40件のセミナー・カンファレンス

NARでは、40件のセミナー、カンファレンスが行われていて非常に勉強になったNARでは、40件のセミナー、カンファレンスが行われていて非常に勉強になった

サンフランシスコで行われたNAR(National Association of Realtors)のThe 2013 REALTORS® Conference & Expoに参加した。
結局、3日間の参加にすぎなかったが、40件のセミナー、カンファレンスが行われていて、非常に勉強になった。中でも最終日に、主席エコノミストのLawrence Yunとのディスカッションの機会をもらえたことは、本当にいい思い出だ。
たくさんお話したいことはあるが、特に印象深かったExpoについて報告して、
Expo and Conference in San Franciscoの報告を終えたい。
不動産流通に関する全米最大の技術展示であるExpoでは、情報産業、インスペクション、金融業など非常に多様な何百ものブースが開かれている。

ロックボックス

MLSの使い勝手は、ロックボックスという技術によって飛躍的に高まっているMLSの使い勝手は、ロックボックスという技術によって飛躍的に高まっている

日本でも馴染み深くなりつつあるが、ロックボックスの展示をみてきた。
ロックボックスは売り手のエージェントが売出し中の家の玄関にかけておき、買い手のエージェントは、その暗証番号等を手に入れることで、一々売り手エージェントと物理的に接触しなくても、それを入力して家の鍵が入っているロックボックスを開けて、家の中に買い手を案内することができる。これは、売り手エージェントがその物件の買い手とのマッチング機能を(自ら行うことを)手放し、買い手エージェントに広く開放することで初めて意味を持つ技術だ。
このことで、たくさんの買い手エージェントがたくさんの顧客を効率よく案内することを可能となり、良いマッチングの確率が上がってる。
MLSの使い勝手は、このロックボックスという技術によって飛躍的に高まっている。

RPR(Realtors Property Resource:全米リアルター協会加入者プロパティ リソース)

RPRは売りに出されていないものも含めて全米の全て建物情報(1億6000万件)が網羅され、全ての地域の郵便コードベースの情報が掲載されているRPRは売りに出されていないものも含めて全米の全て建物情報(1億6000万件)が網羅され、全ての地域の郵便コードベースの情報が掲載されている

また、RPR(Realtors Property Resource:全米リアルター協会加入者プロパティ リソース)の展示には本当にびっくりさせられた。このRPRは10月にNARの国際会員に対して開放されたばかりだと聞いたため、やや詳細に紹介する。
MLSは地域の不動産市場ごとに、売出し物件のみが掲載されている。しかしRPRは売りに出されていないものも含めて全米の全て建物情報(1億6000万件)が網羅され、全ての地域の郵便コードベースの情報が掲載されている。
使い勝手も、地域の人口、人種構成、災害危険度などが即座に把握でき、検索もMLSと同様のことができるように思えた。基本的にはMLSの情報と公開されている公的情報をマッチングさせたものからなるものだが、膨大な量の情報がストックされているため、様々なことが可能になっていた。
例えば、おそらくヘドニック法によるものだと考えられるが、自動的な査定が可能なだけでなく、リフォームなどを行うことによってどれだけ住宅価格が上昇するかとうシミュレーションも可能になっていた。

なぜテクノロジー志向なのか?

日本でもこのような不動産流通に関する新しい技術が開発され、紹介され、普及しつつあるのだろうか。不動産流通関係の技術を真剣に研究したり、勉強したことは正直いってないため、何も言えない。しかし、今回は科学技術の発達した異星人に会ったような気持ちがした。
日本で用いられている技術について私が言えることはないとしても、なぜ、米国ではこのようなタイプの技術開発、普及が目覚ましいのか。
ネットワーク外部性を最大限活かすことで、多くの売り手と買い手のマッチングを行うという戦略を用いた場合には必然的に必要な技術なのだろう。自分のところに持ち込まれた物件以外のものについて、買い手やそのエージェントが購入の判断をするためには、アクセスが容易な非常に詳細な情報が用意されていることが必要だろう。
これを可能にするのが、MLSでありRPRだ。このような技術はネットワーク外部性をますます強めることになろう。

また、経済学にはクラブ財の理論というものがある。クラブというのは、メンバーシップを有するものだけが使用することができる財、サービスを指す。スポーツクラブをイメージして頂ければいいが、地方公共団体やコミュニティの分析にもこのクラブ財の理論は用いられる。このようなクラブの最適規模は、規模の経済による生産性の向上と、規模が拡大することに伴う混雑による生産性の低下のトレードオフ関係によって決定される。
MLSというサービスはクラブ財としてとらえることができる。このクラブは規模の経済というよりはネットワーク外部性があるから、できるだけ多くの不動産業者に入会してもらうことが必要だ。
しかし、多くの不動産業者が入会することで、混雑現象が発生するかもしれない。たくさんの買い手とそのエージェントが売り手の物件、売り手エージェントに接触してきた彼らはそれを裁くことが困難になろう。このためクラブは自らの生産性を上げるために混雑現象を解決することが必要になる。
それを可能にしているのがロックボックスという技術だろう。

ネットワーク外部性を維持する道具としての…

前回、ネットワーク外部性を最大限に発揮させるために作り上げられたMLSという情報ネットワークのメンバーシップの管理を行い、消費者へのブランディングを達成しているのがNARという組織だと述べた。
Expoで学んだのは、ネットワーク外部性を維持しているのは、このNARという組織だけでなく、MLSの情報ネットワークにぶら下がったロックボックス、RPRなどの新技術であるという点だ。これらの技術とNARという組織は相互補完的だ。

つまり新技術によってMLSのネットワークはより魅力的なものとなり、それに伴ってNARのメンバーシップ管理もより容易なものとなっている。
なぜなら、そのクラブに属することが個々のメンバーにとってより魅力的なものとなっているから。

2013年 12月05日 09時59分