公共料金等は支払猶予。住宅ローンは?/新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策

生活不安を抱える人々に向け、上水道・下水道、NHK、電気、ガスおよび固定電話・携帯電話の使用料などの公共料金の支払猶予が講じられる生活不安を抱える人々に向け、上水道・下水道、NHK、電気、ガスおよび固定電話・携帯電話の使用料などの公共料金の支払猶予が講じられる

新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、かつてない規模の経済対策が組まれることとなった。財源は2020年度予算の予備費と2020年度補正予算案を4月上旬に編成して確保される。新型コロナウイルス感染症対策本部は、3月10日に新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策第2弾を取りまとめたが、その後も国内の感染者の増加が止まらない。全国でクラスターが発生している。大阪府と兵庫県に続き、東京都と近隣4県でも外出の自粛要請が出されたが、感染の拡大状況によっては常態化する可能性も大きい。対策本部では、生活不安を抱える人々への当面の追加的な緊急対応策として、(1)個人向け緊急小口資金等の特例の拡大、(2)公共料金の支払の猶予等、(3)国税・社会保険料の納付の猶予等の措置を講じると公表した。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた休業、廃業、契約破棄等による収入の減少は、生活を直撃する。公共料金や税金等の支払猶予はもちろん有難い。現金給付案も気になるところだ。さらに、家計に占める割合が高い住宅ローン返済についての対応策も望まれる。住宅ローンについては、ここ数年において甚大な被害が発生している自然災害での対応策も参考になる。併せて考えていこう。

「返済が困難になりそう」早期タイミングでの相談を

【一般社団法人全国銀行協会(全銀協)の対応】

「全銀協」は、銀行業の健全な発展を通じて日本経済の成長に貢献することを目的とする組織で、会員は国内の銀行、銀行持株会社および各地の銀行協会など。民間銀行のほとんどが加盟している。今回の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、住宅ローンやカードローン等の返済困難者に対して、無料で相談を行っている。

個々の金融機関においても、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により資金繰り等に影響を受けた中小企業や個人を対象に、返済条件の変更等に関する相談窓口が次々と開設されている。返済不安のケースでは早期の相談が鉄則だ。時が経過し、延滞が続けば選択肢が限られる。十分に注意したい。

また、全銀協が設置、運営している個人信用情報機関の「全国銀行個人信用情報センター」では、今回の特別措置による貸出金の返済猶予等について、同センターへの登録内容と齟齬が生じないよう十分に留意するようにと全銀協の会員である金融機関へ通知を行っているとのことだ。

新型コロナウイルスへの対応について 全銀協
https://www.zenginkyo.or.jp/topic/covid19/

新型コロナウイルスに関する会員行の対応について 全銀協
https://www.zenginkyo.or.jp/topic/covid19-jbamembers/

【住宅金融支援機構の対応】

【フラット35】でおなじみの住宅金融支援機構も新型コロナウイルス感染症の影響により、住宅ローン返済が困難となった個人に対して返済相談を行っている。今回新設されたものではないが、支援機構は図のような返済方法の変更で返済困難者をサポートする。

返済特例の適用や返済条件の変更により、定時返済に少し余裕が生まれる。だが、毎月返済額を減額すると総返済額が増額することもあり、目の前の課題解消を優先する場合も将来コストについても十分試算し、プランニングすることが必要だ。また、返済特例の適用を受けるには、以下の要件をすべて満たす必要がある。(1)離職や病気等の事情より返済が困難となっていること。(2)一定の収入基準を満たすこと。(3)返済方法の変更により返済継続が可能なこと。詳細は、下記の住宅金融支援機構のホームページを参照されたい。

返済が遅れると延滞損害金が発生するが、この支払についても相談が可能とのことだ。返済特例も含め相談先は、住宅ローンを返済中の金融機関となる。早期に行動したい。

(参照)住宅金融支援機構のホームページ『ご返済が困難になっているお客様へ』
https://www.jhf.go.jp/files/400352364.pdf

住宅金融支援機構「ご返済が困難になっているお客様へ」を参照して作成<br>
https://www.jhf.go.jp/topics/topics_20200323_im.html住宅金融支援機構「ご返済が困難になっているお客様へ」を参照して作成
https://www.jhf.go.jp/topics/topics_20200323_im.html

自然災害等による返済困難/二重債務問題

一部の金融機関では、自然災害を原因とする住宅ローン返済困難に備えて住宅ローンのオプションサービスを提供している一部の金融機関では、自然災害を原因とする住宅ローン返済困難に備えて住宅ローンのオプションサービスを提供している

【個人債務者の私的整理に関するガイドライン】

東日本大震災の復興途上で浮かび上がった課題の一つが、住宅ローンを抱えながらの住宅再建だった。個人や個人事業主等が既往債務の負担を抱えたままでは、新たな借入れも返済も非常に難しく再スタートに支障を来す。この二重ローンの問題は、震災からの着実な復興のために解決すべき重要課題として、まずは政府の「二重債務問題への対応方針」が取りまとめられた。続いて「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」が策定・公表される。当ガイドラインは、金融機関等が個人である債務者に対し、破産手続き等の法的倒産手続きによらず、私的な債務整理により債務免除を行うことによって、債務者の自助努力による生活や事業の再建を支援するものだ。

債務者は、当ガイドラインを利用することで、一定の要件の下、債務の免除を受けられるわけだが、そのメリットは、

●破産手続き(法的整理)とは異なり個人信用情報の登録などの不利益を回避できる
●国の補助により弁護士費用は不要
●手元に残せる現預金の上限が500万円

などだ。ただし、このガイドラインの利用により債務の免除を受けられるのは、東日本大震災の影響により震災前の借入れの返済が困難となった個人が対象であり、今回の新型コロナウイルスを原因とする返済困難は対象とならない。

【自然災害支援ローン/住宅ローンオプション】

自然災害を原因とする住宅ローン返済の困難に備えて、一部の金融機関が住宅ローンのオプションでサポートしている。例えば、みずほ銀行の「自然災害支援ローン・約定返済プラン」では、自宅が所定の自然災害により全壊、大規模半壊、半壊になった場合に、罹災の程度に応じて最長24回(2年)の毎月の約定返済額を払い戻す。当プランは、住宅ローンの約定返済が停止されるのではなく、毎月返済等を行った後に所定の返済相当額が払い戻しされる仕組みだ。利用コストは、対象商品の融資利率に0.1%の上乗せ。例えば、2,000万円を1.5%+0.1%で35年借入れる場合、毎月返済額(元利均等返済)は、985円が増額され、62,221円となる(2020年3月31日現在)。払い戻しにあたっては罹災証明書等が必要だが、契約前に自分にとってのメリットデメリットを十分に考慮することが必要だ。

一方、りそな銀行の「自然災害サポートオプション・残高補償型」では、地震、津波、噴火等の自然災害時に、罹災時の住宅ローン残高に対する建物金額割合の50%相当額を免除する。利用コストは、「基準上乗せ金利0.3%×建物金額割合」となる。例えば、借入額2,000万円の内訳が、土地1,200万円、建物800万円の場合は、建物金額割合は40%。上乗せされる金利は、0.3%×40%(建物800万円/借入金額2,000万円)=0.12%となる。
火災保険や地震保険の上乗せ補償のようなイメージだが、同サポートオプションは、地震保険の契約がなくても契約できる。

同じく、りそな銀行の「自然災害サポートオプション・返済補償型」は、住宅ローン金利の上乗せ0.1%にて、罹災の程度に応じて最大24回(2年間)の約定返済額を払い戻す内容だ。

いずれも、自然災害時の補償額を増やして対応しようというものだが、同目的であれば、「少額短期保険」という選択もある。どのような場合に何をどこまでどのように備えていると安心かがプランニングポイントだ。自然災害時の資金手当てか、収入激減時の補填か、必要額をどう試算するかなど、わが家のリスクを十分に考慮して、補償の最適化を目指したい。

(参照)みずほ銀行/自然災害支援ローン 約定返済プラン
https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/loan/housing/new_branch/shizen_saigai/index.html
(参照)りそな銀行/自然災害サポートオプション
https://www.resonabank.co.jp/kojin/jutaku/shizen/?bank=rb_unite

二重債務の注意点

住宅ローン等が二重払いとなる二重債務が発生するのは、既存の住宅ローンを返済しながら、新たな借入れが発生する状況だ。住宅ローン返済中に震災が起こり、自宅の再建のために資金の借入れが必要になる場合などは典型だが、住宅ローン返済中にリフォーム資金を借入れするような場合も該当する。

金融機関の融資条件の大原則は「返済可能であること」だが、目安の一つに返済負担率がある。返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合をいう。一般的に住宅ローンの目安は、年収の20~25%だといわれているが、25%といえば年収の4分の1にもなる。借入れはできる限り余裕を持ちたい。

二重債務の場合は、現在の借入れに新規の借入れを合算して、返済負担率が審査される。金融機関に審査されるまでもなく、返済負担率を検証する際は、住宅ローンのほか、返済中のすべての債務をふくめて試算しよう。金利が低いからといって、めいっぱい借りてしまうと、収入の激減など万が一のときに返済困難に陥ってしまう。

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