地域の人に愛される公共空間に

水面にキラキラと夕日が輝く川に沿った遊歩道と、三角形の広場が連続するようにつながる開放的なオープンスペース。大阪市西区を流れる木津川沿いにある「トコトコダンダン(木津川遊歩空間)」は、大阪の水辺を活気ある場へと再生しようとする試み「水都大阪」の一環である「木津川遊歩空間整備事業」として、2017年に誕生した。もともとは材木の物流拠点として使用された材木浜だったが、耐震補強工事と高潮対策のための防潮堤のリノベーションに伴って、町と水辺と人をつなぐ空間として再生された。

“場所をつくって終わりではなく、つくった後の維持管理まで、地域の人たちでやっていこう”という想いのもと結成されたのが、「トコトコダンダンの会(木津川遊歩空間を楽しむ会)」だ。町の自治会である「広教連合振興町会」、近隣にある文化施設「大阪府立江之子島芸術創造センター」、子どもと地域をテーマに各所で活動を行う「特定非営利法人活動トイボックス」とが、連携しながら運営を継続している。地域住民の会員メンバーも加わり、今年で活動3年目を迎えている。

(左上)ダンダン畑のようにゆるい階段が続く(左下)遊歩道の柵も木津川が見えやすい設えに(右上)木津川を挟んだ対岸にはビルや公園が眺められる(右下)トコトコダンダンの会のアドプトリバーで植えられた花壇の花(左上)ダンダン畑のようにゆるい階段が続く(左下)遊歩道の柵も木津川が見えやすい設えに(右上)木津川を挟んだ対岸にはビルや公園が眺められる(右下)トコトコダンダンの会のアドプトリバーで植えられた花壇の花

アドプトリバーで育む愛情

特定非営利法人活動トイボックスに勤務する、トコトコダンダンの会事務局員の大田智史氏特定非営利法人活動トイボックスに勤務する、トコトコダンダンの会事務局員の大田智史氏

トコトコダンダンは、公園ではなく河川にあたるため、河川法が適用され営利活動が禁止されている。そのため、「トコトコダンダンの会」が主に行っているのが、環境美化活動(アドプトリバー)だ。毎月第3土曜日に、事務局と会員メンバーにより、清掃や植栽などの清掃活動を行っている。広場の各所にある花壇に揺れる日々草やコスモスなどの植栽は、すべて地域住民によって植えられたものだ。

「私たちが大切にしているのは、自主的な行動。地域の人が自ら手を動かしたり、維持管理を行うことで、自分たちの場所だという認識・思いが育っていきます。シビックプライドという、地域への愛着や誇りにもつながっていきます。僕たちの役割は、そのきっかけづくり。地域の人が、公共の場所に関わりやすくするにはどうしたらいいかを常に考えています」とトコトコダンダンの会事務局員の大田智史氏は話す。

アイデアを実現させる名裏方になりたい

定期的なアドプト活動以外に、年に1、2度この場所でイベントを開催している。地域のお店の人たちを絡めた催し物や楽器演奏やパフォーマンス、ものづくり体験など、内容もその時々でさまざまだ。企画者や参加者のこんなことやってみたい!を実際に形にできる実験の場として、周辺の飲食店や地域住人へ認知も広がりつつある。来年度以降のイベントに関しても、屋外演劇やジャズライブ、ヨガや落語会など、新たな企画も生まれ始めているのだとか。

「今は、僕たちが主体になってイベントを仕切っていますが、最終的には地域から声が上がり、主体的に企画が生まれてくる状態が理想です。こんなことができるんだ!という体験を一度すると、こんなこともできるかもというアイデアが湧いてくるでしょう。地域の人が主役で、事務局はあくまでも裏方。自由なアイデアを、どんどん膨らませてほしいし、水辺ならではの立地はまだまだ生かせると期待しています。企画を実現するための、事務局内の連携サポート体制はバッチリです」と大田氏。

2021年に補修工事に伴う意見交換会ワークショップも、地域住民に呼びかけて開かれて、町内会長や子ども会なども積極的に参加している。3年間の活動を経て、この場所の課題を解決する意欲や愛情が、地域の人たちの中に少しずつ育ち始めていると大田さんはうれしそうだ。

(左上)トコトコダンダンの会に参加する地域住民も増えている。<写真提供:トコトコダンダンの会>(左下)各自持ち寄った苗を植える(右)年に2回開催しているイベント「みどりでいっぱいプロジェクト」のチラシ(左上)トコトコダンダンの会に参加する地域住民も増えている。<写真提供:トコトコダンダンの会>(左下)各自持ち寄った苗を植える(右)年に2回開催しているイベント「みどりでいっぱいプロジェクト」のチラシ

身を投じて楽しんでみるノリのよさ

地域住民のシビックプライドは、一朝一夕には生まれない。地域住民が公共空間を自分たちの場所だと認識し、愛着を持っていくためには、どうすればいいのだろうか?

「まず、面白がることだと思います。自分の周り、地域で起こっていることに気軽に乗ってみること。何か面白そうだなと思ったら、体を動かして何かやってみること。トコトコダンダンのイベントでも、近隣飲食店の店員さんがちょっとやってみたいと企画を持ち込んで、賑やかしてくれました。子どもたちも大喜びでしたよ。そういうノリのよさって地域ではとても大事なマインドだと思うんです。場所が気に入ったら、弾き語りで歌ってもいいかもしれないし、子どもの習い事の発表会の舞台にだってできるかもしれない。視点を広げて、地域を見渡してほしいです」と大田さん。

地域住民が場所に参画することで、地域が町に溶け込み新たな一体性を育みだす。トコトコダンダンの会の活動が土台となり、住まう住人の暮らしの豊かさを生み出す活動により発展することを期待したい。

(左上)交流ピクニックの様子。テントは無料貸し出し(左下)ワークショップの様子(右上)トコトコ引き換え券。お手伝いをするごとに1トコトコもらえて、イベント内でドリンクなどと交換できる仕組み(右下)トコトコダンダン特別メニューを提供する、近隣の飲食店「ゴレン者」。<写真提供:トコトコダンダンの会>(左上)交流ピクニックの様子。テントは無料貸し出し(左下)ワークショップの様子(右上)トコトコ引き換え券。お手伝いをするごとに1トコトコもらえて、イベント内でドリンクなどと交換できる仕組み(右下)トコトコダンダン特別メニューを提供する、近隣の飲食店「ゴレン者」。<写真提供:トコトコダンダンの会>

2021年 01月14日 11時00分