賃貸アパートは、駅からの距離が徒歩15分未満内の立地に比較的均等にある

「東京23区の賃貸アパートの世帯数は、大阪市の賃貸マンション世帯数を上回り、賃貸住宅市場において2番目の規模となっている」ということについて、賃貸マンションと比較した賃貸アパート実態分析①でお伝えした。

今回は、東京23区賃貸物件においてアパートとマンションにフォーカスし、駅からの距離・築年数・賃料の分布状況を確認。分析を通じて「賃貸アパートは賃貸マンションと比較して、駅から遠く、古く、安い物件の割合が高い」という一般的なイメージが本当なのかを検証した。

まずは、駅からの距離別に賃貸アパートと賃貸マンションの分布状況を比較し、「賃貸アパートは賃貸マンションと比較して、駅から遠い」かどうかを確認する。
図表1の物件の構成比をみると、賃貸マンション内での徒歩5分未満の物件は44%と突出しており、賃貸アパート内での徒歩5分未満の構成比27%よりも上回る。そのため、駅徒歩5分未満で比較すると「賃貸アパートは賃貸マンションと比較して、駅から遠い」イメージと合致しているといえる。
しかし、賃貸アパートだけでみると駅徒歩15分以内には比較的均等に立地しているものの、全体としては徒歩5分未満の構成比がもっとも高く、決して「賃貸アパートは駅から遠く、また遠いほど物件数が多くなる」わけではないことが分かる。

※LIFULL HOME'Sで2018年7月~2019年6月に掲載された物件データをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成※LIFULL HOME'Sで2018年7月~2019年6月に掲載された物件データをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成

賃貸アパートは築年が古い物件も多いが、継続的な供給により築年が浅い物件もある

次に、築年数別に賃貸アパートと賃貸マンションの分布状況を比較し「賃貸アパートは賃貸マンションと比較して、古い物件の割合が高い」とを確認した(図表2)。
構成比を見ると、賃貸アパートの約半数が築25年以上で、賃貸マンションよりも築年数が古い物件の構成比が高かった。一方で築3年未満の構成比も賃貸アパートの方がマンションよりも、高くなっている。

また、賃貸マンションは不動産のファンドブーム期(2004年~2009年ごろ)にあたる築10年以上15年未満の構成比が高かったが、個人による供給が比較的多いと考えられる賃貸アパートは比較的新規供給の差の波が小さく、築年の浅い物件も相応の割合であることが分かる。

※LIFULL HOME'Sで2018年7月~2019年6月に掲載された物件データをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成※LIFULL HOME'Sで2018年7月~2019年6月に掲載された物件データをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成

賃貸アパートは低価格帯が中心。ただし、坪単価で比較をすると極端に安いわけではない

続いて、募集賃料(総額)別に賃貸アパートと賃貸マンションの分布状況を比較。「賃貸アパートは賃貸マンションと比較して安い物件の割合が高い」かどうかを確認した(図表3)。

構成比を見ると賃貸マンションは月額10万円未満の物件も多く存在するが、月額10万円以上の物件も38.9%を占めており、低価格帯から高価格帯まで幅広く分布していることがわかる。一方で賃貸アパートでは、月額10万円以上の物件は9.4%にとどまり、月額8万円未満が全体の75%を占めるなど低価格帯の物件が多い。
このように全体で見ると賃貸アパートは“高価格帯の物件”はほとんど存在せず、「賃貸アパートでは、賃貸マンションと比較すると安い物件の割合が高い」というイメージがあてはまるようだ。

それでは、専有面積で除算をした坪単価でそれぞれを比較するとどうなるのだろうか。
坪単価別に賃貸アパートと賃貸マンションの分布状況を比較すると、やはり賃貸アパートの方が低価格帯の構成が高いことには変わりがない。ただし、坪単価10千円以上の構成比では賃貸マンションが65.0%に対して賃貸アパートは49.7%と、賃料総額での場合と比べて賃貸マンションと賃貸アパートの分布の形は小さくなり、“賃貸アパートの方が極端に安い”というわけではない。

※LIFULL HOME'Sで2018年7月~2019年6月に掲載された物件データをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成</br>※募集賃料(総額)・募集賃料(坪単価)ともに単位は月額
※LIFULL HOME'Sで2018年7月~2019年6月に掲載された物件データをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成
※募集賃料(総額)・募集賃料(坪単価)ともに単位は月額

賃貸アパートは、賃貸マンションと比較して狭い物件が多いことで、「安い」イメージがついた可能性がある

前出の坪単価算出に用いた専有面積別の賃貸アパートと賃貸マンションの分布状況を比較したものが図表4である。
賃貸アパートと賃貸マンションいずれもシングルタイプ(30m2未満)の構成比がもっとも高い点は共通しているが、賃貸アパートはシングルタイプが約76%を占めており、シングルタイプの内訳を見ても賃貸マンションは20m2以上30m2未満が中心であるのに対し、賃貸アパートは15m2以上25m2未満と狭い物件が中心となっている。

※LIFULL HOME'Sで2018年7月~2019年6月に掲載された物件データをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成※LIFULL HOME'Sで2018年7月~2019年6月に掲載された物件データをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成

賃貸アパートの一般的なイメージと実態のまとめ

専有面積別の分布状況もあわせると、募集賃料(総額)における「賃貸アパートは賃貸マンションと比較して、安い物件の割合が高い」というのは、アパートの方が狭い物件の割合が高いことによりついているイメージの可能性があると考えられる(図表5)。

以上をまとめると、
【賃貸マンションと比較した賃貸アパートの一般的なイメージと実態】
①賃貸アパートは駅から遠い:徒歩15分未満であれば駅距離に関係なく比較的均等に立地。しかし、駅徒歩5分未満までに44%が集中する賃貸マンションと比較して、駅から遠い物件の構成比が高い。
②賃貸アパートは築年数が古い:約半数が築25年以上と築年数が古い物件が多い。一方で賃貸マンションと比較して築年数による新規供給のばらつきが小さく、築年数が新しい物件も相応の割合である
③賃貸アパートは賃料が安い:賃貸マンションと比較して賃料総額・坪単価とも低価格帯が中心。ただし、坪単価で比較した場合、総額で比較した場合と比べて賃貸マンションと賃貸アパートの分布の差は小さくなる

結果的におおむね一般のイメージと近い点が多かったが、「賃貸アパートは賃料が安い」というのは、賃貸アパートの方が狭い物件が多いことでイメージが増幅された可能性がある。
次回は、この賃料に焦点をあて、東京23区の賃貸アパートと賃貸マンションの賃料決定構造を比較する予定だ。


LIFULL HOME'S×SMTRI
https://www.smtri.jp/market/lifull_homes/

●「賃貸アパートは安い」イメージは、狭い物件の多さが一因か
https://www.smtri.jp/report_column/report/2019_12_09_4701.html

●「東京23区の賃貸アパート。実は市場規模は、大阪市の賃貸マンションを上回る~賃貸マンションと比較した賃貸アパート実態分析①」
https://www.homes.co.jp/cont/press/opinion/opinion_00207/
●レポート「大阪の賃貸マンションを上回る、東京の賃貸アパートの市場規模」
https://www.smtri.jp/report_column/report/2019_09_26_4486.html


◎分析  :三井住友トラスト基礎研究所 菅田 修、 髙林 一樹
     :株式会社 LIFULL 遠藤 圭介

参考:東京23区の賃貸アパート(LIFULL HOME'S)
   東京23区の賃貸マンション(LIFULL HOME'S)

※LIFULL HOME'Sで2018年7月~2019年6月に掲載された物件データをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成</br>※賃貸アパートおよび賃貸マンションの各項目の数値は、図表3及び図表4の各レンジでの加重平均値※LIFULL HOME'Sで2018年7月~2019年6月に掲載された物件データをもとに三井住友トラスト基礎研究所作成
※賃貸アパートおよび賃貸マンションの各項目の数値は、図表3及び図表4の各レンジでの加重平均値

2019年 12月09日 11時00分