急激に広がりをみせている「ミズベリング」

会場は渋谷駅前のヒカリエ内にある「渋谷ヒカリエホール」。各地の活動報告や、これからの水辺のあり方などが話し合われた。司会は山名清隆さん(ミズベリングプロデューサー/写真左端)と田中里佳さん(国土交通省 河川環境課 課長補佐)。中央の二人はミズベリングディレクターの真田武幸さん(左)と岩本唯史さん(右)会場は渋谷駅前のヒカリエ内にある「渋谷ヒカリエホール」。各地の活動報告や、これからの水辺のあり方などが話し合われた。司会は山名清隆さん(ミズベリングプロデューサー/写真左端)と田中里佳さん(国土交通省 河川環境課 課長補佐)。中央の二人はミズベリングディレクターの真田武幸さん(左)と岩本唯史さん(右)

水辺と聞いて何を思い浮かべるだろうか。ロマンティックなイメージ? それとも汚い、縁がないという人もいるかもしれない。
それは住んでいる環境によって異なると考えられるが、今水辺をより魅力的なスペースにしたいと取り組んでいるプロジェクトをご存じだろうか。

それが「ミズベリング・プロジェクト」である。ミズベリング(MIZBERING)とは、かつての賑わいを失ってしまった日本の水辺の新しい活用の可能性を、創造していくプロジェクトだ。

ミズベリングは、「水辺+RING(輪)」、「水辺+ING(進行形)」、「水辺+R(リノベーション)」の造語。水辺に興味を持つ市民や企業、行政が三位一体となって、ソーシャルなムーブメントを起こしており、昨年10月には大阪で世界会議が行われた。また、国内では41の地域で活動が行われており、さらに2つの地域が準備中。2014年にはわずか300人ほどの規模だった活動が、現在では1万人規模に発展と、全国で急激な広がりをみせている。

3月3日、「全国大会」が東京・渋谷で開催されたので、その様子を紹介しよう。

東京・二子玉川ほか全国4地域が、先進の水辺動向をプレゼンテーション

日本の河川の長さの総合計は3万5640平方キロメートルで、ほぼ九州と同じ大きさ。長さは1万3941kmと地球を3周半もするという。規制緩和が進んだ結果、水辺の商業利用が促進され、イベント施設やカフェ、キャンプ場などといった従来にない河川の可能性が追求できるようになったという。

そのチャンスを活かし、水辺の魅力アップの取り組みを行っている4名による「全国先進水辺動向プレゼンテーション」が行われた。最初に「二子玉川スマートブリッジ構想」を掲げて登壇したのが、東急電鉄株式会社 都市創造本部 開発事業部 事業計画部 統括部長の東浦亮典さんだ。

「二子玉川は、昔から川に親しんだ街です。しかし高度成長期の時代に家庭洗剤が川に流れ込むなどして汚染されてしまいました。しかし、時代が変わり、川がきれいになり、今は鮎が500万匹遡上する川に戻っています。最近はライズがオープンするなど、新しい動きが起こっている街です」

東浦さんが魅力的な街として例に挙げたのが、アメリカのポートランド。ブリッジタウンと呼ばれている、ウィラメット川にたくさんの橋がかかる街だ。その点、二子玉川から多摩川を渡ろうとすると、二子橋以外では4~5kmも下流に下った丸子橋まで迂回しなくてはならず、多摩川を挟んだ交流がしにくいと指摘する。

「二子橋は車中心の橋。人や自転車が利用するには危険なので、もう1本、人と自転車だけのデザイン性の高い橋をつくりたいと個人的に妄想しています。2014年12月に世田谷区と川崎市は川を挟んだ自治体として連携・協力に関する包括協定を結びましたが、具体的にまだ何も起きていません。隅田川と台東区の間を流れる隅田川に架かる桜橋は、両区で費用を折半した友好の懸け橋。このような橋がつくることができればいいと思っています」

東浦さんはさらに夢を語る。「ただ渡るだけの橋でなく、マルシェやお祭りなどもこの橋でできたらいいと思います。地域で色々なアイデアを出して活かすことで、自治体の交流が広がるだけでなく、地域の経済が良くなっていくと思います」

あくまで妄想としつつ、熱い夢を語った東浦さん。スライドに写っているのは、ルクセンブルクのネイ・アンド・パートナーズに</br>作成してもらった橋のイメージスケッチ。世田谷区と川崎市の夢の懸け橋の実現を応援したいあくまで妄想としつつ、熱い夢を語った東浦さん。スライドに写っているのは、ルクセンブルクのネイ・アンド・パートナーズに
作成してもらった橋のイメージスケッチ。世田谷区と川崎市の夢の懸け橋の実現を応援したい

水辺を活かした、福岡の新しいランドマークが誕生する

プレゼンを行う花村さん。水上公園は7月にオープン予定。川に三角に飛び出した形状を活かした、水辺が気持ちの良い公園になることだろう。建物はガラス張りで、施設内からでも水辺の景色を楽しめるデザインになるというプレゼンを行う花村さん。水上公園は7月にオープン予定。川に三角に飛び出した形状を活かした、水辺が気持ちの良い公園になることだろう。建物はガラス張りで、施設内からでも水辺の景色を楽しめるデザインになるという

次に登壇したのが、西日本鉄道株式会社 都市開発事業本部 企画開発部 課長の花村武志さん。「俺の福岡水上公園計画」をテーマにプレゼンを行った。
「福岡市は海と山に囲まれた人口150万人の都市で、今も人口が増え続けています」と街の将来性を語る。

今回の発表は、博多と天神の間にある水上公園の話。水上公園は、今後開発予定のウォーターフロントに続くだけでなく、天神地区の再開発プロジェクト「ビッグバン構想」の東側の玄関口にあり、再開発のトリガーになる場所だという。
「水辺に面した水上公園に建物を建設し、休養施設としてレストランを誘致。公園と建物が一体となった計画で、建物は船のような形状をしています。テナントでは、世界一の朝食と言われているビルズが、東京・横浜に次いで出店することが決まりました。地元の中華の名店も出店予定です」

水辺への想いは、学生時代に手づくりのいかだで清掃しながら川下りをした体験が生きているのかもしれないと語る花村さん。
「7月に水上公園がオープンしますが、これがゴールではありません。新しいスタートです。色々な方々と連携しながら地域の幸福度を高めることが、結果的に地方創生になるのではないかと考えています」。

大阪人の気風と官民一体となったパワーで、水辺がダイナミックに変化

水辺の魅力が豊かな街・大阪。その魅力をプレゼンした泉さん。ボランティア活動が盛んなことも、様々なイベントの成功に役立っているという水辺の魅力が豊かな街・大阪。その魅力をプレゼンした泉さん。ボランティア活動が盛んなことも、様々なイベントの成功に役立っているという

3番目に「大胆突破大阪力」を掲げて登壇したのが、一般社団法人水都大阪パートナーズ 理事の泉英明さんだ。スライドを指しながら説明する。
「江戸時代の大阪です。これは天神祭で、多くの船が行き交っています。天神祭は1100年以上の歴史を持つお祭りで、今でも毎年7月末に開催され、非常に賑わいます。
大阪は、江戸時代からずっと川が流れてきた街。しかし、埋め立てられて汚くなったり、大阪の経済的な地盤沈下があったりなど危機感が高まり、水都大阪という取り組が始まりました」

大阪は2015年にミズベリング世界会議が行われるなど、豊かな水辺を具現化している街として注目を集めている。その理由を「大阪府、大阪市、経済界の3者がタッグを組んでずっとやっていることだと思います」と泉さん。
大阪では、プロの人材や民間企業出向者などで構成される「水都大阪パートナーズ」、大阪府・大阪市の合同事務局である「水都大阪オーソリティ」、2者の上位組織として大阪府と大阪市、経済3団体のトップ、有識者らによる「水と光のまちづくり推進会議」意思決定機関を設置。さまざまなイベントや取り組みを、「オール大阪」で支えているのが特徴だ。

「行政や民間の活動を一緒にして行われたのが水都大阪2009。このイベントが水辺の活用の大きな転換点になりました。行政、経済界と一緒になり、すべて市民の手でつくりこみ、体感した52日間でした」。水都大阪2009から、市民参加を盛り上げていこうとする流れが続いているという。
「大阪には、自由と責任のマインドで、自分たちで公共空間を使いこなそうという考え方があると思います」と泉さん。
大阪の水辺がダイナミックに変化し豊かになったのは、大阪人のチャレンジを認める気風と、行政と民間がタッグを組み一体となった力強い推進力の融合にあるといえそうだ。

水辺が楽しめる、川床のあるシェアホテルを計画

川床が「建築物」なのか、「(準用)工作物」なのかの見解の相違で計画がストップ。ミズベリング・事務局を含めた様々な組織からアドバイスを受け、無事に建築の認可が下りた川床が「建築物」なのか、「(準用)工作物」なのかの見解の相違で計画がストップ。ミズベリング・事務局を含めた様々な組織からアドバイスを受け、無事に建築の認可が下りた

最後にプレゼンを行ったのが、株式会社リビタ 地域活性化ホテル準備室 企画担当の綿引孝仁さん。テーマは「ホテルはリバーサイド」である。

綿引さんが勤務するのは、リノベーション業務をメインにしている会社。社宅のリノベーションなど、様々な分野で業績を伸ばしているという。現在は「ザ・シェアホテルズ」という名のシェア型複合ホテルを、日本全国につくる事業を進めているという。
「仲良くなる空間のシェアに、人が集まるホテルをくっつけてみる。そうすると新たな化学反応が起きて、その地域ならではのホテルができるのではないかと考えたのが始まりです」と綿引さん。

同社では、東京・隅田川沿いにシェア型複合ホテルを計画。川床をつくり、ヨガや食事など水辺を活かしたホテルをつくろうとしていたところ、途中でストップがかかった。その理由は、堤防の上につくろうとした川床が、建築物なのか(準用)工作物なのかで法律に違いがあるというのである。
建築基準法で定められた建物と考えた場合、堤防の上に載せてよい重量をオーバーしてしまうため建築ができないという。

しかし、同じ様な川床の例は、京都や大阪、東京の日本橋にもある。そこで、ミズベリング・プロジェクト事務局や都や区、さらに大学の先生方やNPO法人の方々などを巻き込んで4ヶ月相談した結果、「(準用)工作物」として許可が下り、無事に建築できる運びになったという。
ホテルは今年の秋にオープン予定。1・2階がシェア空間で、3階以上がホテルとなる。2階と川床が連続した水辺を存分に楽しめる建物が、またひとつ誕生する。

それでは、メディアの編集者や不動産の有識者の視点から、水辺はどう映るのだろうか? 次回は2名による「エディターズインサイト」と、有識者による「インスパイアトーク」の様子をお伝えしたい。

2016年 03月31日 11時07分