負の資産となってしまったマンション

マンションについては、資産価値に与える影響を評価する共通の尺度がないために、再生投資に関する集団的意思決定が行いにくいことを、前回述べた。

維持管理、改修、建替えなどの再生投資が不十分にしか行われない場合、マンションは荒廃し市街地環境に影響を与える負の資産となってしまうかもしれない。
建替えに当たって区分所有者の5分の4の賛成が必要であることなど、集団的意思決定にあたって過度に現状維持的な制度が構築されていることなどを解決することが求められる。
マンションがひとたび負の資産となってしまった場合、どうしたらいいのだろうか。やはり、建替えや改修などの再生投資の早急な実施、を行うことが求められるだろう。

区分所有権の解消は日本では困難な選択肢

日本のマンションは①そのまま存続し続ける、②建替えるという選択肢しか用意されていない日本のマンションは①そのまま存続し続ける、②建替えるという選択肢しか用意されていない

では、どのようなマンションが荒廃してしまう可能性が高いのだろうか。
もし、最有効使用がマンションであり高い市場価値がつくならば、曲がりなりにも資金を回収する道があり、再生投資が行われる可能性が高い。
しかし、建設時以降の社会経済情勢の変化により、マンション立地点の最有効使用が商業、オフィスなどに変化した場合はどうだろうか。再生投資は資金を回収できないだろうし、社会的にも行うべきではない。この場合は、区分所有権を解消して他の土地利用を行う主体に売却することが、区分所有者にとっても社会にとっても好ましい選択になる。

しかし、日本のマンションは、出口として①そのまま存続し続ける、②建て替えるという選択肢しか用意されていない、非常に魅力の乏しい資産になっている。区分所有権は専有部分と共有部分に分かれており、共有部分は全員一致でなければ処分できないため、区分所有権を解消して土地を売却することは非常に困難な選択肢となっている。
つまり、マンションは一度建設されてしまうと、土地利用を現状のまま固定化してしまう可能性が高いのである。このことは、日々変化する経済社会状況の中で都市の効率性を大きく毀損してしまうだろう。

米国では特別多数決で区分所有関係を解消し、不動産を売却し区分所有者間で配分することが可能な制度となっている。被災マンションにおいてこのような区分所有権の解消が認められるようになったが、都市自体の荒廃を防止する観点からも、一般的な制度として再構成されることが求められる。

マンション管理のガバナンスの失敗の影響

マンション管理には経営的な感覚、建築物や不動産などに関する相当に深い知識が求められる問題も存在するマンション管理には経営的な感覚、建築物や不動産などに関する相当に深い知識が求められる問題も存在する

一方、マンションを荒廃させてしまうマンション内部の事情とは何だろうか。
これまでに述べてきたように、住民間の所得や価値観などに関する相違が大きな場合に、集団的な意思決定が非常に難しいため、管理レベルは低下してしまう可能性が高い。
これに加えて、マンション管理には経営的な感覚、建築物や不動産などに関する相当に深い知識が求められる問題も存在する。
私の住んでいるマンションもそうだが、理事などの役職は、区分所有者間の持ち回りで担われているマンションが多いのではないだろうか。たまたま熱心で能力の高い理事会が、大規模修繕の時期などの重要な時期に構成されていればいいが、そんなことは保証されていない。恒常的にマンション管理のガバナンスの失敗が生じているマンションがあるかもしれない。
そのような場合、マンションは荒廃してしまう。

参考になるフランスの荒廃マンション対策

この点についてはフランスの法制度が参考になるのではないだろうか。
フランスのマンション法制も日本のそれと似ているが、日本の区分所有組合に該当する意思決定機関が、専門家を「管理者」という執行機関として選任して管理に当たらせることが一般的だ。管理者は、県知事発行の10年更新制の職業証を所持し、その任に当たることとされている。
このようにマンション管理が専門家の手によって担われる体制が整っているが、90年代に進んだマンションの劣化に対応して、外部からマンションの再生、清算を図る仕組みが荒廃区分所有建物対策法として導入されている。

財政危機に陥ったマンションは管理者を選任できず、管理自体ができない事態になっている場合が多い。このような場合、裁判所が15%の区分所有者の請求を受けて、臨時支配人を任命し、臨時支配人は管理者のあらゆる権限、区分所有者総会の権限の一部を付与されることとなっている。また、管理組合に対する貸金請求、水道・ガス・電気の料金支払を求める債権者からの訴訟を一定期間中断、禁止する権能が与えられている。このような特別な権限とそれが生み出す時間的猶予の中で、臨時支配人はマンションの再生に取り組むことになる。

一方、区分所有建物に問題がありながら、区分所有者に資金、決断意思を欠くため問題を解決できない場合、区分所有対応住居改善プログラム事業というものが用意されている。この場合、様々な公的主体がかかわりながら①共用部分+専有部分の工事、②管理費不払いと管理組合の債務を処理し、管理費を削減して区分所有者と管理組合の支払能力を確保する、③区分所有者組織の改善、などの業務を補助金の受け取りながら実施することになっている。

フランスでは、外部からマンションの再生、清算を図る仕組みが</br>荒廃区分所有建物対策法として導入されているフランスでは、外部からマンションの再生、清算を図る仕組みが
荒廃区分所有建物対策法として導入されている

日本のマンションを荒廃させないための示唆

マンションが最有効使用である土地柄においては、建替え要件を緩和するなどのマンション再生を進めることが求められ、最有効使用が他の用途に変化した場合には、区分所有権の解消決議などを導入することが求められよう。

しかし、そもそも都市的な土地利用が困難になりつつある郊外などにおいては、マンションの建替えあるいは他用途への転換自体が難しい状況もあるだろう。その場合、マンションの荒廃が周囲に非常に大きな悪影響をもたらす事も考えられる。
このような場合、フランスの制度のような公的な介入を検討することが必要かもしれない。

2014年 01月23日 09時59分