めることができるということを、この住宅防火・防災キャンペーンが実施されている9月のうちに意識してもらいたいものだ。

2013年 09月24日 14時33分