中古住宅の購入者に対する情報提供のタイミングは遅れがち

中古住宅を購入する際には、仲介会社からさまざまな情報が提供される。用途地域や建ぺい率、容積率などの公法制限、自治体の条例による制限、登記された権利内容、ガスや上下水道などインフラ設備の整備状況、マンションであれば管理費や修繕積立金の月額や積立状況、大規模修繕履歴、さらに自然災害のリスク情報や、最近であれば住宅履歴情報が開示されることもあるだろう。耐震診断やアスベスト検査などが行われていれば、その内容も伝えられるはずだ。

しかし、これらの情報が購入者へもたらされるのはたいてい、売買契約の前に宅地建物取引主任者によって行われる重要事項説明のタイミングである。公法制限などあらかじめ分かっていることは広告や販売図面にも記載されているが、重要事項説明の段階になって初めて聞かされる内容も多いだろう。地盤の問題、擁壁の問題、隣地との境界に関する問題など何らかのリスクが、購入意思を決めた後になってから判明することもある。

これは売買契約の話がまとまった後、重要事項説明書の作成に向けて詳細な物件調査が行われるためだ。売主から売却の依頼を受ける時点であらゆる調査を実施する仲介会社もあるが、とりあえず登記された権利内容と、売出し図面の物件概要作成に必要な調査だけで済ませる場合もある。また、契約の段取りを進める中で購入者側の仲介会社が改めて物件調査を行い、新たな問題点が発覚することもあるだろう。

新築物件であればさまざまな情報があらかじめ揃えられており、購入希望者や検討者はそれらを容易に入手することができる。それに対して中古住宅は必要な情報がなかなか揃わず、あるいは適切なタイミングで提供されないことが、流通性を阻害する要因にもなっているのだ。

不動産情報をまとめることの意義

近年ではインターネットによって入手できる情報も増えてきたが、不動産の物件調査では数多くの役所や機関を回らなければならないことも多い。物件によっては同じ役所の中で10箇所近くの窓口を行き来したり、支所、出張所、土木事務所などに足を運んだりすることもある。自治体によって取扱いは異なるが、固定資産税の評価額や税額、水道の引込管などを調べるのに、売主からの委任状を要する場合もある。

消費者からみれば、仲介会社がそれくらいの手間を掛けるのは当然であり、一切の手抜きがあってはならないと考えるだろう。ところが、調査内容が幅広く煩雑になればなるほど、担当者による見落としのリスクも高まる。決して手抜きというわけではなく、必要な情報がすべて揃うまでにある程度の期間を要することは仕方のない側面もあるだろう。

そこで、ストックが可能な情報については共通のシステムで一元化し、主に仲介会社に対して提供しようとする「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」がまとめられた。これは「不動産流通市場活性化フォーラム」の提言(2012年6月)および「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会」の中間とりまとめ(2012年9月)の指摘を踏まえたものであり、2014年4月に国土交通省より公表されている。また、不動産情報の集約と提供は、2013年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」「世界最先端IT国家創造宣言」に盛り込まれた方針でもある。

このシステムが稼働すれば中古住宅購入の検討段階、あるいは仲介会社から物件が紹介される時点で消費者に提供される情報の種類が大きく増えるだろう。仲介会社は基本情報の収集を効率化することができ、より深い調査へ迅速に着手することも可能になる。

「不動産に係る情報ストックシステム」によって提供される情報は?

システムによって収集される情報は「物件に関するすべて」ではない。情報ストックに適さない内容もあるし、個々の物件における地盤や家屋の状態など、情報としてまとめることが困難なものもある。基本的にはレインズ(不動産会社間の物件情報交換システム)や、国・地方自治体などの行政機関、インフラ提供機関、民間サイトなどが「すでに保有している情報」を幅広く収集し、システムへ集約することになっている。

収集対象には過去の取引履歴を含む物件情報、リフォームや補修などの住宅履歴情報、マンション管理情報などのほか、インフラ、法令制限、ハザードマップや浸水想定区域、さらには周辺の公共施設や学区情報、周辺の不動産価格に関する情報なども想定されている。

収集された情報は、レインズと連携しながら主に不動産会社へ提供されるが、このうち広く一般に公開されている情報については直接、消費者へ提供することが検討されている。その際にはホームズ、スーモ、アットホーム、ヤフー不動産など民間の不動産ポータルサイトも活用される見込みだ。

「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」(国土交通省公表資料)をもとに作成「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」(国土交通省公表資料)をもとに作成

「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」のスケジュールと課題

システムの構築にはいろいろと課題も多いだろう。情報内容の充実はもちろんのこと、収集した情報をどのように加工し、どのように提供するのが適切かなど、運用してみなければ分からない点も少なくないはずだ。

そこで2014年度にプロトタイプシステムを構築、2015年度に一部の地域で試行運用・検証といったスケジュールが予定されている。さらに2016年度から2017年度にかけて本格運用システムの開発が行われ、順調に進んだとしても本格運用開始は2018年度の見込みだ。ただし、その際も運用可能な地域から始められ、順次、対象地域や搭載機能を拡充していくことが想定されている。全国で情報ストックシステムの利用が可能になるのは、まだ5年以上先のことだろう。

しかし、「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」にかぎらず、さまざまな角度から中古住宅流通市場の整備に向けた取り組みが急ピッチで行われている。情報ストックシステムが本格運用されるころには、現在よりも数段、中古住宅を購入しやすい環境が整えられていることを期待したいものだ。

もちろん、将来においてもシステムに集約されない情報については仲介会社が速やかに調査を実施し、適切なタイミングで消費者へ提供することが大切である。情報ストックシステムが稼働したからといって、それで得られる情報だけを消費者に与え、個々の物件における重要な情報を契約直前まで提供しないのであれば、中古住宅流通市場の進展を阻害する要因になりかねない。

システムの画面イメージ(出典:国土交通省「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」より)システムの画面イメージ(出典:国土交通省「不動産に係る情報ストックシステム基本構想」より)

2014年 06月27日 11時45分