将来のマイホームを具体的にイメージできる体験施設

リタイア後どんな暮らしをしたいか書きこむ絵馬。ここに書かれた意見が研究材料にもなるリタイア後どんな暮らしをしたいか書きこむ絵馬。ここに書かれた意見が研究材料にもなる

あこがれのマイホーム。建てるとなったらあんな設備もほしいし、こんなスペースもほしい。でも、そんなに広い家を建てられるわけではないし、予算だって潤沢じゃないから、本当に必要なものだけを手に入れたいものだけれど、いったい何が不可欠な要素なのか?実際に生活してみるまで、案外多くのことを見落としているものだし、どこかで新生活の予行演習はできないだろうか?

そんな方にぴったりなのが、グランフロント大阪北館にある「住ムフムラボ」だ。積水ハウス株式会社総合住宅研究所が運営する体験施設で、「かぞくのカタチゾーン」「いごこちのカタチゾーン」「いきかたのカタチゾーン」の三つのゾーンと、ドリンクを飲みながら暮らしや住まいに関する本を自由に読める「住ムフムスクエア」からなりたっている。しかも館内各所にあるアンケートに楽しみながら参加すれば、住まいに関する研究のお手伝いにもなるとか。

ここならば、頭の中にぼんやりと浮かんでいた「理想の暮らし」が具体的になるかもと、住ムフムラボ館長の久保新吾氏に案内していただきながら、施設を見学した。

「かぞくのカタチゾーン」で子育ちを体感

階段下の隠れ家的空間。ここなら落ち着いて本が読めそう階段下の隠れ家的空間。ここなら落ち着いて本が読めそう

最初に見せていただいたのは、「かぞくのカタチゾーン」。自分をとりまく人たち、家族や近隣との関係こそが「住」の基本と定義し、親や子ども、兄弟が仲良く助け合って生きていくためには、どんな住み方が最適かを模索できるゾーンだ。周囲の壁面では、「家族のものがたり」「もうひとりの家族(ペット)」などのテーマに分けられ、暮らしに関するさまざまな情報が展示されている。暮らしをイメージした5パターンのインテリアイメージが展示されたコーナーも。

「10代の女性は赤いビー玉、40代以上の女性は黄色のビー玉というように、性別と年代ごとに色が決められたビー玉で、好みのインテリアに投票していただきます。見学者に楽しんでいただくと同時に、どの性別・年代にどんな家が好まれるかを調査できる仕組みです」
投票されたビー玉を見ると、パターンごとに多い色があり、年齢と性別ごとに好みの傾向があると、素人目にもわかる。

「かぞくBOX」と呼ばれるスペースには、勾配が緩やかでカーペットの敷かれた大きな階段や、階段下の隠れ家的空間など、「子育ち」を実現する居場所が整えられている。「子育ち」とは積水ハウスが提唱する「家とともに子どもが生きる力をはぐくむ」という考え方。中を見ると数人の小さな子どもが熱心に本を読んでいる。こんな場所でなら、遊びたい盛りの子どもでも、読書に没頭できるのかもしれない。

人気スペースは、「いごこちのカタチゾーン」

心からくつろげる「いごこちBOX」心からくつろげる「いごこちBOX」

次に案内していただいた「いごこちのカタチゾーン」は、住まいや生活環境を快適で健康的な生活の基盤ととらえ、自然を身近に感じられる空間で五感を研ぎ澄まし、ゆるやかな時の流れを感じることを主眼とするゾーン。
その中央部分にある「いごこちBOX」スペースに入ると、亀甲彫をほどこしたブラックチェリーの床が足裏に心地よい刺激を与え、間接照明が目に優しく、ふと体の緊張が抜けるのを感じる。126インチの大パネルを横に2枚並べたスクリーンには、春夏秋冬に加え、春から夏へ、夏から秋へ、秋から冬へ、そして冬から春へと移り変わる8つの季節の風景を絶えず映しだし、季節ごとにセミの声や雪の音が流れている。触覚・視覚・聴覚を活用し、昔の縁側の感覚で、庭と一体になった心地よさを生み出しているようだ。

「モデルルームでは“のんびり”というわけにはいきませんが、このスペースなら、寝転んでくつろいでくださっても大丈夫です。一部の床が低くなっている部分は『ピット』と言い、視点が低くて落ち着くのか、みなさんに人気ですよ」(久保氏)

このゾーンの展示で特に興味を引かれたのは、「しめ忘れお知らせキー」。出先で「家の鍵をかけてきたっけ?」と心配になった経験はないだろうか?慌てて帰ってみると大概はちゃんと閉められているもので、時間の無駄この上ない。この鍵があればそんな面倒はもうない。施錠すれば、鍵の持ち手にあるオレンジの突起が盛り上がる仕組みなので、鍵の閉め忘れをしていれば一目瞭然なのだ。ガスの元栓を閉めたかどうかわかる仕組みもプラスしてほしいものだが
「今のところは難しいですね」
と、久保館長は苦笑い。うーん、残念。
ただ、セキュリティーを考えるとき、設備と同じように大切なものがあるという。
「近隣との信頼関係やつながりができれば、不審な人物がいれば注意してもらえますし、旅行へ出かけるときに郵便物を預かってもらうこともできます。良好なご近所づきあいは最大のセキュリティーと言えるのではないでしょうか」
そこで近所の人達が集まって食事する「隣人祭」を薦めているとか。バーベキューのできるデッキやミニガーデンなど、近隣の人たちが集まれる空間を提案しているのだ。

リタイア後の生活を「いきかたのカタチゾーン」で模索

この距離感!手前にあるのが妻のスペースで、テーブル向こうにあるのが夫のスペースこの距離感!手前にあるのが妻のスペースで、テーブル向こうにあるのが夫のスペース

さて、唐突だが、平均的サラリーマンが労働に費やす時間と、リタイア後に自由に過ごせる時間では、どちらが長いだろうか?

1日の労働時間が昼休みを除いた9時間と考え、出勤日は土日祝日などを除いた260日とし、42年間勤め上げると考えた場合、労働時間は約10万時間になる。一方リタイア後の生活を20年と想定し、自由時間を睡眠時間や入浴時間を除いた14時間と考えると、こちらもまた約10万時間。リタイア後の義務のない自由時間は、感覚的に非常に長いと思える会社員人生とほぼ同じなのだ。しかし、この事実を知って喜ぶ人ばかりではないとか。

「何をして過ごせばよいのかと、愕然とする方も多数おられるんですよ」
と、久保館長。そこで、「いきかたのカタチゾーン」では、菜園作りや緑とくらす生活など、リタイア後にも楽しめる趣味が提案されている。日々の暮らしの中に生きがいがあれば、社会の中に自分の居場所を確保でき、楽しみと好奇心にあふれる生活ができるものなのだそうだ。

「いきかたBOX」は、リタイア後の夫婦が心地よく過ごせる空間をイメージしたスペース。真ん中に、親戚や近隣の人達を招いてパーティができるよう、6人がけのテーブルがセットされており、両端に夫婦の趣味のコーナーがある。これはちょっと離れすぎではないかと思うが、姿が見え、声をあげれば会話もできるが、お互いのつぶやきまでは聞き取れない程度の距離が、夫婦円満の秘訣なのだそうだ。

暮らしのビジョンを明確にもつ

住ムフムラボ館長の久保新吾氏住ムフムラボ館長の久保新吾氏

住ムフムラボWEBで連載されているコラムのコラムニストらが「子育ち」「食育」など、さまざまなテーマで語る住ムフムセッションや、住むことを楽しむきっかけとなる講座やワークショップ、企画展なども開催される。「住ムフム研究メンバー」と呼ばれる会員に登録すると、ワークショップやグループインタビューなどの調査研究にも参加可能だという。「しめ忘れお知らせキー」は、ここから生まれた商品だ。

また、「住ムフムスクエア」は、お気に入りの本を選んで、ソファに座ってドリンクを飲みながら、ゆったり読めるカフェスペース。こだわりで選んだ蔵書はなんと2500冊もあり、古今東西、住宅・建築はもちろん、暮らしや文化に関する多くの本がある。ここでしか読めない本もあるらしいから、一日中籠ってしまいそうだ。
 
「今の人たちは、家を購入する際、駅から何分か、敷地は何坪か、部屋数はいくつか、値段はいくらかといった条件ばかりを参考にしている気がします。でも、暮らしは数字だけでは測れません。家でどのように暮らしたいかに気づいてほしい、そして少しでも具体的なビジョンを持っていただくのが、私たちの願いです。この施設は、楽しみながら感性を磨き、『暮らしのアイデア』や『自分らしさ』を発見するための場所だと思っています。これからの住宅がどうなっていくか、少し未来の住まいの姿もわかるよう、展示に工夫もしています」
と、久保館長は笑顔で述懐する。

確かに、ここにくれば、さまざまな視点から「住」に触れられる。いつかマイホームを持ちたい人も、具体的に家の設計にとりかかろうという人も、参考にしてはいかがだろうか。

■参考リンク
住ムフムラボ
http://www.sumufumulab.jp/

2014年 09月14日 12時25分