今後の日本の住宅市場はどうなるか?

日本と欧米各国の住宅リフォーム投資割合の国際比較
</br>(出典:国土交通省『社会経済の変化と今後の住宅政策』)日本と欧米各国の住宅リフォーム投資割合の国際比較
(出典:国土交通省『社会経済の変化と今後の住宅政策』)

少子高齢化が進む日本。3人に1人が65歳以上という未来が目前に迫った中、住宅市場に関してもこの問題は無視できない。人口の減少、少子高齢化社会でどのような変化が住宅市場に訪れるかは、過去HOME'S PRESSでも何度か取り上げてきた。新築市場からリフォーム市場にシフトすることで、空き家問題の解消と街の活性化を目指す動きはでているが、実際そうした変革はできるのだろうか?

変革期を迎えようとしている日本ではあるが、実は既に欧米では変革を受け入れ、新築市場からリフォーム市場にシフトしている。その1つが、ドイツだ。2000年前後から市場シフトして、現在新築市場は約25%、リフォーム市場が75%(※)という市場を形成している。

変革を上手く受け入れ次の住宅市場を形成したドイツ。何故ドイツはうまく変革することができたのか?そのカギは「エネルギーの施策」。今回、JENA(日本エネルギー機関)の代表取締役中谷哲郎氏に「ドイツと日本の住宅に関するエネルギー施策」について取材してみた。

※ドイツにおける建設投資額の割合。リフォーム市場はリフォーム、省エネ改修などを指すが、仲介手数料などの不動産収入は含まれていない。

省エネリフォームが何故いいのか?

JENA(日本エネルギー機関)の代表取締役 中谷哲郎氏JENA(日本エネルギー機関)の代表取締役 中谷哲郎氏

ドイツの中古流通市場を語る上で、重要な「省エネリフォーム」。中古住宅市場の中で25%の市場を形成している。つまり、住宅市場全体からみても約5分の1の市場がある。その名前の通り、中古住宅に対して壁断熱、窓などのリフォームを行い、住宅の省エネ化を図るものだ。ドイツにおいては省エネリフォームすることで、金融支援機構KfW(ドイツ復興金融公庫)の基準に合格したものに対しては補助金がでる仕組みになっている。

ドイツは国自体が省エネリフォームを推進し、補助金を出す仕組みをいち早く制度化したが、何故かご存じだろうか?それはエネルギーの効率化、つまり“脱化石燃料”だ。2000年から2012年にかけて、ドイツではガス・灯油代が217%、電気代が179%というエネルギー価格の高騰が起こっている。

こうしたエネルギー高騰の背景がある中、国民生活を守るためにも省エネと再エネ普及、つまり「エネルギーの効率化」が求められるようになる。そして、その中でも注目されたのが、「住宅のエネルギー」だった。

住宅のエネルギーとは?

住宅のエネルギーを考えるなら、もっと車や工場などのエネルギー効率を考えた方がいいのでは?と思う人も多いだろう。日本で言えば全エネルギー消費量の中でも一般住宅に関するエネルギー消費量は約15%。そんなに大した数字ではないと思う方もいるかもしれないが、一番効率化できるエネルギーの分野でもある。「エネルギー」と一言で言っているが、実は2種類あるのはご存じだろうか?ぱっと思い浮かぶのが「電気」かもしれないが、重要なのが「熱」。エネルギーの実に6割が「熱」の消費量なのだ。

「まずエネルギーの使用量を減らす、それから作るエネルギーを増やす。この順番が世界においても一般的なのに、日本では優先順位が逆の場合もあります。順番が同じだったとしても住宅自体のことではなく、例えば、“電気をコントロールしましょう”というように省エネが個人に依存している傾向にあります」(中谷氏談)

熱に関して言えば、「使う量を減らす」ためにただ減らすのではなく、本来できた熱を充分に活かして結果的に減らすことが大事だという。発電所などでできた熱を日本ではほぼ捨てている。火力発電の場合、電力精製のために作られた熱は捨てられ、遠く離れた距離に送られた後、家庭や工場などで熱を作るためさらに電気を使うという悪循環に陥っているという。熱の再利用はピンとこない方もいるかもしれないが、ゴミ処理場の熱を利用した温水プールなどは各地にあるのでイメージしやすいだろう。

ではドイツにおいては「熱」エネルギーの現状はどうなのか?全社会で消費するエネルギーのうち熱エネルギーが58%の割合で、その58%の中でも35%が建物由来の熱エネルギーだという。この建物由来のエネルギーは、建物の断熱性能が低いため必要となる冷暖房のエネルギーと、機器の効率化ができれば低減できる給湯エネルギーがほとんど。つまり、社会全体の消費エネルギーの内、35%は建物の性能、設備機器の性能を高めればより減らすことができるということになる。

電気もさることながら熱をどう省エネ化していくか。建物として熱を使わない、電気を使わない=使わないでいかに快適な住空間を実現していくかがポイントだと思う。

ドイツの省エネリフォーム事例

ドイツの1970年代に建てられた公団住宅。左が省エネリフォーム前。右が省エネリフォーム後ドイツの1970年代に建てられた公団住宅。左が省エネリフォーム前。右が省エネリフォーム後

エネルギーを使わない建物とは何か?
まず、ドイツの1970年代に建てられた公団住宅の例をみていく。この住宅は国で定めた建物の断熱基準に達していないため、そのためスラム化が進んでいる建物だった。

□Befoer(省エネリフォーム前)
 ・あるワンフロアには6世帯(65m2、86m2の2タイプ)
 ・1m2あたりの賃料は5ユーロ
 ・年間の光熱費1000ユーロ
 ⇒高度経済成長にファミリー向けとして供給された住宅で、日本の公団同様、高齢化が進んだ住宅

■After(省エネリフォーム後)
 ・ワンフロア9世帯に改修(50m2、70m2の2タイプ)
 ・年間の光熱費100ユーロ
 ⇒1m2あたりの賃料が6.5ユーロにアップ。

リフォーム後にマイナス16度という大寒波が1週間続いたが、そんな寒さにも関わらず、建物内部ではほぼ暖房を使わなかったとのこと。この建物は暖房を使う際、(※例えば日本では各世帯で暖房の熱を空調が精製する仕組み)全世帯で熱を使う。個別ボイラーではなく、全世帯共通でボイラーを使うため、個人で意図的に省エネ化しなくても、自動的に全世帯が省エネ化されている訳だ。

日本の住宅はどうなるのか?

建物そのものの断熱性能向上も大切だが、常にエネルギー意識を向けることが本当の“省エネ”につながることはではないかと思った。
4月に消費税増税があったが、5月には光熱費も再び上がるという。光熱費が月額2万円だったとして、例えば年率3%あがると考えると35年後には月額6万円。いかにエネルギー消費を根本的に見直していくことが重要になる。

そうはいっても、いきなり省エネ改修を推し進めるのはなかなか難しいと考える。国が体制を整え、各メーカー、工務店が技術や情報の共有を行わない限り、なかなか変革を迎えられないだろう。

今後の日本の住宅はどうなるのだろうか?
中谷氏曰く、「まずできることとして“環境性能の表示”が大事」という。

「建物に関しては環境性能を表示して、どの家が素晴らしいかのか“見える化”をすることが重要です。個人的な省エネ活動を行って努力することは大事ですが、意識して我慢して10%減らすより、建物自体をよくすれば我慢しなくても40%エネルギー消費を抑えられます。次世代省エネ等級がありますが基準は世界的にみても低く、それを守ればいいという感覚に日本人はなってしまいます。そうではなく、住宅を数値化した“見える化”が日本の住宅にとって求められていると思います」

そのはじめの一歩として着実に進んでいる行政がある。それが長野県だ。
長野県のエネルギー輸入支出額をみると4000億。一方、長野県の産業で獲得する金額が建設業が総生産3700億、農林水産が1500億。稼いでも石油輸出国などに吸い取られていくという結果だ。そうした状況をみて、建物の省エネ性能を専門のソフトを使って“見える化”して見直そうという条例が可決されたという。

省エネルギー対策と住宅エネルギーの改善に向けて、どのように日本は先輩ドイツの背を追いかけていくのか?
日本の住宅業界のエネルギー施策がどう受け入れ、どう変わっていくのか、こうした動向について今後もHOME'S PRESSでお伝えしたい。

2014年 04月26日 11時02分