予測される、今から10年後の2024年の住宅市場

新築住宅建設を抑制し、中古住宅の質を高めることが、成熟した社会の基本政策であるのは論をまたないはずだった新築住宅建設を抑制し、中古住宅の質を高めることが、成熟した社会の基本政策であるのは論をまたないはずだった

少し未来に目を移して10年後の2024年の未来から話をしてみたい。

住宅市場は、かつての慣行や仕組みが全くと言っていいほど姿を消し、劇的に生まれ変わった。

2015年あたりから、団塊世代が高度成長期に住宅を求めたかつてのベッドタウンのなかには、荒廃して街の価値を大きく毀損するところが増加するなど、空き家問題はますます社会問題化していた。
にもかかわらず、新築住宅は建設され続けてきた。新築住宅建設はこれまで景気対策の道具として利用されてきたが、その根拠は「経済波及効果が高い」とされているからであった。
その根拠となる「産業連関表」によれば新築住宅建設の経済波及効果はおよそ2倍あるとされていた。

産業連関表は1990年代後半に、当局が作成者に対して極力大きな数値を出すように指示され数字を大きく積み上げたものだったし、新築を造ればその分増加だけ増加した空き家への対策費、街の価値が毀損するマイナス資産効果、行政のサービス提供の効率悪化による財政負担なども考慮すれば、全体としてはそれほど効果があるものといえなかった。

一方、住宅購入後の家計が消費を減少させていることもよく知られてきた。多くのケースで購入した住宅の価格が下落し続け、資産価値と住宅ローン残高のバランスが逆転する「家計内債務超過」を起こしているのだから無理もない。

ましてや新築住宅建設の売上や利益は、企業側・産業側のものである。一方で中古住宅の資産価値は各家計のもの。
新築住宅建設を抑制し、中古住宅の質を高めることが、成熟した社会の基本政策であるのは論をまたないはずだったのだ。

「住宅総量目標」の策定

住生活基本計画には「新耐震基準適合率」「省エネ対策率」「既存住宅の流通シェア」などの目標があり、これに基づいて予算や税制など各種政策設定されてきた。しかし本計画の数値目標はパーセンテージ(割合)で示されているだけで、住宅総数の具体数値・全体数値について記載がなかった。

このままでは、各プレイヤーが都合のよい解釈をし、ますます社会問題化する空き家が無尽蔵に増加する恐れがあった。総量目標がなく新築中古の内訳も見えないため、解釈によってはどうとでもとれる余地を残していたのだ。

そこで、OECD(経済協力開発機構)に加盟するような普通の国なら普通に持っている「住宅総量目標」が策定された。

世帯数や住宅数を勘案し、当面の新築住宅建設数を決め、それに合わせて税制を始めとした政策を決定するようになったのだ。住宅総量目標に基づいて、新築住宅建設基準(およそ何戸くらい造るのか)を決めたり、税制や補助金の額や割合を決定する。

これを受けて各基礎自治体は個別に政策を策定することになったが、住宅建設を促進する区域とそうでない線引きを行うのは、利害が絡むため難航した。それでも増え続ける空き家問題や、道路や上下水道のインフラ、ごみ収集など行政サービスの非効率改善は待ったなしであったため多くの基礎自治体が線引きを行うに至っている。

新築住宅を優遇することは、かつて住宅が足りない時代、品質に課題のある時代には一定の意義があった。しかし住宅の質や量がある程度充足し、経済は成熟、人口も減少する局面で、無計画に、景気対策として新築住宅を造り続けたらどうなるかといった意識は業界のみならず社会全体で共有されている。

現在となっては、経年によって建物価値が一律に減価する評価手法はもはや過去のもの。築数十年でも価値の落ちない中古住宅が多く見られるように。これは国交省や民間事業者などの尽力が奏功した他、国民の中古住宅に対する認識も様変わりした。

最も大きいのは、金融機関による中古住宅の評価手法の変化。2015年から試験運用が開始された新住宅データベースが機能し始め、住宅市場活性化ラウンドテーブルで議論されていた中古住宅の評価手法が決まり、それを金融庁やマニュアル化、金融機関が活用している。かつてのように、担保評価を行う際に机上で行う一律的なものではなく、ホームインスペクターなどの専門家が精査した建物の報告書に不動産鑑定士が土地と一体とした中古住宅の評価を行い、それに基づいて融資を行う。

この仕組みを創る際には、担保評価のコストを誰が負担するのかといった課題が浮上していたが、スタートアップからしばらくは国からの補助金によってサポートされ、やがて補助金がなくなっても評価手法は制度的に定着した。

私が思い描いている10年後の住宅市場

10年後…2024年未来の住宅市場はどうなっているだろう10年後…2024年未来の住宅市場はどうなっているだろう

不動産流通市場では、流通阻害となる「物件の囲い込み」が行われることはなくなった。
なぜなら、全宅・全日など業界団体が全米リアルター協会(NAR)並みの厳しい規定を儲けたためである。囲い込みの事実が発覚すれば罰金や業務停止、度重なれば免許剥奪である。一取引あたりの手数料率は大幅に下がったが、流通量が倍増したため、流通業界全体が潤った。

仲介手数料の料率も変更された。
3パーセント+6万円では、少額の取引に対応できないためだ。2023年時点では1,000万円まで10%、2,000万円まで5%、2,000万円超は3%となっているが、将来的には手数料自由化も含め変更になる可能性が高い。

不動産を扱うことができるのは、宅建主任者などの有資格者のみとなった。
かつては一店舗あたり5人に1人の宅建主任者がいればよかったが、2015年から4人に1人、3人に1人と段階的に厳格化、2020年には全員が有資格者となった。

仕組みや制度が整備されたことで、優秀な人材もとどまり、むしろ他業界から流入するように。不動産エージェントは、学生には人気業種だ。

思えば2013年あたりが、市場の大きな転換点だった。
不動産仲介やリフォーム・インスペクションを組み合わせたワンストップの仕組みは一時、各地で創られたが、実力のある一部だけが残った。瑕疵保険は一定程度活用されるようになるも「保険がついているから建物が長持ちするわけではない」といった認識を、ユーザーが持つようになったため広がりは限定的だ。多くのユーザーは、住宅の定期的な点検はもちろん、簡易な修繕・リフォームは自ら行なうなど、建物に関するリテラシーが飛躍的に向上。彼らは賢くなり、建物の寿命を伸ばし価値を維持するのは自分たちだということを理解している。

以上が、私が思い描いている10年後の住宅市場の概要である。

2014年 02月26日 10時17分