水辺空間は暑い都市のオアシスへ

日本橋上空に通る首都高速道路の高架橋も、地下ルートの開通に伴い2040年に撤去される予定で、都心の新たな水辺空間の再生に期待が集まっている。風の道ができることで、ヒートアイランド現象への対策効果も期待されるという(※1)日本橋上空に通る首都高速道路の高架橋も、地下ルートの開通に伴い2040年に撤去される予定で、都心の新たな水辺空間の再生に期待が集まっている。風の道ができることで、ヒートアイランド現象への対策効果も期待されるという(※1)

今年も暑い夏がやってきた。昔と比べて暑さが増している、というのは誰もが感じているのではないだろうか。気象庁によると、最近30年間(1991年~2020年)の全国の猛暑日の年間日数は、統計を取り始めた最初の30年間(1910年~1939年)と比べると約3.1倍に増加しているという。(※2)
背景には、温室効果ガス排出量の増加などによる世界的な気候変動のほか、特に都市部ではヒートアイランド現象がその要因として加わる。日本の年平均気温(15地点平均)の100年あたりの上昇幅が1.5度であるのに対し、東京は3.3度、大阪は2.6度、名古屋は2.9度などと、都市化率が大きい地点ほど気温の上昇率が高くなっているのだ。(※3)

ヒートアイランド現象は、都市化に伴う地表面の人工化、都市形態の高密度化、人口排熱の増加が主な原因とされ、数ある対策の中の一つに、水辺空間の確保が挙げられている。水面は、日射を受けても大部分の熱が水中に蓄えられ、表面温度が上昇しにくいといわれており、コンクリートやアスファルト面と比べて、都市の気温上昇抑制に寄与するからだ。そして、何より水辺は気温が周囲と比べて低いとされる。水辺は実際に涼しいのだ。

かつて、舟運や灌漑のために街には欠かせない存在であった水辺。しかし高度経済成長期以降、その多くは埋め立てられるか、蓋をされて暗渠となり、街から消されていく存在であった。しかし近年、ウォーターフロントの再開発をはじめ、水辺を生かした大小さまざまな開発がすすめられ、減少の一途であった都市の中の水辺が見直されつつある。川辺のカフェや、川に浮かぶホテルなど、かつて人々の暮らしと密接に関わってきた水辺を、再び都市の顔として形づくろうとする取組みが増えているのだ。

ますます暑くなる日本の夏。自然の涼を愉しめる水辺空間の活用事例をまとめた。都市の中の水辺空間を訪れ、人と水辺の新たな関係性に想いを巡らせてみるてはいかがだろうか。


※1 日本橋・大丸有地区周辺におけるヒートアイランド対策検討委員会 https://www.nihonbashi-renaissance.com/revival/heat-island.pdf
※2 気象庁 http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_wld.html
※3 気象庁 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/himr/himr_1-1-1.html

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